表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
序章 始まりの日々1 呪われた少女
7/637

007 白兎

「よっと!」



 前に突き出した木の盾に衝撃が走る。しかし痛みは無い。これなら動きに支障は無い。



「よし、これくらいなら……!」



 水の弾丸を受け止めた木の盾を放り投げて、キューブスライムに攻撃を加える。今日も今日とてキューブスライム狩りだ。



 しかし宿泊費無料があと29日しかなくて余裕がない。キューブスライム狩りで堅実に確実にレベリングしたいけれど、そんな牛歩じゃ間に合わないかもしれない。


 そう判断した俺は、少し無理をすることになるけどホワイトラビットに狙いを定め、川に沿って南下してホワイトラビットの出る森を目指しているところだ。


 川沿いを移動しているので、当然のようにキューブスライムにエンカウントする。

 普通に倒しても良かったのだけど、せっかくなので森に到着する前に木の盾の性能を確かめることにしたのだ。



 魔物の攻撃を盾で受けても体全体に衝撃が走ったけれど、その衝撃はかなり小さなものだった。痛みとも言えないような軽い衝撃。あれなら問題ないだろう。


 これで盾の有用性は確認できた。しっかりと盾で攻撃を受け止める事が出来れば、ダメージはかなり軽減されるみたいだ。

 迷ったけど、盾を購入したのは良い判断だったと思いたいね。



 7匹目のキューブスライムを倒したあたりで、遠目に森が見えてきた。狩場まで結構距離があるなぁ。

 ホワイトラビットを狙うならキューブスライムは全てスルーして、移動に専念したほうが良いかもね。


 ついでに鑑定でレベルを確認。残念ながらまだ村人LV1のまま。



 森が見えたので川からは少し距離をとって、キューブスライムとのエンカウントは回避する。

 それからもう少し歩き続けて、ようやく森の入り口に到着。



 この森は単純に、ステイルークの南西の森、と呼ばれている。まともな名前くらい付けろよと思わないでもない。分かりやすいことは分かりやすいけどさ。

 街の近くにある森にしては結構範囲が広いらしく、現在地の森の入り口付近はそんなに鬱蒼としている感じでもない。雑木林という感じかな?


 定期的に木材採集の為に伐採され、見通しも悪くなくて暗くもない。頻繁に人が通るためのか、しっかりと道も出来ている。

 これなら森歩き初心者の俺でも迷わずに済むかな? ま、用心として川が見える範囲で活動するか。



 森の中に足を踏み入れ、周囲を警戒しながらホワイトラビットを探す。


 名前から考えて、流石に白い兎の姿をしてるはずだよな? キューブスライムだって四角いスライムだったんだから。



 ホワイトラビットを探しながら、前もって聞けたこの森の情報を思い返す。


 まず安全面の話だけど、森の入り口付近の明るい場所なら、ホワイトラビット以外の魔物が出る可能性はかなり低いらしい。

 どうやら魔物は日光があまり好きではないらしく、明るい場所を嫌う傾向があるとのこと。あくまで傾向であって絶対ではないけど。



 森の奥地まで入っていくと日中でも暗くなって危険だけど、入り口付近なら木陰に隠れられるくらいに小型の、ホワイトラビットくらいしかうろついてないんだそうだ。


 この情報からも、少なくとも人間サイズの兎って事はないはず。……ないよな?



