572 ※閑話 調教
※R18シーンに該当する表現を大幅に(3000字程度)カットしております。
閑話です。シャロ視点。時系列は562『※閑話 色狂いが生まれるまで』の続きから本編に至るまでとなっています。
「……え。わっ、私、裸……? え、ええっと……?」
目が覚めた私は、自身の置かれた状況に困惑する。
「この男は……。そうだ、私は昨日、この男に……」
気持ち良さそうにいびきをかいている男の顔を見て、昨晩自分の身に起きたことが思い起こされる。
昨晩私は自分の奴隷であるこの男に唆されて、ひと晩中この身を弄ばれ続けたんだった……。
昨夜の記憶を辿っている間に眠っていた奴隷の男が目を覚まし、下卑た笑いを私に向けてくる。
「けひひ……! 実にいい朝だなぁシャーロットォ……!」
「なっ……! むぐぅ!」
私が言葉を吐き出す前に、私の口は男の口で塞がれる。
男は片手で私の後頭部を抱き寄せ、私の抵抗を許さず貪るように唇を重ねてくる。
そのまま私は何の抵抗もできず、数分間の間ひたすらに唇を奪われ続けた。
「けひひっ。愛する妻からの口付けで目覚めることが出来るとは、人生最良の目覚めだったぞぉシャーロット。早くも我が妻としての自覚が芽生えたようで主人の俺も嬉しく思うぞぉ! ひゃはっ」
「はぁ……! はぁ……! だっ、れが、お前の妻ですかっ……!」
「けひひっ。最高の目覚めを提供してくれた妻には礼をせねばならんが、あまり騒ぐと人が来てしまうぞぉ? いいのかぁシャーロットォ……。奴隷に弄ばれた惨めな王族の姿を人に知られてもよぉ? ひひひっ」
「ひゃっ!? ひゃにをっ!?」
男は私を乗せたまま横に回転し、私をベッドに押し倒す。
そして左手を私の口に突っ込み、私の舌を引っ張り上げてくる。
「ひゃっ……! はふっ……!」
「ひゃははっ! 舌の動きを封じられると、それだけで意外と声も出せなくなるだろぉ? 説明が終わるまでキスは出来ないからなぁ。悪いが少しそのまま我慢していろぉ。けひひひひっ」
「ひゃっ……だぁぁぁ……!」
私の舌を掴み上げたまま無遠慮に私を弄ぶ男は、満足げな様子で私に臭い吐息を吹きかけてくる。
その臭いに思わず顔を晒した仕草にさえ興奮を覚えたようだった。
「はぁぁぁぁ……。良いかぁシャーロットぉ? 今からお前に妻の務めというものを教えてやるぞぉ……!」
一方的に妻と役目とやらを私に申し渡した男は、私に覆い被さるようにキスをして執拗に私を求めてくる。
そして男が満足するまで、私の口は一瞬たりとも解放されることは無かった。
「もうやめっ、むぐぅ!」
朝から何度も私の体を貪る男。
王族たちは自分で起きてくるまで、緊急の場合以外は絶対に誰も起こしに来る事はない。
それを知っている男は私の声をキスで封じながら、何度も何度も私の体を貪った。
「きひひ……! 愛し合った後、妻は感謝の気持ちを持って、夫に奉仕せねばならんぞぉ?」
満足した男はベッドの淵に座り、両手を拘束したままの私に妻の奉仕とやらを強要する。
奴隷の男の前に跪くような体勢で、まるで奴隷の男に王族の私が傅いているみたいだ。
「いいかぁ……。これからは2人きりの時は、俺の事をご主人様と呼ぶんだぁ……。俺はお前の夫、主人なのだからなぁ? 分かったかぁシャーロットォ……!」
男がわざと私を乱雑に扱い、自分の命じた奉仕を邪魔していると気付くのに時間は必要なかった。
奴隷の男に好き勝手に弄ばれている今の自分の置かれている立場は、まるで躾されている犬猫のように思えた。
「ひひっ! けひひひっ! 生涯愛し合おうなぁシャーロットぉ……! ひゃははははははっ!」
素直に従う私を見て、勝ち誇るように笑う奴隷の男。
この瞬間王族と奴隷という両者の立場は逆転し、主人と性奴隷という新たな関係性が誕生してしまったのだった。
この日から男は、暇さえあれば私の体を貪るようになった。
