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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機
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508 教育

「あははははっ! 偽証禁止の誓約をしておいて、あんなの酷すぎるのーっ!」


「あははははっ! モ、モノは言い様にも程があるよっ!?」 



 奴隷商館で無事にカイメンを引き取ったので、そのままアウター管理局に向かう俺達。


 しかしニーナとリーチェが奴隷商館でのやり取りがツボにハマってしまったらしく、さっきから笑いっぱなしでちょっとお騒がせしてしまっている。



「物事の順番があべこべなのに、嘘は一切言っていませんって説明しきっちゃうなんて、ダンったら詐欺師すぎるのーっ! あははははーっ!」


「カイメンを強制的に奴隷化したのは間違いないのに、そのカイメンをすっかり悪者にしちゃうなんてさぁ! 流石にカイメンに同情しちゃったよ!? あはははははっ!」



 通行人が聞いたら通報されそうな叫び声をあげて爆笑している2人だけど、どうやらリーチェがしっかりと音を遮断しているようで声は漏れ出ていないようだ。



 だけどニーナとリーチェという超絶美人がお腹を抱えて笑っているという天国のような光景は、道行く男性陣の目を惹き付けて離さない。


 2人を見慣れた俺でも目を奪われる光景だもんな。見蕩れちゃうのも無理はない。



 んー、あんまり注目されるのも不味いかなぁ?


 でも既にアウター管理局と職人連合には目を付けられてるんだから、今更コソコソしても意味が無いか。



 笑い転げる2人を抱き寄せながら、未だ憤怒の表情を浮かべているカイメンに声をかけておく。


 ……いい加減、会話禁止も解除するかぁ。



「カイメン。お前の会話禁止は終了な。さっき言った通り、大人しくしてれば特別お前を冷遇しようとは思ってないよ」


「ふざけるなっ! 奴隷に落とされた時点で既に充分すぎるほどの冷遇だろうがぁっ!!」


「ぷぷっ! た、確かにそうなのっ! 奴隷にしておいて冷遇する気は無いは笑えるのーっ」



 笑い転げるニーナとリーチェのおかげで、真面目な話をする雰囲気が全く出てこない。


 だけど楽しげに笑う2人に水を差す気も無いので、笑顔の2人のほっぺにちゅっちゅっとキスをして、穏やかな気持ちでカイメンとの会話を続ける。



「俺がその気になればお前の自由を一切禁止して監禁することもできるし、本来ならお前を生かしておく必要も無いんだぞ? ギャーギャー感情的に喚く前に、少しは自分の立場を自覚しろっての」


「ならば殺すがいい! 奴隷として貴様に媚び諂うくらいなら死んだ方がマシというものだ! 必要が無いと言いながら、なんで未だに俺を生かしているというのだっ!?」


「あっ、そうそう。ぼくもそれは疑問に思ってたんだよ。どうしてダンはカイメンを放っておいてるのー?」



 怒り心頭のカイメンとは対照的に、どうしてどうしてー? と首を傾げて訪ねてくるリーチェ。


 カイメンと話をしておきたいのに本人は聞く耳持たないし、ニーナはずっと笑ってるしリーチェは割り込んでくるしで、いつも以上にカオスな状況だなぁ。



「もうアウラの体にも不安要素は無いのに、どうしてダンはカイメンを放置してるの? 流石に殺せとは言わないけどさぁ。それにしたって放置しすぎてない?」


「ん~、さっき奴隷商館でも説明したけどさ。カイメンたちアルケミストって確かに黒幕ではあるんだけど、ホムンクルス計画を引き継いだだけの1人の研究者に過ぎないとも言えるからなぁ」



