表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吃音症がVtuberで何が悪い!!!  作者: 木山碧人
第三章 大日本帝国
15/72

第13話 引退


「余は本日をもって、個人の活動を引退する」


 鬼龍院みやびがインターネットに発した一言。


 それは、Vtuber界隈にとどまらず、世界全土に波紋を生んだ。


 ――同時接続数509万人。

 

 統一された言語には、国家間の壁はなく、多くの人が彼女の引退を惜しんだ。


「さよならは言わん。代わりとして、余を愛してくれた臣民に餞別をくれてやる」


 鬼龍院みやびとしての幕引き。生前葬。エンディング。


 スタッフロール風に、今までの名場面が切り取られ、流れていく。

 

:殿下;;

:おかしいな、画面が滲んでよく見えねぇや

:やめないでやめないでやめないで

:殿下に出会えたのが、人生で一番の財産でした

:最後まで楽しませてくれてありがとうございます、殿下!!


 有終の美。最後までリスナーを楽しませる姿勢。


 それが、彼らの心の奥深くに届き、感情を揺さぶった。


 しかし、画面はブラックアウト。エンディングは終わってしまう。


:行かないで、殿下

:伝説の配信者だったな、一生忘れんわ

:惜しいな……もうちょっとで1000万人だったのに


 コメント欄が暗いムードで包まれる中。


:本当にここで終わりなのか? まだ配信、途切れてないぞ


 一人のリスナーが発したコメント。


:まだ何かあるのか?

:いやいや普通に切り忘れだって

:殿下が配信切り忘れたこと今まであったか?

:ドッキリ、とか?

:俺たちが傷つくようなドッキリを殿下がやるとは思えん


 それにより、流れが変わる。


 期待半分不安半分といったコメント欄。


 何かあるのではないかと、気が気ではない様子。


 そんな状態がしばらく続くと、とある目立ったコメントが投下された。


『鬼龍院みやび:余がこんなところで、終わると思っておるのか?』


 放送主が直接打ち込んだコメント。


 それがコメント欄上部に固定され、衆目にさらされる。


:お前ら、主コメ見てみろ!

:あ~情緒が壊されるんじゃ~

:おいおいおい、これってまさか……

:殿下復活! 殿下復活! 殿下復活! 殿下復活!

:いやいや、なりすましだろ

:なりすましを固定コメにするわけないだろ情弱


 衆目は異変に気付き、期待が不安を上回っていく。


 次の瞬間、放送画面が割れる。割れる。割れる。割れる。


:ふぇ!?!?!!

:くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」

:くるぞくるぞくるぞ!!

:まじで神

:全回転フリーズきちゃぁ!!!

:これだから殿下の推しはやめられない

:いや、落ち着け……殿下は一度口にした言葉は曲げないぞ


 割れた画面の奥にみやびはいる。復活演出だった。


 喜ぶもの、発狂するもの、冷静に受け止めるもの。様々いる。


「広島大阪東京で引退ライブ。みやびフェスを決行する。衝撃に備えよ!!!」


 その反応に対する答えは、現実世界で終わりの場を提供すること。


 誰も傷つかず、誰もが喜んでくれるような、配信者として満点の回答。


:うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

:はぁ!!?!???

:まじかよ!!

:激熱展開すぎんだろ……

:殿下は最後の最後までお美しい


 真の有終の美を飾るための粋な計らい。


 それが、さらなる熱狂を生み、今日一番の盛り上がりを見せた。


 ――しかし、この日。


 登録者数970万人を超えた鬼龍院みやびのチャンネルは、突如削除された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