表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吃音症がVtuberで何が悪い!!!  作者: 木山碧人
第三章 大日本帝国
38/72

第36話 不穏


 白教大聖堂。地下一階。霊廟。


 白教に従事した教徒が眠る墓所。


 白い一本通路から、左右に分岐した部屋。


 そこが全て、棺を納めるスペースになっている。 


「夜になったら、起こしに来ますね」


 棺が詰め込まれた図書館のような場所だった。


 桃子が入る棺を空いている隙間に収納し、アザミは霊廟を後にした。


 ◇◇◇


 白教大聖堂。一階。事務室。


 手狭な部屋に、職員室のように複数の机が隣接している。


「場所は、お分かりになった?」


 階段を上がった先には、事務室に繋がっている。


 その隅の席に座るのは、シスターユリアだった。他に人はいない。


「……は、はい」


 宗教のことは詳しく分からない。


 だけど、この人の少なさが妙に気になる。 


 口には出せないけど、警戒した方がいいかもしれない。


「同行できなくてごめんなさいね。狭い場所が苦手で……」


「い、いえ」


 ただ、絶望的に話すことがない。


 相槌しか打てず、微妙な空気に胃がキリキリする。


「それより、衆議院選挙にお出馬すると聞いたのだけれど、本当?」

 

 そう考えていると、ユリアは話を切り出してくれた。


 助かった。ただの情報確認だとしても、沈黙するよりマシだった。


「あ、あくまで予定、です」


 鬼龍院みやびが残した登録者数973万人という数字。


 それを伊勢神宮チャンネルが超えないと出馬できない約束。


 現在、登録者数は631万人。目標の数字には、まだ届いていなかった。


「あら? お駅前にこんなのが貼ってあったのだけれど、これは別人?」


 今は選挙準備期間で出馬の締め切りは1週間後。


 6日後にあるライブで目標数字を超えて出馬する予定だった。


 ――それなのに。


「伊勢、神宮ちゃん……な、なんで」


 ユリアが手に持つ携帯の画面に映るのは、千代田区の選挙ポスター。


 そこには見覚えのある二次元のキャラクター。伊勢神宮の顔が貼ってあった。


 ◇◇◇


 白教大聖堂前。時刻は正午過ぎ。天気はにわか雨。


 車一台分が通れる狭い道路に、アザミはビニール傘を差し、立っていた。


『ワイは手筈しとらんよ。約束は鬼龍院みやびを超えてからじゃったろ?』


 耳元の携帯から、臥龍岡県知事の声が聞こえる。


(やっぱり……。誰かが勝手に出馬届けを出したんだ)


 背筋がぞっとする。第三者に計画を知られていたことになるんだから。

 

『とはいえ、一定の成果は出しとるから、一つ助言をくれてやろう』


「……な、なんです?」


『同じ区に出馬する霧生という男とは、関わるな。元暴露系Youtuberじゃ』


 そこで、一方的に通話は終了する。


 助言はありがたいけど、政治のことなんて分からない。


 ライブで頭がいっぱいなのに、考えないといけないことが一つ増えてしまった。


「君さ、伊勢神宮の中身っしょ? ちょいと顔、貸してもらえる?」


 そこに声をかけてきたのは、黒い日傘を差す金髪の男性。


 着崩した黒スーツを着る、ホスト風のチャラそうな人だった。


「……あ、あの、どちらさま、ですか?」


 嫌な予感がする。外れてほしいと心から願いながら、名を尋ねる。


「君と同じ千代田区の選挙に出馬した、霧生卓郎をどうぞよっろしくぅ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