 ん? なんかこっちに向かって丸くて白い物が向かって……。


 って普通に考えてホワイトラビットかあれは。エンカウントは無事に成功した模様。



 キューブスライムに比べれば高速移動なんだろうけど、そんなに足が速い感じには見えない。でもイメージしていたよりもでかかった。

 遠目だけど大型犬くらいありそうだ。攻撃はしっかりと防がないと危ないな。


 しかし薄暗い森の中で、シミ1つ無い真っ白な体は逆に見やすいね。



 ドタドタって重い足取りで俺に接近したホワイトラビットは、そのまま足を止めずに突進してきた。


 それをギリギリまで引き付けて、左に飛んだ。



 これがコイツの全速力なら怖くないな。自転車くらいのスピードしか出てないんじゃないか? キューブスライムの水の弾丸に慣れておいて良かったかも。グッジョブ俺。



 突進を外して俺を見失っている白い塊に、後ろからナイフで思い切り斬りつける。

 キューブスライムの時と違って、ザクリと皮を裂きグチュっと肉を抉る感触が伝わってくる。


 でも実際には血も出てないし傷も付いてない。相変わらずの謎仕様。



 ホワイトラビットは俺のほうに向き直り、反撃とばかりに噛み付いてくるけど、やはりその動きは早くない。

 初日に遭遇してたら危ない相手だったかもしれないけど、戦闘自体への忌避感さえなければ、強い相手ではないね、っと!


 噛み付こうと近付いてきた顔面を左手の木の盾で殴りつけて、相手の攻撃をキャンセルする。そうして体勢の崩れたホワイトラビットに向けて、またナイフを振るう。


 聞いているホワイトラビットの攻撃方法は、離れた場所からの突進と、近距離での噛み付き攻撃だけだ。そのどちらの対処も難しくないなら、あとは油断せずにダメージを重ねて行けばいい。



 首、胸、背中、胸側。狙える範囲で色々な場所を切りつけてみるが、ホワイトラビットの反応に変化はないみたいだ。弱点部位みたいな概念は無いのかな?


 HPが残ってるうちは、こんな普通の動物に見える魔物でさえも急所の概念はないらしいね、まったく。


 

 簡単な回避と確実なダメージの積み重ねで、やがてホワイトラビットは煙となって消えていった。後に残ったのは、野球ボールくらいの大きさの白いモコモコ。兎の毛だ。



 防寒具とかインテリアに使用されるらしいけれど、量が必要なので単価は安い。1つ1リーフの水玉より安いことはありえないだろうけどね……。



 兎の毛を拾うと見た目よりもずっと軽い。これで寝具を作ったりもするんだろうね。


 背負っていたリュックを下ろして中に、とその前に思いついて鑑定してみる。




 兎の毛




 まんまか。でもちゃんと鑑定結果が出た。


 周囲の木々とか鑑定しても何も表示されないし、衣服なんかも鑑定できないのに、服の素材の兎の毛が鑑定できるのはドロップアイテムだからなのかな。


 と、そういえばキューブスライムにも、ホワイトラビットにも鑑定してなかった。目の前の魔物に集中しすぎて鑑定忘れてた。

 魔物を鑑定できるかどうかはちゃんと試すべきだな。



 兎の毛をリュックに収納して、ホワイトラビット探しに戻る。

 

 


 その後、新しく遭遇したホワイトラビットに忘れずに鑑定を行うと、




 ホワイトラビットLV1




 とだけ表示された。


 魔物側にもLVがあるのかい! なら毎回鑑定する癖をつけておかないと危険かもね。高レベルの魔物にいきなり襲われる事態は避けたいもんな。



 ホワイトラビットはキューブスライムに比べて攻撃頻度が多い。普通に動物と戦っている感覚だ。普通の動物と戦った経験なんてありませんがね?



 なのでやはり危険度はホワイトラビットのほうが上なんだと思うけど、その分耐久力は低めだ。


 攻撃にさえ気をつければ、キューブスライムの半分以下の時間で倒すことが出来る。火力の足りてない今の俺にはホワイトラビット狩りのほうが向いているね。


  

 調子に乗って兎狩りを続けていたら、危うく街の外で夜を過ごすことになりかけた。あっぶねぇ。


 急いでステイルークに帰還し、冒険者ギルドで今日の戦果を換金する。



「兎の毛が1つ3リーフ。水玉が1つ1リーフ。兎の毛が37個と水玉が9つで120リーフになります」


 

 金属製のトレーに乗せられた、銀貨1枚と銅貨20枚。


 よし、なんとか日当100リーフは達成できた。

 通常であれば生活費に消えてしまうだろうけど、今のところは生活費はかからないからね。丸々貯められる。



 宿に戻って食事を貰い、体を拭いて就寝する。


 このペースなら、支援が打ち切られるまでに3000リーフ以上貯めることが出来ると思うけど、そうなってくると問題なのが、そのお金をどうやって安全に管理するか、だよなぁ……。

