16話 契り
16話目投稿です。
いよいよ寒くなってきて、油断してると鼻水出そうです。
温かくして継続投稿できるように気を付けないと…
『ドラゴンは流石に無理じゃないかな…』
紹介を兼ねた領主との会合を一旦終わらせ、食後のお茶を楽しむ時間…のはずだが、厄介な頼まれ事のおかげで心持は落ち着かない。
「そう言うでない。何も今日明日でと言ってるわけではない故、例えば東に出向くことでもあればその次いでとかで構わんよ。」
次いでで出来る事でもないのだけれど、と思いつつも私は「東」という土地に興味を持った。
『東の土地ってどんなところ?』
「ふむ。」と初対面の印象から随分と年寄り感が増している小動物は語る。
人族の住む辺りは主に鉱石資源が豊富という事だが、これはそもそもその資源を目的として作られた領地であることはこの国に住む者であれば初等学問の段階で学ぶ内容でもある。
東の領地である【東方都市オスタング】は火山地帯である山々からほど近い位置にあり、最近活発になってきた火山活動に少々難儀していると先ほどの領主との会話の中からも伺えた。
オスタングから少し南側にはドワーフ族を主とした【鉱山都市オストナ】があり、オスタングとの交流も多いという。
一般的なドワーフ族は手先が器用な者が多く、鉱石資源が豊富な土地柄、鍛冶公房や彫金などが交易の主流なのだそうで、人族の中でもその道を進む者たちにとっては聖地や修行場所としての意味合いが強いらしい。
『そういえばノザンリィの鍛冶屋のおじさんもそこで修行してたって言ってたな。』
オストナから更に南に下ると肥沃な森林地帯があり、この森深くにはエルフ族の集落などもあると…
「エルフは基本的に他種他民族と交流は持たないのだが、最近はそうでもなくてな。まぁ積極的かと言われればそうではないのだろうが、少なくとも集落への多種族立ち入りを禁ずる、といった事はないようだな。」
この雷狼の時間間隔からして「最近」というのがいつ頃の話なのかは分からないが、確かにエルフ族との交流も極端に少ないといった話は私も歴史上の話でしか聞いた事はない。
「王国でもエルフ族との交流はあるんだよ。」
酒瓶とグラスを持った領主が再び私たちの元へ戻ってきた。
一行に労いと指示を終え夫人と息子の様子も確認して、後は床に就くだけだという事で晩酌の肴のついでだと言う。
『そうなのですか?』
「うむ。」と頷き、付け加える。
ノザンリィの魔法研究所には所属してはいないが、王都の魔法研究所にはエルフ族も居るらしい。
曰く魔法の「研究所」というモノを形作る上でエルフ族の存在は必須と言える程の事で、さらに言えば現職の王都魔法研究所の総責任者もエルフ族の女性だそうだ。
『では、ノザンリィにエルフ族の研究者が居ないのは何でです?』
「あぁ…」と領主は笑いながら言う。
「理由は二つ。1つ目は、我ら人族に比べ魔法の根源ともいえる精霊の存在に近しいエルフ族からすれば氷の魔法も他の魔法と難しさの差は無いという事。」
酒瓶からグラスにワインを注いで、もう一つの理由を苦笑交じりに言う。
「二つ目の理由は、彼らはとても寒がりなのさ。」
ある意味、魔力や精霊云々といった目に見えないものよりも分かりやすい理由だった。
「わしは正直なところを言えば、あやつらとはあまり関わりたくはないのぅ。」
言うに、精霊に対する信仰心や、研究に没頭する程の持前は、精霊に近い自分に取っては堅苦しい限りだと。
「まぁ敬われる分には悪くはないんじゃが…」
そう言えば、と雷狼は領主に問う。
「王都の研究所の責任者のエルフ族の名は何という者なのじゃ?」
「正式な名までは覚えておりませんが…ラフィー…確かラフィーネ…と言ったかと思いますが…ご存じですか?」
「あぁ…あやつか…」
その人物を知っていたようで、大きく溜息をついて首を振った。
「そなたらにしばらく同行すると決めたものの、あやつには遭遇したくないのぅ…」
雷狼が難色を示す理由に心当たりがあるのか、領主は苦笑している。
『どんな人?』
と聞き返すと「「変人」」と領主と雷狼は揃って同じ言葉を発した。
一頻り会話を楽しんだ後、夜も更けて来たのでそろそろ床に就くとなった所に、自分たちの寝床も準備ができたとカイルが伝えに来た。
「おっ?、おまえが領主サマが言ってた雷狼ってやつか。」
やはり物珍しいのか、興味津々に手を伸ばし雷狼の頭を撫でる。
撫でられるのは嫌いじゃない様子の雷狼に一言。
「しばらく一緒に旅するんだよな?、よろしくな!シロ!!。」
唐突に発せられたその言葉を聞いてしまった私たちは「あっ…」と声を上げた。
わずかの間を置いて、雷狼【シロ】とカイルの体が薄ぼんやりと光り、消えた。
直後にシロが叫び声のような大声を発したのは言うまでもない。
感想、要望、質問なんでも感謝します!
予期せぬ流れになりましたがこの展開は書いてて中々楽しいな、と思いました。
次回もお楽しみに!