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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機
515/637

515 樹上

※R18シーンに該当する表現を若干カットしております。

 聖域の樹海の中央地帯の調査を始めた俺達は、手始めに木々の樹冠部分の調査をしようとそれぞれが目の前の大樹を登り始める。


 俺はペアを組んだターニアをお姫様抱っこして、木の上までエスコートしてあげることにする。



「あははっ! まるでニーナになった気分なのーっ!」


「元々ターニアとニーナはそっくりでしょー?」



 お姫様抱っこしているターニアとのイチャイチャを楽しむ。


 おかげでやる気が溢れた俺は、大樹の幹を足場にしてどんどんと上空へと駆け上がっていく。



 俺の意識はターニアでいっぱいになっているんだけど、これってどういう原理なんだろうな?


 職業補正って筋力には影響を及ぼさないってのが常識だったはずで、敏捷性補正や身体操作性補正を駆使したところで、ターニアを抱っこしたまま垂直に木を駆け上るなんて芸当、とても無理な気がするんだけど。



「あははっ。ダンさん、今日はいたずらしなくていいのーっ? 私、今完全に無防備だよー?」


「魅力的過ぎる提案だけど、一応何が起こるか分からない状態だからね。自重しておくよ」



 ターニアのほっぺに大丈夫だよとキスをして、歩みを止めずに木を登り続ける。



 年明けにストームヴァルチャーの群れと空中戦を繰り広げた時もそうだったけど、あんな動きを俺の筋力だけで行なうのはどう考えても無理だよな?


 って事を考えると、単純な速度以外の要素にも敏捷性補正がしっかりと影響してきている可能性が出てくる気がする。



 基本的に人間族さんは脆弱なので、手合わせの時なんかも他のみんなの剣を真っ向から受け止めることは出来ず、力の方向を流したり支点を変えたりすることで、なんとかみんなと剣を合わせている状態だ。


 だけどここが実は勘違いで、職業補正の使い方次第では竜人族の身体能力に迫ったりできる可能性があったりするのかなぁ?