 カイメンらアルケミストたちが、アウラのホムンクルス計画を主導してクラメトーラ全体を困窮に追い込んでいた張本人には間違い無いんだけど……。


 今まで会ってきた悪人連中に比べると、100%悪意で行動していたとは言いにくいんだよねぇ。



 アウラ自身がカイメンたちに悪感情を抱いていないことから、カイメンたちがアウラを大切に扱っていた事は疑いようがない。


 それがたとえ研究対象としての扱いだったにしても、大切に扱われていたことには変わりないのだ。



「カイメンたちへの感情って、ちょっと複雑なんだよなー……。アウラを攫って強制的に被検体にした実行犯は、もうとっくに昔に死んじゃってるだろうしさぁ」


「煮え切らないなんてダンにしては珍しいねー? 確かにカイメンたちはホムンクルス計画を引き継いだだけなのかもしれないけど、それでも事の首謀者である事は変わらないんじゃないの?」



 今までは立ちはだかる障害を容赦なく排除し続けてきたからなぁ。リーチェが不思議に思うのも無理ないか。



 去年までの俺ならカイメンを扱いきれず、扱いきれないならいっそのこと……、と思っていたかもな。


 この煮え切らなさ、カイメンを持て余している感じは、不測の事態が起きても対応できる自信がついたってことなのかもしれない。



「いやぁ厄介な事にさぁ。カイメンからはほとんど悪意を感じないんだよねぇ……」


「悪意を感じない? どう見てもダンに対して怒り狂ってるようにしか見えないよ?」


「俺に対する憤慨は別にしてさ。こいつって本当に心の底から、ドワーフ族の悲願だから、この世界を救う英雄を作り出したいからと思って行動してるんだよね。他種族を圧倒したいとか、世界を支配したいみたいな私欲が一切感じられないんだ」


「馬鹿馬鹿しい! 誇り高き我らドワーフ族を、お前のような欲深き人間族と一緒にするんじゃない! 確かにアウラの意思は無視してしまったかもしれん! だがドワーフ族にとって聖女アウラの存在は、まさに生きる希望そのものだったのだっ!!」



 俺とリーチェのやり取りに、黙っていられないとばかりにカイメンが口を挟んでくる。


 ……欲深き人間族って一括りにされるのはちょっと抵抗を感じなくもないけど、この世界で人間族さんがやってきた負の実績が多すぎて反論のしようがないな?



「アウラの存在は全ドワーフの、ひいては全人類の希望になるはずだったのだ! それをっ、それを貴様がぁ……!!」


「とまぁこんな感じでさ。計画を始めた当時の研究者たちはいざ知らず、研究を引き継いだだけの現代のアルケミストたちって、最早使命感の方が強かった気がするんだ」


「使命感かぁ……。縛鎖のペンデュラムを使ったことは減点だけど、アウラの存在を悪用する気は無かったってこと?」


「多分ね。でもペンデュラムでアウラに無理させたりしてるわけだし、完全に無罪放免ってわけにもいかないんだよねぇ……」



 ペンデュラムで強制的に俺に嗾けられていた時の、苦しそうなアウラの姿を思い出す。


 幸いな事に魔力枯渇を起こす事はなかったみたいだけど、自身に内包している以上の魔力を一気に放出しながらそれ以上の魔力を供給し続けられていたあの時のアウラは、正直言って見ていられなかった。



 アウラの自由意志を奪っていた縛魂のペンデュラムの話になった時、慌てた様子で釈明を始めるカイメン。



「縛魂のペンデュラムは仕方なかったのだ! もしも人類の希望であるアウラが人類の敵に回ってしまったら、それこそ人類は滅びを待つだけになってしまうのだから!」


「アウラが人類の敵になるシチュエーションって想像し難いけどね。でもその想定は理解できるよ」


「ふんっ。例えばの話だが、アウラが支配などされてしまえば一巻の終わりだ。だからもしもの時に備えて、アウラを強制的に制御する方法を組み込まねばならなかったのだ……!」


「あーあー、そう言えば支配なんてあったねぇ。あれって耐性スキルも貫通してくるから……」


「非常に強力な状態異常である支配だが、所詮は魔法的な外部干渉だ。肉体の外側から魔力で意志を奪う支配より、魂が直接繋がるペンデュラムの方がアウラへの干渉力は上だったのだぞ……? しかしペンデュラムを破壊されてしまった今、アウラが暴走してしまったら止める術が無いのだぞっ!?」



 説明しながら感情が昂ってしまったのか、いったいどうしてくれるんだと最終的には怒鳴りつけてくるカイメン。


 なるほどなぁ。支配と縛鎖のペンデュラムの効果優先度の比較調査なんかも終わってるんだ?



