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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機
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526 悪意の女王⑩ 総力戦

※R18シーンに該当する表現を若干カットしております。

「ようやくお出ましかぁっ!」



 盛大に土煙を上げながら、轟音と共に地面から姿を現す異形の巨体。



 ヴェノムデバイスたちの女王個体らしき巨大生物は狙い通り、スウォームワームの追跡を嫌って地表まで飛び出てきたようだ。


 ここで逃がしたら次は無い! ここが勝負所だぞっ!



「地面に潜らせたら俺たちに追撃する術は無いからねっ! 一気にケリをつけるよみんなっ!」


「「「はいっ!」」」



 巨大なヴェノムクイーンに向かって一斉に駆け出す俺達。


 その中でも青い魔力に身を包んだフラッタが、大きな翼を広げながら()()()()に飛び出した。



「潜らせたら駄目なら……! こうするのが手っ取り早いのじゃーーっ!」



 巨大な女王に躊躇なく突っ込み、まるでゴルフスイングでもするように下から上に向かって、巨大なドラゴンイーターを両手で大きく振り上げるフラッタ。


 その強力無比な1撃はぐちゃりと女王の体を叩き潰しながら、怪獣の様な女王の巨体を確かに上空に浮き上がらせた。



 りゅ、竜人族って化け物過ぎるだろぉ……!?


 いや、俺の可愛い無双将軍フラッタが化け物すぎるだけかぁ……?



「攻撃魔法が使えないから、獣化してもあまり意味ないかもしれないけどっ……!」



 フラッタに続いて狐っ娘と化したコンコンニーナが、大木を足場にして女王の背中に飛び乗った。


 そして両手に持ったアウターレア製ダガーで、嵐のような斬撃を見舞う。



「私も2人に負けてられませんねっ!」



 一瞬で魔迅を発動したヴァルゴは、女王個体ののっぺらぼうな顔に張り付き、何度も槍と突き入れながら女王個体の反応を探っている。



 3人がつけた傷口からは緑色の体液のようなものが流れ出ているけど、これには毒判定は出ていないようだ。


 ぶった切っても大丈夫なら話は早い。俺もロングソードに魔力を込める。



「くっ……たばれぇっ! アウターブレイクっ!」



 魔力を込めたロングソードを大上段から振り下ろし、魔力で拡張した斬撃で巨大な女王個体を両断する。


 魔力で放たれたアウターブレイクの斬撃はあっさりと女王の巨体を通過し、一瞬遅れて女王の体がずるりとズレて、切り口から左右にぱっくりと割れて……。



「なっ!?」



 そのまま両断されて戦闘終了かと思った瞬間、分かれた胴体の切断面からミミズのようなもの……血管か? 血管が飛び出してきて反対側の胴体に突き刺さり、そして次の瞬間凄まじい勢いで切断面を引き寄せ接着してしまった。


 こいつ……! 防御力は低いけど、耐久力が高いタイプかよっ!?



「ダンーッ! 私の斬撃も斬り付けたそばから回復されちゃうのーっ!」


「ちぃ! ドラゴンイーターで広範囲を叩き潰しても同じじゃ! 瞬く間に治癒されてしまうのじゃっ!」



 どうやら暴風のようなニーナの斬撃も、叩き潰すようなフラッタの斬撃も有効打にはなっていないようだ。


 ちらりとヴァルゴのほうに視線を向けるも、彼女が突き刺した槍の傷も即座に回復してしまっているようだった。



「ティムルとリーチェ! それとムーリやチャールたちも考えてくれ! 女王個体の倒し方をっ!」


「か、考えろと言われれば考えますけどぉっ……! 具体的には何を考えればいんですかぁっ!?」



 俺の言葉に、オロオロした口調のムーリが真っ先に返事をする。


 力になりたいけど、どうしたらになればいいか分からないって感じか。



「俺達が女王個体と戦いながら情報を集めるから、みんなにはそれを分析して女王の倒し方を探して欲しいんだぁっ!」


「今分かってるのは、攻撃は通るけど即座に回復されてしまうこと! 私たちの動きについてこれていないこと! 体を両断されても死ななかったことなのっ!」


「魔法もウェポンスキルも使わずに、超速再生持ちの此奴を滅さねばなぬのじゃ! 難しい条件じゃとは思うが何とかして欲しいのじゃっ!」



 俺に続いてニーナが女王の情報を、フラッタが導き出して欲しい解答を出題する。


 もしもコイツが魔物だったら、フルチャージした絶空で解決するんだけどなっ……!



