633 パラドクス
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「フラッタ。ラトリア。……2人はあれで納得してくれてる?」
ロストスペクターをスペルド王国から追放した俺は、家族と共にマグエルに帰宅した。
そして夕食を作り始めたみんなを置いて、寝室でフラッタとラトリアを押し倒し、2人のおっぱいに顔を埋めながら、レガリアに最愛の人を殺された2人に問いかけている。
「あいつらがどれだけの人を苦しめてきたのか、想像することも出来ないっていうのに……。それでも俺は、あいつらを殺さずに済ませる道を選んでしまったんだ……」
どうしてこの2人にこんなことを聞いてしまったのか。
それはきっと、家族の中で直接組織レガリアに攻撃を受け、愛する人を喪ってしまったのがこの2人だからなのだろう。
「2人はさ、俺の下した判断をどう思うかな……。俺はちょっと、自分の判断に自信が無くてさ……」
「レガリアの残党共を殺すこともできず、けれどその判断で妾たちを傷つけてしまったかもしれないと悩んでいるのじゃな? んふふー。相変わらずダンは優しいのうっ」
「ふふ。フラッタの言う通り、ダンさんは優しいですねーとしか思いませんよ?」
2人はおっぱいに頭を埋める俺の頭を撫でながら、くすくすとおかしそうに笑ってくれる。
フラッタとラトリアの楽しげな笑い声に、俺の心の曇りが少しずつ晴れていくように感じられた。
「ディアの仇であるノーリッテは既に討ったあとですし、王国で暗躍していたと言われても、直接何をされたわけでもない相手のことまで憎んだり出来ませんよ」
「……そっか。ありがとう2人とも」
フラッタとラトリアのおっぱいに頬ずりし、柔らかさの奥から伝わってくる温もりに心が温められていく。
2人と肌を重ねたいという気持ちよりも、今はただ2人に甘えていたい。
「亡霊共もスッキリした、まるで憑き物が落ちたような顔をしておったのじゃ。ダンは奴らを王国から追放したと言っておるが、妾には奴らを王国から解放したように思えたのじゃ」
「追放じゃなくて、解放?」
「うむ。奴らに同情する気など無いが、奴等は生まれた時から王国への憎しみを持っていたと言っておったからのう。ニーナが言っていた通り、それは呪いに近い感情ではなかったのかと思ってしまうのじゃ」
「……うん。ニーナが言うと説得力があるよね」
「産まれた時からスペルドを憎み、そして子々孫々とその憎しみを受継いでいくなど、まっこと呪いと言うに相応しいのじゃ……」
フラッタは少しだけ声を震わせて、俺の頭を抱き締める力を強めた。
出会った頃から人の悪意に恐怖を覚える事の多かったフラッタは、遥か昔から受継がれてきたレガリアの狂気に慄いてしまったようだ。
「そしてその呪いは、スペルド王国で生きている限り決して解かれることのない呪いなのじゃ。だからダンは奴らを王国から解放し、永遠の憎しみから解き放ったように思えたのじゃ……」
「そんなつもりじゃ、なかったんだけどね……」
優しげなフラッタの言葉と小さなおっぱいの奥から伝わってくる鼓動に、俺は少しずつ心が落ち着いていくのが分かった。
そして2人の温もりに縋るように、ゆっくりと意識を手放し眠りに落ちていく。
「誰も殺さずに事態を収めたダンを責めるはずがなかろう? よくやったのじゃダンよ。仇敵にすら優しさを捨てられない、そんなダンが大好きなのじゃ……」
「ディアだって、直接関わりのなかった者まで気にしたりはしませんよ。ダンさんが気に病むことなんて何にも無いんです。だから今はゆっくりと、私たちのおっぱいで眠ってくださいね……」
2人の優しげな声が、俺の意識をゆっくりと深い眠りに導いてくれるのだった。
「ダンよ。起きるが良い。夕食ができたのじゃ」
「……ん。夕食……? あれ、俺寝てたのか……」
目を覚ますと、笑顔のフラッタとラトリアのおっぱいに顔をサンドされているという最高のシチュエーションだった。
なので寝惚けた頭でとりあえず2人抱き締め、おっぱいの感触を堪能する。
「ダンよ。おっぱいを好きにされるのは構わぬが、夕食に遅れるのは嫌なのじゃが?」
「んー? じゃあこのまま食堂まで連れてってくれないかなぁ。フラッタの可愛いおっぱいも、ラトリアのおっぱいも離したくないんだよ?」
「ふむぅ……。妾の方が背が高ければ運んでやれたのじゃがなぁ」
「……フラッタ。貴女ちょっとダンさんを甘やかしすぎてません?」
残念そうに呟くフラッタと、ちょっと引き気味のラトリアを抱き寄せる。
「仕方ない。リーチェよ、寝室に夕食を運んでくれぬかのう?」
「お安いご用だよっ。直ぐに持っていくねーっ」
突然割り込んできたリーチェの弾んだ声が響いたかと思うと、俺の横でどんどん料理が運ばれてきて、あっさりと寝室で夕食を取る準備が整ってしまった。
それ自体は構わないんだけど、チャールとシーズの2人まで夫婦の寝室に居るのはちょっといただけないんだよ?