 ああっと、縛鎖のペンデュラムってレガリアから贈られた物だったんだっけ? あいつら嫌がらせに特化した組織だったし、人の隷属化に対する研究は滅茶苦茶進んでそうだ。


 そう考えてみると、同じ分野のマジックアイテムであろうスレイブシンボルの開発と改良が進んでいたことにも納得がいく。



「世界の守護者たる聖女アウラが敵対すれば、人類は破滅するしかないんだぞっ!? 貴様、どうやってこの責任を取るつもりなんだっ!?」


「はっ。アウラが暴走すれば人類は破滅だって? 話は聞かせてもらったってかぁ?」



 異世界では通じない人類滅亡ネタを呟きながら、カイメンの叫びを受け止める。


 不穏な雰囲気を纏いつつある俺の態度に、カイメンは相変わらず怒りの眼差しを向けながらも感情的な叫びを止めてくれたようだ。



「寝言は寝て言えよカイメン? 今のアウラが暴走した程度でこの世界が滅ぶわけねぇだろ。仮に俺達が居なかったとしても、だ」


「……なんだと?」



 俺達が居るから、ではなく、俺達が居なくてもと言われたカイメンは、怪訝な表情で俺を見詰めてくる。



 カイメンたちにとってホムンクルス計画がどれほど崇高なものだったのかは想像することしか出来ないけれど、アルケミストたちはアウラのことを過大評価しすぎていると思う。



 確かにアウラの才能は群を抜いている。それは認めざるを得ない事実だ。


 けれど俺はカイメンの前でアウラを無傷でいなして見せたし、今のアウラがイントルーダーと対峙するのもまず無理だ。


 才能だけで生きていけるほど、この世界は甘くない。



「アウラの才能は認めるけどな。今のアウラが暴走したところで、良くて大量殺人犯。下手すりゃ一流どころの魔物狩りにあっさり返り討ちにされて終わりだぞ?」


「なっ!? そ、そんなことは有り得ん! アウラは人類の到達点なのだぞっ!? そんなアウラが魔物狩り風情に後れを取る事など……」


「身体能力だけで最強になれるなら、職業の加護なんて要らないんだよ。お前らアルケミストは10歳の少女に幻想(ゆめ)を抱きすぎなんだよ、バーカ」



 魔法も職業補正も無い地球であれば、人類の頂点に立つべく生まれたアウラは、生まれながらにして最強となることもできたかもしれない。


 だけどこの世界には、万人に与えられる祝福の力、職業の加護があるんだよなぁ。



 俺達仕合わせの暴君メンバーくらい職業が浸透していると、累積している職業補正を十全に使いこなすことすら難しい。それくらい職業の祝福の効果は凄まじいんだよ。


 持って生まれた身体能力だけで頂点に立つのは、いくらなんでも不可能だ。



「それだけじゃない。個人的に引っかかってるのは、アウラの魔力をアウターから引っ張ってきてたことなんだ」


「……どういうことだ? アウラの膨大な魔力消費を賄う為には、他の方法なんて……」


「仮に他の方法が無かったにしてもだ。アウターとアウラを繋いでしまったら、アウラは暴王のゆりかごを離れられなくなってたんじゃないのか?」


「……っ」



 俺の問いかけに言葉を詰まらせるカイメン。


 クラクラットの街に出掛けるくらいは出来たようだけど、やはりアウラは暴王のゆりかごからあまり離れられない体にされていたらしいな。



「人類の希望なんて言いながら、暴王のゆりかごから離れられないんじゃ本末転倒だ。暴王のゆりかごはアウラへの魔力供給で魔物が出ないし、強大な魔物が発生した場所には赴けないだろ? 馬鹿じゃねーの?」



