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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
7章 家族みんなで冒険譚3 エルフェリアで過ごす夜
553/637

553 水瓶

※R18シーンに該当する表現を大幅に(3000字程度)カットしております。

「はぁ……はぁ……。流石に、もう何も、残ってないよ……」



 体の中身が全て抜き取られたような虚脱感が全身を苛む。


 仕合わせの暴君メンバーの総攻撃を受けた俺は、ヴァルゴの相手を最後にようやく解放してもらえた。



 せっかく両腕の拘束を解いてもらったっていうのに、全身は弛緩しきっていて全く力が入らない。



「あはーっ。お疲れ様ダンっ。すっごく楽しかったわよぉ?」


「旦那様の職業補正の鍛錬方法が分かった気がしますよ。まだまだ旦那様には及びませんが、これから毎日訓練させてくださいねぇ?」



 俺の両側に寝転んだティムルとヴァルゴが、左右から俺の頭を優しく撫でてくれる。


 気持ち良いんだけど、流石にまだ動けないよぉ……。



「ふーむ。今はお昼を過ぎたくらいかのぅ? 流石に少し空腹を覚えるのじゃ」


「た、確かにぃ……。栄養が、栄養が足りないよぅ……」


「あはーっ。まだ家族が5人の時に気を失っちゃった時より辛そうねー? いいのよダン。頑張った貴方はゆっくり休んでていいんだからねー?」



 ティムルが言っているのはリボルバーの話か、


 あの時と違って意識を失うことはなさそうだけど、肉体の消耗は確かにあの時以上かもしれないな……。



「……済みません旦那様。こんなになるまで旦那様を愛してあげられたかと思うと、旦那様に負担をかけているというのに嬉しくて堪りません……!」


「喜んでいいよヴァルゴ。マジで昇天しかけちゃったけどね」


「喜んでもらえたのなら嬉しいです。これからも毎日楽しみましょうね?」



 ニッコリ微笑むヴァルゴには申し訳ないけど、毎日これだと干からびそうなんですよ。


 だからもうちょっと手加減をして頂けると助かるんですけどね?



 いつも通りのみんなと愛し合った後は食堂に下りて、遅めの昼食を適当に済ませる。


 アレだけ寝室で過ごしても、まだ割と時間が過ぎてないのな。



 もぐもぐと昼食を頬張りながら、このあとの予定を共有する。



「まだ日没までは時間があるし、ムーリたちも奈落の攻略を頑張っているからね。俺も今日のうちにもう少し動こうと思ってるんだ」


「ふんふん。具体的にはダンは何をするの? 態々俺は、って言ったあたり、ぼく達は一緒につれてってくれないのー?」



 不満げに頬を膨らませるリーチェを呼んで、その唇にちゅっとキスをする。


 いつ如何なる時でも俺と一緒にいたがる英雄様が可愛すぎる件。



「連れていかないって言うか、多分みんなついてきたくないんじゃないかな? ゴブトゴさんに話をしに城に向かうつもりだから」


「あはーっ。確かに城に行きたいメンバーはいないでしょうねぇ。でも宰相様に何の話をしにいくのかしらぁ?」



 城に話をしに行くと聞いて、何か重大な案件なのかとティムルは心配してくれているようだ。


 問いかけてくるティムルにもちゅっとキスをして、彼女の質問に答えていく。



「まずは在庫が無くなっちゃったサークルストラクチャーの補充と、ついでにマインドディプリートの在庫状況の確認かな。それと魔玉発光促進のことも伝えておこうかなって」



 サークルストラクチャーはもう俺が携帯しておく意味も無いかもしれないけどね。


 魔人族もエルフたちも、もう完全に俺の手を離れたと思うし。



 でもヴェノムクイーンの1件で設置した転職魔法陣がオジャンになっちゃったし、可能ならば予備は持っておきたいのだ。



「それと一応、アウターの人工生成に着手することも伝えておこうと思ってる。もしも完成しても詳細を伝えるかは迷ってるけど、アウターの数を調整する技術はこの世界に必要だと思うからさ」


「……悪用される可能性を考えたらキリがない、かぁ。そしてその情報を共有するとしたら、実質的な管理者であるゴブトゴさんしかいないね、確かに」


「長命なエルフ族に情報の管理を任せる案も考えたけどね。その辺はまだ検討中なんだ」



 この世界全体に関わることだから、可能であれば種族代表会議で共有してもらいたい情報ではあるんだけどね。


 情報って広く伝えられるほど悪用しようとする輩も増えるだろうから、アウター管理技術の扱いをどうするか難しいんだよなぁ。



「あと新王の即位式の時に献上する予定の剣、アレのことも伝えておこうと思ってるんだ。何か不都合があったら不味いからね」


「そうねぇ。段取りだってあるだろうし、当日いきなりあんな物を献上されたら確かに堪ったものじゃないわね。事前報告はしておくべきか……」


「こんな感じで話が長引きそうだし、なによりゴブトゴさんの代わりにロイ殿下と話をする可能性も高いからさ。今回は俺1人で行ってくるつもりだったんだ。でもみんながついてきたいなら構わないよ?」



 みんなに確認してみるも、やっぱり城に同行したがるメンバーは誰もいなかった。


 俺達にとって、城って厄介事のイメージが強すぎるもんねぇ。



 女好きのロイ殿下とみんなを会わせたくないってのもあるし。



「私は花壇の手入れと、それと別荘のお掃除かなー? 今日も盛大に汚しちゃったし、今日中に元通りにしておくのっ」


「ぼくは早速自宅の改装に着手しようかなっ? どんな家にするかは決めてないけど、ライオネルさんに許可を取って場所を確保しておかないとね」


「あら。じゃあ私もリーチェについていこうかしらね? 今のシュパイン商会に私が顔を出しても邪魔なだけでしょうから」


「エルフの里をドワーフのティムルが普通に歩いていいのかのう?」



 はぁ~……。目の前で首を傾げるフラッタが可愛すぎるぅ~……!


