1話 やさしい背中
登録後の初投稿作となります。
設定や成り行き、文面など至らないところが多々ありすぎると思いますが、
生暖かい目で見て頂ければ、と
『ふぅ…』
昨晩から降り始めた雪は想像通り深く積り、自宅裏にあるこの丘も今日は一面の雪景色となっている。
まだ日中だというのに肌寒い空気を感じながら、冷たくなった両の手に息を吹きかける。
『明後日くらいまでは続くかなぁ?』
空模様を伺いながら、そんなことをポツリと呟く。
「おーい!、フィルー!帰ったぞー!!」
父、ジョン=スタットが丘と自宅を挟んだ反対側から大きな声を上げてながら今日の収穫物を持ったままの手を大きく振っている。
(父、相変わらず声でかい…)
クスリと小さく笑いながら、少々冷えてきた手を小さく振り返す。
『さて…私も戻りますか』
服に少し積もってしまった雪をパンパンと払い、丘の裏手から回り込んで自宅に向かう。
(冬は嫌いじゃないけど、この乾燥した空気は何とかならないものかな?)
そんな事を考えつつ、家路を挟む小さな森を見やる。
(んー…あの木はちょっと危ないかも?)
『ただいま。』
程なく自宅についた私に帰宅したばかりの父と家仕事をしていた母が声をかける。
「おかえりなさいフィル、また裏の丘?」
母、アイナ=スタット。我が母ながら美人。いまだに何故このむさ苦しい父と夫婦になったのか疑問である。
「今日は野ウサギが獲れたぞ。フィルが言ってた辺りでバッチリだ!」
ガハハ!と笑いながら私に向かって親指を立てる父。うんやっぱり煩い父だ。
『あはは、じゃあ今夜は母の美味しいシチューでも期待しておこうかな?』
父に相槌を打つと少々ジト目の母から「あなたも手伝うのよ~?」といじわるっぽく言われる。
美味しい晩御飯に期待しつつ、お昼ご飯を済ませた私は父に話しかける。
『父、ちょっといいかな?』
午前中の狩りで使った道具の手入れをしながら、こちらをチラりと見ながら手作業を続ける父。
「どした?何かあったかい?」
『裏の森にある木なんだけど…一本だけ長いのあるでしょう?』
「あぁ、あの杉の木か。」
思い出すように父が少し森の方へ顔を向ける。
『多分大丈夫とは思うのだけれど、切っておいたほうがいいかもしれない』
「ふむ…」
昼食の片づけをしながら、母も聞いていたようで「あら?雷でも来そう?」と声をかけてくる。
『五分五分くらいかな。念のために、ね』
そのやりとりを聞いた父は「よしっ」と道具の手入れがひと段落したのか、自宅の入り口へ向かう。
私も後ろからついていき、一緒に家の外へ出る。
父は薪割り用にしつらえた切り株に刺さったままの斧を握り、自宅越しに裏手の森に視線を向けた。
「あれだな?」と私の方へ確認する。
コクリと頷き、私も森を見る。
あまり大きくない森でも、他より少し大きな木が一本…。
「この時間からだと、夕暮れ辺りにはギリギリってとこだな。」
ニマっと笑いながら父は森に向けて歩き出す。
「後で飲み物でも持ってきておくれ。」
と言いながら、背中越しに手をブンブンと降っている。
『うん。…ありがと』
父の背中を見送り、何も言わずにお願いを聞いてくれる父に小さく感謝を述べる。
聞こえたのか聞こえてないのか、一度だけ肩をストンと大きく上下させ歩く父の背中を見つつ、空模様を確認する。
『思ったより悪いね。アタリかも』
お昼前より雲行きが重くなった空からは相変わらずの雪が津々と降っている。
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