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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第二章 新たな暮らし
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28話 前夜

28話目投稿します。


思い返せば領主会談の日取りを聞いてなかったフィル。彼女の鋭かった勘は何故か働かない。


少し書き溜める余裕があると、前後の話を見ながら修正できることに気付きました。

誤字脱字は拭いきれませんが…

「そういえばフィル、あなたダンスは踊れて?」

数日前、作法を習ってた際に叔母から聞かれた事だ。

ノザンリィでの祭で少し踊った事がある程度で、ここで叔母が言うところの「ダンス」とは別物だろう。

『いえ、恐らく叔母様が思ってるようなのは無理でしょうね。』

祭の踊りなら、と付け足すがそれに対する叔母の反応は少しの一考の後に「まぁそれも楽しいかも…」と呟きつつも「じゃあ、」と執事を呼び出し、

「早速始めましょうか。」

うげぇ、という感想が顔から出ていたのは間違いない。

晩餐後の習い事にダンスが追加されたのが3日ほど前。


流石というか練習相手の執事、マルクスさんは物腰柔らかで教え方も上手、お陰様でそれなりに形になったとは思う。

練習中、何度も足を踏んでしまったのはまぁ…ゴメンナサイだが「お気になさらず」という気遣いは痛み入る。

「ダンスなんてリズムに乗ってれば何とでもなるわよ。初々しい方が目立つでしょうしね!」

とは言うものの、

『いや、目立ちたくはないんですけど…』

残念そうな顔をされても困る。

「じゃあ、最後に合わせておきましょうか?」

スッと身を引いたその先に立っていたのはカイルだ。

『あ…えと、久しぶり?』

パーシィのアドバイスはともかく、やはり少し意識してしまう。

改めて見るその姿は礼儀作法の甲斐かいつもより落ち着いて見える。

「俺は何度か見てたけどな。コッチも中々大変だったぜ。」

声を聞けばいつも通りのカイルではあるのだが、

私たちは互いの数日間を思い返し、軽く笑い合った。


叔母の合図でホールに流れる旋律は私とカイルを自然に引き寄せ、ここ数日間で互いの体に染み込ませた動きを重ねる。

でも…『やっぱり』と思う。


『マルクスさんに比べたら下手ね?』

「そりゃどうも、」

『でもあんただと、気を使わなくて良い。』

ほんの少しだけ全身の力を緩める。

「お互い様だな。」

感じ取ったカイルの腕にもほんの少しだけ支える力が籠められる。


踊る私たちの些細な機微を見逃さなかった叔母は、

「いいわね」と呟き、傍らに立つマルクスも「ええ。」と頷くのだった。


数回繰り返された「仕上げ」のダンスは終わり、端からいくつかの拍手が聞こえる。

目を向けると本宅の執事たちやメイド衆の姿に加え、叔父やオーレン、イヴの姿も見える。

細やかな喝采に照れる私たちに各々が歩み寄り口々に感想を述べ、輪を納めるように叔父は言う。

「二人共、素晴らしかったよ。」

目に狂いは無かったと、やはり心配ではあったのだろう。安堵した顔を見せる。

「レオネシアや皆にも苦労をかけてしまった。感謝する。」

そういってこの場の全員に頭を下げる。

叔父のこういった気遣いは本当に頭が下るし、故に慕われているのだろう。

叔母が寄り添い「私も楽しませてもらった。」と微笑む。

叔母に関しては十二分過ぎる程楽しんでいただろうに、こちらとしても感謝してもらいたいところだ。

(そもそも病弱って聞いてたんだけどなぁ…)

と思いもするが、そういった楽しみがその身に良い影響を与えているのだとしたら、悪い気はしない。

(そういえば父と母も言ってたっけ。)

喋らなきゃ深窓の令嬢、喋ると残念少女。

若かりし頃、父、母を含めた親密な間柄の者たちの共通認識だったらしい印象だそうだ。

(解らなくもない。)

その記憶の元となった父と母の事をふと思い返す。

元気にしているだろうか?

事ある毎に私に纏わりついていた父などは案外しょんぼりしているのかもしれないな、と。

そこに叱咤する母の姿までも想像するのは容易い。

(会談が終わって落ち着いたら手紙でも出してみよう。)

よし、と心に留めておく。


ホールから居間に移動した私たちは就寝前の軽い歓談の場に居た。

用意された温かい紅茶は体の温もりと心の落ち着きを提供してくれる。

イヴに用意されたのは更に牛乳が注がれたもので彼女にとってはお気に入りだそうだ。

今にも眠りにつきそうなその頭を撫でる。

うつらうつらとしながらポツポツと口を開き「…あした、たのしみ…だ、ね」と言い残し、少女はすぅと寝息を上げた。

控えていたメイドが歩み寄り、イヴを抱きかかえ、部屋を後にした。


『……えっ?』


あまりにゆったりしすぎて聞き流す所だった。

『あの!叔父様、会談の日取りって!』

「ん?明日だが?」

『えぇぇぇええええ!?』

「…おや?言ってなかったかな?」

『聞いてませんっ!!』

バンっとついテーブルを叩いてしまった。

叔父は叔母と顔を合わせ、

「だから今日ダンスを仕上げたのだけれど?」

(やられた!)

忘れていた。この夫妻、揃いも揃って天然なところが…

『あぁぁぁあああ…』

頭を抱える私に二人は「おやおや、」「あらまぁ、」などと呟き笑う。

隣に座るカイルは「おまえ、知らんかったのか…」と当たり前のように言い、「成るようになるさ」と軽く付け足す。

こいつめぇ…

『心の準備ってもんがあるでしょうよぉぉぉおお…』

がっくりと項垂れる。


『あぁー!もうっ!、叔父様!』

キョトンとした叔父に向かって

『明日、恙無く終わった曉には何かのご褒美を要求します!』

キッと指を差し、睨みつける。

「わ、わかったわかった。」

と慌てる叔父。

「最近おまえ性格変わってねぇか?」


『うっさい!馬鹿イル!、おやすみ!』

吐き捨て、ノシ!ノシ!と居間を後にする。



「確かに最近元気だね。」

「昔みたくぼーっとしてるアイツも好きですけどね。」

「あら、大胆ねぇ?」

「色々考えた結果ですかね。隠すのとかもういいかなって。ほら、俺って基本バカなんで。」

「ふふ…まぁそれはそうとして、明日はカイル君も宜しく頼むよ。」

「ええ。頂いたやつは一通り頭に入れました。あと、いざというときはシロも居ます。」

「この人の護衛もそうだけど、カイル君、貴方は何よりフィルを見てるのよ?」

「ええ。言われずとも、ってやつです。」



寝室に着いた勢いのまま寝台に飛び込む。

変に考えて緊張して眠れなくなる方が辛い。

掛布に包まり瞼を閉じる。

結局のところ万全とは行かなくなってしまった気持ちを何とか押し留め私は眠りについた。


王都の中央に鎮座する城は、来る明日の催しに巻き起こる幾多の波瀾を隠すかのように静かに佇む。

月夜に照らされ浮かび上がる王城の中央塔。

その最上階にて、「さぁ、始まるよ。」と楽しそうな声が響き、夜の静寂に消えた。


感想、要望、質問なんでも感謝します!


ついに開催される領主会談。間に合った準備に安堵すればいいのか、そうなるように仕組まれたのか?果たして?


次回もお楽しみに!

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