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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第五章 大海に眠る
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99話 漁村の海賊団

99話目投稿します。


眼前に現れた海賊船。

緊張感を背に臨む私たちの中で、リアンだけがなぜかソワソワしている様子。

「にしても…近づいて来ないね。」

前方に見える船は明らかにこちらに船首を向けているのだが動いている気配がない。

船を動かすかどうかを悩むパーシィが呟く。

「待ってるって事か?」

船影を見た直後は体を動かせる事が楽しみだった様子のカイルも肩透かしを食らったような顔だ。

「恐らくそうだね。あの船を迂回するとなるといよいよ西方と方向が逆になってしまうよ。」

海図とにらめっこしながらロニーが口を開く。

「パーシィさん、船を進めてください。」

『リアンさん、何か知ってるのね?』

「ええ…あれは恐らく…いえ、いずれにせよ近づけば判ると思います。」

リアンの言葉を聞いた後、パーシィに目線と頷きで合図する。


海賊船、と騒いだものの、特に砲撃されるわけでもなく静かなものだ。

『念の為聞くんだけど、リアンさんとしてはあの船、どう思う?』

「えー…大変申し上げにくいのですが…一言で、というよりこれはお願いですが…」

言葉に詰まる、というよりは焦りといった感じだろうか?。いずれにせよリアンのこんな姿は珍しい。

「手出しは無用、というより、しないでください。」


遠目に見えていた海賊船…と思しき船はすでにすぐ近く。

向こうの乗組員の顔も見える程の距離だ。

「アンタらいい度胸してんな!」

あちらの船上から一人の女性が威勢よくこちらに叫ぶ。

見たところ船そのものにソレらしい武装はない。

むしろ帆がソレっぽいだけで、他はただの漁船のようにも見える。

『えーと…』

パーシィにひとまず停船の合図を送ったものの、どうすればいいか考えていたところ、リアンが歩み出た。

「相変わらずだな、コリン。」

リアンの姿をまじまじと眺め、訝しめ、ハッとする。

「お、お、おまえ、リアンか?、な、なんで!」

最初の威勢の良さは一瞬で消え、船丸ごと大慌ての様子となった。

『えーと…どういう事?』

溜息を吐くリアン。

私を含めた残りの4人は事を把握できない疑問顔だ。

「まったく…何年経ってると思ってるんだ…」




海賊船…に見えた船と別れ、当初の予定通りの航路を進む魔導船エデル。

未だ私たちにはあの船が何なのか解らないものの、リアンから夕食の時に話すと言われ、その内容が気になり過ぎて落ち着かない。

けれども今この海域での油断は禁物だ。

各々がそれなりに注意を払いつつも船旅は続く。


「あれらは私の幼馴染連中なんですよ。」

私たちの様子を鑑みたリアンの口から、早めの停泊が進言され、集まった夕食の場。

極単純な回答が彼の口から発せられた。


漁村ノルヴェスは確かに高齢者に比べれば若い世代は少ない。リアンの家族同様に王都へ、もしくはヴェスタリスに出稼ぎ、または移住する者が多い事は事実。

けれどもそれは、居ない、という事では無い。

今でもノルヴェスで暮らす若者は当然日々の暮らしの中で漁に出る。

最初は単純に、若い世代が集まっての一団だった者たちの中でもやはり手荒い諍いはあるようで、複数に分かたれた派閥は、抗争にまで発展。

「それを治めたのが、あのコリンという女性なのです。」

『でもリアンさんが王都に移住したのって結構昔なのでは?』

「ええ。今のフィルさん方の歳よりも下の頃でした。」

聞いたところ、コリンと呼ばれた女性はリアンと同い年だという。

「だから…その…余計に恥ずかしいと言いますか…」

要するに今までの経緯に接していた当時はまだまだ子供と言われるような年頃だったのだ。

『あー…成程。』

「若気の至り、極まれり…という事か。そりゃ恥ずかしくもなるねぇ。」

同情するような顔で料理を口に運ぶロニー。私もパーシィもリアンに何と声を掛ければいいか悩ましい。

「え?どういう事?」

やはりカイルだけは良く分かっていないようで、全員から溜息が吐かれる事となった。


『でも、あの海賊船のような船は一体?』

「あれは…そうですね。簡単に言えばハッタリですかね。」

見慣れない船がこの海域を訪れた際、アヴェストの喉を迂回させるために船を出すらしい。

要するに危険な海域から船の安全を保つために行っている事で、実際はただの漁船。

乗組員もソレっぽく一応は腕っぷしの強い連中で、それを纏めているコリンも含め、知らない人からすれば十二分に見せられるようだ。

今回も、私たちの魔導船エデルが現れたからこその出航だったのだ、とリアンは推測する。

「とは言っても、昔と違って、アヴェストの喉もそれなりに有名ですからね…なので現れる事はない、と思ってはいたのですが…」

そして再び口を紡ぐリアン。

今度は「若気の至り」ではなく「いい歳して」といったところだろうか?

「あー…えーと…頑張って?」

パーシィの言葉は、ちょっと違う気もするけれど伝えたい事は解る。

「あ、ありがとうございます…ですかね?」

ははっと力なくリアンは笑った。




皆で大慌てはしたものの、危機?にはならず安堵となった今日。

本日の航海も無事に終わる事となったわけだが、アヴェストの喉はまだ油断ならない距離にある。

一応、航海日誌としてその日の出来事を綴ってはいるものの、果たして今日の出来事は記録に残していいものか悩ましい。

『リアンさんに話したら処分されそう。』

ふふっと小さく笑い、筆を置いた。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


静かな冬の海は大人しいがあっという間にその表情を変える事もある。


次回もお楽しみに!

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