 規格外の存在を生み出す為に種族を犠牲にしてきた結果、アウラは魔物が出てこなくなった暴王のゆりかごから動けなくなってしまい、無用の長物と化してしまっていた。


 多少は遠出も出来たのかもしれないけれど、アウラの性能を完全に引き出しながら戦うには暴王のゆりかごで戦わないといけなかったはずだ。



 当時のドワーフたちにとっては、守るべき人類とはクラメトーラに住まうドワーフのことだけを意味していたのかもしれないけど……。


 アウラが人類の希望であるというアルケミストたちの見解は、机上の空論でしかない。



「お前らがやってたホムンクルスってさ、結局はただの自己満足なんだよ」


「なっ……!? なんだとぉ……!?」


「実用性も無ければ求められてもいない。そんな研究に455年も没頭してたとか、アルケミストって馬鹿しか居ないのな? 客観性皆無って奴?」


「……我らドワーフ族の悲願をぉ! よりにもよって自己満足だとぬかしたかぁっ!?」



 さっきまで言葉を詰まらせていたカイメンも、分かりやすい罵倒の言葉に怒りを爆発させてくる。


 だけどさカイメン。仮にも研究者を名乗るなら、感情じゃなくて理屈で俺を納得させてみろよ?



「俺に不服があるなら答えろカイメン。もし今スペルディア近郊にガルクーザが出現したら、本当にアウラは役に立てるのか? 人類の守護者たるアウラは、人類の脅威と対峙することすら出来ないんじゃないのかよ?」


「ぐ……ぬぅ……! そ、れは……」


「人類の到達点を生み出す為に膨大な魔力が必要だったのは分かる。けどその為にアウラとアウターと紐付けたことで、アウラが遠くに移動できなくなってしまったのは馬鹿すぎる。歴代アルケミストの中に、1人くらいこれを指摘する奴は居なかったのか? って言いたくもなるよ」



 ホムンクルス計画を思いついた当時のアルケミストたちは、アウラという究極の存在を作りだす事に酔っていたんだろうなぁ。



 冷静に考えれば、ホムンクルス計画と聖女アウラの問題点は幾つも見つけられたはずだ。


 だけどホムンクルス計画に酔ってしまった当時の研究者たちは、問題点から目を逸らして研究を開始することを選んでしまった。



「だからさカイメン。アウラの事は俺達が完成させるから、お前はもうアウラのことは忘れていいよ」


「……な……なに?」


「人類の到達点に興味なんて無いけど、計画を完成させないとアウラは普通に生きていくのが難しいからね。俺の娘として、アウラにはちゃんと完成を目指してもらうつもりだよ」



 手始めに、アウラを縛り付けるアウターとの紐付けは既に破壊した。


 続いてアウラの自由意志を奪うマジックアイテム、縛魂のペンデュラムを破壊してやった。



 更にここから職業浸透を進ませ、戦闘技術を磨かせ、そしてこの世界を滅ぼしたくないって思えるほどに幸せにしてやるつもりだよ。


 それが出来た時に初めて、アウラは人類の到達点としてこの世界の希望となることだろう。



「アルケミストが生み出した原石を、俺達の手で最高級の宝石に磨き上げてやるってことだよ。調合、生成と加工は違う技術だ。もうお前の出番は終わったんだカイメン」


「違う技術……? つ、つまり貴様は……。ア、アウラがまだ完成していないと言いたいのか……!?」


「未完成も未完成。今のアウラは生まれたての原石、赤ん坊と変わらないよ。人類最強として完成させるためには、ここからしっかり磨き育てる必要があるだろ」



 人類最強とか人類の希望とか、出来ればそんな物を娘に背負わせてやりたくはないんだけどねぇ。



 だけどアウラの資質を考えると、普通の人間と同じ人生を歩んで行くのは難しいだろう。


 彼女は自分の意思とは無関係に、人類最強となることを義務付けられた存在なのだから……。



「育て上げる知識も磨き上げる技術も……ひょっとしたらその意思も覚悟すらも無いお前らに任せてたら、いつまで経ってもアウラは未完成のままだ。そんなの俺が許さないっての。アウラの父親であるこの俺がな」