男は危険な橋を渡っている自覚はあるらしく、私の私室の外で私に近づくことは一切無かった。
しかし食事や習い事の時間を最小限まで短縮するよう強要し、なるべく多くの時間を使って私の体を自分好みに仕込んでいった。
「良いですか? 私は部屋で奴隷と戯れているだけです。私が私室に戻った後は私の部屋の周辺にいる事を禁じます。良いですね?」
スペルディア家は生来我が侭な一族だ。
王であるシモンお父様を筆頭に、城の中ではありとあらゆる便宜が図られ、どんな理不尽で不可思議な要求でも通ってしまう。
なので私本人が問題ないと言えば問題が無くなり、私本人に近づくなと言われれば誰も部屋に近づくことは出来なくなる。
私の主人となった奴隷の男は私に人払いを要求し、そんな男に私はただひたすら従順に従った。
「ひひっ! ひひひひひ! 明るい時間に見るシャーロットの体は最高に美しいなぁ? ひゃははっ。まだ昼前だというのに仕方の無い奴だなぁ! だが愛する妻の求めに応じるのは夫の甲斐性というものだぁ!」
得意げに笑う男に、男の望む言葉を返す。
男の行為に強い快感とひと握りの嫌悪感を覚えながら、私はぼんやりと夕食の内容を予想するのだった。
「まったく……。妻としての心構えを教えてやっているというのに、お前と来たら……! ひひっ、ならば今は徹底的に快楽を叩き込んでやろうではないかぁっ! けひひひっ!」
「ご、ご主人様、待って待っ……!」
男は獰猛に笑った後、いつもより乱暴に私を求めてくる。
「くくく……! 主人への奉仕を忘れ自分ばかり快楽を貪りおってぇ。さぁシャーロット! 妻として俺への謝罪と感謝を述べるのだぁっ!」
「じょっ、上手にご奉仕できなくて申し訳ありませんっ! 自分ばかり気持ちよくなる出来の悪いシャーロットをいつも沢山可愛がってくれてありがとうございますっ……!」
「苦手なことをさせて済まなかったなぁ? これからはシャーロットのために主人として夫として、全力で応えてやるからなぁっ!」
そうしていつも通り私に覆い被さった男は、何度も何度も私の身体を精を貪り続けるのだった。
いつも通りの流れに、私は快楽に溺れながらも少し退屈さを感じ始めていた。
「はぁはぁ……。どうだ? 視界が閉ざされると感覚が鋭敏になるだろぉ? 今どんな気分だぁシャーロットぉ?」
この日は両手を後ろ手に拘束され、目隠しまでされてしまった。
どうやらご主人様は、女を拘束して弄ぶのがが比較的好きなようだ。
「こんな真昼間から王女であるお前が奴隷である俺に好き勝手に扱われておるとは、この城の誰も想像もしていないだろうなぁ? けひひっ」
「お戯れを。妻である私がご主人様の求めに応じるのに時間も作法も関係ありません」
「その通りだぁシャーロットぉ。妻であるお前は主人である俺の物なのだからなぁ。だがこんなに愛し合っている俺達が子供を作れんとはなぁ……」
しかし上機嫌だった男は、突然心から残念そうに私と子を生そうと口にする。
その言葉に思わず出そうになった溜め息を我慢するのは本当に大変だった。
「シャーロットよ。王女であるお前の力でどうにかできんのかぁ?」
「申し訳ありません。スペルディア家は王を頂点に、その他の王族の立場は全て平等なのです。全員同じ権限を有しておりますが、全員同じ制約があるのです。全てを自由に振舞えるのは王である父だけです」
「つまり王女であるお前にはこれ以上どうしようもないという事かぁ。ならば仕方あるまい。せめて妻の体だけでも自由にさせてもらうとするかぁ!」
まるで八つ当たりをするように私の体を乱暴に扱うご主人様。
ひたすらに私の体を貪り、この日は食事まで辞退させて本当に1日中何度も何度も相手をさせられてしまった。
ご主人様に逆らう気なんてないけど、せめて食事くらいは普通にさせて欲しいと思った。
しかしそんな日々は唐突に終わりを迎える。
