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僕はジャスティス・ソール

アクションファンタジーに挑戦してみました。

よろしくお願いします。


長い混沌の時を経て世界が生まれた。


世界には光を纏った者と闇を纏った者があった。


それぞれは世界の開闢と同時に衝突し殺し合った。



闇を纏った者が地を割るとそこから水が吹き出しやがて海となった。


光を纏った者が天に向けて剣を振るうと空が生まれ世界に日が差し込んだ。



気が遠くなるような長い年月の戦闘の果てに光を纏った者は闇を纏った者を散々に追い詰めトドメの一撃を食らわせようとする、その寸前に闇を纏った者は自身と光を纏った者をもろともに石化させ勝敗のつかぬまま数千年の眠りの時を過ごす羽目になった。


やがて光を纏った者と闇を纏った者が図らずしも創造した世界に人間が生まれ、人間達は闇と光を纏った者達の巨大な石像のまわりに集落を作り、そのまま、また数千年の時が過ぎ去った。





そして現代、世界の中心に位置する大陸アルベルト。ここには今でも光と闇を纏った者達の石像が現存している。


人々は闇を纏った者を魔王と呼び光を纏った者を神と呼んだ。石像の様相を見れば当然だろう。

闇を纏った者の石像は光を纏った者のトドメの一撃を前に苦悶と恐れの表情をあらわにしている。この石像は永遠にこのままなのだろうか?それともいつかは元に戻るのだろうか?現時点では答えは誰にもわからない。




人は光と闇を纏った者達の残した遺産とも言うべき世界で生きているのだが、この世界は魔力と呼ばれる内在的な力も存在する世界だ。古の昔から魔力は人に内在しており、人々が今の世界に君臨すると、魔力を糧に、「魔導」という概念と技術を生み出し新たな世界の秩序を形成した。


魔力を導く概念という意味だが、早い話が魔力中心の文明だ、利便性のある物具や乗り物は魔力によって使用出来るようになっており、古代では高い隔たりのあった世界も通信機器の発明、発達により垣根は限りなく低くなっていった。

中央大陸から世界の裏側の大陸と交信する事も現代では可能である。機器を発動させる源は魔力なのだが、利便性が高ければ高いほど、それ相応の問題やトラブルなどがあるにはあったが、この数百年、世界規模の争いもなく長い平和な時代が続いている。


ただし、いかに平和な世界とはいえ差別は存在していた。それは生まれ持った魔力の内在値による差別化である、この概念自体が広く見れば無意味なのだが、このような習慣に抗う者も今の所、皆無だった。


魔力値の内在値が大であろうが、小であろうが、それなりに豊かな生活水準があったからだろう。


長く平和な分、人には変な心のゆとりが生まれるものだ。そのゆとりは魔力値の低い者に対する蔑みに変化する事も多々あった。


早い話が、魔導社会的な『落ちこぼれ』に対する侮蔑である。



この物語の主人公であるジャスティス・ソールも落ちこぼれの一人だった。彼は中央大陸の中心にある魔導専門学校の生徒であり、学校のすぐそばには例の石像がある。学校が十代の若者の集まりの為、「魔力差別」は大人社会よりも顕著である。


しかしジャスティス・ソールは公平と正義という信念を持ち。常に両の銀眼で自身を取り巻く世界を見、ジャスティスの内面の尺度から見て、不公平や悪に遭遇した時に怒りをあらわにし、怖気もせずに正義感のままに行動に移す事が常であった。


ジャスティスは、自身の矜恃の証としてのこの世界では最弱の武器とされている銃を二丁、常に腰に下げているのである。普通は魔力を宿しやすいロッド等を携帯するものなのだが、ジャスティスは頑なに銃を離さない、客観的にみたら、この行為は魔力値が最下値であるジャスティスにとっては自殺行為に等しい所業である、通常、武器には魔力を込めて使用をするのだが、銃は発射した時の弾丸の回転と速度が早すぎて弾に込めた魔力がほとんど全て弾けてしまう、これでは相手に命中してもダメージは与えられない。生き物が自然にその身に帯びている魔力だけでも銃の弾丸は弾かれてしまう。これが銃が世界最弱の武器と呼ばれるゆえんであった。ジャスティスが銃を持つのは、万が一の時であっても誰も傷つけない、との信念によるものだ。


これだけ「下層」の条件が揃えば、ジャスティスはさぞかし蔑みの対象になっているだろうと思われるかも知れないがジャスティスが蔑まれる事は決して無かった。


その理由は前述の通り、彼の性格と行動力にあるのだ、決して不正を許さず相手に非があればどのような相手にも果敢に向かって行き、どんなに時間がかかっても最後は必ず和解するのだ、だから彼は「下層」でありながら、むしろイジメを行なう者を止める側にいた。




これはジャスティスの数あるエピソードの一端だが、ひと月ほど前の、ある日の放課後の出来事である、校舎の目立たない場所で魔力の低い者が高い者にイジメを受けていた時の事だ。現場を目撃したジャスティスはすぐさまイジメを行なう者に詰め寄りイジメを辞めるように言うと、激怒した相手はムキになって攻撃的魔力を放ってしまい、ジャスティスに直撃してしまう。


