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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機
496/637

496 花言葉

※R18シーンに該当する表現を(1500字程度)カットしております。

 書き直しの際に元の話より3000字程度増えてしまって、全年齢化が間に合いませんでした。申し訳ありません。

 まさしく夢の一夜と呼ぶに相応しい、家族とのイチャイチャでラブラブな時間が過ぎていく。


 最後のアウラとフラッタの末っ子コンビを朝までゆっくり愛して朝になったら、今度は家族で合流して全員を周回する。



 ……おかしいなぁ。夢の一夜が朝になっても終わる気配が無いぞぉ? みんな大好きーっ。



「ほらほらダン、朝になったんだから夢の一夜は終わりよ。これで最後にしましょうねー?」



 俺の頭を撫でながら、ティムルが終了を宣言する。


 しっかりと全員を可愛がってあげたので、ティムルの終了制限に不満を持つ者は誰も居ないようだ。我ながら頑張ったぜっ!



「いくらなんでも私たちが使った部屋で食事は出来ないね……。身支度を整えてチャールたちの部屋に行くのー」



 夢の一夜の代償に凄まじく汚されてしまった部屋を見たニーナが、部屋の移動を提案してくる。


 我が家にとってはありふれた朝食時の光景だけど、身内以外にはとても見せられる惨状ではないよね……。



 軽くお風呂で体を流したら、全員で別室に移動してチャールたちと合流。


 みんなでゆっくりと豪華な朝食を楽しむ。



 ……さて、聞きたくないけど聞かねばなるまい。夢の一夜が始まる直前のキュールさんの発言の真意を……!


 でも本人に聞くのはなんか嫌だったので、夢中で料理を頬張っているチャールとシーズに問いかける。



「ねぇねぇ2人とも。昨日キュールさんがなんか不穏な事を言ってた気がするけど、その後何かあったかな?」


「ん? キュールさんが私たちとパーティを組んで一緒に活動するって話?」


「ぐっ、ぐおおっ……」



 チャールめ~っ! わざわざ暈したのに直球で打ち返してくるんじゃないよっ。



 ……いや待て。まだチャールはその話を受けたとは言っていない。


 話がされた事は間違いないようだが、2人がキュールさんの提案をきっぱりと拒否した可能性も……!



「俺らとしても願ってもない提案だったからなっ! これからは3人で活動していくつもりだよ! あ、勿論ダンから頼まれている依頼も疎かにする気は無いから心配すんなって!」


「拒否した可能性なんてありませんでしたねーっ!」



 キュールさんのパーティ加入を嬉しそうに報告してくるシーズ。



 ま、元々この3人は仲が良かったから、この結果は分かりきっていたと言えなくもないですけどぉ。


 言えなくもないけど、怒られそうだよぉ……。色々な人に?



 キュールさんの行動で迷惑を被りそうで頭を抱えているというのに、その本人は聞いて聞いてと言わんばかりのハイテンションで2人の説明を引き継いだ、



「ということでっ! 私たち『究明の道標』を改めて宜しく頼むよっ!」


「うわっ、2人の時には無かったパーティ名とか早速設定してるしっ!?」


「リーダーはチャール、切り込み隊長のシーズに、アドバイザーの私というパーティ構成を予定しているよ。これなら新たにメンバーが加入しても私に遠慮せずに済むんじゃないかな」



