表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第九章 禁呪
363/412

356話 見知らぬ言葉

356話目投稿します。


この場所で行われているのは実験。

「急いだ方がいい」

そう言ったのはこの場所をよく知っているであろうラグリアだ。

今の時点で素早く動けるのは私だけ。

カイルとラグリアを2人だけにしておくのは…いくつか気掛かりではあるがそんなのは個人的な事だ。

浮遊…は大丈夫。

急ぎ休憩所に戻り扉を開けるが…

『あれ?…』

待機していたはずのガラティアとロニーの姿が見当たらない。

まぁ…そもそも視界が悪いとは言えこの地下で争い事があれば否が応でも行動に移すはずで。

『すぅぅ…』

焦るな、深呼吸して。

気配を探れ。


『行って。』

刃を標代わりに。

『上は…ちょっと厳しいか…』

一先ず飛ばした刃と2人の勘に任せておく。

察しは悪くないはずだ。

後は、やはりヘルトを呼ぶ必要があるか…。

急ぎ部屋を飛び出し、憶えている最短距離を駆ける。




少しの時間を掛けて戻った船。

ノプスは随分回復した様子でパーシィの安堵の表情は濃く、一旦の安心も束の間。

私の様子と一人で戻ってきた事から僅かな焦りを感じ取ったのか。

「私たちは船を見ているよ。大丈夫だ。必要なら…」

と手渡された小さな装飾品、見覚えがあるソレは技術院職員の多くが付けていた通信器だ。

「事前に用意しておけば良かったんだが。」

十分だ。

『ヘルト、一緒に。』

「分かりました、フィル様。」

彼女だけが呼ばれた理由。

ここに来た本来の目的に当たるとなれば断わる理由などない。




『大丈夫そう?』

手を繋いで低空を駆け、再び船より更に地下へ。

「今度、お天気のいい日にお散歩に連れてって下さいね。」

こんな時でも私の性格を把握している様子が伺えて嬉しく思う。

『船で高く飛ぶのも楽しそう。』

「ええ、本当に。」

繋いだ手が少し震えているように感じる。

私だって同じ、ここまで来たんだ。

同じ涙を流すなら、悲しいより嬉しい方がいい。




ラグリアの元に戻った私を待っていたのは随分と傷を癒した様子のカイルと、不機嫌そうなガラティア。

目を輝かせてラグリアに詰め寄るロニーの姿だった。

ガラティアの不機嫌は恐らく成行を聞いたからで、ラグリアに向けた視線に怒りが籠もってるのは気の所為じゃない。

彼女の事だ、相手は私とカイルを傷付けたとは言えこの国の王、にも関わらず「殴らせろ」なんて言葉を口にしたに違いない。

それを留めているのはカイルの口添えもあったのだろうが、それ以上にロニーの好奇心が邪魔をしている。


「フィ、フィル。ちょっと助けてくれまいか…?」

つい先程まで困惑の中でも感じられた鋭い気配、殺気と言っても過言ではない雰囲気は感じるも無惨に削ぎ落とされてしまっている。

『ぷ、あはははっ!…』

この光景は流石に笑うなと言う方が無理だ。

『そりゃ私でも無理かなぁ、そこは諦めて?』

とは言え、このままロニーの質問が続けば急いで集まったのも無意味になってしまう。

『ロニー、また後にしてね?、当分一緒だろうし機会は十分あるはずよ。』

「お、おい!…本気か…」

『冗談はあまり言わない方だけど?』

溜息をつくラグリアと、

「「そうでもないだろ?」」カイルとガラティア。

「「まったくだ。」です。」ロニーとヘルト。

と笑い声が上がる。




「早速だが…」

呟き、身を翻すラグリア。

言わずもあとに続く私たちに説明を加える。

「フィル、キミは見覚えがあるはずだ。」

指し示したのは中央に鎮座する円筒。

地下全体の光量が少ないのは私の記憶と大した違いはないが私が憶えている限りだとこの円筒の内部は水…とは違うかも知れないが液体で満たされ、筒自体が発光していた。

「私自身はこれに触れる用事がないのだが…」

硝子の筒を指の背でコンコンと叩く。

「管理者共がここに何かを入れたのだ。」

それ以降、ラグリアが管理者と表した者たちは姿を消したという。


思い出せ…。

確かあっちの世界でこの筒の中に居たのは…肉体だけになってしまった姉妹の姉、リルだったはずだ。

これがもし直接的に人の命を喰らう装置だとしたら…。

「ふむ…ふむ…」

円筒の周辺、船の操舵室に加えられた操作盤に近い形状の机のようなモノ。

「…えっと…」

ロニーが頭を捻りながら盤面に映し出された言葉を解読する。


「…PHASE3…ABSORPTION…HUMAN…UNIT…えっと…?」

ロニーが聞いた事もない言葉で何かを呟く。

小振りの鞄から取り出した小冊子、ロニーの手帳の頁を捲り、映し出された文字を解読していく。

「吸収…人…単位?」

一部の文字は発音できても意味まで読み取れない様子だ。

『ロニー、何と無くでも…』

「うん、最初の言葉は多分段階を表すような…で、後は…人から何かを吸い取る…みたいなところか…」

ノプスが居ればもっと分かったかも知れないと彼女は申し訳無さそうに悔しがる。

『十分だよロニー…カイル、ガラ。面倒だから壊しちゃおう。』

少なからずラグリアの言葉とロニーが解析した結果を鑑みればこの中に何者かが入れられてるのは明白。

以降、姿を見せないのであれば、その者の命など微塵も気にかけてはいない。

なら壊すまでだ。

人の命を道具のように使って成すなんて目の前で見ていられるものか。

「っしゃ!待ってたぜ!」

パンっと気合を拳に乗せるガラティアと、柄の感触を確かめるカイル。

念の為にラグリアに確認。

『いいよね?』

「駄目だ、と言われて?」

『やめないね。』

「だろうな。」


感想、要望、質問なんでも感謝します!


謎の文字、言葉、ここを造った者たちは理解している未知は何を求めているのか。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