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10話 大切な背中

10話目の投稿です。


目覚めたフィルは意識を失った後に自分に起こった事を聞く。

何かが手に触れる感覚で、徐々に意識が覚醒していくのを感じる。

ゆっくりと瞼を開くと視界に入るのは見慣れた天井だ。

私の左手に触れている感触は、少しだけゴツゴツとしているがとても温かい。

不安そうに項垂れているその手の主を安心させるように、ゆっくりと添えられた手を握り返す。

ビクッと体を震わせ、顔をこちらに向けたカイルは、目覚めた私の姿を見て破顔した。

「お、おまっ、ホント、無茶しやがって!」

『わっ、ちょ!』

そのまま腕をぐいっと引っ張られ、抱きしめられる。

『…ありがと』

少しの抵抗をやめ、肩を震わせるカイルの背にそっと腕を回した。


「あら~?、お邪魔かしら?」

部屋の入り口からにやついた顔の母が覗いている。

「あひゃ?!」

っと素早く体を離したカイルはしばらく固まっていたのだった。


改めて飲み物を用意して戻ってきた母とカイルに聞いた話によれば、

あの夜、領主の息子を無事に届けたカイルは私の父を含む数人を引き連れて私を探しに戻ったそうだ。

最初に私が襲われた場所から少し離れたところで倒れていた私を見つけた時の父の慌てぶりは相当なものだったらしい。

何とか息をしている状態だった私は、戻るなり領主の館へ運び込まれ、手厚い看護が行われた。

幸いというか何というか、領主息子は私に比べれば大事には至らなかったそうだ。

とはいえ、あの状態が続けば命も危ぶまれていたのは間違いない。

意識がなかなか戻らなかった私も、医者の見解では大きな外傷もないという事でひとまずは大丈夫だろうと自宅に移動させられ、今日で3日目が経過していたとという事だ。


その間、自らの不甲斐なさから私の父に殴ってくれと嘆願したカイルに、父は躊躇いながらも頼みを聞き入れたようで、確かにカイルの頬は少し腫れている。


『まだ痛むの?』

少し過保護に感じながらも心配だというカイルを伴い、領主の館へ向かう。

「大丈夫さ、こんなん…まぁ、確かに頼んだとはいえめっちゃ痛かったけど。」

とカイルは笑う。

息子を助けてもらったお礼がしたいとのことで、落ち着いたら顔を見せてほしいと託けを受け領主の館へ向かっているところだ。

ぐぐっと大きく伸びをする。

聞いた話では数日間意識不明だった私の体は少しの強張りを感じさせる。

あの夜からは雪も止んだようで、少しながら溶けかけた雪道をゆっくりと歩く。


「ところでさ、あの時お前を襲ったのは何だったんだ?」

思い出したようにカイルが聞いてきた。

『んー…私もよくわからないんだよね。』

と曖昧に返事をしたものの、私自身にもあの夜の襲撃者の正体は言葉の通りよくわからない。

『カイルは駆け付ける時、皆にどう説明したの?』

「んあ?、あぁ、あの時は俺も焦ってたからな。とにかくお前が大変なんだ!って騒いだ。」

『あはは、ある意味解りやすいね。』

「でもまぁ良かったよ。見つけた時には頭からちょっと血ぃ流してたけど他は大したことなかったみたいだし。」

(ん?…)

『そう言えば…』

自分の胸元から腹部を摩る。

(傷が…ない?)

「どした?」

『今、何て言った?』

「どした?って」

『そこじゃない』

「見つけた時の話か?頭から血が出てたくらいだったって?」

(確かに剣みたいなので刺されたはずなんだけど…)

顎に手を当てて考え込む私に、カイルが付け加えて答えた。

「担ぎ込まれた時にも医者のセンセの話だと、全身打撲と頭部の怪我って言ってたぜ?…まぁ、見つけた時は靴も履いてなかったから、足の裏とか細かい傷もあったみたいだけどさ。」

ふむ、と考えながら再び歩みを進める。


獣でも、魔物でも、まして魔族でもない。

あの夜に私が見て襲われ、そして恐らくは刺された。

あの存在は何だったのか?

私よりも豊富な知識を持っている領主であれば何か知っているのかもしれない。

でも…

(もしも軽々しく触れていいものでないのなら…)

出来れば巻き込みたくはないな、と隣を歩くカイルを見る。

『少し急ごう。』


遠目に見えてきた領主の館の前には、幾人かの人が集まっており、その中には父の姿も見える。

『父、どうしたの?』

声をかけた私の姿を捉えた父は、一瞬ホっとした表情を見せた後に真面目な顔に戻る。

「あの夜から念のためという事で町近隣の警備をやってるんだ。」

父の後ろには町に駐屯する兵士の姿が見える。

「ついでに、恒例の新兵訓練も兼ねて、な。」

と親指で示した方には、覚束ない集団の姿があった。

『父も行くの?』

「一応な。もし何かあったとして、新兵だけじゃ心もとないって駐屯所から頼まれちまってさ。」

父の決してひ弱ではない胸板に手を当て、

『気を付けて…ね?』

「大丈夫だ。任せろ!」

優しく私の頭を撫で、その腕で自分の胸板をドンっと叩く。

そう答えた父は、兵士をひき連れて森の奥へ消えていった。

「何もなけりゃいいな。」

と呟くカイルに『大丈夫だよ。行こう。』と返事をして私達は領主の館の呼び鈴を鳴らした。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


待ち受ける領主との話の結果と、以前の問答にフィルが出す結論は?


次回、お楽しみ頂けると嬉しいです!

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