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04 閉じ込められました?


「な、なんだ!?」

「殿下! こちらにいらしたのですね。陛下がお呼びです! 今すぐ王宮にお戻り願えないでしょうか!」

「い、いや、だが……!」


 殿下は私との会話が不穏な方向のままなので拒んでいましたが、騎士は一刻を争っているのか、殿下の背を押し連れ出す勢いを止めません。殿下が拒む原因が私にありそうと判断した騎士が話しかけてきます。


「リーア公爵令嬢、殿下をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「私は大丈夫ですよ。こちらは気にせずどうぞ連れて行ってください」

「待て待て! くっ、なら彼女を学園にとどめておいてくれ! 私が戻ってくるまで家に帰さないように! 頼む! これは王子命令だ!」

「かしこまりました」


 それだけ言い残し、焦る騎士に殿下が連れ出された後には3人いた騎士の内、1人だけが残っていました。その騎士が話しかけてきます。


「リーア公爵令嬢、よろしいでしょうか」

「はぁ、わかりました」


 細かい説明はなくとも、何が言いたいかくらいはわかります。もう冷めてしまったスープを今更飲む気にもなれず、手を上げ後の処理を食堂の使用人にお願いすると立ち上がります。


「また、後でお話しましょう」

「え?」


 すれ違いざま、まだ困惑が抜けきっていないサラサ様に一言伝えウインクした後、騎士の後についていきます。まだざわつく食堂をあとにし、学園の長々とした廊下を歩き、案内された部屋へと足を踏み入れれば、突如ガチャリと鍵が閉められました。


「え?」


 思わず振り返れば駆け足で立ち去る騎士の足音が聞こえてきます。そんなに急ぐほど何か重大な事件でも起きたのでしょうか?


 それにしてもです。


「まさか、このまま放置されるのでしょうか?」


 まだ完全には婚約破棄に至っていない現状、というよりも先ほど来たばかりの騎士には先ほどまでの私と殿下のやり取りを知るすべはないはずです。仮にも時期王妃となる公爵令嬢に対する扱いではありません。


「しかもここは……」


 特にやる気なく学園に通っていたため、どこに何の部屋があるか正しく把握できていませんでしたが、授業の時は基本誰かについていけば問題はありませんでした。それが裏目に出たのかもしれません。


 周囲を見渡せば、ここはどこからどう見てもただの物置部屋なのです。いつも通りどこかの応接室にでも向かうのだろうと思いついていっていたので向かう場所に何も疑問を持っていなかったのですが、それがまずかったようです。


 部屋から出ようにも、音がした通り鍵がかかっており扉は開きません。精霊にお願いして調べてもらえばこの部屋に危険がないことはわかりました。他に人が待ち構えていて、何か事件に巻き込まれる……ということは無さそうです。


 とはいえ、普通王子に命令されたからといって、その婚約者である令嬢をこんな物置部屋に閉じ込めて鍵まで閉めるでしょうか? 今は安全かもしれませんが、何か事件に巻き込まれる雰囲気がプンプンします。それはもう濃厚なにおいが漂っています。


 とすると何か巻き込まれる前に脱出した方がいいのでしょうか?


 別に扉を壊して脱出するのは難しくありません。先ほども言った通り、私には精霊がついているのでお願いすれば壊すことは容易なのです。こう、ドカンと派手に吹っ飛ばしてくれるでしょう。どうやるのかは知りません。精霊の気分次第なので。でも鍵だけをカチャりと開けたりといった細かいことはできないと思います。


 問題はこれに事件性がなかった時でしょうか。もしそうなら扉を壊した私には学園の器物を損壊した罰が与えられます。まぁ、それは非常事態として言い訳できるにしても、どうやってそれを行ったかの追及は逃れられないでしょう。


 そうなれば精霊に関することを話さないといけなくなり、それを知られればせっかく婚約破棄できそうな状況がまたひっくり返ってしまうかもしれません。今までの努力を放棄した私の努力が水の泡です。何を言ってるのかよくわからなくなってきましたが、これは一応ある方との約束なので話すことはできないのです。


 なら、別の視点で考えてみましょう。どういう意図があったにせよ、閉じ込められたということはここから出られないということです。それはつまり、午後の授業にも出られないことに他なりません。


 適当な言い訳をわざわざ探さなくても、強制的に授業をさぼれるというのは素晴らしいことなのでは?


 そうですね、そうしましょう。もし何か仕掛けられたとしても、それこそ精霊さんが守ってくれるでしょうし、わざわざこちらから力を示す必要は無いのです。


 そうと決まれば、立って待つのは疲れるので何か楽な姿勢になれるもの……椅子がありますね。よいしょっとしまわれていた椅子を引っ張り出すと、精霊にお願いして綺麗にしてもらいます。するとすぐに埃がたまった椅子は新品のようにきれいになりました。本当に木でできているのか不安になるほど、それはもうぴっかぴかです。流石精霊、高級店の職人クラス以上にいい仕事をしてくれます。


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