バルバロイ兄様が私室に篭る私を不審に思い、私の部屋の調査を命じたらしい。
「たかが犯罪奴隷の分際で王族を手篭めにしたまでは良かったけどねぇ。些か調子に乗りすぎちゃったかな?」
王以外の全ての王族の権限は同じ。
つまり兄が私の部屋を調査しろと命じれば、城の者たちは従わざるを得ない。
もしもそれを拒否したいなら、私自身がその命令を撤回しなければならなかったのだけれど……。
男に貪られて身動きの取れなかった私の意思の確認を取ることは出来ず、こうして事態が発覚してしまったのだった。
「待って! 話が違う……! シャ、シャーロット様! どうか、どうかひと言お力添えをぉっ! 私たちは、私たちはあんなにも愛し合っていたではありませんかっ! どうかご慈悲をぉっ!」
衛兵に拘束されながらも私に懇願する、かつてのご主人様。
私はその男にゆっくりと近づき、そして静かに言ってあげた。
「遊びの時間はもう終わりです。私はただ貴方との遊びに興じていただけ。愛し合っていたなどと、遊びのルールを遊びの外に持ち出すのは感心しませんよ?」
「な……!? そん、な……!?」
私の言葉に絶望に染まった男の顔を見ても、その男が即日処刑されたと聞いても、特に私は何も思わなかった。
会えなくて悲しいとか、私を弄んだ報いだとか、そんな感情は一切湧いてこなかった。
しかし男に弄ばれ尽くした私の体は毎夜昂ってしまって、流石に困り果ててしまった。
仕方なく色事に詳しいバルバロイ兄様に相談したところ、自分が相手をして私の体を鎮めてくれると言い出した。
「で、ですが兄様……。流石に血の繋がった私たちが関係を持つのは……」
「俺からラズを求めることはしないよ。これは確実に守ろうじゃないか」
今更色事に抵抗は無かったはずだったけれど、流石に肉親であるお兄様と肌を重ねる事には抵抗を覚えてしまう。
渋る私の頭を撫でて、あくまで私の火照りを鎮める為に付き合うだけだと諭すロイ兄様。
「それに違法娼館のオーナー程度より俺の方がラズを気持ちよくさせる自信がある。毎回確実に満足させてあげようじゃないか」
かつてのご主人様よりも気持ちよくしてやる。
逡巡する私の耳元で、お兄様が優しく囁く。
「あの男とも遊びだったんだろう? なら俺との関係も遊びだと思えばいいさ。遊びに飽きたらすぐに止めていいよ。奴隷と違って俺は女に困ってないからね」
兄と肌を重ねるのは遊びの延長。
私が嫌になったら、私の意思でいつでもやめることが出来る。
ご主人様には許されなかった選択肢を与えられたことで、私はすっかり兄を信用し、そして体を委ねる事にした。
兄は自分で言うだけのことはあり、奴隷の男よりも遥かに女の扱いに長けていた。
毎夜意識が飛ぶほどに高められ、余裕を見せる兄の前で無様に果て続ける日々。
王族2人が近づくなと言えば、王である父以外の者には一切手出し口出しが許されない。
兄との肉欲に塗れた日々は数年続き、その間に肉親と肌を重ね続けた私と兄は色狂いと噂されるようになっていった。
「いやぁ、やっぱり遊ぶなら色事に慣れた女に限るよねぇ! 奴隷に弄ばれたラズには申し訳無いけど、完璧に仕込まれたラズは最高の女性だよ!」
「……突然なんです? 褒めてもなにも出ませんよ?」
いつものように肌を重ねたあと、いつものように後始末をしている私の頭を撫でながら、上機嫌に兄が語り始めた。
機嫌がいいのはいつものことだけど、今日はいつにも増して上機嫌みたいだ。
「いやさ、ラズも知っての通り、俺って気の多い男だからさ。沢山の女性を愛していると、当然初めての女性の相手をすることもあるわけよ」
「……でしょうね」
私に後処理をさせながら、上機嫌に他の女性との情事の事を口にするロイ兄様。
今更私たちの間に礼儀もなにも無いかもしれませんが、少しはデリカシーというものを持っていただきたいですね?
