634 失踪
※R18シーンに該当する表現を大幅に(1500字程度)カットしております。
「チャール。シーズ。2人とも、すっごく気持ちよかったよ? だからいーっぱいお返ししてあげるねー」
現在はベッドの中央でチャールとシーズを抱き寄せて、2人にたっぷりとキスをお見舞いしながら他の家族を順番に愛しているところだ。
ご褒美もお仕置きもいっぱい受け取ったので、みんなにもしっかりお返ししなければいけないのだっ。
エロいことをしながら寝るのは慣れていたつもりだったけれど、俺は一向に眠ることが出来なかった。
眠ろうと意識すればするほど興奮して、俺の意識をいつまでも最高潮のままで維持し続けてくれたのだ。
眠らなければ先に進めないのに、どうしても自力では眠ることが出来ない状況に、俺は1つの策を思いつく。
自分で眠りに就くことが出来ないなら、魔力枯渇を起こして強制的に意識を落としてしまえばいいじゃない作戦だ。
本来の魔力枯渇はそのあまりの具合の悪さに逆に意識がはっきりしてしまうのだが、今の俺が魔力枯渇を起こすと昏睡状態に近い状態になって意識を失ってしまうのは実証済みだ。
戦闘中でもなく、家族のみんなと一緒のこの状況でなら安全に意識を落とす事が可能だろう。
しかし、俺の膨大な魔力と多重に累積した自動回復スキルを突破して魔力枯渇を起こすのは容易ではない。
が、今の俺は、聖域の樹海で片付けに従事しているイントルーダーたちと魔力的に繋がった状態。手はあった。
全魔力を消費するつもりで竜王にサーヴァントを召喚させ、他のみんなが異変に気付く間もなく一気に魔力枯渇を起こして意識を落としてやったのだ。
起きたみんなにはそれなりに怒られたけど、どうやら今回はちゃんと自主的にコントロールした為か心停止や呼吸停止にまでは至らずに済んだらしく、みんなに心配を掛けずにえっちフェーズに移行することが出来たのだった。
その代償に造魔イントルーダーたちは消滅してしまったので、改めて召喚し直さなきゃいけないのが地味に憂鬱だけど……。
みんなの柔らかな感触に包まれていたら、憂鬱な気分なんてどうでもよくなっちゃうよっ。
寝る前のお仕置きから興奮が延長していた俺は、ひたすらら家族を愛し続け、それでも間に合わない分はアウラに受け止めてもらったのだった。
「ふふっ。すっかり元気になったみたいなのーっ」
すっかりご機嫌になった俺を見て、嬉しそうに笑ってくれるニーナ。
昨日寝る前に沈んでいた気持ちは、天にも昇るほどに上がり続けている。もう心配要らないよー。
「それで、ダンは今日どうするのかしらぁ? このままずーっと寝室で1日過ごす気なのぉ?」
「そうしたいのは山々だけど、流石にゴブトゴさんへの報告をしないわけにはいかないよね……。地域監査員が軒並み居なくなっちゃったわけだから」
思い切り未練を滲ませた声でティムルの問いかけに返答する。
それを聞いてシャロが慎重に口を開いた。
「……ある意味、即位式を控えたこの時期でまだ良かったのかもしれませんね。即位式以外のイベントは全て中止か延期されていますから、各地への影響は最小限で済むでしょう」
「結局は先延ばしでしかないのが困りものだけどねぇ……。国との連絡役なんて、簡単に代役が見つかるとも思えないしさ」
シャロの言葉を引き継いで、ロストスペクターがいなくなった事による影響を不安視するリーチェ。
覚悟の上だったとはいえ、ロストスペクターがごっそり抜けてしまった影響は計り知れないだろうな……。
かと言って、あいつらを放置しておくと誰かが不幸にされ続けるので、奴等の排除は必須だったとは思うけど……。
