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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第一章 王都へ
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19話 高鳴る胸

19話目投稿します。


初めての故郷以外の町、二人は胸の高鳴りを抑えられません。

冒険都市キュリオシティ

千年王国の王都エルディアからやや北に位置するその町は名前の通り世界中の冒険者が必ず一度は訪れる都市だ。

私たちが到着した時、陽はすでに落ちており、整備された街並みに宿る街灯の光で落ち着いた雰囲気を醸し出している。

遅い時間ではないとは言え、町は活気に満ちており、町に入ってすぐの大通りであるこの区画には数多くの酒場が見受けられ、至る所から賑やかな声が聞こえる。


私を含む領主一行は正門に程近い厩舎に馬車を預け今日の旅籠へと向かっていた。

「ほぇ~…なんてーかすっごいな…」

隣を歩くカイルもこの時間で賑わっている町の風景は真新しいようで口が開きっぱなしだ。

『恥ずかしいから口閉じなさいよ…』

斯く言う私も油断していると開きっぱなしになりそうな口元に何とか注意しながら街並みを眺めているわけだが…

「ぷっくっくっく…御上りだ、御上りがいるぞ。」

後ろを歩くエル姉は私たちを指さして笑っているが、その理由に関しての反論はできそうもない。

「おまえら、今からそんなじゃ王都についたら動けなくなるんじゃねぇのか?」

添えられた言葉に言い返すどころか納得してしまうから困りものだが…

(確かにこれは拙い…)

と恐らく赤くなっているであろう顔を引き締め、真面目に考える。

領主の息子のオーレンも案外似たようなものだろう?と思ったのだが北方に向かう際に一度立ち寄っていた為か私たちと違って落ち着いている。が、まぁこの町特有の雰囲気にワクワクしているのは間違いないのだろうが…

予想外だったのは足元をトテトテとついてくるシロの様子で、私やカイル程ではないにしろ、エル姉が言ったように御上りさん特有の動きをしている。

「わしとてそれほど人族と関わって生きて来たわけではないのでな…」

と少々照れ臭そうに言い訳をする。


『ふぅ…』

割り当てられた部屋は、領主一行で一晩貸し切りとなっている旅籠の一室で何とも贅沢に一人一室。

お付きの従者や御者にも一室ずつ割り当てるところにまた領主の抜け目の無さを感じる。

夕餉の席でも各々に対する労いの言葉とこの振る舞いは同行者皆喜びの声を上げていた。

窓から見える街並みは夜中でもオレンジ色の灯に照らされ独特の温もりを醸し出している。

初めての旅、初めて訪れた町、その高揚した感覚も相まって眠れそうにない。

(…少し散歩でもしよう。)

外套を羽織り念のためツールベルトも腰に巻き部屋から出ると、同じように隣の部屋の扉が開く。

私と同様に落ち着かない様子の幼馴染はこちらに気付いて声をかけてくる。

「よっ、お前も?」

『ん。』

宿のロビーで待機していた護衛の従者に声をかけると簡単な町の地図を渡してくれた。

あまり遅くならないように、と念を押されたが、気をつけてなと送り出してくれた。


冒険者が集う町という名目上もあるのか、恐らくこの町の灯が消える事はない。

あらゆる面で冒険者は自由業のようなもので、当然、夜の時間を主な活動に充てる者も居るためでもあるのだろう。

同様に酒場は勿論の事、一部の鍛冶屋や道具屋なども営業している店舗がちらほら見える。

「改めて見てもすっげぇ町だな。ノザンリィとは大違いだ。」

頭の後ろで手を組み隣を歩くカイルは、時に鍛冶屋の店先に置かれた武具に興味を惹かれ、時に賑やかな酒場の覗き込み、時に肉を焼く屋台に食欲をそそられと、落ち着きなく楽しんでいる様子。

私も私で露天商に、古本屋に、道行く子犬にと高揚感の冷める気配がまったくないから困る。

(…何だろな、このドキドキする感じ。)

「ほれ。」

屋台で買った串焼きを差し出す。

『アンタねぇ…晩御飯あんなに食べたのに…』

「いらねぇなら俺が食う。」

すでに一本目を食べ終わってるのに…どれだけ食べるのやら?

『…少しだけ。』

髪の毛が当たらないように片手で押さえつつ、カイルが差し出した串焼きにそのまま口を近づける。

「っ!?」

『ん?…あ、美味しいねこれ。』

肉を一欠だけ齧り、口を離す。

『ありがと。』

何故か固まっているカイルに『どしたん?』と声をかけるとハッと我に返ったように残りの串焼きを頬張った。

食べ終わり、残った串を捨てにいくついでに飲み物を貰ってくるというカイルに、町の中心の噴水で落ち合うように言い私は歩き出した。


町の中心部に設けられた大きな円形の噴水はこの町の集合場所として使われる事も多いのだろう。

夜に活動を主としている冒険者の姿がちらほら見受けられる。

ふと、噴水の淵に白いローブを目深に座っている人の姿を見つける。

遠目ではあるが、恐らく背丈は私より小さく、体格から見て少女と思しきその身は…

(…震えている?)

私の視線を感じたのか、フードの奥から覗いた目には涙。

何かに怯えるようなその目に惹かれるように、私はゆっくりと白ローブの少女に近づいた。


一瞬ドクリと大きな胸の鼓動と悪寒を感じた。


瞬間、噴水の周りで灯っていた灯が消え、それなりに居たはずの人の姿が消え、そして…


白いローブの背後に、「 」が居た。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


再び現れた「 」フィルの取る行動は?


次回もお楽しみに!

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