 両断しても殺せなかったのでアウターブレイクは温存する事にして、俺もニーナのように女王の背中から斬撃を浴びせることにした。


 すぐに女王の背中に飛び乗って、女王の背中に全力で双剣を叩きつける!



「さぁみんなっ! 私たちがダン達を助けるわよっ! 力を貸してちょうだいっ!」


「再生能力持ちと巨体は相性が良すぎて厄介だね……。両断しても死なないんじゃ即死させるのは難しそうだ……」



 ティムルの呼びかけと、ブツブツと情報を整理するリーチェの呟きが聞こえてくる。


 頼んだよみんな。情報と時間は稼いでみせるからさっ。



「おーーーららららららぁっ!」



 女王の体を掘削するつもりで、高速で双剣を叩きつける。


 ぐちゃぐちゃと肉を抉る不快な感触が双剣から伝わってくるけど、どうやら再生が早すぎて傷が全く広がっていかないようだ。



 野生動物の癖に、いったいなんなんだよこの再生速度は!


 下手すりゃイントルーダーのアポリトボルボロスの治癒魔法よりも再生が早いんだけどっ!?



「攻撃自体は通ってるの。だけど問題はあの巨体と再生能力ね。あの巨体を一気に滅ぼしきらないと、瞬く間に万全の状態に回復されてしまうわ」


「ウェポンスキルや魔法が使えれば話は早いんだけどね。さっきから何度か試しているけど、やっぱり攻撃魔法の対象に指定できないから、女王は野生動物で間違いないんだ」


「っせええええええいっっ!!」



 フラッタが何度も渾身の切り上げを行なって、女王が地面に潜らないよう妨害してくれている。


 流石にこの巨体をそう何度も打ち上げることは出来ていないけれど、女王からは嫌がっているような感情が伝わってくる。



 とその時、俺の五感補正が女王の体表から違和感を感じ取った。



「ニーナ! 気をつけ……!」



 俺の言葉を待たずに女王の体表が盛り上がり、槍のように尖って俺に向かってくる。



 槍というよりはトゲ……もしくは針だな。


 等身大の長さの細身の突起が、動き続ける俺とニーナを追いかけて、女王の体から際限なく突き出してくる。



 根元から斬り飛ばしてやっても効果は無く、直ぐに再生して同じように襲い掛かってくるようだ。



「ニーナ大丈夫!?」


「こんな遅い攻撃当たらないのっ! 私たちに悪戯するダンの指の方がよっぽど早いのーっ!」


「ちょっ!? いきなりなに言っちゃってんのニーナぁぁぁ!?」



 戦闘中にエロいこと口にするのやめてええええ!?


 どうしても反応しちゃうからっ!



「女王の体表から、トゲのような突起による攻撃を確認したのっ! 根元から斬り飛ばしても直ぐに再生するから、女王にダメージは無さそうだよっ!」


「了解よーっ! ニーナちゃんも気をつけてねっ」


「なんで俺のツッコミが総スルーされてるわけぇ!? 突起は同時に数箇所から出せるみたいだ! でもこれは純粋な攻撃手段だと思うから、討伐の参考にはならないかもーーーっ!」



 エロいことを口にしたくせに、直ぐに真面目な報告をするニーナ。


 悠長にツッコミを入れている場面でもないので、半ばヤケクソ的に補足情報を解析班に叫ぶ俺。



「ダンさんが突起と言うと、なんか微妙にえっちですねーっ?」


「うっさいムーリ! 割と余裕が無い状況なんだから、今はエロから離れなさいっ!」



 体表からの刺突では俺達を殺せないと判断したのか、女王は太くて短い8本の足をバタバタと動かし始める。


 そして足の先端から、切断面から飛び出してきた血管に酷似したぬめった触手のようなものが、ニーナとフラッタとヴァルゴ目掛けて高速で伸ばされる。



 テメェ! 誰の女に触手プレイを強要してやがんだ!