「……申し訳無いけど、その辺はゴブトゴさんにって言うか、スペルド王国に対応してもらうしかないんじゃない? 今回の件に関しては、どう行動したってどこかしらに迷惑がかかる話だったわけだから」
「……その通りですね。今回の件を秘密裏に処理するのって無理だと思います」
後始末をゴブトゴさんに丸投げしてしまえという俺の意見に、エマは真面目に同意してくれる。
「要職に就いていた彼らが抜けてしまっては、王国の混乱は必死でしょう。けれど彼らこそが混乱を産み出し人々を苦しめていたのですから、今回の排除は絶対に必要なことだったと思いますよ」
「ダンさんは王国の悪い部分を切除してくれたと思っています。ここから頑張るのは我々王国民であり、私たち王国貴族であるべきですよっ。だから安心してくださいねーっ?」
両拳を胸の前で握り、頑張りますーっと意気込むラトリア。
意気込むラトリアを見ると多少不安を感じてしまうんだけど……。
彼女の熱意は本物だろうから、信用しないわけにはいかないね。
きっとゴブトゴさんも、ラトリアに負けないくらいの愛国心と熱意を秘めているだろう。
なら下手に心配するよりも、早いところ報告してきた方が良さそうだね。
「それじゃお城に報告に行ってくるから、今回案内してくれたシャロとキュールも説明の為についてきてね」
「はいご主人様」
「了解だよ。ま、私の説明が必要だとも思えないけどね?」
「それで報告が終わったら、もう1度ロストスペクターのところに顔を出そうと思うんだ。だからインベントリに入る範囲で構わないから、食料やマジックアイテムをいくつか用意しておいてもらえるかな?」
お留守番のメンバーに、ロストスペクターへの差し入れを用意しておくようにお願いする。
追放しておきながら支援するっていうのもチグハグなんだけど、これからあいつらは完全に未開の地域を1から開拓していく事になるわけだからな。
餞別の1つや2つくらい、くれてやったっていいだろ。
「あはーっ。ダンったら、そんなに苦々しい顔しなくていいのよーっ? それじゃあ新生活に必要そうな物を適当に見繕っておくわねぇ」
「宜しくねティムル。チャールとシーズはこのまま少し休んでて。帰ったらまた可愛がってあげるから」
既に限界を超えた様子のチャールとシーズには休んでいてもらう事にする。
シャロとキュールを連れ立って、俺はスペルディア王城へ足を運んだ。
「……来ると思っていたぞ! さぁ早く、いったい何が起きたのか説明してくれ……!」
俺の登城を予測していたらしいゴブトゴさんが、疲れ果てた様子で説明を求めてくる。
どうやら昨日から今日にかけて、スペルディア王城内でも行方不明者が多数確認されているようだ。
「管理職に就いていた者の半数以上……。王国騎士団も3分の1程度の人員が昨夜から行方が分からなくなっている……! こんな意味不明な事をするのはダン殿しかありえんからなっ。今か今かと待ち侘びていたぞっ」
「うお、思った以上に影響が出てるな……」
連絡役だけじゃなくて、王国騎士団にもそんなに沢山のスパイが潜り込んでいたわけか。
文字通りスペルド王国の中心である城内には、特に念入りに配備されていたようだ。
「でもさぁゴブトゴさん。問題が起きると問答無用で俺に矛先向けるの、やめて欲しいなぁ?」
「問題が起きた直後に訪問してきたくせに、いったいどの口が言っておるのだっ! と、こんな話はいいからさっさと説明してくれっ!」
「ちょっと釈然としない流れだけど……。まぁいいや。まずは掻い摘んで説明するね」
ここでゴブトゴさんに反論しても仕方ない。
実際俺が原因なわけですし?