 なんでこんなに可愛い仕草が出来るんだっ。これだからフラッタはーっ。



 ともかく、ニーナが別荘の管理、リーチェとティムルがエルフェリアに行くのね。



「妾は勿論ヴァルハールに行ってくるのじゃ! 兄上のお手伝いでもしてくるのじゃーっ」


「お、お手柔らかにするんですよフラッタ。シルヴァに迷惑をかけちゃいけませんからね?」



 元気いっぱいに張り切るフラッタを見て、ヴァルゴが不安そうに釘を刺している。


 フラッタは結構しっかり者ではあるんだけど、ヴァルゴの前ではずーっと甘えん坊な末っ子フラッタなのかもしれないなー。



「それじゃ私も今日は聖域に戻って、日没まで現地の手伝いでもしてきますよ。今は人手が必要でしょうからね」



 ヴァルゴは聖域の樹海に行って集落設営の手伝いか。


 守人のみんなは整合の魔器を見てやる気に満ち溢れていたし、意外とヴァルゴも使命感に燃えているのかもしれないな。



 全員の予定が決まったので、みんなと分かれてスペルディア王城に足を運んだ。


 ちょうどゴブトゴさんは遅めの昼食休憩を取っているところだったので、食事しながらで構わないならと、直接会って話をすることが出来た。



「食事しながらで済まんなダン殿。しかし本当に多忙を極めていてな、こんなタイミングでもないと時間が作れんのだ」


「いや、押しかけてるのはこっちだし気にしないでよ。ゴブトゴさんの隣りにちゃっかり座ってるそちらの男性のことは気になって仕方ないけどねー?」


「重ねて申し訳ないな。待てと命じたのだが言う事を聞かんのだ」


「人を犬猫みたいに言わないでくれるかなぁっ!?」



 王国の実質的なトップだと思えないほど簡素な料理を口にしているゴブトゴさんの横で、呼んでもいないロイ殿下が思わずといった様子で叫び声を上げた。


 食事中に叫ぶの、やめてもらっていいっすかねー?



「っていうか宰相であるゴブトゴよりも、王子である俺の方が身分が上だからねっ!? このぞんざいな扱いは流石に不当でしょっ!」


「はっはっは。面白いご冗談ですなバルバロイ殿下。スペルディア家に価値などあるわけがないでしょう?」


「笑えない冗談は止してくれ。眼が笑ってないから怖すぎるんだよ、まったく……」



 言ってることは冗談だけど、それに込めた感情は本気だろうからな。


 それでもこの場にロイ殿下の同席を許しているあたり、ゴブトゴさんも一応はロイ殿下を評価しているのかもしれない。



 とりあえず食事中なのでちょうどいいと、お土産として持参してきたアーティザンズスウィートをゴブトゴさんに献上する。



「ほう! この甘く芳醇な香りはアーティザンズスウィートか!」


「お、ゴブトゴさんもアーティザンズスウィートを知ってるんだね」



 夢の一夜亭という名のラブホテルにいかないと飲めないはずのお酒なんだけどな。


 ゴブトゴさんって堅物に見えて、夢の一夜亭を利用してるのかな?



「カラソルとは宰相になる前からの付き合いでな、その縁で嗜んだことがあるのだ。気を遣って貰って済まんな。ありがたく頂戴しよう」 


「へぇ~。世間は狭いなぁ。なんにしても喜んでもらえて良かったよ」


「ちょっとダンさん、俺の分はっ!?」


「あるわけないでしょ。今日はゴブトゴさんに会いに来たんだからゴブトゴさんの分しか用意してないよ」



 事前にロイ殿下が同席する事を知っていたとしても用意しなかったけどね、という言葉は何とか喉の奥で止めることが出来た。


 一応身分が上の相手だからな。余計な事は慎もう。



「っていうか門外不出のアーティザンズスウィートを、なんで当然のように持参してるのさっ!? 俺がいくら頼み込んでも絶対に譲ってくれなかったのにーーっ!」


「どうせ金と権力を使って脅迫という名のお願いでもしたんでしょ。そういうことするから信用を無くすんですよ?」


「いつも利用してる夢の宿グループにそんなことするはずないだろっ! ダンさんが俺に抱いてるイメージが酷すぎるっ!」



 ふむ? 確かに色狂いのロイ殿下ならラブホに高圧的な態度は取らないか?


 それでもカラソルさんに会ったこともなかったようだし、あまり信頼されている感じはしないな。



 もしかして、ロイ殿下ならアーティザンズスウィートの製法を盗みかねないと警戒されているのかもなぁ。



 アーティを受け取ってご満悦のゴブトゴさんと、ギャーギャーと騒がしいロイ殿下。


 ま、これはこれでこの国が平和になった証拠と言えなくもないのかな?

※ひと口捕捉。


 サブタイトルの水瓶はカットされたシーンで描写されています。

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