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吃音症がVtuberで何が悪い!!!  作者: 木山碧人
第三章 大日本帝国
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第34話 別れ

 

 大阪白十字病院。特別室。


 室内のベッドには、鬼と鏡。


「私は、お役に立てましたか、椿様」


『ああ。ナナコのおかげで、もうすぐ世界が変わるぞ』


 白い入院服を着るナナコは、鏡を抱く。


 優しく。愛でるように。かつての主をそばに感じながら。


「よかった……あなた様に、拾われて」


『お前は、よう生きた。後は……わらわに任せておけ』


 鬼と人の自作自演。マッチポンプ。


 世界は騙される。それが生きた意味。


 唯一の心残りは、見届けられないこと。


(あとは、任せましたよ。千葉薊さん……)


 でも、心強い味方がいる。それに意思は託した。


 思い残すことは何もない。だから、少しだけ、眠ろう。


 目を開ける頃には、世界はきっと、良くなってるはずだから。


 ◇◇◇


 みやびフェス大阪より、翌日。


 大阪白十字病院。地下一階。放射線治療科。診察室。


 診察机に丸椅子が二つ。そこに腰かけるのは、医者と白黒の袴を着た女性。


「ナナコさんは、今朝――」


 そう曇った表情で話を切り出すのは、白衣を着た森田。


「い、言わないでください。分かってます」


「……そうか。強いんだね」


「か、悲しむのは、全部、終わってから、って決めましたから」


 凶報を聞き届け、アザミは静かに席を立つ。


 その瞳は赤く充血していた。でも、確かに前を向いている。


 止まれない。止まるわけにはいかない。彼女の死は無駄にしちゃだめなんだ


 ◇◇◇


 大阪。新大阪駅。夕方。


 新幹線の扉口にジェノは立っていた。


「あの、元気さん。昨日は、ありがとうございました」


 ぺこりと礼を下げた先には、藤堂元気。


 変わらず天然パーマのせいか、髪はぼさぼさだった。


「気にせんでええよ! この手で仇討てたからからな!」

 

 ただ、会った頃とは見違えるほど元気になった。


 というより、元々、これぐらい明るい人だったんだろう。


「……」


 ただ、復讐を果たした。という件については何も言いたくない。


 もっと他に方法があったのかもしれない。昨日からずっと考えている。 


「なんや、暗い顔して。まぁ、ええか。元気でな!」


「……はい。元気さんも、お元気で」


 複雑な心境のまま返事をすると、新幹線の発車ベルが鳴る。


「でも、良かったんかいな。一心君、置き去りやで」


「…………あ」


 どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ。


 すぐに、降りようとした時、新幹線の扉は閉まった。

 

(一心さんなら、たぶん、大丈夫だよね、きっと)


 新幹線は緩やかに動き出し、ジェノは彼の元気な姿を思い浮かべていた。


 ◇◇◇


 大阪城跡地。目の前には夜空が広がっている。


「いい夜空だ……じゃない! どこだここは」


 仰向けに倒れていたのは、滅葬志士、千葉一心。


 辺りには瓦礫の山。どうやら、生き埋めになっていたようだ。


「目は覚めたかい」


 声が聞こえる。声がした方に目を向けると、見えたのは、黒い二本の角。


「……鬼っ!」


 すぐさま、立ち上がり、腰の刀に手を当てようとする。


 しかし、ない。あるべきはずのものが。腰には刀などなかった。


「悪いが、刀は奪わせてもらってる」


 赤いリーゼントをした黒服の鬼。


 図体はでかく、生身で相手するのは厳しそうだ。


 そいつが刀を握っている。破壊することなど、造作もないだろう。


「なんのつもりだ……。組長がやられた腹いせか?」


 滅葬志士棟梁、藤堂元気の一撃により、鬼道組組長は敗れた。


 その腹いせとして、鬼道組の若頭が滅葬志士の生き残りを襲いに来た。


 状況から見るに、それしか考えられない。戦う以外生き残る術はないはずだ。


「違う」


「だったら、何が目的だ」


「千葉薊を潰してくれないか? こいつを使って」


 図体がでかい鬼が懐から取り出したのは、赤い水晶だった。


「詳しく、話を聞かせてもらおうか」


 人と鬼。滅葬志士と鬼道組。


 相容れないはずの二つの陣営が手を結ぶ。


 狙いは、千葉薊。陰謀の渦中にいる人物は、その日大阪を後にした。

 

【伊勢神宮公式チャンネル +450万人 チャンネル登録者数631万人】

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