536 返済
※R18シーンに該当する表現を(1000字程度)カットしております。
世界樹の護りを作るためには、アウラの体の一部が必要らしい。
アウラの為にもリュートのためにも、素材の調達の為にアウラに会いにいかないとな。
パールソバータに転移した俺は、ステータスプレートを通してみんなの居場所を探してみる。
すると4人分の反応が街の中から感じられた。
これってムーリの到着を待ってるってことだよな?
ムーリが到着するまでみんなで散策でもしてるのかもしれない。
さて、リュートも待っているだろうし、早いところ素材を確保しないとね。
皆の反応を目指して再度ポータルで転移する。
「あれパパ? もうそっちの用事は終わったの?」
宿の前に転移した俺に、当人のアウラが真っ先に気付いて近寄ってくる。
ラトリアよりも先に俺に気付くあたり、本当に五感が鋭敏なんだよなぁ。
近寄ってきたアウラを捕まえて、ぎゅーっと抱きしめながら用件を伝える。
「パパ1人? リーチェママはどうしたのー?」
「世界樹の護りを作るのにアウラの髪の毛が欲しいんだってさ。だからアウラに会いに来たんだ。こんな綺麗な髪を切っちゃうのは申し訳ないけど、少し髪の毛を分けてもらっていい?」
「そんなの別に申し訳なくもなんとも無いよ~? 私が自分で伸ばしたわけでもないしさー」
「そっか。それじゃ少しだけ切らせてね」
アウラを抱き締めたまま、彼女の髪の毛の先を3センチ程度切って布にくるむ。
もしかしてと思ってキュアライトを発動してみたけど、切った髪の毛が再生することはなかった。
髪の毛を切っても怪我とは見做されないようだ。いやひょっとして欠損扱いだったり?
「ありがとうアウラ。これで世界樹の護りが完成するはずだよ」
「あはっ。髪を切っただけでお礼を言わなくていいってばー。パパは大袈裟なんだからー」
「ん~アウラ良い娘すぎる~。楽しみに待っててね~」
アウラと抱きあって、お互いほっぺをスリスリと擦り付け合う。
10歳だけど成熟した肉体の持ち主であるアウラは身長も低くないので、頬ずりするのに屈まなくていいからラクだなぁ。すりすり。
「……あ」
アウラと頬ずりしていると、アウラの背後の宿が目に入った。
ここは以前奈落を攻略した時にも利用した宿で、パールソバータに滞在中は毎晩みんなとめくるめく夜を過ごした場所なんだよなぁ……。
「……パパぁ? どうしたのかなぁ……?」
当然俺の視線は抱き合っているアウラにはモロバレで、アウラは挑発的な視線を送ってくる。
この妖艶な表情、本当に10歳なのかなぁ? エロ方面でも人類の頂点に立つ気なの?
「後ろの宿には以前宿泊したことがあってさ。奈落の攻略中は毎晩のようにママたちと愛し合った場所なんだ。その時のことを思い出したら、この宿で大好きなアウラを可愛がってあげたくなっちゃった」
「リーチェママが待ってるんじゃないのぉ? こんなことしてる時間はぁ……」
「それにラトリアとエマもココで愛してあげたけど、ターニアのこともまだ相手してあげれていなかったよね? ムーリもまだ姿を現してないし、ちょっとだけ休憩しない?」
「あははははっ! 休憩って、絶対宿の方が奈落の攻略よりも苛酷なのっ!」
「それは了承と受け取っていいかな? それじゃエマ。部屋を取ってきてくれる? 確か1泊25万リーフだったと思うから、これをそのまんま渡してきて」
「お、王金貨って……。宿泊もしないのに4倍もの料金を払っちゃうんですか……!?」
「ふふ。その代わり部屋の中を思いっきり汚しちゃうからね。エマのことも滅茶苦茶にしてあげる」
「んもう。私の旦那様はえっちすぎて困っちゃいますね。直ぐに部屋を取ってくるので少々お待ちをっ」
ウッキウキのエマが急いで部屋を確保してきてくれた。
流石に大金を払って毎晩毎晩ニャンニャンコンコンしていた俺たちのことを宿側も覚えていたらしく、4倍もの料金を払ったこともあって大歓迎で迎えてもらってしまった。
ムーリが来たら部屋に通すようにお願いして、今居る4人をベッドに引きずりこむ。
探索前なので激しい動きは自重しつつ皆を可愛がっていると、やれやれと少し呆れ気味のムーリが部屋に現れた。
「旧本部施設の探索許可の申請に行っただけの割に遅かったねムーリ? 待ちくたびれちゃったから4人に相手してもらってたんだー」
「仮に私が合流済みでも宿に連れ込んでた癖にぃ! ちゃんと私のこともいっぱい愛してくださいよっ!?」
「勿論ムーリのことも滅茶苦茶にしてあげるから、その前に報告が聞きたいな?」
ムーリのこともベッドの上に招待しながら報告を促す。
ノリノリでベッドの上に乗ってきたムーリは、実はですねーと報告を始めてくれる。
「旧本部施設の探索願いを出したところ、ちょっと待って欲しいと言われちゃったんです。探索はしてもいいけど、時間を置いて欲しいって」
「トライラム教会側の意向を無視する気はないけど、時間を空ける理由って?」
「それがですね、これも新王の即位式が関係してるみたいなんです」
どうやらガルシア新王とマーガレット新王の即位式にはトライラム教会にも役割があるらしく、司教以上の幹部連中は今かなり忙しく動いているらしい。
……てか、トライラム教会ってちゃんと宗教的な儀式も出来るんだ。
なんかそっちの方にびっくりするんだけど。