 現状では旅人のインベントリに期待するしかないんだよぉ。


 全体的にゲームっぽい仕様なのに、お金関係が不便すぎて困る。






 次の日は川沿いを通らずに、ステイルークから真っ直ぐに森に向かう。キューブスライムと戦うのは時間の無駄。稼ぎも小さいのに無駄に疲れるだけだ。



 森に到着して、本日もホワイトラビットを狩るだけのお仕事を始めます。


 戦闘前に鑑定するようになって気付いたんだけど、遭遇する魔物が今のところ全部LV1しかいない。


 LV表記がある以上魔物も成長するんだろうけど、魔物はどうやってLVあがるんだろう? 殺した人間の数? 出現地域?


 殺害数で経験値を得るなら、種族的に弱い魔物が高LV化するのは難しそうね。



 色々な想いを巡らせながらホワイトラビットを狩り続けた。





「お? ようやくか。早いんだか遅いんだか分からないけど」



 兎を狩る度に鑑定していたら、ようやく村人のLVが2になっていた。念願のレベルアップだ。

 LV上げの方法が魔物を倒すことであるとほぼ確定したのは大きな前進でしょ。



 流石に経験値自動取得-の効果でこの短期間でLV2になったとしたら、10代前半の子供がLV7ってのはありえないと思うし。


 とか言いながら、一応鑑定からの職業選択も試す。


 


 村人LV2

 補正

 スキル 経験値自動取得-




 転職可能な職業は増えてないね。残念。


 鑑定で盗み見た男の子は村人LV7だったかな? 少なくともLV7までは上げてみないと、前提LVが足りないのか、転職条件を満たしていないのか判断できない。兎狩りを続けるかぁ。



 ホワイトラビット狩りを始めて2日目。

 倒した数は50匹以上にもなったところで、流石にちょっと違和感を覚える。



 屋外で戦ってるのに、魔物が1匹ずつしか遭遇しないのは偶然なんだろうか? 単にこの場所の魔物の数が少ないのか、バトルシステムの影響なのか判断がつかないなぁ。

 もしもバトルシステムで何らかのルールがあるなら、それに縛られない野生動物に奇襲される事故が起こるケースも理解できる。


 ホワイトラビットと戦ってる最中に、イノシシとかに突撃されたら即死しそう。こえぇ~……。



 その後も兎狩りを続けていると、兎の毛ではなくて肉の塊がドロップした。これってレアドロップ? レアドロップの概念とかあるのかな?




 兎肉




 鑑定できるから間違いなくドロップアイテムだな。

 持った感じは1kgくらいありそうだ。まぁまぁの量。


 兎の毛と違って、量を集めずに使用できるから高価だったり……、ないか。


 少なくとも兎の毛より高額で売れればヨシッ!



 あー。レアドロップと言えば、商人の補正って幸運上昇とかじゃなかったっけ。幸運ってなんだか分かりにくかったけど、こういうシステム的な優遇が得られると思えば分かりやすいな。


 クリティカルなんかもあるのかな? 今のところ発生した実感はないけど。



 レアドロップの概念があって商人の補正が幸運上昇って事は、商人の上位職っぽい豪商は幸運の上昇幅が大きそうだなぁ。本当に金策に向いた職業なわけかぁ。


 一番微妙だと思えたCのボーナスが、今は輝いて見えるよ……。



 複雑な想いを抱きながら、狩りを終えてステイルークに帰還した。



「買い取るのは兎の毛が44個に、兎肉が1つですね。兎の毛は1つ3リーフ、兎肉は1つ5リーフでの買取となります。合計で137リーフですね。どうぞお収めください」



 冒険者ギルドの受付嬢から差し出される、銀貨1枚と銅貨37枚の日当。


 マジかー。通常ドロップアイテムの2倍にすら届かないとは。

 こりゃ期待するだけ無駄だね。出たらちょっと嬉しい、そのくらいのバランス。



 一攫千金は出来ないってか。よく出来てるねぇ、まったく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