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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第一章 王都へ
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22話 交わる目線

22話目投稿します。


イヴを連れ帰った翌日、再び王都を目指す一行に訪れる安らぎの一時を。


閑話とは別に本日中の投稿目指しましたが、何とか上がりました。よかった。

窓から差し込む陽の光を目蓋に感じる。

少しずつ覚醒していく意識の中で昨日の出来事を思い返す。

(確か…噴水広場で女の子に会って…)

毛布を掴んで体を丸める。が…おなかの辺りに何か…

(ええっと…それから、旅籠に女の子を連れて来て…)

温かい何かが居る…

(伯父さんとシロと話をして…)

私のおなかの辺りでもぞもぞと動く何かは、明らかに私の動きに合わせるようにもぞもぞと…

『そうだ!』

ガバッと毛布を跳ね除け起き上がる。

「えへへ、おはよ!おねえちゃん!」

朝っぱらから楽しそうに微笑む少女、さして大きくもない私の肌着でも、彼女に背格好にしてみれば薄手のワンピースのようにも見えるわけで…何というか…

(むぅ…可愛いな…)

『おはよ、イヴちゃん。』

見た目から推測する年齢は4・5歳といったところだろうか?

自分がその頃どんなだったかは正直なところ覚えてないが、ここまで可愛かったとは思えない。

『さ、着替えて皆のところに行こう。』

と私たちは宿を出る準備を…

「ぉーい、フィルー…いい加減起き、ろ…よ?」

無造作に開けられた扉の向こうで固まってる馬鹿の顔目掛けてブーツを投げつけた。


昨日、町の北側の厩舎に預けた一行の馬車は南側に移送されたようで、乗り込んだ馬車が町の城壁を通り過ぎると、東の空から降り注ぐ陽光が心地よく街道を照らし、澄んだ空気も相まって緩やかに下る丘陵の先まで鮮明で、森だろうか?生い茂る木々の向こうに巨大な都市が見える。

『あれが王都エルディア…』

キュリオシティ同様に周囲は城壁に囲まれ、城壁の外には田畑も見えるが、それよりも驚いたのは…

(町の真ん中辺り、何か浮いてる?…)

「あれがエルディアの中心、王城さ。」

馬車幌から顔を覗かせたエル姉が何故か誇らしげに言う。

いやまぁ…王都で暮らした事がある人なら言いたい事は解らなくもない。

初めて見るそれはとにかく「凄い」の一言しか出てこない。


「つっても、まだ二日はかかると思うぜ?」

というのも、王都の前に広がる木々は単純な森ではなく、湿地帯で馬車の速度も落とさざるを得ない。

泥濘にはまってしまえば時間もかかるし、道を失えば馬車は動けないし最悪転倒もあり得るそうだ。

「まぁのんびり行くだろうさ。」

そう言い残し、エル姉は馬車幌の中に戻っていった。

程なくして聞こえて来た寝息は中々にして豪快で、ついつい笑ってしまう。

(すぐ寝れるの羨ましいかも…)

聖職者と言う割に何と言うか、奔放というか、大丈夫か?教会。

陽光に充てられ、私の横で眠るイヴを抱え、エル姉の隣に寝かしつける。


『ん~~』と固まった体を伸ばし体を解す。

陽が頭上からやや傾きかけたところで休憩がてらのお昼となり一行の行軍は一旦止まり、従者の面々はそれなりに忙しそうに準備を進めている。


ある程度の準備を手伝った後、手持無沙汰になった私は辺りを見渡す。

(そういえば…)

少し離れたところに居るカイルとシロの姿、そしてその周りに領主夫妻に息子のオーレン、更にお付きの護衛兵の姿も見受けられる。

(従者さんたち以外の人も少ないなと思ってたけど…)

遠目で見る限りだと、カイルとシロを囲むように人が集まっているようだ。


まだ日は浅いものの、ひょんな成行で契約を交わしたカイルとシロは日々の鍛錬を日課にしているようで、今日は少しの実践的な形で行っていたところ、あれやこれやで興味を持った人が集まってしまったみたいだ。