独断でレガリアの残党狩りを敢行した結果、レガリアの構成員はスペルド王国の中枢に効率よく配置されていたので、排除したら思ったより影響が大きくなってしまったとザックリ説明する。
「つまり失踪した者たちは、その全員がレガリアに与する者だったというのか……!」
ギリリと悔しそうに歯を食い縛り、怒りを顕わにするゴブトゴさん
驚くほど身近に存在していたレガリアの構成員を見抜けなかった事が、ゴブトゴさんには本当に悔しかったのだろう。
失踪者は恐らく、聖域の樹海の先に追放したロストスペクターの面々が、仲間や家族を連れていったんだろうなぁ。
昨日の時点で王国騎士団とかまで調査出来ていなかったから、家族や仲間に誘われて自主的に王国を出て行ったんだろう。
「ゴブトゴ。どうかご主人様を責めないであげて。ご主人様は誰の血を流すことなく、レガリアの残党達たちを王国から完璧に排除してみせたのですから」
「……シャーロット様。心配せずともそんな気はありませんよ。私が案じているのは、今後の国の運営の方ですな……。はぁぁぁ……」
ゴブトゴさん。そんなこと言いながらも俺を見て溜め息吐くの、やめてくれない?
『勘弁してくれ』っていう無言の圧が凄まじいんだよ?
「元帝国の人間の私が口を挟むのは、少々差し出がましいかもしれないけれど……。この機会にスペルド王国は、色々なものを見直すべきだと思いますよ」
「……ご忠告痛み入る。が、キュール殿……。何もこの忙しい時期にぃ……! と思うくらいは許して欲しいものですなぁ……?」
「そこで俺を見ないでくれるー? 時期に関しては申し訳なかったけど、もしも排除が遅れたって絶対文句言ってたでしょー?」
「……ふんっ。確かになっ! だがそれでも言わせて貰うぞっ、何故今なんだとなぁっ!?」
何故かと問われても、明確な答えは返せないんだよ? いけそうだと思ったから実行しただけだからね。
ただでさえ忙しい今、大幅に仕事を増やされてしまったボブトゴさんがキレるのも無理はないけどさ。
「キュール殿に進言いただいた通り、新王の即位に合わせて色々変えていくしかないだろうな。だから新王の即位前に排除に動いたダン殿の判断は妥当だ。そのせいで寝る間も無くなりそうだがな?」
「ふふ。父が存命中の時だって寝る間も惜しんで働いていたくせに、ご主人様には素直に文句を言うんですね?」
「レガリアに与した各地の領主も処断したいところだが、流石に今は手が足りん……! 運がいい奴らだ、忌々しいっ……!」
からかうようなシャロの指摘を強引にスルーして話を進めるゴブトゴさん。
そんな、ちょっと素直になれないキャラみたいな振る舞いしないでくれますぅ?
「正直に言えば、俺のシャロを弄んだってだけでも領主連中を八つ裂きにしたいところではあるけど……。彼らは監査員が居なければさほど大きな影響力も持たないと思うし、処分は先延ばしにしても問題ないんじゃない?」
「いっそ八つ裂きにして欲しいところだがな? 彼らには苦労させられた記憶しかない」
「あははっ。ご主人様になら堅物の貴方もそんな冗談を口に出来るのですねっ」
「……ともかく報告感謝する」
楽しげに吹き出したシャロに対して、どこかバツが悪そうな表情で口を噤むゴブトゴさん。
冗談じゃなくて本気で八つ裂きにして欲しかったんだろうけど、流石に殺しの依頼なんて請け負わないからね?
「仕事が増えて頭が痛いが、レガリアという悩みが1つ消えたことは確かだからな。悪いことばかりでもないだろう」
では失礼すると、俺達の退室を待たずに出て行くゴブトゴさん。
誰かさんのおかげで大忙しだと笑いながら、慌ただしく仕事に戻ったようだ。
散々嫌味を言われた気がするけど、思ったよりは怒られずに済んだかな?
「失礼いたします。宰相ゴブトゴより預かり物がございます」
「えっ」
さ、それじゃ帰ろうかとシャロとキュールを抱き寄せた時、メイドさんが数枚の書類を俺達に渡してきた。
なんだろうなと目を通すと、渡されたのは今回姿を消した人たちの経歴と、以前頼んでいたノーリッテの調査結果の報告書のようだった。
……そう言えばノーリッテの調査を頼んでたんだったな。すっかり忘れてたよ。
お返しにバイタルポーションを残し、受け取った資料に目を通しながら今度こそマグエルに帰還したのだった。




