067 狭いベッド
※R18シーンに該当する表現を若干カットしております。
「……やっぱ狭くね?」
「この狭さがいいのではないか。贅沢な奴じゃのう」
俺の不満をバッサリと切り捨てるフラッタ。ここって俺の家でお前って客じゃなかったっけ?
そして俺の意見って本当に贅沢なのかなぁ? 至極当然の感想じゃないかなぁ?
大きめのダブルベッドとはいえ、流石に5人は乗らないよぉ。みんな細くて綺麗だけど、流石に定員オーバーだよぉ。
左からフラッタ、ニーナ、俺、ティムル、リーチェという配置になっているよぅ。
「ご主人様。これはベッドが狭いので仕方ないんですっ。ぎゅーっ」
「そうです。これは仕方ないことなんです。ぎゅーっ」
ニーナとティムルに関しては、もう半分俺の上にいるような状態だ。
いや2人が近い分にはなんの問題もないのよ。狭いから抱きついても仕方ないよね。ぎゅーっ。2人とも大好きぃ。
「まさか僕がドワーフと同じベッドで寝る日が来るとはね。人生分からないものだよ」
「そう思うなら客室で寝ろよ。なんで強制されたみたいに言ってんの?」
なにシミジミ語ってやがんだリーチェめぇ……。
……つうかこれ、俺寝れるかなぁ?
ニーナとティムルはいいとして、フラッタとリーチェが同じベッドにいるって、俺寝れるのかなぁ?
「妾の我が侭を通して済まんのじゃ。家での広いベッドよりも、この狭いベッドのほうが心地良くてのぅ」
「なんでお前ちゃんと謝る頭はあるのに我が侭は通すわけ? お前の中でどう割り切られてんの?」
俺に抱きついてるニーナに抱き付いてくるから、必然的に俺とも距離が近いんだよっ。
陽炎試した時を思い出すから離れろよフラッタっ。
右手がお前のおっぱいを思い出したらどうしてくれるんだっ。
「ふふ。確かに狭いけど心地いいね。誰かと一緒に寝るなんて、本当にいつ以来だろう」
「……言っておくけど今日だけだからな。これをきっかけに毎回ベッドに潜り込んできたりすんなよ」
エルフとドワーフって仲悪いんじゃないのかよっ。なんでリーチェもティムルに抱きついてくるわけぇっ!?
っていうかお前の場合おっぱい事情が違うんだから、フラッタと同じことするとさぁっ! 必然的にさぁっ!
……寝れるかぼけーーーっ!
「ご主人様。早く寝ないと明日に響きますよ?」
「遠征から帰ったばかりで疲労も抜けてないんです。早くお休みください」
「ニーナとティムルにくっつかれるのは自然なんですけどねぇ!? 劇物が2つも混入してるから寝れないんですよねっ!」
つうかニーナとティムルはこの状況を受け入れるのが早すぎるんだってばぁ!
俺の味方は!? 味方どこー!? なんで自宅がアウェーになってんだよぉ!?
「ご主人様。あまり大声を出さないで下さい。フラッタとリーチェが起きてしまいますよ」
「なんでコイツらは速攻で寝てんだよっ!? 納得いかないんだけどぉっ!?」
男といっしょのベッドでなんでそんなすぐ寝れるの!? 俺のほうがおかしいの!? いや絶対おかしいのはコイツらだ! フラッタと中身フラッタのほうがおかしいに決まってる!
くっそぉ! こいつら絶対許さないからなぁっ!
……なんてブチ切れたのに、気付くと朝になっていた。
流石に遠征の疲労もあってか、俺もいつの間にか眠りについていたみたいだ。
ニーナとティムルも俺の上に乗ったままで静かに寝息を立てている。ていうか2人とも、この体勢寝辛くないのかな?
さて、2人は俺に覆いかぶさるようにして寝息を立てている。それはいい。だけどここからが問題だ。
2人は俺の上に乗っている、つまり2人のおっぱいは俺に押し付けられている形だ。うん柔らかい。最高。
ってそうじゃない。2人のおっぱいがすでに密着しているなら、今俺の両手が鷲掴みにしているおっぱいは、2人以外のものでしかありえない。
右手から伝わるのは手の平サイズ。左手から伝わるのは手に余るサイズ。
体に押し付けられるニーナとティムルの2人のおっぱい。なんだこれ? おっぱい天国か?