 意気揚々とパーティに参加した割には、主導権は主張しない方針のようだ。


 既に王国中、帝国中を渡り歩いたキュールさんは、その自分とは違った発想と着眼点を持っているはずのチャールとシーズに期待しているのかもしれない。



「2人のパーティに参加させてもらうという形だからね。自分の分は弁えているつもりだよ。あくまでこの2人が中心のパーティである事は忘れないつもりさっ」


「俺としては、帝国の人間である事を忘れないでいて欲しかったけどねー?」



 あくまで帝国の人間として、俺達とは一定の距離を保って接してくれていたと思ったんだけどなぁ。


 チャールとシーズの2人と一緒に活動する事をそんなに嬉しそうに報告されちゃうと、今更口出しするのも憚られちゃうよ。



「……まぁいいや。キュールさんの選んだことにとやかく口出ししたくないし。だけど帝国側の説得は自分でしてよ?」



 キュールさんがどんな立場でどんな選択をしたからといって、家族でもない俺たちに言える事は無いか。


 チャールたちも嬉しそうにしてるし、3人にとっては最善の選択なのかもしれない。



 だけど、任せてくれたまえっ、と上機嫌に笑うキュールさんを見ていると逆に不安になってくるんだよなー。本当に大丈夫ぅ……?



 ふ~やれやれと首を振って会話を切り上げると、そのタイミングを狙って意外な人物がキュールさんに声をかけてきた。



「ねぇねぇキュールさん。1つ聞いてもいいかなー?」


「ん? なんだいアウラ君。私に答えられる事なら何でも聞いてくれたまえよっ」



 もぐもぐと果物を頬張りながら、はいっと右手を上げてキュールさんに声をかけるアウラ。


 声をかけられたキュールさんの方も普段通りの応対で、既にアウラに対する蟠りのようなものも無さそうだ。



 だけど、アウラがキュールさんに声をかけるなんて珍しいな? いったいなんの用件だろう?



「『キュール』ってさ、うちの花壇にも生えてる白いお花のことだよね? もしかしてキュールさんのお名前って、あのお花に因んで付けられたお名前なの?」


「おっ、なかなか博識じゃないか。花の名前なんて知らない人の方が多いだろうに」



 アウラからの質問に、キュールさんが感心したように目を丸くする。



 もしかしたら、アウラの事情を知っているキュールさんだからこそ余計に驚いたのかもしれない。


 アウラが眠っていたクラメトーラの地は、花どころか草木も生えない不毛の地だったから。



「えへへっ。お花のことはニーナママにいっぱいお話してもらってるからねーっ。お家に咲いているお花なら大体分かるんだーっ」


「なるほど。確かにダンさんの家の前には花壇があったねぇ。もっとちゃんと見れば良かったかな。ゆっくり待つつもりだったのにダンさんがすぐ現れちゃったから、花壇のことなんてすっかり頭から抜けちゃってたよ」



 確かに、待つつもりで静かにしてたところに家主が現れたらびっくりするかもな。


 でもねキュールさん。殆ど無意識に察知スキルを発動するようになった我が家にとっては、家の敷地内に人が入ってくると落ち着かないんですよ。



「さて、私の名前の由来だけど、ご明察だ。私の名前はキュールの花から取ったものだそうだよ。でもこうして指摘されたのはアウラ君が初めてだね」


「やったっ。ずっとそうなんじゃないかなーって気になってたんだよねっ」


「植物の知識自体があまり興味を持ってもらえないというのもあるけど、魔人族の紫の肌が白いキュールの花のイメージとは重ならないんだろうね。気付けなくても無理ないさ」


「色が重ならないって事はぁ……花言葉? えっと、キュールの花言葉ってなんだっけ? ニーナママ」



 首を傾げながらニーナに答えを求めるアウラ。



 へぇ? この世界にも花言葉の文化があるんだね?