シロから発せられた小さな落雷を避けるカイル。

人が集まるのも解る。誰が見ても解るくらいにその動きはとんでもない。

(普通、雷なんて避けれるものじゃないんだけど…)

どう考えても人の動きじゃないんだけど、何かタネでもあるのだろうか?…

「よし、そこまでじゃ!」

構えを解いたカイルは大きく息を吐いて呼吸を整えている。

周囲から喝采の拍手が沸き、観客が居た事に今更気付いたのか、本人は照れ臭そうに頬を掻く。


修行の終わりとなった場は、観客は散々(ちりぢり)になって場を離れ、残ったカイルは近くの小川へ向かうようだった。

(何だかんだでカイルとは昨日から話してないな…)

特に用事があるわけではないのだが…


「ふぅ。」

汗まみれの体を小川の水で流し、川辺に戻り、手頃な岩に腰を掛ける。

静かに目を閉じ息を整え瞑想。

時間が許す限り、一人でもできる修行の一環としての瞑想。

シロがカイルに言いつけている事ではあるが、真面目に取り組んでいるところを見る限り、本人としても日々の日課となっているのだろう。

私はその邪魔にならぬよう、ゆっくりと近づき、背後に浴布を置く。

少しだけその背中…思っていたより大きくなったその背中を見つめ、立ち去ろうとするが…

「フィルか?」

瞑想を続けたままカイルが私の名前を呼んだ。

『ん…』

呼び止められた私は小さく返し、その場に留まった。

「すぅ…」と長い深呼吸の後、瞑想を切り上げたカイルは背後に置かれた浴布を手に取り、体に残る水気を拭きとる。

「ありがとな。」

と浴布を指さして言うカイル。その額にはまだ私のブーツの靴底の痕が残っている。

(そういえば、朝、私…見られ…)

余計な事を思い出してしまった私は、自分の顔が赤くなっていくのを自覚し、ついつい目を逸らしてしまった。

「?…あ、いや…そのゴメン…なさい?」

私が顔を赤らめている理由を察したのか、謝るのだが、

(アンタまで顔赤くしないでよ…もう!…)


妙な空気が私たちを包み、しばらく動けずに居たのだが、カイルが「ゴホン」と分かりやすい咳払いをして口を開いた。

「今、瞑想してて感じたんだ。お前の気配っつーか存在っつーか。」

両手を広げ、目を閉じ、瞑想のような構えを取りながらカイルは続ける。

「…お前の事は昔から知ってっけどさ、何となくだぜ?、お前が昔から感じてる感覚?ってのがちょっとだけ分かった気がするんだ。」

それが嬉しいのだ、とカイルは言う。

未だに熱が冷めぬ私の顔を眺めつつ、カイルが私の目の前に立ち「あー…」と口を開き、ゆっくりと私の頬に手を添える。

「昨日…あの子、イヴって言ったっけ?から聞いた…よな?」

あ…これ、ダメなやつだ…と感じた時にはもうカイルの言葉を止める方法なんてなかった。

今、カイルの目を見てしまったら…

(顔、見れない…)


私は嬉しかったんだ。

昔から私に在った感覚、カイルの感じているソレとは根本的には異なるものだけれど、カイルの口から出た言葉に、何故か私は安堵したんだ。

昔から解っていた事だけど、本人の口からでないにせよ、自分に向けられた好意が。

「だから…お前をずっと護らせてくれよ。」

その言葉に反応して動いた目線は、交わってしまった。

(…ありがとうカイル。そして…ごめん…)

何と答えればいいのか分からない。伝える気持ちははっきりしてるのに…


言葉が出ない私は、ゆっくりとカイルの頬を両手で包み、少しだけ背伸びをした。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


我ながらこそばゆいですね。


次回もお楽しみに!

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