3話 雪中来訪
3話目、中々切り上げるタイミングが難しい。
筆の進みに寄っては明日も投稿予定デス!
夜半から唸りだした空模様に眉を潜めながら母は言う。
「この時期の雷は珍しいわね。伝説の雷獣でも近くにいるのかしら?」
『うーん、どうだろ?。流石に空の上までは視えないからねぇ』
遅めの夕食の席でそんな他愛もない会話。
「にしても、こんな時にねぇ?」
溜息混じりに言う母の言葉は、日中に町に向かった理由の一つでもあった。
『母、中央からお客が来るかも。』
と私が母に伝えたのが一昨日の事。
その詳細を確認する為に領主の館に赴いた母の様子は何となく…
『気が重い?』
「久々に戻る領主サマにどんなお灸を据えますかね?」
フフっと2人で笑い合う。
「まぁそういうなよ。アイツはアイツで大変だろうに…」
と父は領主を慮る。
「わからないでもないけどねぇ?」
でも、と続けようとした母を宥めるように私は付け加える。
『オジジもオババもいい歳だし?、ね?』
セリフを取られた母は、肩で私を小突いた。
「セルヴァンもメアリも甘やかし過ぎなのよ…まぁアレが小さい頃からずっと一緒だったのだからわからないでもないけどねぇ。」
セルヴァンとメアリは領主の付き人としてこの町で暮らす老夫婦だ。
母の言う通り、現領主の幼少のころから従者として付き従い、成長した領主とともにこの町へやってきた。
確か二人とも齢70を超えていたはずだ。
領主の取り決め(母曰くただの我儘)で、領主不在の折には領主代理として町を取り纏める権限まで与えられている事と、従者という立場上もあるのか、夫婦共々温和な性格で町民からの信頼は厚い。
「ともあれ、明日もう一度館に行ってくるわ。」
『母、私も行くよ。借りてた本も読み終わっちゃたし』
自室に設えた机に積まれている本の背表紙を確認しながら、明日持っていく本を整理する。
『ちょっとため込みすぎたか、これは中々の重労働だ』
本を読むきっかけをくれた領主が言うには、興味の有無に拘らず知識を取り入れることは、君の一生に於いて決して無駄にはならない、と。
その言葉のお蔭で私は様々な知識をこの身に蓄えることができた。
大小拘らずそれは暮らしに役立っているし、恐らく今後の私の人生に於いても多大な可能性に結びつくのだろう。
しかしながら最近よく読む種の本は少なからず両親の心配の種でもあるのだろうな、と申し訳ない気持ちもある。
読みかけの本を手に取り、寝台に上がる。
窓辺に設えた寝台と、そこから見える夜の景色、少し暗いランプの灯りの下での読書。
私の好きな時間だ。
読みかけの頁をパラパラと捲りながらふと思う。
低く唸る窓の外の夜空は何か始まりの予感を知らせるようにも感じる。
『領主サマ方は恐らく明日にでも戻られるだろうな。』
お山の雪次第ではあろうが、わざわざこの悪天候の中戻る領主の無事と母のお灸とやらを心配しつつ、早めに「好きな時間」を切り上げた私は眠りについた。
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