「育て、磨き上げるだと……? それでは……それではまるで、アウラが普通の人の子のようではないか……」


「ホムンクルス計画はアウラを生み出した時点で成功してる。だからもうお前はアウラから手を引けカイメン。忘れろ。2度と関わるな。アウラを腐らせ、駄目にしたくないならな」


「ホムンクルス計画が成功……。計画は、終了した……?」



 カイメンは自問自答するように、俯いたままブツブツと呟き始めた。


 これ以上話しても今は理解も納得も出来ないだろうと判断した俺は、俺達についてくるようにとだけ命じて会話を切りあげる。



 カイメンは俺の言葉を受け入れられない、けど否定も出来ないといった様子で、ブツブツと何かを呟きながら俺達についてくる。


 アルケミストが抱いていた幻想を粉々にして、現実というものを認識させてやれたようだ。



「……カイメンのこの様子だと、アルケミストたちは本気でアウラが人類の希望になると信じて、そして全く疑っていなかったんだねぇ」


「その想いは本物だったかもしれないけど、ダンの言う通り見通しが甘すぎるよね。素のアウラじゃイントルーダーはおろか、ダンと出会う前のラトリアやヴァルゴにすらあっさり殺されていただろうから」



 ニーナとリーチェも少し複雑そうな表情を浮かべて、放心状態のカイメンを眺めている。



 恐らく人類を護りたいという熱意だけは本物だったのだ。


 だけどやり方を間違え、想定を間違え、出来上がったものはそのままでは何の役にも立たない、全く意味の無い存在だった。



 人類を守るために生み出されたアウラは人里離れたアウターに縛られ、人類の脅威と戦うことすらできなかったのだ。



「アウラがどんな道でも自由に選べるように、みんなで育てて導いていこう。俺達の娘なら、きっと自分の運命に押し潰されない強い子に育ってくれるはずだから」


「あははっ。フラッタとヴァルゴも張り切ってたしね。きっとすっごい強い子になっちゃうと思うのっ」


「う~ん……。魔力の補給を抜きにしても、アウラって結局ダンのところに来るしかなかったよね。不幸を嫌って運命を捻じ曲げる暴君の娘って、アウラにとっては最高の教育環境だと思うなぁ」



 俺の事はなんとも言えないけど、アウラの母親はみんなこの世界で大きな不幸を体験してきた女性ばかりだからね。


 アウラに自分が戦うべき運命を教えるのに、これほど適した人選も他には無いと思うよ。言わないけどね。




 呆けたままのカイメンを連れて、アウター管理局に到着する。


 到着するなり待っていたレイブンさんに案内されて、昨日話をした会議室に通された。



 部屋の中には昨日と同じ3名、アウター管理局局長のタヌークさん、副局長のタァツネさん、局長補佐のヌゥジーナさんが待っていた。


 今日は落ち着いて話が出来るかなー、と思ったら、カイメンを見たタヌークさんが椅子から飛び上がるように立ち上がった。



「カカカカカ……カイメン様……!? な、なぜ貴方がこんなところに……!?」


「それも含めて説明させてもらうつもりだけど……。今日は落ち着いて話が出来る状態なのかな?」



 動揺するタヌークさんに確認するけど、どうやら俺の言葉を聞いてないようだ。


 だけど残る3人、タァツネさん、ヌゥジーナさん、そしてレイブンさんは、重苦しい表情で俺に頷きを返してくれた。



「……まだ完全に冷静になったとは言い難いがな。昨日ダンが言っていたクラメトーラの自立について、詳しく聞かせて欲しい」


「オッケーレイブンさん。それじゃ昨日の話の続きをしよっか」



 アウター管理局の局長であるタヌークさんは抜け殻状態だけど、他の3人がちゃんとしてるなら問題ないだろう。


 俺はニーナとリーチェを抱き寄せて、心を落ち着けながらクラメトーラの今後について語り始めるのだった。

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