 それをしていいのは、この世界で俺だけなんだよぉぉぉ!



「アウタアアアアブレイイイイクッ!」



 居合い抜きの要領で、横薙ぎのアウターブレイクを放つ。


 上下に両断された女王はすぐさま触手を引っ込め、そしてまた切断面から似たような触手を伸ばして、瞬く間に接着してしまった。



「旦那様! 魔力を無駄遣いなさらないでくださいっ! 両断しても無意味なのは分かっていたでしょう!」


「分かってたけど、長くて滑ったモノを愛する妻に差し向けられたら、旦那としちゃあ黙ってられないっての! でも無駄遣いでしたーーっ! 済みませんっ!」


「縦でも横でも、両断しただけでは倒せなさそうだね。まさかこんな生物がこの世に存在しているとは驚きだよ……」


「私としては、そんな生物と戦ってるのにいつものノリのパパたちのほうが信じられないんだけどねぇ……」



 キュールさんとアウラが、共に呆れたような声色で呟いている。


 だけど2人の言葉の内容には随分と大きな隔たりがあるようですね?



「これがダンさんの、そしてフラッタの臨む戦場ですか……! イントルーダーと戦える程度では、まだまだ全然力不足なんですね……!」


「い、いやいやラトリア様。私たちもここまで目指さなきゃ駄目なんですかねぇ……?」



 家族の声を聞きながら、その声を力に変えて双剣を振るう。


 絶え間なく女王を切り裂きながら、頭と五感をフル回転させて女王の情報を掻き集める。



 しっかしフラッタが何度も切り上げているってのもあるけど、女王は戦闘が始まってから1度も地面に潜ろうとしていないな。


 これはちょっと意外だった。



 これだけの巨体が潜るのには何か制限があるのか、ヴェノムデバイスがもう全滅しているから、自分の安全確保のために確実に俺達を排除にかかっているのか……。



 多分後者なんだろうな。


 隠れていた結果進退窮まったから、躊躇いなく外敵の排除に移行したのだろう。



「っ!? 旦那様! 女王の口から黒き光が! お気をつけくださいっ!」



 ヴァルゴの警告に女王の顔を見ると、体の奥の方から黒い魔力光が漏れ出しているのが分かった。


 しかし俺がそれに反応するよりも早く、フラッタが驚愕の声をあげる。



「なっ!? これは……もしやブレスかっ!?」



 女王の口から漏れ出る黒き光が魔力光で間違いないのなら、確かにこれはブレスにしか見えない。


 俺は自分の嫁にも娘にもブレスをぶっ放されたことがあるからな。ブレスの見識に関しては人よりも自信があるんだよ?



「いやでも、どこか妾たちの魔力とは違うような……。体に魔力を纏ってもおらぬし……」


「考えるのは後だよフラッタ! ブレス警戒! 後衛のみんなも気をつけ……!」



 俺の言葉を遮って放たれる。無音の黒い魔力砲。


 竜王のブレスよりもアウラの複合ブレスよりも魔力が込められているように見えるそれを、全員危なげなく回避する。



 が、女王は黒いブレスを放ったまま、頭を激しく動かして周囲にブレスの砲撃を撒き散らして来やがった!



「うっぜぇんだよ! 手を離した時の水道のホースかテメェは!?」


「ダンさん! それって誰にも伝わらない例えなのっ!」


「伝わらないなら放っといて!? てかそっちは大丈夫かターニア!?」


「だいじょぶーっ。こっちにはブレスは飛んできてないの! 飛んできても避ける自信もあるのーっ」



 どうやら分析班の心配は必要なさそうだ。


 ティムルの竜鱗甲光もあるし、最悪の場合はアナザーポータルの転移もあるからな。



 人の心配をするよりも、目の前の女王に集中するんだ!



「くっ……! 長すぎないかっ……!? これじゃ近付くのも……!」



 しかし胸を撫で下ろしたのも束の間で、いつまでも撒き散らされ続ける黒いブレスに流石に辟易としてくる。



 コイツ、砲撃みたいなブレスをいつまで維持しやがるんだ!?


