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吃音症がVtuberで何が悪い!!!  作者: 木山碧人
第三章 大日本帝国
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第10話 意思の力①


 東京都内、滅葬志士総本部。地下闘技場。


 円形のフィールドに、荒野を再現した赤い砂の地面。


 客席はあるけど、観客はおらず、その中央で向き合うのは二人。


「勝てば、自由。負ければ、滅葬志士になる。よろしいですね?」


 尋ねるは、セーラー服に長い紫髪を後ろで編んだ女性。


 ――臥龍岡ナガオカアミ。


 滅葬志士に所属する隊長格。仲間内では棟梁と呼ばれていた。


「分かってます。決着は、どちらかが諦めるまで。俺だけ武器は自由」


 対するは、青い制服を着たジェノ。


 右腕には黒い腕輪。通信手段のリンカー。


 両腰には黒いホルスター。自動拳銃と深紅の右手。


 グロッグ17カスタムと〝悪魔の右手〟が収納されている。


「ええ。刀を使えば、殺してしまいますからね」


 相手は徒手空拳。拳を構え、待ち受けている。


「でも、使いません。俺だけ武器を使うなんて、卑怯ですから」


 着脱式のホルスターを外し、こちらも拳を構える。


 目的のためでも手段は選べ。と地下世界の人から教わった。


 負けられないけど、武器を使って勝ったところで、成長は頭打ち。


 格上相手に対等な条件で勝つ。最短で強くなるにはそれが一番のはずだ。


「心構えは一流。ですが、実力が伴わなければ三流止まりですよ」


「他人の評価なんてどうだっていいんです。俺は自分らしく戦いたい」


「折るべきは拳ではなく、心。……いいでしょう。本気でお相手致します」


 勝敗はどちらかが、諦めるまで。


 きっと、徹底的に心を折りにくるつもりだ。


「望むところ、で、す……」

 

 威勢よく口火を切ろうとした時、寒気が走った。


 相手は何もしていない。それなのに、体が動かない。


(……この感覚、知ってる)


 同じだった。レオナルド・アンダーソンと問答をした、あの時と。


「どうかしましたか? まだ一歩も動いていませんよ」


「……偶然じゃない。見えない壁があるんですね。俺とあなたの間に」


「だとしたら?」


「心より感謝します。次に進むための足がかりになるんですから!!!」


 絶対に掴んでみせる。この決定的な差を埋めるための何かを。


 ◇◇◇


 広島県知事公舎地下一階。三十畳ほどはある広い空間。


 冷たいコンクリートの壁で囲まれ、淡い照明が辺りを照らす。


 そこにはトレーニング用の機材と、ボクシングリングが備わっていた。


「い、意思の力?」


 リング中央にいるアザミは尋ねる。


 右腕には黒い腕輪。リンカー。


 両手には、青いボクシンググローブ。


 服は、上下黒のトレーニングウェアを着ている。


「はい。センスとも呼ばれる潜在エネルギーのことです」


 向き合うのは、赤いボクシンググローブをつけたナナコ。


 上下白のトレーニングウェアを着ていて、背も胸も一回り大きい。


 経験者なのか、軽いシャドーボクシングをしながら得意げに語っている。


「……も、もしかして、あの時」


 思い出すのは、座敷での出来事。


 異様に寒くて暖かいと感じた、あの時だった。


「やっぱり、感じ取ってたんですね。いいセンスしてますよ」


「で、でも、ほ、他に、やらないといけないこと、ありますよね……?」


 政治協力を条件に出された、知事の課題が頭によぎる。


 こんなことをしている余裕なんて、一秒たりともない気がした。


「鬼龍院みやびの登録者数950万人を、伊勢神宮ちゃんが超えること。政治関係者や有権者を納得させるだけの影響力をつけるのが課題、でしたよね。ただ、そっちにはアテがありますので、任せてください。それより問題は……」


 グローブ越しの拳をこちらに振るい、顔前で止める。


 その行為だけで、なんとなく察しがついてしまった。


「ふぃ、フィジカル?」


「正解! 前回みたいに邪魔が入っても助けられる保証はありませんからね」


 彼女の言う通りだった。


 どこかで確実に滅葬志士の妨害は入る。


 その度に、前みたく、足がすくんでいたら意味がない。


「……お、教えてください。い、意思の力。センスのことを」


 やるべきことは一つ。今よりもっと強くなるんだ。

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