31話 好奇の視線
31話目投稿します。
これも叔父の策略か?お膳立てされた事象に翻弄されながらもフィルは自分なりに奮闘するのであった。
我ながらベタな気がします。
一つの曲が終わり演者は各々に別れ、或いは睦まじく場を離れる。
カイルの活躍で一先ず見知らぬ異性からの誘いを断れた私は無事に踊り終えた事も併せ『ふぅ…』と安堵を漏らす。
相方の様子を伺うとこちらも少しの安堵と共に腕をこちらに差し出す。
あ…っと咄嗟に察し、手を添えると歓談の席に控えていた叔父や叔母の方へ向かってエスコートしてくれる。
少し背伸びをして口元に手を添えカイルに耳打ち。
『ありがと、助かった。』
微笑の返答が返ってきた。
(…凄いよ、カイル。)
ふふっと私も笑みが溢れる。
「ナイト君、大活躍ね?」
叔母は近くの執事を呼び止め受け取った飲み物を私たちに手渡してくれた。
カイルは先程の私と同じように叔母に耳打ちする。
「いっぱいいっぱいです…」
と内容は私にも聞こえ、叔母と目を合わせ笑ってしまった。
「素晴らしかったです。カイルさん!フィル姉様も!」
興奮気味にオーレン。傍らのイヴの手を取り、こちらもしっかりとエスコートしているようで、今後が楽しみな従姉弟だ。
「おねえちゃんもおにいちゃんも格好よかったよ!」
オーレンの手を離れ、私に抱きつく。
「いやはや予想以上で私も嬉しいよ。フィル。特にカイル君、まるで歴戦の紳士のようじゃないか?」
と叔父が小さく拍手する。
『叔父様?先ほどの「避け方」わざとですよね?』
あー…と目を反らす。
『で す よ ね ?』
「すまない。少し悪戯が過ぎたね。」
だが、と付け足す。
「決してただの悪戯というわけではないよ。」
「おねえちゃん、イヴおなかすいてきちゃったから何か食べにいこ?」
会場の壁際に設えた長椅子でしばしの休憩をしているところにやってきたイヴが私を誘う。
『いいよ、いこっか。イヴちゃん。』
やった!と喜ぶイヴの頭を撫で、その手を取る。
立食形式の形を取るこの会場の片隅に、豪華な料理の数々が用意されており、幼い少女が目を輝かせる。
「美味しそうな喰べもの、いっぱいだねー。どれにしようかなぁ。」
迷うイヴと見守る私たちに控えていた執事が声を掛けてくる。
「お嬢様方?宜しければ私が御取り致しますよ。」
と、言いながら私の顔を見た執事は「おや。」と発した。
「これは失礼を。いえ、先ほどのダンス、拝見させて頂き、お二人が奏でる雰囲気はとても素晴らしゅうございましたので…」
妙齢の執事は「ほっほっほ。」と笑う。
『あ、ありがとうございます。とても…えと、その…嬉しいです。』
さらに「おやおや。」と付け加える。
「お付き添いされた方のおっしゃっていた事は間違いないようですな。」
『といいますと?』
「私ども一介の執事は、そのようなお言葉を賜る事は稀ですので。」
と嬉しそうに微笑む。
「おじいさん!、あれとって!、あとこれも!」
美味しそうな料理に目星をつけたイヴが言うと、妙齢の執事は「かしこまりました。」と丁寧に皿に取り分けてくれ、更に私たちが居た場所まで料理を運んでくれた。
「ありがとう!おじいさん!」
嬉しそうにお礼を言うイヴ、私も習い頭を下げる。
「いえいえ、これが私の役目ですので。」と一言の後、執事は口元に手を当て、私に耳打ちをした。
「貴女様のダンス、いえ、貴女様に興味を持たれたのは、私や押し寄せた方々だけではございませんよ。」
言葉の後、目くばせをする。
視線の先には…入れ替わり立ち代わりと人が集まるその中心だった。
ハッとして執事に視線を戻し、『本当に?』と言った表情で返す。
無言で頷き、執事は一礼の後、私たちの傍から離れた。
宴の最中、数人に声を掛けられた私は何度かのダンスを踊る羽目にもなり一曲毎に溜まっていく疲労感は体だけでなく精神的にも堪える。
(うー…しんどい…)
気苦労の少ない別宅とまで贅沢は言うまい…せめて本宅の寝室に飛び込みたい気分だ。
しかし、逆に消耗を理由として会場の隅に一時的にでも避難できるのはまぁ
…怪我の功名?、何か違う気もするけれど。
定位置となりつつある長椅子に座ると、傍に立っているカイルが「お疲れ様」と声を掛けてくれる。
カイルもカイルで私の疲れ具合を把握しているようで、心配そうな視線を向ける。
「大丈夫か?」
『まだ、何とか…』
服には慣れた。ただし下手に食事はできない。足の痛みがそろそろ限界に近いかもしれない。
「無理しなくていいんだぞ?」
『わかってる。ありがと。』
しばしの時間が経ち、社交の場は少しの落ち着きを表し始めた。
歓談のざわめきの中、上がる声。
「宴を楽しんでいるところですまない。」
場の中央に立つ王は少々大げさにも思える動きと共に会場の視線を集める。
「こういった中で余としては形式など気にしたくはないものだが、ある意味民衆に求められている事でもあるのでな。」
一歩、一歩と、会場の隅に設えた長椅子へ向かって足を進める。
会場の視線が集まり、
(…できる限り目立たないようにしてたんだけどなぁ…)
王が私の前に立ち、腰かける私の手を取るために膝を付く。
「一曲よろしいかな?」
流石に簡単に断るわけにもいかない。
恐らくこの流れは叔父が私に期待してのものでもあるはずだ。
傍らのカイルから、私を心配する視線と何か言おうとする空気を感じるが、
『はい、喜んで。』
と、カイルを制するように返事をする。
(大丈夫だよ。)
直後、会場がどよめき、私の手を取った王が、会場の中心へと私を誘う。
此度の最後のダンスは、王と私の二人だけの舞踏となるようで、準備が整ったところで恐らくはこれ専用であろう曲が奏でられる。
「フィル=スタット。不思議なくらいに余は貴女にとても興味を感じているよ。」
舞いながら、王は私にだけ聞こえる声で囁くのだった。
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王の興味を引いてしまったフィルは何を語るのか?
次回もお楽しみに!