右手にフラッタ。左手にリーチェ。あの2人のおっぱいが自分の手中に収まっているという事実。
ついつい両手を動かして、手の平から伝わる感触の違いを楽しんでしまう。
あ、ダメだ俺の両手よ。動いてはいけない。だめだ。く、両手が俺のいうことを聞いてくれないっ。
……この後ニーナにめちゃめちゃ説教された。
「ふむぅ。元はと言えば妾の我が侭で同じベッドにいたのじゃから、一概にダンを責める訳にはいかぬかのぅ。しかし起きた時は汗だくになっておったぞ。いったいどれだけ揉んでいたのじゃ、まったく」
「くっ……、君にここまで許した覚えはないよっ……。でも同じベッドで寝る事を通したのは僕のほうなんだよね……。むしろダンは拒否までしてたし……。これは、僕の自業自得、なのか……?」
めちゃくちゃ興奮した俺とは対照的に被害に遭った2人の方は意外と冷静なようで、思ったほどの責任追及はされずに済んだ。
いやぁ俺ってこの2人のおっぱいをもみもみしちゃったんだよなぁ。ありがとうございます。とりあえず拝んでおこう。ありがたやありがたや……。
「勝手に触ってごめんなさい。触らせてくれてありがとうございます。最高でした」
おっぱいを勝手に触らせていただいた謝罪、そして感謝の気持ちをフラッタとリーチェにしっかりと告げる。
フラッタとリーチェ。お前達のおっぱい、最高のおっぱいだったよ!
「それじゃそろそろ教会に行こうか。説教が大分長引いたから結構ギリギリだよ」
「ご主人様が悪いんでしょっ! 普通にお礼を言わないでくださいっ!」
「う~ん。ご主人様も私たちにしか興味がないってわけじゃないんですね。個人的には少しホッとしました」
礼を言うななんて無茶言わないでくれよニーナ。この世の全てのおっぱいには感謝と敬意をもって接さないといけないんだよ?
そしてティムルはどういう評価なんだよまったく。
朝っぱらからひと騒動あったけど、礼拝日の手伝いに遅れないように慌ただしく家を出た。
礼拝日の手伝いは2度目なので、最早勝手知ったるなんとやらだ。
ニーナが心配していた修道服は、ティムルの分のサイズも問題なくあった。
丈は少し短いかな? 下に服着てるから問題ないけどね。
けれど問題なのはリーチェで、修道服の下からおっぱいの主張が激しすぎる。お前ムーリさんかよ。いやムーリさんもセーフなんだからセーフか?
でもそのおっぱいを触ったばかりの俺には目に毒過ぎるんだよ。これ1日中目に入ってるのキッツイなぁ。
ムーリさんのありがたい説法が終わり、手伝いの本番である炊き出しが始まる。
フラッタとリーチェなんて炊き出しに参加させたら男が群がりそうだと心配していたけど、始まってみると意外や意外、なんの問題もなかった。
忘れてたけどこの2人、家事技能が壊滅的なんだった。
恐ろしいことに炊き出しのスープをよそう事すら満足に出来ず、裏方で荷物運びばかりさせる羽目になった。
おかげで人目に殆ど触れることがなかったのは助かったけど。適材適所って大事ね。
「ティムルさん!? どうしてこんなところに!?」
むしろ大変だったのはティムルで、元々顔の広いティムルと、街中の人が集まる礼拝日は相性が悪かったようだ。
声をかけられるたびに俺の奴隷になった事を説明するのは大変そうだったけど、何故か本人は喜々として説明をして回っていた。
本人が良いならいいのかなぁ。
「ふはははっ! 人々の為に働くというのは、大変気持ちが良いものじゃっ」
「こんなに大勢の人の輪に入ったのも久しぶりだよ。なんだか悪くないね、こういうのも」
フラッタとリーチェの2人も楽しんでくれたようだった。
お前らひたすらに食器とか食材とか運んでるだけじゃなかったっけ?
ま、喜んでる2人に水を差す様なことは言いませんけどぉ?