「……はい、綺麗になりましたよお兄様」
「そんな女性達と、こうやって最後まで完璧に仕込まれてるラズを比べちゃうとさぁ。初めての女を抱くのがほんっとうに面倒臭くなっちゃって。さぁおいでラズ」
私を膝の上に座らせ、頭を撫でてくるバルバロイ兄様。
別にお兄様とのことは遊びの延長なのに、お兄様は事が終わったら毎回こうして私を抱き締め、少しの間会話をするのだ。
「ねぇラズ。悪いんだけどもう1回させてくれない? なんかちょっと気分が乗ってきちゃって」
「……構いませんよ。お兄様、毎回気持ちよくしてくれますし」
「そりゃあ可愛い妹を乱暴に扱う気は無いよ。お前を仕込んだ男には感謝するけど、男としては三流だね。自分の快楽を貪るだけじゃあ女を悦ばすことは出来ないんだ」
笑顔のお兄様に押し倒され、気絶するまで愛される。
何度も何度も可愛がられた私は、いつものようにお兄様に頭を撫でられながら、今日もお兄様のベッドでお兄様と一緒に眠りに就くのだ。
「ふふ。あの男は良くやってくれたなぁ。まさかこんなに上手くいくなんて」
「ん~……? おにい、さまぁ……? まだ起きてらっしゃるんですかぁ……?」
「ああごめんねラズ。起こしちゃったかな? でもまだ遅い時間だから起きるには早いよ。もう1度お休み」
優しく私を抱きしめながら、お休みと囁くお兄様に導かれ、覚醒しかけた私の意識は瞬く間にまどろんでいく。
そんな私の顔を、ロイ兄様が楽しげに見詰めているのが感じられた気がした。
「肉親がどんな感じか試してみたかったけど、母は歳が行き過ぎてるし、マギーは流石に若すぎたからなぁ。かと言って初めての女を相手にするのは面倒だったんだよねぇ。ま、あの男も一時とは言え王族を手篭めに出来たんだ。死ぬ間際に見る夢としちゃあ最上級だったでしょ」
まどろむ私の上からバルバロイお兄様の言葉が振ってくるけれど、安心しきった私の頭はその言葉を理解することなく、ゆっくりと夢の中に落ちていった。
……だけどひょっとしたらこの時の私は、無意識にお兄様の言葉を理解するのを拒絶してしまったのかもしれません。
かつてのロイ兄様とは全く違った安心感を与えてくれる新しいご主人様と楽しくキスを交わしながら、私は少しずつ幼かった頃の日々を思い返していくのでした。
※ひとくち蛇足。
正直シャロのエピソードは全年齢化に向けた添削のバランスが難しくて頭を抱えています。全年齢化出来ているのかも怪しいし、削った部分で重要な情報が失われていないかも不安です。
18歳以上の方は是非ともアルファポリスに投稿しているR18版も読んでいただけたらと思います。(ダイレクトマーケティング)
書き直しに当たって、奴隷の男が5割増しで気持ち悪くなったなぁと思いました。