「なぁに言ってるのよぉ。ダンが起きないのが悪いんじゃなぁい。フラッタちゃんは、ちゃーんと貴方を起こしてたでしょー?」
「う、確かにそうかもしれないけどぉ……。だからと言って、可愛いフラッタとラトリアを離すなんて出来そうもなくって……?」
「「…………」」
ティムルの指摘に、チャールとシーズが呆れた様子で俺を眺めてくる。
その冷たい視線、なんだかゾクゾクしちゃうんだよ?
「既に婚姻も済ませてるのに、ダンってばいったい何の話をしてるのよー? 夫婦の寝室って言うなら、私たちがここに居る権利は普通にあるでしょっ」
「チャールの言う通りだぜー? こっちはダンの我が侭で抱いてもらうのを待ってやってんだからよ。自分が言ったことを破りたくないなら、精々気合入れて我慢するんだなー?」
ルーナ母娘を押し倒している俺の背中に、笑いながら抱きついてきたチャールとシーズ。
この2人……。まだ肌も重ねていないってのに、言動が随分エロくなってきたんだよ? 仕込みは順調ですね?
「大体ダンは今日、私たちを相手してくれる気は無いでしょー? ならチャールとシーズが一緒に寝たって問題ないじゃないのーっ」
「え、ちょっと待ってニーナ。それってドコ情報なのさ? 俺がみんなを相手しないわけ……」
「ずーーーーっとフラッタとラトリアを押し倒してるくせに、2人を抱いてないじゃないのっ! 甘えたい時まで無理してえっちしなくていいんだからねー?」
仕方ないなぁと溜め息を吐きながら、服を着たままベッドに上がってくるニーナ。
でもニーナ、それって誤解なんだよ。
ちょっと真面目な話題だったから、えっちしながらする話でも無いって思っただけで……。
……え? 説得力ゼロだって? 返す言葉もありませんね?
「いいからダンはそのまま休みなさいっ。えっちしたいなら起きてから付き合ってあげるから」
「え~……。みんなとえっちもしたいんだけどぉ……?」
「……あのねぇダン。普段の貴方ならとっくにフラッタとラトリアを可愛がってるの。私にそうやってお伺いを立ててる時点で、今の貴方は乗り気じゃないのっ」
「う……」
そ、そう言われると意外と反論し辛いな……?
うん、この思考が大分おかしい気はするけど?
「どうせダンの眠りは短いんだから、つべこべ言わずに休めばいいのっ。ダンが目を覚ますまでは、チャールとシーズに頑張ってもらうからっ」
「「「へっ?」」」
予想外のニーナの言葉に、俺の声がチャールとシーズの声と重なった。
既に俺に抱きついてくれてる2人に、これ以上何を頑張ってもらうって言うの?
「2人には優しくなでなでして、ダンを寝かしつけてあげて欲しいのっ」
「じゃないよーーっ!! この状況で寝れる訳ないでしょーーっ!?」
「だぁめっ。1度寝ないとえっち禁止なのっ。チャールとシーズになでなでされながら、1度しっかり眠りなさーいっ」
「なんでぇ~……。なんでえっちしちゃ駄目なのさニ~ナ~……?」
「だってダン。自分の選んだ選択を責めて欲しかったんでしょー?」
「…………え」
あまりにも当然のように言い放つニーナの言葉が理解できなくて、つい間抜けな反応をしてしまう。
っていうか、さっきからニーナの言動の触れ幅が大きすぎてついていけないんだよっ!?
