562 ※閑話 色狂いが生まれるまで
※R18シーンに該当する表現を大幅に(3000字程度)カットしております。
直接的な表現は避けてあるので大丈夫だとは思いますが、全年齢に相応しくない内容ではありますので、問題ある場合はご指摘ください。
「ねぇシャーロット様。面白い遊びをしてみませんか?」
「遊び、ですか? 別に構いませんが……」
12歳の頃、私が所有している犯罪奴隷の男からこのような提案をされた。
その男はかつて沢山の女性を違法奴隷として所有し、その女性達を使って娼館を営んでいたらしかった。
女性の扱いに長けているということで私にあてがわれたみたいだけど、正直言ってこの判断はどうかと思う。
「流石はシャーロット様。卑しき私のような者にも分け隔て無く接してくださり、誠にありがとうございますぅ……」
口では誠意ある言葉を口にしながら、私の全身を舐め回すように見てくる奴隷の男。
その男が遊びと称して私の体を狙っているのは、幼い私でも直ぐに理解できた。
しかしどうしてだったか、その時の私は好奇心に負けて、男の誘いに乗る事にしたのだった。
「どうぞ気を楽にして、私に全てお任せください……。ひひ、必ずや天上のような快楽を教えて差し上げますからねぇ……?」
……どうしてこの時奴隷の男の誘いに乗ったのか、後から思い返しても上手く思い出せなかった。
奴隷契約で、私に危害を加えることは出来ないからと安心していたのかもしれない。
女性を弄んで捕まった男なのだから、女性の扱いは上手いはずと期待していたのかもしれない。
目利きスキルで見ても、一切の悪意を宿していなかった事が不思議だったのかもしれない。
明確な理由は思い出せないけれど、私は奴隷の男の誘いに乗ってしまったのだった。
私が懇願するほどに男の動きは早くなる。
私が拒絶と抵抗を示すほどに、それを無視して私を弄ぶ事に興奮しているようだった。
男の余裕が無い姿に最後の瞬間が近づくのを感じ取るけれど、非力な少女でしか無かった私がどれほど男の腕の中で暴れようと、男を更に興奮させてしまうことしか出来なかった。
「ひひ……! お前も素直になっていいんだぞぉ、シャーロットォ……? 俺とお前の奴隷契約は間違いなく成立している。なのにこうしてお前を愛し続けられるのは、お前が拒んでいないからに他ならないのだからなぁっ!?」
「そ、そんなこと……!」
「ああ、愛しいシャーロット……! 俺とこのまま、ずーっと愛し合って生きていこうなぁ……!? ひーっひっひっひ!」
奴隷契約で男を止めることが出来ない私に、男は好き勝手に欲望をぶつけてくる。
奴隷の男に弄ばれた私は、いつしか意識を手放したのだった。
「今日もシャーロットは最高だなぁ……。ひひっ」
「……今日も愛していただき、ありがとう、ございます……」
気絶するほどの快楽を知ってしまった私は、もうその快楽に逆らうことは出来ず、奴隷の男に求められるまま、毎夜男に貪られ続けた。
そして男の望むままに、ありとあらゆる技術を仕込まれていった。
……下卑た奴隷の所有物として扱われる日々に、私は少しだけ嫌気が差し始めていた気がする。
「バレてないと思った? 犯罪奴隷如きが王家スペルディア家に連なる者に、随分とまぁ好き勝手やってくれたみたいだねぇ?」
「お、お待ちくださいっ! 話が違うっ! お、俺達は本当に愛し合って……!」
しかし王族の私との秘め事など隠し通せるはずもなく、ひと月も経たないうちに奴隷の男は処刑されてしまった。
最後に助けを求めるような目で私を見てきた男に、私は何の興味も抱けなかった。
しかし男から解放されたのは良かったけれど、私の体は以前と同じというわけにはいかなかった。
「……流石にこのままではいけませんね。だけどこんなこと、いったい誰に相談すれば……」
自分で対処するにも限界を感じつつあった。
そんな風に思い悩んだ時に、色狂いと評判の自分の兄の姿が頭を過ぎった。
色狂いの兄ならば私の状態も何とかしてくれるかもしれないと、私はまた間違った選択をしてしまうのだった。
「そんなに辛いなら俺が相手してやるよ」
「ま、待ってロイ兄様……! そうじゃなくって……!」
「ラズだってどこぞの馬の骨の相手をするより、俺のほうが安心だろ?」
「だからそういう話じゃ……むぐぅっ」
己の身体を持て余すなら、兄である自分が相手をしてやる。
そう言って私の唇を奪った兄は、そのまま私の身体を貪るように弄んだ。
私を弄んだ奴隷の男よりも更に女の扱いに長けた兄に、私はまた何の抵抗も出来ずに快楽に溺れるしかなかった。
「いやぁかんっぺきに仕込まれてて最高だよ! 処刑しちゃっておいてなんだけど、ラズを仕込んだ奴隷には感謝しないといけないなぁっ!」
いつも全てが終わった後、兄は上機嫌に笑うのだった。
「……ねぇロイ兄様。そろそろこの関係は終わりにしませんか?」
兄に弄ばれる日々が数年ほど続き、自分が18を迎えた頃、私の中で唐突に心境の変化が起きた。
すっかり色事に積極的になった私は、今度は自分が主導権を握ってみたいと思うようになったのだ。
幸い私はいくらでも奴隷を所有できる立場に居る。
色事に疎い男と肌を重ねたら、どのような気分を味わえるのだろう?
