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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第七章 鳴動戦火
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228話 格下の企て

228話目投稿します。


挑む格上を篭絡する方法、それが策略家の力

立会い人として私とシロの両名から選ばれたのはガラティア。

最近の私の事はそこまで詳しくはないとしても、以前共に旅をした仲で互いの事もある程度は分かっているし、尚且つ身動きが取れなくなったとしても彼女なら私を運ぶのにもさして苦労も無いだろうと言う事で一致した。


無論手合せ自体は、父や母を始め、マリー、グリオスと主だった者たちにも伝えられ、少しばかり大事になりつつも準備が進められた。


いつもなら私の自室をさも自分の部屋の様に振る舞うシロも、当日の作戦を考える点を考慮し、それまでは私の両親が寝泊まりしている軒で休んでくれるようだ。


とはいえ…

『父と母に相談出来なくなったな…』

事、戦いという点に於いて、この地に居る誰よりもアテになりそうな2人が両親ともなれば、作戦も自分で組み上げる必要がある。

『作戦…策…策か…』

早めにベッドに潜り込んだものの、悩ましい限りだが…

『あ、そうだ。』

ガバっと体を起こし、急ぎ軽く身支度を整え自室を後に、ここからそう遠くない建物を目指して夜の町を駆ける。




『遅くにゴメン。』

「いいえ、フィル様。私は普段から床に付くのは遅いので大丈夫ですよ。」

差し出された温かいお茶を受け取り、一口含む。

『ありがとう、マリーさん。』

頷き微笑むマリー。

まだ眠るには早いと言う彼女だが、部屋の様子と彼女の身姿からすればいつでも眠れる状態というのは分かる。

「シロ様との手合せの事、とお見受けしますが?」

『流石に分かるよね、へへ…』


私もシロの全てを知るわけではないが、マリーは火山でシロの戦いを、そして手合せの場となる戦場で私の戦いを目にした数少ない貴重な観察者だ。

「率直なところを言ってしまえば、シロ様を倒すのは難しいでしょう。」

戦いの手法として言えば、私とマリーは互いに後衛に立つ者だ。

そして恐らく、シロは前に出て戦う手段も、後衛で遠距離からの手法も持っている。


個々の戦いだけでなく、軍事行動に於いてもそう言った立ち位置を選ばない力は貴重だ。

有るだけで隊の全体を柔軟にする事が出来る、軍略に於いて根本的な組立てが変わる程の存在だ。


『勝つ事が目的じゃあないけど…やっぱり難しいよねぇ〜…できればあのイヌっころに一泡吹かせたいんだけどなぁ。』

「フィル様。私も貴女様の勇姿は是非とも見てみたい。それに此度はフィル様の力を見極めるための手合せ、であれば可能性は皆無では無い。」

ニヤリと笑うマリーの表情は”策略家”と言った名に違わぬ笑顔だった。




シロの主だった能力。

私の知るモノとマリーの知るモノはあまり差がなかった。

「大きさを選ばない雷撃。」

『それを利用した素早い動き。』

加えて、牙や爪による直接的な攻撃と、更にはそこに雷の力を付与する事も朝飯前だろう。

「言うまでもなく、捕まれば終わり、というのは間違いなさそうですね。」

『前持ってた短剣でもあれば少しはマシかもだけど。』

接敵しての戦いは挑むだけ無謀。

シロに限らず、例えば一般的な狩猟を行う時、猪や狼、熊といった鋭い牙や爪を持つ相手ともなれば端から剣で遅い掛かる者など居はしまい。

投石、投擲、弓矢など遠距離からの攻撃で仕留められればよし、力を削いで、槍などの間合いの広い武器による止めを加える。というのが一般的な定石。

しかし今回はそんな狩猟とは違うし、相対するのはそういった獣でもなく、まして私が接敵された時に取れる行動など逃げ、回避、防御といった消極的なモノしかない。


「シロ様は簡易な結界のようなものも使える、と伺ったのですがそれは本当ですか?」

『あー…うん、あれで攻撃を防ぐ、みたいな場面は無かったけど、実際に護られた事はあるよ。それに、強さは随分違うと思うけど、今なら私も似た事はできる。』

言いながら、刃を3本放ち、マリーの周囲へと飛ばす。

フワリと言った感じでマリーの周りに浮ぶ刃から仄かに光を放ち球体を形作る。

『湖の一件からちょっと慣れた。』

へへっと笑う私。

対するマリーは驚きの表情で、内側から結界の壁に触れようとするが、それはできない。

一応は結界内の動きに合わせて局部的に形が変わるように操作する事が出来ている。

「いや、これは驚きですね…成程、魔法陣を使わずとも、この刃が触媒となって…ふむふむ…いやはや、流石はフィル様、素晴らしいですよこれは。」

マリーが操る魔法は聞いた数だけでもかなり多い。

普通に使役する種類としては上級者、一般的に凄腕と呼ばれる者より遥かに多い打ち手の数を可能としているのが彼女が得意とする魔法陣にある。

そのマリーに褒められれば少なくとも一線級の力であるのだと太鼓判を押される様なモノだ。

言い方が悪くなるが一般的な秤として両親の褒め言葉よりも余程信憑性は高い。


「一つお借りしても良いですか?」

手元に戻した刃を指差すマリー。

その手に制御を外した刃を一つ、渡す。

「魔力を込める…魔法陣を起動する感じと同じでしょうか…」

少し表情を強め、集中している様子。

ゆっくりと刃が動きを見せるが…成程、やはり母が言うように普通に操るのも難しいようだ。

『お母さんが言ってた。私以上に扱える人は居ないんじゃないかな?って。』

「確かに…私の手には余ります。」

こちらへと戻し、これをあれほど操れるのは間違いなく私の強さなのだ、と。

『へへ、ありがと。』




「では、改めて、作戦を考えましょう!。これならきっと…」

『うん、お願い、マリーさん!』

気付けばもう日付は代わり、わずかに感じる周囲の気配も静まり返っていた。


『泡を吹かせる…なんて考えじゃきっとダメだ。勝つための方法を考えるんだ。』


感想、要望、質問なんでも感謝します!


幼い頃に親を失った姉妹の長きに渡る挑戦、その積み重ねは立派な柱となった。


次回もお楽しみに!

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