攻撃した者はやりすぎてしまった、と、青ざめてしまうが、ジャスティスは全くひるまずに相手を呵責するのだ。


「どうした!もっと撃ってこい!僕が死ぬまで撃ってこい!君はそれで満足するんだろう!」


相手は保身に身を固めていた。魔力を同じ学校の生徒に向けてしまえば退学させられてしまうからだ。相手は卑屈でありながら傲慢に物を言う。


「もういい、行けよ…この事は誰にも話すなよ」



「間違った事をしたら謝るのが筋だろう!!君は今まで何を学んできたんだ!!」


相手は小声で詫び、そして足早にその場を去った。


その翌日、相手はジャスティスの姿を見て仰天する事になる、なんとジャスティスは重症のまま、平気な顔をして登校して来ていたのだ。

しかも傷の事を教師に聞かれても、相手はちゃんと詫びてくれたから、もう済んだ事として、いくら教師に追求されてもそれ以上答えようとしない。


その気になればこの一件を相手の弱みとして何かを要求することも出来るかもしれないが、ジャスティスはそれをしない、このジャスティスの潔よい姿に相手はいたく感じ入り、逆に弱い者イジメなどという卑しくも卑劣な行為をしていた自分が恥ずかしくなった。以来、何とはなしにジャスティスと行動を共にすることになる。


ジャスティスについては、このようなエピソードに枚挙の暇が無かった。ただし、魔力の低い者が皆、ジャスティスのように生きられるものでは無い。


ジャスティスと対象的だったのが、エイミー・ムーンという女子である。 ジャスティスと同じ学年であり、いつの間にか転入してきていた転入生だった。 ジャスティスは正しく清廉だったが、エイミー・ムーンは自己中心的で腐敗の目立つ性格だった。高慢で人を見下した態度と美貌を鼻にかけた仕草、典型的な嫌われ者と言うやつである。


エイミー・ムーンは魔力が低いわりには、イジメや蔑みにはあわなかった、代わりに周りの皆に恐れられたのである、何しろ学校の教師までもが恐れてエイミー・ムーンに素行の注意すら出来ないでいるのだ。



密かにエイミー・ムーンの被害を受けている生徒も多い。放課後にジャスティスが廊下を歩いている時もエイミー・ムーンの噂でもちきりだった。ジャスティスが怪訝な顔をしながら、その様子を見ているとクラスメイトが話しかけてきたので、そのまま他愛の無い話をしていたのだが、やはり最後は話題がエイミー・ムーンの噂話になってしまう。



「ジャスティス、そういや知ってんだろ?エイミー・ムーンって女のことな」


「ああ、知ってるさ、あの亜麻色の髪の子だろ?ここいらじゃあ珍しい色だからね印象に残ってる」


「その亜麻色の髪の奴だがな、お前あいつには関わるなよ、あいつな、やばいウワサがあるんだよ」


「やばいウワサ?なんだいそれ?」


「…あいつ魔女と契約してるらしいぜ」


ジャスティスは不覚にも笑ってしまった。この世界にあっても魔女などという者は荒唐無稽の存在だったからだ


「魔女なんておとぎ話だよエイミー・ムーンは普通の女の子さ」


「…あいつに絡んだ奴らな、みんな原因不明の疫病になってんだよ、疫病ってのは魔女の十八番だろ?」


「偶然じゃないのか?」


「エイミー・ムーンに絡んだ奴ら全員が全員みんな原因不明の疫病で治療法も分からず全員仲良く意識不明でおねんねしてるってのにか??」


「確かに奇妙だな、彼女に直接聞いてみてもいいかも知れない。本当なら辞めさせないとだしな」


「ジャスティス?話は聞いていたか?俺はエイミー・ムーンに関わるなって言ったんだぞ!」


「正義は公平であるべきだ、僕は彼女の言い分も聞きたいんだよ、ウワサが本当かどうかも本人に聞けばわかるさ」


「あのなぁ…ジャスティス、エイミー・ムーンは学校の害悪なん…」


「害悪なんだ」…と言いかけてクラスメイトは突然何かに引きずり込まれ姿を消してしまう。それはほんの一瞬の出来事だった。ジャスティスも反応のしようが無かったのだ。ジャスティスが半ば呆気にとられていると近くの掲示板に赤い文字がじわりとにじみ浮かんでくる。


『私の悪口は許さない』


よく見るとまわりの生徒達もエイミー・ムーンの悪口を言ったと思われる者だけが姿を消しているのだ。

周囲は悲鳴の嵐だが、ジャスティスは冷静だった、それに悪口を言ったクラスメイト達も良くない…だが、エイミー・ムーンの報復の仕方は明らかに間違っている。

たとえ彼女が本当に「魔女」だったとしても、このような行為をジャスティスは見過ごす事は出来なかった。


この弾丸のように真っ正直な性格がジャスティスの強みであり、弱みでもあった。しかし、何事にも愚直で素直に脇目も振らずに体当たりで自分の信念を貫こうとする姿に皆、憧れを抱くのも確かである。その姿勢は今のような非常時においても変わらなかった。


ジャスティスは脇目も振らず、自身の信念をもって「魔女」エイミー・ムーンの元に向かうのであった。



「エイミー・ムーン!僕の名はジャスティス・ソールだ!今から君に会いに行く!」







第二話も頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しそうな物語の連載が始まってワクワクしてます。 ジャスティスの性格を表すエピソードのところが良かったです。説明よりも納得できました。 エイミーちゃん、不気味で不思議で良いですね。楽し…
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