 この世界の物理法則に作用している職業補正って、結構境界が曖昧なものも少なくない。


 その最たる例が所持アイテム重量軽減スキルだ。



 所持アイテムと明記しておきながら、水や食料、今抱きかかえているターニアの体に至るまで、ありとあらゆるものの重量を軽減してくれるスキル。


 これってこの世界的には、ちょっと適用範囲が広すぎるような気はしてるんだよね。



 所持アイテム重量軽減は魔力を用いて作られた装備品も、魔力に関係なく存在している生命体や水、食料品も全て軽く感じさせてくれるスキルだ。


 しかし実際に物の重量が軽減されているわけではなく、例えばフラッタのドラゴンイーターをまともに受け止めたら、俺はぺちゃんこになってしまうだろう。



 実際の質量、重量はそのままで、スキル保有者だけがその重みを感じなくなるのだ。


 戦闘から日常生活に至るまで活躍してくれる、まさに魔法みたいな効果のスキルなんだよなこれ。



「ねぇねぇダンさん。私を抱っこしたまま何処まで行く予定なのー?」


「1度木の上まで行って空を仰いでみたいと思ってるんだ。ターニアを抱き締めながらね」



 恐らく数百メートル以上はある大樹の上まで、ターニアを抱きかかえたまま一気に駆け上がる。


 抱きかかえたターニアを絶対に落したりしないようにしっかり抱き締め、ターニアの感触とぬくもりを楽しんでおく。



「枝とかぶつかるかもしれないから、常に顔周辺には気を配っておいてね?」


「大丈夫なのっ。私だってステイルークではたくさん木登りしてきたんだからねっ」


「そう言えばステイルーク南西にも森があったね。それじゃ一気に上まで突っ切っちゃうよっ」


「いっちゃえーなのーっ!」



 ターニアから片手を離し、ショートソードで枝を切り落としながら大樹を一気に駆け上がる。


 そして上へ上へと駆け上がり、とうとう大樹の上に出る事に成功した。



「……っとと。ちょーっと勢い、つけすぎちゃったかな?」



 ターニアの応援のおかげで勢い余って、木の天辺から更に20メートルくらい上空まで飛び上がってしまった。


 うん。こんなの職業補正が適用されてなきゃ出来るわけがない。俺の職業補正の認識はまだまだ甘かったらしいな。



「あははっ! ここからどうするのダンさんっ! このままゆっくり落ちるのを待つのー?」


「このまま落ちても対応する自信はあるけど、ターニアに頑張ってもらうって手もあるかな?」


「ふふっ! まっかせるのっ! ダンさんはおっぱいで大人しくしててねっ」



 落下し始める前に俺の手から抜け出したターニアは、俺の顔をおっぱいに抱きしめながら素早く獣化を発動し、その美しく大きな翼でゆっくりと羽ばたき始めた。



「悪戯するのは我慢してね? 空を飛ぶのって結構集中力が必要だから」


「抱きしめてもらってるだけで最高の気分だから安心していいよ。ゆっくり適当な木の上に降ろして貰えたらありがたいかな」


「ふふっ。ごめんねダンさんっ。せっかくダンさんを独り占めしてるのに、そんなに直ぐには降りたくないのーっ」



 堪らないといった様子で、俺の頭をぎゅーっと抱きしめてくれるターニア。


 飛ぶのに集中力が必要と言った割には大分余裕がありそうですね? おっぱいに抱かれてる俺としてはなんの不満もありませんけど。



 俺からも抱き付いてターニアのおっぱいに顔を埋めながら、おっぱいの隙間から周囲の様子を確認する。


 すると眼下にはどこまでも果てしなく広がる樹海が存在していて、だけど頭上には午前中の澄んだ空気を感じさせる爽やかな青空が広がっていた。



「……凄い景色だ。今この世界で俺とターニアの2人にしか見る事を許されてない景色だよ。素晴らしいね」


「すっごいのっ! 目の前には見たこともない景色。そして胸の中には愛するダンさん。こんなの幸せ過ぎるのーっ!」



 改めて俺の顔を抱きしめてくるターニアの好きにさせておきながら、俺は俺でこの場所の検証を少しずつ進めていく。



 どうやらアウターを突っ切ってアウター外まで出てしまっているらしく、アナザーポータルは発動できないようだ。


 けれど樹海の中は間違いなくアウターなので、ポータルで一気に戻ることも出来ないようだ。


 これは共有しておかないと少し危険かもしれない。



 ターニアの飛行能力って空を飛べるほどではないって話だったと思うんだけど、俺をおっぱいに抱き締めたまま安定してホバリングできている事を考えると、浸透が進んだおかげで彼女の飛行能力も向上したと思って良さそうだ。


 滞空時間的な猶予はたっぷりありそうだね。



「こちらダン。現在聖域の樹海の上空でターニアと景色を眺めてるところだよー。みんなの方はどんな感じー?」


「全部聞こえてたのーっ! 母さんばっかりズルイのーっ!」


「ニーナ、今は報告をするのじゃ報告をっ」


「あー旦那様? こっちは地道に登りまして、現在枝が鬱蒼としている部分を進行中ですね。野生動物の気配はありますが、今のところ襲い掛かってくる雰囲気ではなさそうです」



 ニーナたちからなかなか賑やかそうな報告が聞こえてきたけど、今のところ異常は無さそうってことかな?


 野生動物の気配っていうのが気になるけど、襲ってこないなら関係ないか。



「こちら双竜の顎も、特に変化は見つけられていませんね。ただやはり周囲から野生動物の気配を感じて落ち着きませんけど」


「一定の距離を保って監視されているような気分になりますね。殺気や敵意のようなものは感じないんですけど、少々気味が悪いです」


「ラトリアたちのほうにも野生動物の気配があるのか……」



 基本的には野生動物ってアウター内には住み着かないはずなんだけどな。聖域の樹海はやっぱりどこか他のアウターとは違うようだ。


 ひょっとして、聖域の樹海には雨なんかも降ったりするんだろうか? この大樹に遮られて天気の変化に気付かないだけで。



「ニーナたちもラトリアたちも、野生動物の気配に気を付けながら周辺を探ってみて欲しい。俺は野生動物の気配の方を追ってみるよ」


「了解なのーっ」


「ティムル。リーチェ。下の方に変化は?」


「今のところ何もないわ。散発的に魔物が襲ってくるくらいねー」



 野生動物らしき生体反応に囲まれているのに、襲ってくるのは魔物なのか。


 俺達の様子を窺いながらも襲って来ないって事は、もしかしたら人類に対して友好的な生物の可能性も……?



「野生動物を追うなら気をつけてねダン。マウントサーペントみたいな相手が潜んでいる可能性もあるから」


「肝に銘じておくよリーチェ。引き続き下の方は2人に任せる。何か異変があったら教えてね」


「「はーいっ」」



 マウントサーペントみたいな野生動物かぁ。考えたくないなぁ……。


 ま、今木の上に居るメンバーは、未知の野生動物が出てきても対処しやすいメンバーだとは思うけど。



「それじゃターニア。そろそろ俺達も真面目に調査しようか。適当な木に近寄ってくれる?」


「了解なのっ。でもダンさん、調査が終わったらいっぱい可愛がって欲しいなー?」


「そんなの言われなくてもさせてもらうよ。今夜はターニアを、ニーナとムーリと一緒にひと晩中可愛がってあげるから」


「ちょっ!? なんでそこで私を巻き込むんですかーっ!」



 ぎょっとした様なムーリの叫びが谺する。


 いやぁせっかくの流れだし、獣人族という括りで楽しませてもらっちゃおうかなって?