 日本に居た頃に花言葉なんて意識したこともないから、俺にとっては異世界の文化と変わらないけど。



 意外な異世界の文化に感心していると、問いかけられたニーナが、確か……と首を捻りながら回答する。



「……希望、だったと思うの。他の花よりも早く咲きやすいキュールの花は、新しい季節の到来を告げる希望の象徴として語られることが多いんだって言ってたかなー?」



 なるほど。確かに我が家の花壇でも、真っ先に花開いたのがキュールの花だった気がする。


 真っ先に咲く白い花が希望の象徴に見えるって感性は、異世界でもなんとなく分かるなぁ。



「……だからコットンは沢山キュールの花を植えたんだよ。うちに水を汲みに来る子供達の未来が希望に満ち溢れたものでありますようにって」


「……ん? 水を汲みに来る子供たち……ってだぁれ? そんな人居たっけ?」


「ふふ。そんな人はもう居なくなったのっ。もう小さなお花に縋らなきゃいけない子供なんてどっこにも居ないのーっ」


「え? えっ?」



 嬉しそうなニーナに、不思議そうに首を傾げてみせるアウラ。


 そう言えばアウラって、トライラム教会が大変だった時期を一切知らないのか。



 それを言ったらターニアやヴァルゴも知らないのかな? ターニアは一般常識としては知っているだろうけど。



「え、えっとぉ……。と、とにかく、キュールさんの名前の由来は希望ってことでいいのかなっ?」



 ニーナの言っている事は良く分からなかったみたいだけれど、ご機嫌なニーナに水を差すのも良くないと判断したアウラは、気を取り直してキュールさんとの会話を再開した。


 しかし問いかけられたキュールさんは、少しバツが悪そうにぽりぽりと頬を掻いている。



「いやぁ恐縮な話だけどね……。私は両親がかなりの高齢になってから出来た子供だったから、本当に待望の赤ちゃんだったのさ。希望なんて名前をつけられるくらいには溺愛されたよ」


「両親にとっての希望かぁ。そういうのいいねっ」


「なに言ってるのっ。アウラはダンと私達全員の希望なんだよ?」



 はしゃぐアウラを愛おしそうに抱き締めるニーナ。


 子供が作れない我が家にとって出産に関する事はタブー化しそうなものだけど、ニーナも他のみんなも特に気にした様子は無いな。ちょっと安心。



「私なんかよりもダンさん達の方がよっぽど希望って言葉が似合うと思うよ? レガリアを滅ぼしスペルド王国を希望の光で照らしたのだから」


「いやいやキュールさん。ダンさんがやったのは希望の光で照らした程度じゃないですからっ。無理矢理一方的に瞬く間に希望と幸せを押し付けてきたんですよこの人はっ」



 こんなことを言うムーリこそ、俺にエロスとおっぱいを押し付けてきてるじゃないですかーっ!


 押し付けられたら余すことなく受け取っちゃいますけど? もう絶対に返品しませんけどねーっ?