前回同様に教会で夕食をいただいて、真っ暗な中帰宅した。
……って待て。なんでフラッタが普通にうちに来てんだよ。礼拝日も終わったんだし帰れっつうの。
「毎度の事ながらつれない男よのぅ。妾のおっぱいを好き放題弄んだ右手くらい素直になるのじゃ」
「ああ、あの時の右手って自分の気持ちに素直になってたのかぁ。俺の思考に逆らってまでフラッタのおっぱい揉んでたからねぇ。その節はごちそうさまでした」
「くっ。微妙にご主人様に罪悪感のないシチュエーションなのがタチ悪いですね……!」
俺の態度に不服っぽいニーナだけど、自分の劣勢を悟っているのか実際に説教を始めたりはしなかった。
「ベッドに潜り込んできたのは彼女達で、ご主人様はちゃんと拒否していたわけで……。しかもそもそもが突然の来訪に嵐のような夕食……。くうぅっ、これだからフラッタはぁっ」
しかもニーナ的には、俺がフラッタを拒絶したところを自分が許可しちゃった形だもんなぁ。俺を責められないのも仕方ない。
ただまぁそんなにストレスを感じてるようには見えないので、恐らく心配ないのだろうとは思う。
「皆は明後日から遠征の予定なのじゃろ? 明日の日没に帰るから、今日も泊めて欲しいのじゃ」
「……フラッタちゃん。今朝あんなことになってましたけど、それでもまた同じベッドで寝るんですか?」
「無論じゃ。減るものでもないし、寝ている間に何をされようとも気にせんのじゃ」
ティムルの問いに答えたフラッタが、とても聞き逃すわけにはいかない重要な情報を俺に告げる。
ほう? 寝ている間はフリータイムですと? これはこれは素晴らしいことを聞かせていただきました。ってそうじゃないんだよぉ……!
「僕も……、僕もいっしょでいいよ。4人が一緒に寝てるのに、僕だけ別室って寂しすぎるよ。今朝の事は、うん。ダンに迷惑かけてるし、迷惑料だと思って忘れるさ……」
フラッタに続いて、リーチェも同衾決定かぁ……。
っていうかまず俺の意志を確認しろよコイツらはさぁ。流石に今日はダメとも言えないんだけど。
「むしろ4人で寝室使って俺が客室で寝ればいいん「「「「それはダメっ」」」」なんでだよぉ」
なんでそこで4人全員でハモるわけ? なんでここでアウェー感を抱かないといけないんだってば。
俺の両手はもう2人のおっぱいの感触を完全に記憶してしまったから、多分俺の意識がなくても同じことすると思うよ?
多分明日の朝を1番怖がってるのって俺なんじゃないかな?
寝支度をしてベッドに入る。
配置は昨日と同じだ。というかこれ以外に配置のしようがない。
はぁ~。今日もニーナとティムルとの有酸素運動はお預けかぁ……。
せっかく好色家を上げてきたっていうのに、これは酷い、拷問だよぉ。
悶々としながらニーナとティムルを抱きしめていると、ティムルの向こう側からリーチェが話しかけてくる。
「ねぇダン。おっぱいを揉まれた対価ってわけじゃないけど聞かせてくれないかな? 昨日君は僕の依頼に対して何かに気付いたよね? あれは何に思い至ったのさ?」
「あ、それ私も気になってました。ご主人様、心底ウンザリされてましたから」
えええ? ここで聞く? この状況で聞いちゃうの? 寝ているフラッタもいるんですよ?
あ、まだ起きてやがる。
「……今じゃなきゃダメなの? お前の依頼を知らないフラッタもいるんだよ?」
「ん? 妾のことなら気にせんでよい。むしろ兄上の話なのであろう? ならば私も聞くべきなのじゃ」
んー、まぁリーチェの依頼内容を知ったフラッタなら聞きたがるかぁ……。
はぁ……。話したくないよぉ。
そもそも何の確証もないただの思い付きなのにぃ。
ただの思いつきだけど、死ぬほど胸糞悪くなる、誰も幸せにならない話なのに……。
「はぁ~っ。寝れなくなっても文句言うなよ?」
どうせ俺も寝れそうも無いしな。お前らが寝れなくなっても知ったこっちゃないわもう。
「これは何の根拠も無い、俺が想像しただけの話だ。俺自身これが真実だとは思ってないし、聞いたお前らも話半分以下で聞いてくれよ」
「うん。分かってるよ。ただこっちも行き詰まっててさ。新しい考え方が欲しいんだよ」
「妾も兄上のいる場所には皆目見当が付かぬ。何か思いついたのなら知りたいのじゃ」
はぁ。やだなぁ。よりにもよってフラッタがいる場所でこんなこと言いたくないよぉ。
昨日と同じく俺に半分乗っているニーナとティムルを抱きしめて、覚悟を決めて口を開く。
「竜人族の飼育からの違法奴隷取引の主犯ってさ。マルドック商会じゃなくて、実はシルヴァ・ム・ソクトルーナの方だったんじゃない?」
「「「「……は?」」」」
4人の素っ頓狂な声が真っ暗な寝室に谺する。
……こんな考え、外れてくれてたらいいんだけどねぇ。