「レガリアの残党を生かした自分の選択に自信が持てなくて、誰かに糾弾して欲しかったんでしょ? でもねダン。貴方はロストスペクターを追放しようが殲滅しようが、どっちにしても結局は後悔してたと思うんだー」
「え……、どっちにして、も……?」
「ダンは、あの人たちが王国の人たちをずっと苦しめ続けてきた加害者だと分かっているのに、それでもあの人たちに直接会ったことで、ひょっとしてこの人たちも被害者なんじゃないかー、って迷っちゃったんだよ?」
戸惑う俺に構わず、俺の胸の内を読み上げるニーナ。
「産まれた時から王国を憎み続けなければいけなかった彼らの事を、ダンは『不幸』だと思っちゃったの。だから私たちの愛する優しい優しい暴君様は、彼らの命を奪う事を良しとしなかったんだよ?」
「……正直、あの時俺がそんなことを考えたどうかは分かんないけど……。確かにそれは、不幸、だね……」
「だけどダンは彼らが加害者であることも誰よりも理解しているの。だから彼らを許すことも殺すことも出来なかったから、自分が選んだ決断を否定して欲しくなっちゃってたんだよ?」
まるで直接俺の魂を読み取っているかのように言い切るニーナが正しいのかどうか、俺自身の話なのに判断がつかない。
……けれど、彼らが不幸な運命を背負わされた被害者だと知ったからこそ、新たな被害者を産み出し続けた加害者である彼らを許すことは、絶対に出来なかった。
それは、間違いない……。
「眠ってダン。眠って、そして切り替えて。きっと貴方のその迷いに、絶対の正解なんて無いんだから」
「……ニーナ」
「貴方は不幸を背負った彼らを殺しても後悔したはずだし、不幸を生み出し続けた彼らを見逃しても後悔していたはずなの。貴方に提示された選択は、きっとどっちも間違いで、そしてどちらも正しかったの。だから引き摺っても仕方ないことなんだよ?」
どっちを選んでも正しくもあり、どちらを選んでも道を誤ったと後悔するしかなかった。
ニーナに心を言語化されると、確かにそうだったのかもしれないと自分の抱いた気持ちが鮮明に浮かび上がってくるようだった。
だからニーナの言っている事は正しくて、俺はこのまま眠りにつくべき状況なんだろう。
だけどさニーナ。それって質問の回答になってなくない……?
「いつも通り、ニーナが俺以上に俺の事を理解してくれてるのは分かったけどぉ……。それがなんでみんなとえっちしちゃ駄目って話になるのさぁ……?」
「ふふっ。決まってるのっ。これは道を誤ったダンに対するお仕置きなのーっ」
諭すように語り掛けていたニーナは、その声を明るく一変させて嬉しそうに告げてくる。
寝るまでえっち禁止のこの状況は、俺に対するお仕置きであると。
「どっちを選んでも正解でも間違いでもあるなら、私たちもご褒美とお仕置きをどっちもあげちゃうのーっ!」
「お仕置きは分かるけどぉ……。ご、ご褒美って何ぃ~……?」
「ロストスペクターを追放したご褒美に、まだ抱けないチャールとシーズにいーっぱい悪戯されていいからねー? だけどロストスペクターを見逃した罰に、1度寝るまでえっち禁止なのーっ」
「そんな複雑な理由だったのーっ!? 俺はてっきり、ただ面白がってるだけかとーーっ!?」
「ふっふーん。ダンが落ち込んでる時にそんなことしませんよーだっ。だけど糾弾されたいダンの為に、私たちに出来る精一杯のお仕置きをしてあげちゃうのーっ」
ニーナ司令官の下した命によって、一斉にお仕置きを開始するみんな。
ななっ、なんて角度で責めてきやがるんだ司令官殿ーーーっ!!
て言うかねニーナ!?
俺、さっき起きたばっかりな気がするんですけどーっ!? 寝れるかーーーーっ!!




