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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第九章 禁呪
332/412

325話 限界に挑まされる

325話目投稿します。


用意された催しは、嬉しいような悲しいような。

いやむしろ地獄か。

『…だから…体力は別…』

盛り上がる客席とは裏腹に私はすでに肩で息を吐いて、着衣も汗を吸って重く感じる程。


時間にしてもう一時間を優に超えている。

今目の前に立っているのはガラティア配下の僧兵隊の数名。

予め練っていたであろう作戦は、私に休む時間を与えないといった類のモノで、今この一時は彼等なりの手加減といったところだろう。

「どうさ?フィル。アタシたちはアンタの事は大好きさ。強さも知ってる。でも弱点を知らないわけじゃないのさ。」

初戦に戦ったガラティアはすでに舞台を降り、私も手加減したとはいえ、その体に痣と火傷が刻まれている。

それでも今の私より余程余力がありそうだ。

「行きます!」

『くっ…』

単純に繰り出される攻撃は手足で防げる。

足りないところ、騙しを挟む攻撃にはしっかりと防御壁が働いている。

自分でも自覚している私の弱点は単純な体力だけじゃない。

そもそも小さな頃から私の父と戯れていたカイルに比べて武術に於ける基礎的な知識も無い。

今防御壁で防いでるモノ全てが私の弱点と言っても過言じゃない。


それでも私が彼らに勝てない訳じゃない。

『少し苛ついてきた…かも…』

フーと呼吸を整える大きな深呼吸。

体を直立に、両足をしっかり、踵まで余さず地に密着。

「我らの秘技、お受け戴く!」

私を取り囲んだ5人の僧兵。

構えは皆同じ、けど…

『うん。』

体を使う戦いという意味での弱点を覆す為に出来る事。

いつだって成行でも何でも出来る事をやってきた。

生死がかからない立ち合いだとしても、負けたくはない。

『…何だかんだで私も負けず嫌い、バカなんだね。』


一人目、拳から感じる圧は、十分に受け止められる。

『フっ!』

歩幅を少し広げて腰を落とす。

踏み込みからすれば余計な動きは無い。

掌、操作するのに一番慣れている体の部分。

強化。硬殻。

受け止めて踏ん張る。

それと同時に二人目が地を蹴る。

態勢からすれば足技、狙いは恐らく…

もう一方の腕で腹部を遮る。

こちらは流石に掴みきれないが、止めた直後に先の一人目の拳を掴んだまま、二人目に向かって思い切り引っ張った。

「ぐぁ!」「うぉ!」と二人の呻き声。

続けて隙を伺っていた三人目は時を逸して機会を失う。


勢いよく舞台外に折り重なって吹き飛んだ二人の僧兵が戻って来る気配はない。

『残りは3人』

私の言葉を聞いた残りは、顔を見合わせ、咄嗟に次の策を目線で送り合う。


「流石ですフィル様。しかし我らとてそう簡単には譲りません!」


綺麗に三角を描くように立った僧兵たち。

察するに今度は一斉に来るつもりだろう。

いっそその方が楽だ。

正直を言えば体力共々に助かる。

再び気を引き締め、練り上げる彼らに合わせて、私も端っから身構える。

『受け身はしっかり取ってね?』

飛びかかる直前に伝えておいた。

地を蹴る瞬間は変えることもできず、予想通りの一斉攻撃。

なら私の手は単純明快だ。

私に触れる瞬間、ズレが少なければ少ない程に、近ければ近いほどにそれは強く作用する。


算出。反射。増幅。展開。


頭の中で浮かぶ言葉、それはいつからか私の戦いの中にあった。

記憶に残るようになったのは…リグとの戦いの後だ。


ギィん!!

僧兵3人の攻撃は浮かんだ言葉通りにまるで金属を打つような音と共に、私に触れる直前、弾かれた。

その威力を返すだけじゃなく、増幅させて打ち返す。

吹き飛びながら驚いた表情で、直後にとても悔しそうな顔が見えた。

ざまぁみろ。




『ふぅ…』

ガラティアと数名の僧兵。

何とか捻じ伏せたものの、体力はすでに尽きそうだ。

まだ起きて間もないというのに、今日一日もつのか怪しい。


「ヤツらだけで終わると思っていたのか?」


ガシャりと金属音を鳴らして舞台に上がってきたのは無骨の巨躯を持つグリオス=オストロード。

そしてガラティア同様に彼の率いる騎兵隊の面々。

得意としている騎馬が居ないだけマシ…

『いやいやいや…嘘でしょ。』

「我らだけじゃないぞ?」

冗談…ではないらしい。

この催しの目的、それは手に武器を持つ希望者は私と武を競える…らしいが…

『…あーもう!ったく、何の仕返しなのよ。』


誰が?と言えば恐らく発端はカイルとヘルトだろうが、結果として出た案はむしろガラティアやグリオスが考えたとした方がしっくり来る。


とはいえ、希望者は…と言ってこの会場に居るそちら側の人の数を考えるとゾッとする。

何故か客席は盛り上がっているし、気付けば舞台袖に何らかの数字が書かれた立て看板。

気の所為ではなく今書かれている数字は8。

ガラティアを含めて私が相手をした数と一致している。


更に嫌な予感ではなく事実としてその下、横線を挟んで書かれた数字は126、そしてその下に小さく、飛び入り募集中などと意味深な言葉が書かれていた。


『…本気か…』



感想、要望、質問なんでも感謝します!


この町の皆が居るから、きっと笑っていられるんじゃないか?そう思う…思えるか?


次回もお楽しみに!

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