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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第一章 王都へ
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14話 人知の先

14話目 投稿します。


旅に出会いは付き物とかなんとか。

天候の変化に気を配り、適度に開けた山の中腹で野営の準備を始めた一行。

とりあえず自分にできそうな準備を手伝うが私に比べ、旅慣れている領主の配下の者たちのお蔭で早くも手持無沙汰になってしまった。

(思ってたより悪くはならなさそうね。)

改めて空模様を伺うが、不安定さを感じるものの思ってたより悪くなるような感覚は無い。


一行の中でも屈強そうな連中(カイルも含まれる)が夕食の調達がてら山に入っていったのが凡そ一刻ほど経っている。

夫人の体調が少々芳しくないという事でエル姉もそちらの様子を見ると豪華な馬車に向かいそちらも静か。

ひとまず火の番をしようと思ったものの、薪の量が心もとないので、従者に声をかけて私は森に足を踏み入れた。

「―――――!!」

どこかで悲鳴のような声が聞こえた気がした。

(何?…)

「――――!」

再び叫び声、いやこれは助けを求める声だ。

声の発生源は野営地ではない。

森の奥、狩りに向かった連中でもない。彼らが向かったのは私と反対方向だ。

(何者か何かに襲われてる?…)

走りながら意識を集中させ周囲を探る。

(多分…大型の獣…熊かな?…ちょっと面倒かも。)

あまり当たってほしくない予想をしながら、声の発生源へ急ぎ駆ける。

程なく、嫌な予想通りの光景を視界に収めるが…

(襲われてるのは…狼の子供?…にしても…)

そう、最初私の耳に届いたのは、人のような叫び声だった。

とはいえ、駆け付けたからには見なかった振りなんて見せられないし、これもまた自然の摂理なんて割り切るのも私には出来ない。

体に走る緊張からか、肌が少しピリピリする。

腰に下げた石の短剣の柄を後ろ手に握り、熊の前に躍り出た。


子狼は少し驚いたように見えるが、熊との間に立ちはだかった私の様子を伺い、熊へと注意を戻した。

熊も熊で突然間に割って入った私の姿を見るや、狩りの邪魔をされたことに怒っているのか、威嚇の対象を私に変えたようだ。

(ひとまず危機は回避…この子にとってのだけど…)

今度は自分の危機を回避する方法を考えなくてはならない。

流石にこの状況下で3ヶ月前の、あの夜の狼の群れと対峙したような結果は難しいだろう。

(やるしかない…か。)

後ろ手に握った石の短剣を引き抜く。

辺りの状況を確認しつつ、間合いを図る。

こちらの武器は短く、射程距離は短剣の長さを合わせても熊のそれに及ばない。

間合いを維持しながら、立ち位置を調整。

子狼から完全に標的を私に変えた様子の熊は、今や子狼を無視して、私から視線を外さない。

(上手くいくといいのだけれ、ど!)


位置、風向き、目標の意識、今の自分にできること。

全ての状況を瞬時に再確認し、私は足元の白い花に向かって短剣を振り、服の袖で口元を抑える。

花についた赤と青の実が弾け、一瞬で辺りにその香り…臭気が漂った。

人より敏感な嗅覚を持つ野生の獣にとっては、効果は高く、私の動きに反応し飛び掛かろうとした熊の動きが止まり、「ぐぉおおおん」という叫び声を上げ、大きく上体を反らせた。

(堪らないよね…この臭い。)

私の嗅覚でも激しく感じられるくらいの刺激臭に参ったのか、熊は一目散に森の奥へ逃げてくれた。

『…ハァ――――。』と大きく息を吐いて私は腰を落とす。

3ヶ月前の時もそうだったが、普段、父から護身の手ほどきは受けていたとはいえ、やはり実践となると未だ体は強張る。

大丈夫とは思うが、念のため、ひとまず場所を移動しようと即座に行動に移す。

熊同様にひどい刺激臭で動けずに居る子狼(?)の首の付け根を摘まんで、そのまま胸元に抱え熊が逃げた反対方向へと走った。


『ふぅ…』

周囲の安全を確認したところで私は足を止め、胸元に抱いた子狼を見る。

(…狼?じゃないな、角?)

そう、子供の狼に見えた小動物、確かに形としては狼や犬に近いのだが、その額にはまだ小さいけれど確かに角のようなモノが生えている。

(何だろう…)

そっと角に指を伸ばす。

「触らない方がいいよ?」

突然聞こえた声にギクリと驚き、周囲を見回す。

辺りには私たち以外には何も居なかったはず…とすると?

ハッと胸に抱いた小動物を見つめると、小動物の顔は「しまった」という表情をしているのが分かってしまった。

『はぁ?!』

胴体をガシっと掴みなおして、改めて眼前に持ち上げる。

『キミ、今喋った?!』

流石に隠し通せないと思ったようで、小動物は大きくため息をついた。


「とりあえず、君の手は温かく気持ちいいのだけれど、降ろしてくれるかい?」

流暢に人語を話す小動物に思考が追い付かないのを覚えながらも、言われた通り下に降ろした。

「あまり関わるのも良くないんだけど、助けてもらったからにはお礼をしなくてはね。」

と、小動物は毛繕いをしながら言った。


「初めに、キミの名前を教えてくれるかな?」と…

感想、要望、質問なんでも感謝します!


こうして書いていると、改めて設定とか深堀するほどに重要さが身に沁みますね。

異世界モノというかファンタジー書いてると、単純な要素とか表現方法も一句一句悩ましい。


というわけで次回もお楽しみに!

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