 竜王やフラッタですら、全力ブレスは10数秒しか持たないってのに……!



「コイツって野生動物なんだよなっ!? なんでこんなに大量の魔力を保持してんだよ!? おかしいだろ!?」


「……野生動物が大量の魔力を操るのもおかしいけど、再生能力も異常じゃないかな?」



 ヤケクソみたいに叫んだ俺の報告を受けて、チャールがぼそりと呟いた。


 その呟きに、戸惑ったように応じるシーズ。



「あ? なに言ってんだよチャール。再生能力が異常だってのはさっきから再三……」


「そうじゃなくってさ! いくらなんでも、魔力無しでこんな異常な再生能力って発揮出来るものなのかなって! 治療魔法やポーションじゃなくって、肉体の機能だけでここまでの再生能力ってありえるのっ!?」


「異常な再生能力……。確かにこれって魔力無しじゃ……。――――あっ!」



 チャールの閃きを受けて、ブツブツと呟くティムル。


 すると直ぐに何かに思い至ったように、全力で指示を出してくる。



「ダーン! もう1回アウターブレイクをお願い! 女王を両断したときの魔力の流れが見たいのぉっ!」


「お安い御用だお姉さん! いっくぜぇ! アウターブレイクッ!」



 未だブレスを放ち続ける女王に、袈裟切りからのアウターブレイクをお見舞いする。


 両断された女王は流石に黒いブレスを放つのは止めたけど、やはり直ぐに切断面が接着されてしまった。



 しかし今ので何かを掴んだらしく、青い瞳を大きく見開いて驚愕の表情を浮かべるティムル。



「そう、か……! こういうことだったのね……!」


「ティムル! 何か分かったの!?」


「ええ! 女王の体内に、膨大な魔力を生み出し続ける何かが入ってるみたい! 女王はそこから無限の魔力を得ているみたいなのっ!」


「……それって」



 ティムルからの報告にピンと来るものがあった。


 そして頭に浮かんだ発想を、そのまま素直に口にする。



「聖域の樹海の異変。魔力を生み出す何かを体内に宿す女王。野生動物なのに魔力を扱える意味。大気中の魔力を森へと変換し、世界の魔力のバランスを保つというレリックアイテム……」


「まさかっ……!? 女王の体内にあるのが聖域の樹海の核たるレリックアイテムであると、旦那様はそう仰るんですかっ!?」



 ぶつぶつと溢しただけの俺の言葉を、ヴァルゴが分かりやすくまとめてくれた。


 そうだよ。そう考えれば辻褄が合うんだよ。



 基本的に野生動物は魔力を扱えない。


 なのにヴェノムデバイスも女王も、イントルーダーかってくらい潤沢に魔力を行使してきた。



 そして我が家の愛娘アウラは、魔力によって肉体を改造された存在だ。


 アウラの肉体改造に使われたのは、アウターから流れ込んだ魔力ではなくて、1度魔物化した後に大気に還元されたこの世界に馴染んだ魔力。


 そして聖域の樹海の役割は、この世界に余剰に流れ込んだ魔力を樹木に変化に変換し、この世界に馴染ませること……!



「ヴァルゴ! 事の真相は今はどうでもいい! 今重要なのは、体内のそれさえ何とかしてしまえれば、女王の魔力行使を止められる可能性が高いってところだぁっ!」


「わ、私にとってはどうでも良くないんですけどぉっ!? で、でも了解しました! さっさと女王を倒して事の真相を暴きましょう!」


「聞いてたねみんな!? 女王の体内から核を摘出する作戦、よろしく頼むよ!」


「了解よーっ! さぁみんな、ここからが私たちの本当の戦いよっ!」



 話し合いを始めた解析班の声を聞きながら、前衛で女王の相手をしている俺達はひたすら攻撃を加え続け、女王から魔力を奪って勝負の瞬間に備える。



 イントルーダーでもないくせに、結局ギミックバトルになりやがってぇ。



 だけどタネが知れた時点でお前の負けだぜっ、ヴェノムクイーン!


 直ぐにその体内の何か、取り返させてもらうからなぁっ!

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