「どうしてもと言うなら私たちだけで探索をしても良いということなんですけど、出来れば教会の手が空くまで待って欲しいとのことです。司教様も教主様も、旧本部施設の調査には興味津々らしくって……」
「そう言われちゃうと参っちゃうなぁ。調査は別に急ぎで行なう必要も無いから、教会の人たちが楽しみにしてるって言われちゃうと、俺達だけで調査を始めるのはちょっと憚られるねぇ……」
俺達だけで調査することも一応は許可されている。
けれど教会関係者も出来れば一緒に調査に立ち会いたいから、可能であれば調査を待って欲しいかぁ……。
あの教会の人たちが珍しく我が侭を言ってきてるんだから、無視をするのは心苦しいよなぁ。
そもそもトライラム教会の施設の調査なんだから、調査するなって言えば済むだけの話なのに、出来れば待ってくれたら嬉しいなぁ? とか言われちゃうと、逆に無視できなくなっちゃうよ。
「あ、そうです。今の話とは別の話になりますけれど、司教様からこれを預かってきたんです」
そう言ってムーリが取り出したのは、50枚もの王金貨だった。
5000万リーフもの大金も、アウターの最深部に潜れるムーリなら稼げちゃうか……て、違う。これは教会から預かってきたんだっけ。
「こんな大金どうしたの? なにか俺達から購入したいものでもあるのかな?」
「なに言ってるんですかーっ! 返済ですよ、返済! 私がダンさんからお借りしている5000万リーフの返済ですよーっ」
「……あ~、そう言えばそんなのあったっけ。すっかり忘れてたよ」
去年の納税を乗り切る為にムーリに貸し出した、5000万リーフの返済かぁ。
それをムーリ個人じゃなくて、教会全体で返済してきたのね。なるほどなるほど。
あの借金って名義はムーリって事になってるけど、確かに実質的には教会に貸し出したようなものだもんな。
「でも5000万リーフも一気に返済しちゃって、教会の経営に影響は無いの? 利子も期限も設けるつもりはないんだから無理して返済しなくても……」
「ふっふーんっ。あんまり教会を見縊らないでくださいね? 5000万リーフってダンさん個人が1ヶ月で稼いだお金なんですよ? 教会全体でこれだけ浸透が進めば、このくらいの額は問題なく稼げちゃうんですっ」
「教会を見縊るつもりはないんだけど、焚き出しだったり孤児の受け入れだったり、トライラム教会ってめちゃくちゃお金を使ってるイメージがあるからさ。それを上回る収入を得るのは容易じゃない気がしたんだ」
「武器を持ったこともなかった私が、半年程度でスポットの最深部で戦えているんですよ? 元々教会の戦力として頑張っていた教会兵のみなさんなんて、もっともっと稼いでるに決まってるじゃないですかっ」
「あー……。教会兵さんたちは元々戦えていたし、ある程度職業浸透も進んでいたのかぁ。だから浸透の正しい知識さえ分かれば、一気に成長できたわけね」
どうやらこのお金を受け取っても本当に何の問題も無いようだ。
なので普通にお金を受け取ろうとすると、ムーリが真剣な眼差しで俺を真っ直ぐ見詰めている事に気付いた。
「……ダンさん。私と愛し合う前に王金貨50枚を受け取ってくれませんか? 借金の無くなったまっさらな私を愛して欲しいんですっ」
「……まったく、ムーリはおねだり上手で困るよ。そんなことを言われたら、奈落の攻略が控えているのに全力を出したくなっちゃうじゃないかぁ……!」
微笑むムーリにちゅっとキスをし、ムーリと正面から見詰め合う。
俺の目の前で改めて王金貨を取り出したムーリは、王金貨を持ったまま深々と頭を下げて見せた。
「ダンさん。本当にありがとうございました。このお金で子供達の未来が買えました。トライラム教会の本来あるべき役割も取り戻せました。教会のシスターとして、子供達の母親として……。心から感謝してますっ……!」
「あの時も言ったけど、やっぱりお金で解決できる事はお金で解決しちゃうべきだったでしょ? 借りる時に気構えしちゃうのは仕方ないけどさ」
「はいっ! たった半年間で私もトライラム教会も孤児たちも、凄く強くなる事ができました。だからこのお金は私たちにはもう必要ありませんっ! ダンさんっ、受け取ってもらえますかっ!」
笑顔のムーリに静かに頷いて見せて、彼女の手から50枚の王金貨を受け取った。
その瞬間俺とムーリのステータスプレートが勝手に呼び出され、お互いのステータスプレートに表記してあった貸付と借り入れの記述が跡形もなく消え去っていた。
「確かに返済を受け付けたよ。これでムーリは俺になんの借りも無い、ただのエッチなお嫁さんになってくれたんだ。長かったぁ……!」
「きゃっ! ダ、ダンさん……?」
ムーリとの間にあった目障りな契約が解消されたことで、ついついムーリのことを衝動的に抱きしめてしまった。
ニーナとティムルとの奴隷契約ほど支障があった契約ではなかったけれど、こうして真っ当で対等な関係に戻れた事が本当に嬉しい。
「借金の形にムーリを愛したことは1度だって無いけど、それでもこうして借金が無くなってくれたことが本当に嬉しいよ。大好きだよムーリ、大好きだ……!」
「あははっ! なんで借金を返済されたダンさんのほうがそんなに嬉しそうなんですかっ。本当にダンさんって変わってますよねっ。そんなダンさんが大好きですーっ!」
ムーリが獣化しながら俺をベッドに押し倒し、そんな彼女を力いっぱいぎゅーっと抱き締める。
その後他のみんなが復活するまで、俺とムーリは1度も離れることなく肌を重ね続けるのだった。