「獣化した3人を朝まで可愛がってあげたくってさ。だから調査が終わるまでちょっとだけ我慢しててねムーリ」


「なんで私が待ちきれないみたいになってるんですかーっ! 調査! 真面目に調査してくださいよーっ!」


「了解だよ。今夜ベッドの上でえっちなムーリを隅々まで調査してあげるから。楽しみにしてて」


「分かっててからかうのやめてくださいよーっ! もーっ! んもーっ!」


「お待たせダンさん。ついたよーっ」



 ムーリをからかって遊んでいると、目の前には木の枝が突き出ていた。


 いつの間にかターニアが高度を下げてくれたようだ。



「ありがとターニア。今夜の調査、ターニアも楽しみにしててね」


「いっつも楽しみにしてるのっ。それじゃ私は一旦獣化を解くね。いざって時に消耗してたら馬鹿らしいから」



 ムーリと違って、エロ発言はエロ発言として楽しみつつも真面目に会話を進めるターニア。


 ムーリって我が家でも最高のエロさを誇るくせに、いつまで経っても恥じらいが無くならないんだよなぁ。最高すぎるよあのエロシスター。



 ターニアのおっぱいから顔を離し、周囲の足場を確認する。


 流石に地球上では考えられないほどの巨木だけあって、枝の先端までしっかりしていそうだ。



「これくらい枝が茂ってたら、ターニアも余裕で移動できるよね?」


「うん。これならムーリちゃん……いや、チャールちゃんたちでも移動できるんじゃない? 枝もしっかりしてるし」


「だね。それじゃ生体察知を使って野生動物の反応を追ってみるから、ターニアは後ろからついてきてくれる?」


「了解なのっ。ダンさんのかっこいい背中、ずーっと見てるのっ」



 2人きりだからか獣化直後だからか、ターニアがいつも以上に積極的にアピールしてくるなぁ。


 そんなターニアのほっぺに1度キスをしてから生体察知を発動する。



「……1度木の上に抜けたっていうのに、生体反応に包囲されている状況は変わってない、か」



 生体反応を確認したのは良いんだけど、どうするかなぁこれ。



 生体反応は俺達の周りに無数にあって、大きさも形も様々だ。


 だけど俺達から一定の距離を取っているのは間違いないらしく、俺が少し動く度に生体察知もザワザワと蠢き出す感じだ。



 これってつまり、俺達の反応が完璧に捕捉されてるってことだよな?


 俺達を包囲している生物は鋭敏な感覚器官でも持っているのか、もしくは生体察知スキルを使える野生動物なのか……。



「ターニア。多分この野生動物たち、俺達から逃げ回ると思うんだ。だからちょっと急いで移動するからね」


「了解なの。もしダンさんの動きについていけなくて置いていかれちゃって気にしないで。リーチェさんのおかげで会話は繋がってるし、何も心配しなくていいのっ」


「確かにね。何かあったら遠慮なく声をかけて。それじゃ行くよっ」



 無数の生体反応の1つ、人よりもひと回り小さいくらいの反応に狙いを定めて枝を蹴る。


 するとやはり俺の動きに合わせて、周囲の生体反応がザザザッと波を退くように退いていく。



 なんか初めてヴァルゴと出会った時の守人たちの反応を思い出すわぁ……。



「う~ん。ダンが追っかけている反応が逃げるのは分かるけど……。なんでその後ろの反応はダンを追っかけてるんだろうねー?」


「確かにの……。警戒しているだけならダンの動きに反応して離れていくはずなのじゃ。しかしこの反応、まるで様子を窺っておるような……」


「ニーナ。フラッタ。これはただこの聖域に生息しているだけの生物では無さそうですよ。警戒レベルを上げておきましょう」



 狙いを定めた生体反応を追っていると、ニーナ組から不穏な会話が届けられる。


 3人の会話に嫌な予感を増幅させながらも、どうやら俺の方が動きが早いのは間違いないらしく、狙った反応にどんどん距離を詰めていく。



「ここか……なっ!」



 生体反応があるのに全く目視できない相手。


 しかし今の俺なら、スキルの反応だけを見て相手の居場所を特定することなど余裕である。



 生体察知の反応に従ってショートソードを振るい、目の前の巨木の幹に剣を突き立てた。


 すると木の中の生体反応がしっかりと縫い止められたのが感じられた。



「木の中の生体反応かぁ……。心の底から嫌な予感しかしないけど、ここまで来たら確認しないわけにはいかないよなぁ……」



 ショートソードを突き立てた周囲を、ロングソードで慎重に切り付け掘削していく。


 中の反応はまだ暴れているので、間違っても切り付けないように気をつける。



「……なんだこいつ?」



 そうして掘削した木の中から出てきたのは、人間よりもひと回りくらい小さな蜘蛛のような生物だった。


 だけど百足のような胴体が蜘蛛の前後に伸びていて、その両端からはなんかフサフサした大きめの触角をウネウネと動かしながら大暴れしている。



 あんまり直視したくない外見の、生理的嫌悪感を煽る不快害虫のような野生動物が俺のショートソードに貫かれて、もがくようにのた打ち回っていたのだった。

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