546 血統
※R18シーンに該当する表現を大幅(3000字程度)にカットしております。
夜通しアウラとリュートを愛し続け、3人で抱きあって眠りに就いた俺は、翌朝のまだ薄暗い時間に目を覚ました。
持久力補正を意識的に薄めてもやはり完全にオフにすることは出来なかったようで、いつも通りショートスリーパーのような短い睡眠時間しか取ることが出来なかったようだ。
これまた職業補正のおかげで、寝不足は一切感じないけどね。
「おはようリュート。おはようアウラ。さぁ今日もいっぱい可愛がってあげるからねー?」
目覚めたリュートとアウラを改めて可愛がり、更にリーチェの分としてもう1人分可愛がってあげる。
朝の情事が終わったら軽く室内を掃除して、甘く呼吸を乱したリュートとアウラを休ませる。
「ちょっと何か朝食を貰ってくるよ。リュートは完全に動けなくなっちゃってるから、ここはよろしくお願いねアウラ」
「わ、私も言うほど動けない、ですけどぉ……? やっぱりパパの相手を小人数でするのはむりぃ~……」
ぐったりしているリュートと、息も絶え絶えなアウラのほっぺにキスをして部屋を出る。
そのままポータルでライオネルさんのところに転移して、朝食を分けて貰えないか交渉する。
「こんなものしかなくて悪いけど、好きなだけ持っていっていいよ」
「貴重な備蓄を申し訳ないね。ありがたく頂いていくよ」
ライオネルさんに渡されたのは、乾燥した大量の果実と、あまり数が無い生の果実だった。
エルフェリアには現在殆ど人が居らず、アウター宿り木の根も消失してしまったためにお店みたいなものが一切無い。
その上世界樹に連なっていた森林も大部分が消失してしまったので、得られる森の恵みが激減しているそうだ。
エルフの人口が少ないために、幸か不幸か今現在の備蓄で充分にやっていけるそうだけど、エルフェリアの外に出たエルフたちはスペルド王国の食事を満喫しているらしかった。
「キンリはリュートも好きだし喜ぶと思う。でも乾燥したものは初めて見たなー?」
「ああ、王国では生のまま食べるのみらしいね? 乾燥させるのは手間がかかるから仕方無いとは思うけれど、乾燥キンリの方が甘みと旨みが凝縮されるんだよ。ご賞味あれってね」
「へぇ、それは楽しみだよ。ありがとう」
ちなみに乾燥キンリの作り方を聞いてみると、なんと精霊魔法で風を送って短時間で一気に乾燥させているらしかった。
そりゃエルフの居ないスペルド王国で出回らないわけだよっ!
ライオネルさんから数々の果物を受け取ってリュートの生家に戻り、3人で果物に齧りつきながら乾燥キンリの話を2人にも伝える。
するとリュートが思った以上に驚いてくれた。
「え、えーーーーっ!? これ精霊魔法で作ってたんだ……!?」
「らしいよ。道理で王国じゃ見たことないと思った」
「これってエルフェリアではポピュラーな食べ物なんだけど、ここにいる時のぼくは食べる専門だったから……。今まで作り方に興味を持ったことが無かったよ……」
「リュートの作るお料理ってとっても美味しいのに、パパに会うまではお料理が苦手だったなんて信じられないなぁ」
リュートとアウラを両側に抱きしめているので、腕が塞がっている俺にかわりばんこで果物を口に運んでくれる2人。
俺って最近自分の手で食事してない気がするなぁ? もぐもぐ。
「キンリは王国にも出回ってるからね。リュートが興味あるなら作ってみるのもいいんじゃない? 乾燥キンリ」
「はっ!? そ、そうか! 精霊魔法で作れるなら、ぼくにだって作れるかもしれないんだ……!」
「アウラも一緒に挑戦してみるといいんじゃないかな。精霊魔法のいい練習になりそうだ」
「なるほど、お料理中も考え方次第で訓練になるんだね……。オッケーパパ。これ凄く美味しいし、リュートと一緒に作ってみるよーっ」
我が家の精霊魔法コンビが燃えているので、食事の後もう1度ライオネルさんのところを訪ね、乾燥キンリの作り方を詳しく聞いてみる。
すると乾燥キンリを作らせたら右に出るものはいない、というお婆ちゃんエルフを紹介してもらえた。
「結局のところ、何度も作って経験を重ねるしかないんですけどねぇ……。まぁ良いでしょ、レシピを教えてあげるからついておいでなさい」
「「はーいっ」」
今回はレシピの伝授だけということで、数10分程度で済むらしい。
ウキウキしているリュートとアウラを見送って、またしてもライオネルさんと2人きりで待つ事になった。
「そうそう。昨日リュートと話したんだけど、エルフの王族って形骸化してるってほんと? そんなことありえるの?」
折角の機会なので、昨日リュートに聞いたエルフの王族の話を里長であるライオネルさんに確認してみる。
するとライオネルさんも、少し苦笑しながらリュートの話を肯定した。
「王国を築いている人間族から見たら信じられないかもしれないけれど、多くのエルフにとって王族なんてあまり興味を持たれていないんじゃないかな? 何の特権も無いし、確かに形骸化しているかもね」
「リュートや姉のリーチェって一目置かれてたんじゃないの? リーチェに至っては蒼穹の盟約に抜擢させられているわけだし」
「リーチェやリュートが一目置かれていたのは、その資質と美貌によるところが大きかったと思うよ。もう1つ理由を挙げるとすれば、エルフ族に伝わる装備品を扱えるからだろうし」
ふ~む……。ライオネルさんの様子に変わったところは見られない。
ライオネルさんが嘘をついていないなら、リュートの言っていた通り、本当にエルフの王族って何にも無いの?
