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吃音症がVtuberで何が悪い!!!  作者: 木山碧人
第三章 大日本帝国

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第42話 千葉家


 東京都。千代田区。内閣総理大臣官邸。首相執務室。


 執務机に椅子。奥には縦長の本棚が複数並び、旭日旗が飾られている。

 

「用件はなんだ」


 執務椅子に座り、渋い声を響かせるのは強面の中年男性。


 内閣総理大臣――千葉一鉄。


 目つきは眉をひそめ、机の上で両手を組み、黒スーツに身を包む。


 机には、悪くなってしまった足を補助するための杖が立てかけられている。


「親父……いや、総理。伊勢神宮というVtuberのことで話が――」


 向かい合うのは、坊主頭に青い制服を着た糸目の青年。


 滅葬志士副棟梁――千葉一心。


 左手には見た目と不釣り合いな、茶色のブランドバック持っている。


「お前ごときが手を出すなぁ。アレは、私の獲物だ」


 一心が良かれと思って振った話は、一方的に遮られる。


 お前には興味がない。そう言われているようで腹が立った。


「ですが、あいつは千葉家の汚点なんですよ! 過去を暴露でもされたら……」


 まさか、生きているとは思わなかった。


 死んだはずの人間。血の繋がりのない義理の妹。


 千葉家を没落させる可能性を秘めた、ウイルスのような存在。

 

「なぜ、養子のお前が千葉家を案じる必要がある」


 しかし、返ってきたのは、氷のように冷たく、威圧的な低い声。


 夏なのに、背筋がぞっとして、体中がくまなく冷やされたようだった。


「養子だからこそです! お世話になった千葉家が没落する様は見たくない!」


 親父の顔色が明らかに曇る。


 まずい。熱くなりすぎてしまった。


 背中には嫌な汗が伝い、空気は最悪の状態。


 あと一言でも余計なことを言えば、親父の雷が落ちる。


「お役に立てることはありませんか! あいつを潰すためなら何でもやります!」


 それでも言い切った。そのためにここに来た。


(千葉家の跡取りには、俺がなるんだ……っ!!)


 くすぶる野心にそびえ立つ、障害。


 千葉家当主の血の繋がった一人娘の登場。


 焦らないわけがなかった。戸籍上、死んだ人間。


 とはいえ、千葉家の権力を使えば、簡単に揉み消せる。


 そうなれば、最悪の場合、跡取りはあいつになる可能性があった。


(あんなろくでもない女に、千葉家を乗っ取られてたまるか!)


 あるのは焦り、妬み、恨み。


 正当な血筋という唯一無二で絶対的な差。


 ただ、親父の役に立てば、風向きはきっと変わってくるはず。


「お前とは勘当だ。二度とその面ぁ、見せるな」


 そう思っていた。


「……は?」


 理解を拒む言葉に素っ頓狂な声が漏れる。


「こいつを外へつまみ出せ。抵抗するなら、始末しろ」


 一体、何が起きた。いや、一体、なんと言ったんだ。


 考えの整理がつかないでいると、黒服を着たSPが乱暴に腕を掴んでくる。


「待て。待ってくれ、親父! 俺は千葉家のことを思って!!」


 意味が分からない。どうして、こんな目に遭わなければいけない。


 強引にSPを振り払い、親父がいる執務机に、力強く手を叩きつけ、抗議する。


「欲しいのは、跡目と権力。そうだなぁ?」


 親父は、杖を握り、振りかぶる。


 その体には、黄金色のセンスが纏われていた。


(……まずいっ)


 この状態の親父は、問答無用。


 何を言ったところで、答えは決まってる。


 それならと、とっさに腕を盾にして防御の構えを取った。


「中身のないお前に接する価値などないわ!」


 だが、一歩も二歩も遅い。


 叱咤とともに振るわれるは杖の先。


 それは、的確に顎を打ち抜き、脳を揺らす。


「……っ!!」


 痛みはない。代わりに視界がぐわんと歪んで見えた。


 見抜かれていた。ここに来た理由も、野心も、妬みも何もかも。

  

 膝が崩れるのと同時に、バックから赤い水晶玉。天海宝玉がこぼれ落ちる。


「大馬鹿息子がぁ……」


 心も体も打ち砕かれ、薄れゆく意識の中、聞こえてきたのは罵倒だった。


抜けている描写があったので、追記しました。

千葉一心がブランドバックを持っていた点などです。

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