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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第二章 新たな暮らし
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33話 影を喰らう者

33話目投稿します。


月明りに照らされた城は静けさと相まって、幻想的な雰囲気を醸し出す。

浮かび上がる白い影は何を求めるのか…

どちらが口を開くでもなく、月明りに照らされた部屋で私とカイルは静かな時を過ごす。


私に手を握られ自由にさせているカイルは、どことなく遠くを見るような何かに思いを馳せるような、そんな顔をしている。

『何…考えてる?』

「ん―…?、何だろな。何でこんなとこに居るんだろうな?って。」

カイルの手に少しだけ力が籠り、私の指を摘まむように捉える。

「ちょっと前までノザンリィに居たのに、今は国の真ん中の城に泊ってる。」

『うん。それ王様と踊ってる時に私も思った。』

「ははっ、だよな?。」

短い旅だったが、実に濃厚なモノとなった王都への道程もそうだ。

「シロと契約しちゃって、それで修行することになって…」

『何か面白い事できるようになった?。雷出すとか?。』

流石にそれは無理、と言いながらもまぁそのうち見せてやる、と嬉しそうな顔をするカイル。

何となくソレが披露されるのはそう遠くないのではないか?と妙な感覚があるが、今は気にしまい。


『そういえばここどこ?』

凄く静かでのんびりしては居るものの、宴の途中で気を失った私はその後何があったのかまったく知らない。

カイルの言葉で、この部屋が城のどこか、というのは何となく解るが。

「あぁ、うん。まぁ解ってるとは思うけど、城だよ。最初に案内された部屋の近く。」

叔父は領主会談に向かったそうだ。いやまぁ、そもそも行事としては宴の方がオマケなのだし。

叔母はオーレンとイヴを伴って、私と同様に用意された寝室で休んでいるらしい。

スタットロード家の護衛としての立場であるカイルは本来なら叔父に付き添うか、叔母に充てられた寝室の傍で待機するのが役割であるはずだが、そこは叔母が私に付いているようにと念を押したそうだ。

「そういえばさ、あの時、お前庇って言ったの覚えてる?」

『うん。あれは…そうね、あれはカイルじゃない。』

「あ、やっぱりわかる?」

聞けばあの時のカイルの台詞は、叔母の台本だったそうだ。

「三日前くらいにさ、レオネシア様が台詞の紙渡してきてさ、言うんだよ。」

見なくても言えるように、絶対に覚えろと念を押されたらしい。

『…あの夫婦は…まったく』

いい加減私も叔父夫婦の扱いが何となく解ってきた気がした。

(うん、あの夫婦は悪いやつらだ。)

はぁ、とため息を付く。


『えと、今日はひとまずここに泊るってことで大丈夫なんだっけ?』

「そう聞いてる。」

『でも…ん!?』

ゾクリと、唐突に…背筋に何かを感じた。

(何だこれ…いや、これは…)

窓辺に走り、外を伺う。

あの夜に、初めてイヴに出会ったのと同じ白いローブの姿が少し高い位置にある回廊を歩いている。

『イヴ?!』

私の叫びに、カイルも窓に走り寄る。

「何だ!?イヴがどうした?」

そこで私たちの耳に畳みかけるように扉をノックする音が響く。

「フィル姉様!、起きていらっしゃいますか!?」

聞こえる声の主はオーレン。

その声色から、私が見た白いローブはイヴで間違いない、と確信する。

「イヴが…母と私が少し目を離した隙に居なくなってしまって!」

オーレンはイヴのエスコートを申し遣っていた。

見失ってしまった原因を自分のせいと感じ、今にも泣きそうな顔で私の部屋を訪れたというわけだ。

『オーレン。イヴは必ず私が探し出す。だから泣かない、男の子でしょ?』

「あ、は、はいっ!」

キリっと涙を拭うオーレンに、部屋に戻るように促す。

『カイル。念のため、オーレンを部屋まで。』

「分かった。お前は大丈夫なんだな?」

コクリと頷き、後はカイルに任せ、私は廊下を走った。


外気に面した回廊は、私たちに用意された区画の塔から他方へと、城の中心部から円を描き繋がれている。

私の部屋から見えた方角から目的の場所のアタリをつけ、走る。

(多分、方角からするとこっち!…)

遅い時間に廊下を走る私の姿は、衛兵からすれば不審でしかないと思うが、何故か…

(人の気配がない…これ噴水の時と同じ?…)

急げ、と体に鞭打つ。

宴の疲れでまだ気怠い体は若干の悲鳴を上げるが、今はそんな場合じゃない。

(ここしばらくイヴは落ち着いた様子だったから、安心しきってた…)

自分の余裕のなさが悔やまれる。それも今は考える事じゃない。

(急げ!)


数度、階段の駆け登り、幾度か角を曲がり、辿り着いた回廊。

夜風はまだ幾何かの寒気を纏い、私の身体をすり抜けていく。

『イヴ!!』

視界に捉えた白いローブは、ゆっくりと、ゆっくりと私の方へ振り返る。

正面に向き直ったその姿は…私を驚愕させる。

(え!?…)

姿はイヴのままで…その腹部だけが異常に膨らんでいる。

「おねえちゃんだ。」

意識は…あるようで、私の顔を見てはっきりと声に出した。

『イヴ、どうしたの?、何があったの?』

ゆっくりと近づき、問いかける。

「イヴね、おなかいっぱいなの。」

腹を摩り、満足そうに笑うその顔は、見た目と裏腹に妖艶な印象も感じる。

「おしろはおいしいにおいがたくさんでおいしいタベモノもたくさんあるんだね。」

イヴの発した言葉は…いや言い方と言った方がいいのか。

(宴の時にも言ってた…そういう事か…)

走り、イヴの体を抱きしめる。

『ごめん!、私…気付いてあげられなくて!。』

「おねえちゃん、だいじょうぶ。イヴだいじょうぶだよ…ちょっとおなかくるしいけど。」

私の腕の中で発せられたイヴの口調は、いつもの調子に戻っていて、そして…

(お腹が…萎んでる…)


『イヴちゃん、教えてほしい。』

私の質問に、少女はコクリと頷く。

『貴女、影を喰べてるのね?』

もう一度、イヴは頷いた。

「イヴ、おねえちゃんといっしょにいたいから…」

そう言い残し、少女は眠りについた。


外気に晒された回廊から見える夜空には、綺麗な月明りが私たちを照らしていた。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


イヴの正体と目的とは何なのか?謎は未だ深い闇の中に在りき


次回もお楽しみに!

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