表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第一章 王都へ
18/412

17話 月夜の童子

17話目投稿します。


妙な形で契約が結ばれた一人と一匹。仲は良好?

雷狼【シロ】

思いもよらぬところで交わされた名付けの契約に、名付けられた本人は憤慨し、名付けた本人は理解が及ばず。

端から見ていた私と領主は、憤慨している【従者】に同情の意以外の気持ちを向けるしかなかった。

「え?なに??、どゆこと?」

まったくもって状況が掴めてない当事者、カイルにシロが飛び掛かり思いっきり(あくまで契約上可能なレベルで)頭を殴った。

「こ、小僧…よくもわしに名前を付けてくれた…」

プルプルと体を震わせているシロに対して何と言っていいものか…

『あー…えーと…良かったね…?』

私の言葉に「キシャー!」と返す。まぁ当然の反応である。

未だ状況を理解してないカイルに、領主はシロを何とか宥めながら説明した。


この世界において、知識、知能、魔力などを要する全ての存在には絶対的な理があり、この世界に在る以上はそれがどんな存在であれど免れる事はできない。

更に加えるならば、定められた手順を踏めば互いの能力や大きさなどは無視され明確な「主従」の関係となる。

カイルの取った言動は単純な「名付けの契約」と識別される契約で伝承が記されるような書物でもとりわけ有名な物だ。


 主、従たる者を示し、御名供に在りきを語りて


簡潔に記されるものとしてはこの辺りの文節が有名だったはずだ。

先ほどカイルが取った言動は、

雷狼の頭を「撫で」、「よろしくな」と続き「シロ」と発した。

「例えば、そうだな…」

領主がしばし思い出し、

「王都でそういった類の契約を例に挙げるとすれば、「騎士の誓い」がそれに近いだろうか?」

遥かに厳格に執り行われるその儀式、

栄えある武勲を挙げた者や、それに類するような功績を挙げた者は武勲と共に二つ名が与えられ、その名は大々的に知れ渡る。

与えられた二つ名は、その者によっては自らの姓として語る者も居ればあくまで二つ名として世間を歩く場合もある。

儀式の流れとしては、主たる王もしくは近しい者が名を与えられる者の頭にその手や杖などで触れ、その者の未来への忠誠や働きを望む言葉と共に二つ名が発せられる。


「不本意極まる!まったくもって腹立たしい…まさかこのような半人前の毛も生えてないような童子にわしが名付けされようとは…」

私たちより遥かに長い年月を生きて来たであろう雷狼…今となってはシロも、流石に理を捻じ曲げる事もできないようで、ただただ憤慨している。

ように見えるが…

(何となく嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか…?)

カイルはカイルで自分の起こした事と状況を腹に落としたようで、軽く汗を流しながら頬をポリポリと掻いている。

「えーと、その…ごめんなさいでした?」

真面目さにかけるその言葉に、シロは一層憤慨し、カイルの頭に嚙みついた。

(何だかんだで仲良さそう。)

「まぁ、こうなってしまったのは仕方ないとしても…ふむ、いよいよシロ様の頼み事というのものんびりというわけにも行かなくなってしまったね。」

『あー…やっぱりですか…』

騒がしい一人と一匹を眺めながら、私と領主は今日何度目か数えるのも面倒になってきた溜息をつく事となった。


極端な話をしてしまえば、私にせよ領主にせよカイルに関わらないという形を取ればシロの頼み事も無視することは可能なのだが、生憎と私はこの少しばかり頭の悪い幼馴染を無視することなど到底無理な話だ。

私と程度は違うだろうが領主としても、本来自分が統治する領民を無視することはできないだろう。

「王都に戻ってからの仕事がまた一つ増えてしまったね。」

と些末な事を話すかのように領主は呟いたが、こちらも何故か嬉しそうに見えた。

『シロの扱いはどうなりますか?』

「そうだねぇ…大事になるようならある程度の話の必要はあるだろうが、シロ様の見た目からすればカイル君のペットという事で問題はないと思うよ。」

じゃれ合いながら領主の言葉にシロが返す。

「こうなってしまってはそのようにするのが一番無難であろうな。」

とりあえず落ち着いたのか、改めてシロがカイルに言い放つ。

「小僧、予期せぬ事とはいえ、貴様はわしの主となったのじゃ。いずれそれ相応の主となってもらうから覚悟しておけよ?」

少しばかりの自覚が芽生えているのか、カイルは少し焦るように「お、おう!」と答え、ひとまずはその姿に満足したのか、シロは領主の提案に同意した。


今日起きた事の全てが解決したわけではないが、同様にこの場で全ての結論を出す事も難しいと考え、一旦の解散とし、私たちは寝床へ向かう。

気付けば夜は深く、見上げれば満点の星空。

浮かぶ月は数日後には満月になりそうだ。

『今日は色々ありすぎて疲れた。』

同じ寝床となる馬車に向かってカイルと肩を並べて歩き、シロもそれに続く。

(重大さ、ほんとに解ってるといいんだけど…このバカ…)

隣を歩くカイルの横顔をこっそり伺う。

その嬉しそうな顔はまさに「冒険を楽しむ少年」という顔だ。


無邪気な笑顔についつい私の口角も上がってしまった。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


1日1話の日記感覚で投稿できてますが、いざというときのために書き溜めたい…

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