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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第一章 王都へ
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23話 旅の終わりに

23話目投稿します。


揺られる馬車の中で安らぐ一時と待ち受ける新生活に少なからず心が躍ります。


結局今日中(日付的には二日ですが)に3話分上がりました。中々疲れたけどやっぱり楽しいですね。

沼地に挟まれた街道は、聞いていた話から思い描いていた程狭くもなく、普通の馬車ならすれ違う事ができる程度には広く、泥濘にも車輪を取られない程度に整備されていた。

とは言っても地盤が固いわけでもないので、やはり行軍速度はゆっくり目ではある。

沼地に入る前に一度の野営を行った翌日の今日、私とカイルは領主たちが乗っている(少しばかり豪華な造りの)馬車に乗せられた。

王都到着後についての話をしたいという事だ。


(少し…気まずい…)

私は隣に座るカイルの顔が見れない。

多分カイルも同様とは思うのだが…

先日の川辺でのやり取り以降、私たちは大して会話をすることもなく今の状況に相成った為だ。

「さて。早速なのだが。」

とこちらの様子を別段気にするでもない領主は話を進める。

曰く、住居に関しては是非に北方領主である、アイン=スタットロードが王都で所持している屋敷に住んでほしいという事だ。

これについては叔父のアインより、この場に居る他の二人の要望が強く、

叔母のレオネシアは、私に対して「娘ができたみたいで嬉しい」と、従姉弟であるオーレンは先日の修行風景からますますカイルが気に入ったようで、すでに本人は「兄さん!」といった具合だ。

私としては、願ったりといった所で、カイルに至っては料理も洗濯も掃除もできないし一人暮らしをさせようものなら、いつの間にか餓死してても可笑しくない。

しかし…それはつまり…カイルと同じところで暮らす…という事に他ならないわけで…

(だめだ…以来、カイルを気にしすぎ…よし!)

パンっと両手で頬を張り気持ちを切り替える。

突然の私の行動に、4人が驚く。

『私としてもご厚意は嬉しいです。』

カイルと違って生活する上では一人でも大丈夫とは思うが、慣れない土地と考えれば不安要素は少ないに越したことがないのは確かだ。

「俺は…」

やはり私が思っていた通りのようで、カイルはチラリとこちらの様子を伺うような視線を向ける、が。

『アンタもそれでいいでしょ?。むしろカイルが一人で暮らせるわけないじゃない。』

「あ、あぁ。まぁそうだな。」

うん、うん。と自分に言い聞かせるように頷くカイル。

その私たちの様子と返事を見聞きした叔父、叔母、従姉弟は各々嬉しそうな顔をする。


「よし、一先ず二人の暮らす場所は良しとして…」

次の話は、王都で何をするか?という事に移る。

『私は…明確に、と言われると返答には困りますね。』

自分の力や感覚の謎を知る事。

イヴを含めた影の正体と謎を調べ知る事。

軽く考えられる程度の理由であればこの二つではあるが、後者に関してはおいそれと人に話せる内容でもない。

『大雑把に言えば、学びたい、といった所でしょうか。』

その点で言えば、希望としては叔父のアインがその仕事の管轄としてる学術研究所に携わる事ではあるが、こちらはむしろ叔父も望んでいると考える。

「うむ、そうだね。そう言った意味ではフィルより気になるのはカイル君の方だね。」

突如として話を振られる形になったカイルは改めて考える素振りだ。

「えーと…言われてみれば特にやりたい事って言われると無いんですよ。俺。」

と言ってすぐに思い出したように付け足す。

「あぁ、でもシロとの約束はありますね。」

それに関しては叔父も頷き、

「いずれ東方領に出向く事も考えないといけないね。」

見知らぬ土地の話が出た事にオーレンの目が輝く。その様子を見て彼の頭を撫でながら続ける。

「そうなると…ふむ。」

伯父からの提案は、スタットロード家の御抱え冒険者となる事、だった。


王都において、ある程度の地位や身分の者、もしくは家系には御抱えの冒険者の存在は少なくない。

雇い主の立場によって、未開の土地や地方の探索は元より、その実力によっては護衛を任されたりと、その職としての役割は多岐に渡ると言ってもいい。

出自や巡りあわせは様々で、例えば厳格な家系であれば王都武術大会などの正規の催しで成果を挙げた者であったり、野心的な改革派の家系であれば名の通った元傭兵であったり、奔放な家系であれば書物に残るような発見を成した元冒険者だったりと、多様ではあるがその選別は家系の経歴にもある程度関わってくるようだ。


『イヴちゃんは私と同様という事でよいのでしょうか?』

「あの女の子ね?。私としては勿論大歓迎よ。」

叔母は「そうそう!」と手を合わせ、目を輝かせて言う。

気持ち、私の時より嬉しそうなのはあまり気にしまいが…こちらとしては少し心配でもある。

「私としてもそうしてくれる方が助かるね。オーレン、あの子とも仲良くできるね?」

「はい!、お父様!」とオーレンは即答。

改めてオーレンは私とカイルに向き直り、「兄と姉と妹ができた!」と盛り上がっている。

その笑顔は、私を含める四人の顔にも伝染し、馬車内はしばしの間、笑い声に包まれた。


程なくして馬車の揺れが収まり、小さな窓からは夜の気配が漂い、外に出てみれば従者の面々が恐らく此度の最後となる野営の準備に勤しんでいた。

南の空を仰ぎ見ると丘陵を下り終えたからか王都の様子は見えないものの広がる地平線の先にかすかにではあるが、明るい光源が伺えた。

元居た馬車を覗くと暇を持て余していた為か少々膨れっ面のイヴが「おそいよー」と拗ねていたのだが、王都についてからの話をすると笑顔に変わる。


「これからも一緒だね!おねえちゃん、おにいちゃん!」と私達に抱きついてくる。

その愛らしい少女の頭を撫でながら隣に立つカイルの胸に、拳をトンと当てる。

『一緒だってさ?カイル。』

少し照れた様子でカイルは「おう。」と短く答えた。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


初めての旅はまもなく終わりを告げ、新たな日々が始まります。

次回か次々回かで新章にするかもしれません。


次回もお楽しみに!

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