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03 次期王妃の座はお譲りします


「ほ、本気で言ってらっしゃるの?」

「はい。殿下やサラサ様がおっしゃっているように、私は王妃にふさわしくありませんので。昔はどうだったかわかりませんが、今となっては誰もが不満を抱いていることでしょう。私もこの立場にあるのはそろそろ潮時だと思っていました」

「そ、そこまででは……」


 あら、サラサ様まで先ほどの勢いが消えて私の意見を否定し始めましたよ? オロオロと狼狽えていらっしゃるのはお可愛らしいですが、これはいけない傾向ですね。


 これは相手の意見を自主的に引っ込めさせる作戦でもなんでもなく、心から同意していただき、ただちに婚約破棄を現実のものへと昇華させたいだけなのですが。このままじゃあ、なぁなぁで今の状態が継続することになりそうですね。


 何か手を打つべきでしょうか……


「いい加減にしろ! これは王家と公爵家の間に結ばれた政治的な婚約だぞ! そんな適当な感じで相手を変えられるわけがないだろう!」

「えぇ……」


 私の記憶違いじゃなければ、これは殿下が言い出したことじゃなかったでしょうか? 思わず漏れた驚きの言葉はスルーしていただきたいものです。それにしても、この強く出れば相手が言う事を聞くとでも思っているような身の振り、やっぱり好きになれませんね。


 政治的なものであろうがなにであろうが、殿下に魅力があり、それを助けたいと思えるようであればもしかしたら私もやる気が沸いたかもしれません。


 でも、こうも高圧的にただ相手に言い聞かせようとするだけ。自分が変わろうとするのではなく、脅迫まがいの言葉で言いくるめようとするだけ。誰かに唆されたのだとしても、正しい判断ができなかった殿下に非があるのは明白です。


 これが未来の国王。将来が心配になりますね。まぁ、もうそんなことはどうでもいいのです。


 例え私のやる気のなさが発端だとしても、こんな人と一緒になるのはやっぱり嫌ですし、こんなやり取りすら億劫なのでこのせっかくの機会、押し通してしまいましょう。


 そう決意していると私と殿下の様子を見ていたサラサ様がおそるおそる口を開きます。


「レティニア様は殿下のことを愛してらっしゃるわけではないのですか?」

「いえ、まったく」

「なっ――!」


 私の即答に殿下は驚いているようですが、好かれているとでも思っていたのでしょうか? 痛い人ですね。


「で、では政治的に手助けをしたいとか、そういうお気持ちは……?」

「ありませんね」

「ぐっ……」


 再びの即答にシン……と食堂が静まりかえります。このままではせっかくのスープが冷めてしまっておいしくなくなるので、さっさと終わらせましょうか。


「この通り、私は王妃にふさわしくないのです。私の王妃教育も遅々として進まない現状、今ならまだ別の方に乗り換えた方が将来の為になるでしょう。殿下から話があり、私もそれに同意する以上、お父様には私の方から話を通しておきますので」

「ま、待て待て! なぜそうなる! 国を混乱させる気か!?」

「殿下がご指摘なさったことでしょう。それに、国を思えばこそです。私なんかが王妃になってもそれこそ混乱させるだけでしょうから。サラサ様なら私よりもきっと立派に王妃を務めあげてくれるはずです。後押しなら惜しみませんよ」

「えぇ!?」

「なぜそこには力を入れるんだ!?」


 先ほどからサラサ様の困惑様がお可愛らしいですね。普段キリッとされている分、アワアワされているお姿がなんとも。これがギャップ萌えというものでしょうか? おそばに置くなら殿下よりもサラサ様一択ですね。


 殿下は邪魔なのでそろそろ帰ってくれないでしょうか。これからサラサ様とお菓子を食べながら女子会とパジャマパーティを開く計画を立てて、ついでに殿下の婚約者を入れ替えるあれやこれやを相談したいのですが……


「取り合えず、そういうことでいいでしょうか? まだ私は昼食の最中ですので、授業が始まる前に食べ終わりたいのですが」

「いいわけないだろう! このまま終わらせたら本当にとんでもないことを行動に移しそうだ。誤解は完全になくしておきたい!」

「誤解などないでしょうに。殿下も私に不満があるから先ほどの提言をされたのでしょう? サラサ様に引き継ぐかどうかは確かに陛下やサラサ様のお父様の考えもありますので別にして、一度私との婚約はなかったことにして一から選び直すことはこの国の未来にとって正しい選択だと思います」


 その時、食堂の扉が勢いよく開くとフリューゲル殿下を呼ぶ声が響きました。そちらに視線を移せば、そこには3人ほどの騎士が息を荒くして人を探していました。そして殿下を見つけると走り寄ってきます。


 何かあったのでしょうか?


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