確かにリュートの可愛さとおっぱいの巨大さには、一目置くどころか目が離せなくなっちゃいそうだけど……。
美貌だけで一目置くかな……? いや置くか。置くな、うん。
「実のところエルフの王族の話はあまり伝わっていないんだよ。この世界でのエルフたちは、少なくとも記録に残っている限りではということになるが、常に長を頂点とした里の運営を行なってきているはずだからね」
「……つまり、エルフの王族っていうのは、エルフ達がこの世界に来る前の身分って事に?」
「ああ、この世界の住人は元々別の世界からきたという話かい? エルフ族の歴史にもなんの記述も無いから、私は懐疑的なんだけどねその話」
お、何の気なしに振ってしまったけど、ライオネルさんもこの話を知っていたようだ。
旧アルフェッカを生きた人たちには割と一般的な知識だったんだろうか?
「でもそうだね、この世界でエルフェリアが王政だったって記録は無いから、案外ダンさんの言っている通りなのかもしれない」
エルフェリア精霊国は1度も王政だったことがない。なのに王族が存在しているのかぁ。
変な話だよな、本当に。
だけど、いくら形骸化してるとは言え、唯一の王族であるリュートが俺に嫁いだらエルフの王族の血は失われてしまうっていうのに、のほほんとしたもんだ……。
そんな風に呆れる俺だったけれど、続くライオネルさんからの説明に更に脱力させられてしまう。
「それに王家こそエルフェリア家が継いでいるものの、王族の血統自体はありふれているからね。そういった意味でもあまり関心を持たれないのさ」
「……へ? 王族の血統がありふれてるってどういう意味?」
「そのままの意味さ。エルフたちの先祖は元を正せば同じエルフだと言われていてね。その人物こそがエルフの王であり、そして全てのエルフは王の血を引いていると言われているんだよ」
「はぁぁぁぁっ!? なっっっんだそれ!?」
アダムとイブじゃねーんだから、たった1人のエルフから種族が繁栄するなんてありえるのか!?
いや、エルフの長命さを考えれば、少数人数からの繁栄も確かに難しくはない……?
「この里に伝わる最も古い記述によると、王を名乗る1人の男性エルフが多くの女性エルフと子を生し、繁栄したのが今のエルフェリアだと言われているんだ。のちにエルフェリア家と名付けられたその家名こそ限られた者しか名乗れなくなったけれど、王の血脈はエルフが滅びない限り続いていくのさ」
ね? こんな話興味が湧かないだろう? と肩を竦めて見せるライオネルさん。
確かに血統自体はエルフ全員に継がれているなら、王族に対する意識が希薄になっていってもおかしくは……ない、のか?
昨日リュートに王家が絶えるという話をして、リュートもそれに頷いた気がするけど……。
これってリュートが血統の話を知らないのか、『王家』と俺が名言したから、王家エルフェリア家が断絶する事に同意したのか、あとでちゃんと確認してみよう。
なんにしても、エルフ族の王の血統については悩むだけ無駄らしい。
俺がリュートを娶ろうとも、エルフ族が滅びない限り、王の血は脈々と受け継がれていくのだから。
……なぁんか、一気にドッと疲れてしまったよぉ。
早く帰ってみんなに会いたい……。リュートとアウラ、まだかなぁ……?