だからもう貴方とは肌を重ねられないと兄に言うと、兄はあっさりと了承したばかりか、自分と繋がりのあるレガリアという組織を紹介してくれた。
「俺もラズには飽きてたし、ちょうど良かったよ。流石に数年も同じ女は飽きるよねー」
毎日毎日飽きるほど私を貪ってきておきながら、どの口で言っているんだか……。
そんな自分の行動を忘れたように、ただひと言私に飽きたと言い放ったこの兄のことは、今後一生馬鹿と言い続ける事に決めたのだった。
「その条件なら直ぐにご用意できるでしょう。2、3日だけお時間をください」
「急ぐ必要はありません。急ぐよりも確実に条件を満たす相手をお願いします」
レガリアは私の条件にあった男性を用意してくれると言うので、早速手配をお願いする。
今回は主導権を握ってみたいと言うことで、なるべく女性経験の少ない初心な男性で、私に依存してくれそうな者を手配するようお願いした。
私を弄んだ奴隷の男もあの馬鹿も女性の扱いに慣れていたはずなのに、それでも私の体を貪った。
だから女性経験の少ない者なら私に依存して、きっと私が主導権を握ることが出来るだろうと踏んだのだ。
「シャ、シャーロット様に買っていただいて幸せです……! こ、これから宜しくお願いしたします……!」
そうして連れてこられたスランという少年は、幼い頃に両親を亡くして孤児となり、人頭税が払えずに借金奴隷に身を落としてしまったようだった。
恐らく奴隷商館で仕込まれたであろう言葉を口にしながらも、これから自分がどんな扱いを受けるのだろうと恐怖に声を震わせていた。
私を見て怯えるスランを胸に招いて、優しく抱きしめる。
そしてスランの震えが収まるまで、大丈夫ですよと声をかけながら静かに背中を擦り続けた。
「貴方を親元に返してあげるわけにはいきませんが、ご両親の代わりにこれからは私がスランを愛します。ですからどうか貴方も、私のことを愛していただけませんか?」
「はいっ……! はいっ……! 俺、シャーロット様に会えて幸せです……! 愛してますっ……! 生涯シャーロット様を愛し続けると誓います……!」
しゃくりあげながらも私にしがみ付き、必死になって私に愛を誓うスラン。
なんて……。なんて愛しいのでしょう……!
私の庇護無しでは生きることが出来ない者が、これほどまでに愛おしいだなんて……!
奴隷の男やあの馬鹿と違い、私に縋りつくように愛してくれるスランとの情事は、心が満たされるように感じられました。
それから暫くは、ひたすらスランと肌を重ねる日々が続きました。
だけど満たされる日々を終わらせたのは、意外にもスランのほうでした。
「……シャーロット様。他の奴隷を所有する気はありませんか?」
ある日スランが真剣な面持ちで、私に他の奴隷の所有を提案してきました。
うっかり私があの馬鹿の話をしたのが悪かったのでしょう。
同じ相手と身体を重ねていては、いつか飽きられて捨てられてしまうと不安に思ったに違いありません。
「あの馬鹿と違って、私はスランに飽きることなどありませんよ。貴方に満たしてもらっているのは体ではなく心なのですから」
「ありがとうございます。……ですがそうじゃありませんよ、シャーロット様」
貴女を手放す気は無いという私の言葉を、分かっていますとばかりに優しく笑って否定するスラン。
この様子なら、どうやらスランは不安を抱えているわけじゃないみたいですね。良かった……。
「シャーロット様はとても愛情が深いお方です。きっと私1人ではシャーロット様の愛に応え続けるのは難しいでしょうし、シャーロット様はもっと多くの男を幸せに出来る女性だと思うんです」
「ん……。す、済みません。私としたことがちょっと貴方を求めすぎてしまっていたんですね……」
「とても光栄です。……自分の不甲斐無さが憎いですよ。愛するシャーロット様を満足させることも出来ないのですから……」
悔しそうに俯くスランを慌てて抱きしめ、気にしないでと励まします。
スランのこの様子だと、それなりに悩み抜いた結果の進言だったに違いありません。
……確かにスランのことが愛し過ぎて、最近少し励みすぎていたかもしれません。
愛しいスランに負担をかけていた事に気付かないなんて、私はなんと愚かな女だったのでしょう。
スランの提案を受け入れて、新しい奴隷を迎え入れます。
しかし新しい奴隷も一定の期間が経つと、私に次の奴隷の所有を勧めてくるのが不思議でした。
新しい奴隷を迎えても変わらず愛し合っているのに、どうして彼らは新しい奴隷を私に所有させたがるのでしょう?
さ、流石にこの人数で満足していないなんてことは無いと思うのですけど……。
「私たちに出来る事は、貴女の無聊を慰めて差し上げることだけです。貴女がいつか代償でも母性でもない理由で誰かを愛する時が来るまで……。いえ、その時が訪れても、私たちはいつまでもシャーロット様のお傍におりますからね……」
情事に疲れた私の頭を膝に載せて撫でながら、今まで聞いたことがないほど穏やかで優しげな口調のスランが私に語りかけてくる。
けれどこの時の私は疲れきり、スランの言葉を聞き流してしまいました。
……でも、ふふ。聞き流しても構いませんか。
スランたちはいつまでも私と一緒にいてくれる、そう言ってくれているだけなのですから。
※こっそり設定公開
章タイトル通り、この章はR18要素が多めでかなり重めの話が続く予定です。
ただ構成的にラズ殿下のエピソードに突入した瞬間に閑話でラズ殿下の過去が語られるという、我ながら珍しい構成になっている章です。
ラズ殿下にこのような過去があると開示した上でダンがどのように行動していくか、というのをお楽しみただければ幸いです。
……ですが、どうしてもカットシーン多めになります。本当に申し訳ありません。