「あははっ! しかも過去に失くしたモノまで取り戻しちゃうから始末に負えないのっ」


「しかも失くしたころよりずっと良いモノにして取り返しちゃいますからねぇ……。希望なんて優しげな言葉は逆に似合いませんよ?」



 からかいながら抱き付いてくるターニアとラトリアの母親コンビにお仕置きをして差し上げたいけど、流石にチャールたちの前でエロい事をするわけにはいかないな。


 仕方ないのでぎゅーっとして、よしよしなでなでするだけに留めておこう。2人とも大好きー。





「さっ。夢の一夜でたっぷり英気を養った後は、馬車馬の如く働くとしようかっ」


「それじゃまずは私たちが確認した、聖域の樹海の端を確認してもらいたいのー」



 ニーナの提案に従って、まずは聖域の広さを確認することになった。


 朝食を食べ終えた俺達は転移コンボで一気に聖域の樹海に移動して、まずはニーナ、ティムル、フラッタのアナザーポータルで聖域の端まで一気に転移した。



「まずはここが私が確認した、聖域の樹海の西側の端なのー」



 俺の左腕の中に収まっているニーナが、転移先に広がる樹海を指差し説明してくれる。


 ニーナが確認した西側の出口は、アウターの外まで森深い景色が広がっていた。



 検証の為に1歩踏み出すと、アウターの外に出たため暗視魔法(トーチ)が効果を発揮できず、探索する場合は別途照明を持ち込まなければならないことが分かった。


 そしてそれは右腕に収まっているフラッタが確認してくれた聖域の東側も同じで、せっかく聖域の樹海を踏破したのに達成感みたいなモノを得ることは出来なかった。



「アウターの境界が無い為、トーチがいきなり切れると視界が閉ざされてしまうのじゃ。外から中に入る分には多少目が慣れてくれるのじゃがなぁ」


「アウターから外に出た瞬間が1番危険そうだねー。野生動物の気配も多いし、探索魔法に慣れきっちゃうと事故が起こりそうなのー」



 ニーナの言う通り、アウターの外の森には小さな生体反応が無数に感じられる。


 アウターと直接的に繋がっている森なのに、どうやら野生動物が豊富に生息しているらしい。



「残るはお姉さんが確認した南側よぉ。ちょうど王国とは反対側だから、最も人里から離れた出口って事になるわねぇ」



 背中から抱き付いているティムルが、俺の耳元で意識的に甘く囁きながら次の転移先を教えてくれる。


 聖域の樹海の北側はアルフェッカやステイルークがある方角なので、残るはティムルに確認してもらった南側だけになった。



「せっかくアウターの外に出たのに、今のところ代わり映えしない景色ばかりだねー。南側は違う景色だと良いんだけどー」


「んー、むしろ3方向が同じ状態なんだから南側も同じじゃないかなー? 変わってて欲しいけどねー」



 アウラとチャールから若干の飽きが漂ってくる。


 今のところカランさんに語られたような雄大な景色を見ることが出来ていないので、ティムルが案内してくれた先に期待したいところだけどね。



 ティムルのアナザーポータルで転移した先には、やはり今までと同じような樹海が広がっているけど……。



「それじゃみんな、合図に合わせて外に出ようか。いくよー? せーのっ」



 もしかしたらアウターの外には違う景色が広がっているかもしれない。


 そんな一縷の希望を胸に全員でアウターの境界線に横並びに立って、合図に合わせてアウターの外に1歩踏み出す俺達。



 ……しかしそんな俺達の思いも空しく、アウターの外には他の場所となんら変わらない森深い光景が広がっていた。



「あれー? カランさんの話じゃ大草原地帯が広がってるって話だったけど……。四方を確認したのに全部森だったね?」


「……もしかしての話ですが、師匠はこの森の更に先まで足を運んだんかもしれませんね」


「この森の更に先まで? 聖域の樹海の調査をしてるのに、アウターの外まで行っちゃったの?」


「私達は探索魔法でアウターの境界が分かりますけど、師匠はまだ探索魔法を習得しておりませんから。樹海が切れるまで走り続けたのでは無いでしょうか?」



 まったく師匠は落ち着きが無いんですからっ、と1人ぷりぷりしているヴァルゴを抱きしめてよしよしなでなで。


 確かに探索魔法が無いとアウターが途切れたことに気付けなくても仕方ないか。



「ん~、カランさんが目にしたという大草原を見てみたかったけど……。流石に今回は自重しておこうか」



 好奇心は疼くけど、今の俺達に聖域の先は関わってこないはずだ。


 本音を言えば先に進みたいところだけど、野生動物が多く生息しているらしいこの先の森に究明の道標の3人を連れていくのもかなり危険だからな。



「俺達の目的は聖域の調査だし、チャールたちを野生動物の前に出すのも少し不安だ。今回は諦めよう」


「うむっ。この先が気になって仕方が無いがの。じゃが流石に聖域の樹海の異変を調査するのに聖域の外に出ても始まらないのじゃ。調査が終わってから改めて来れば良いのじゃっ」



 フラッタの前向きな言葉にみんなが頷く。



 聖域の樹海の調査が終われば少しスケジュールにも空きが出来るみたいだしな。


 樹海の先の大平原はあとのお楽しみに取っておくとしようじゃないか。



 ……なんかフラグっぽく聞こえてくるから嫌なんだよなぁもう。



 話がまとまったところで、1歩下がってアウターに入り直した。


 アウターの外であまり長居してると、野生動物が襲ってくるかもしれないからな。



 ニーナ、フラッタ、ティムルとくっついたまま、本日の行動を打ち合わせする。



「それじゃ今日もムーリたちは、徒歩での探索で聖域の中心を目指して欲しい。広さからいって数日はかかりそうだけれど、焦らなくていいからねー」


「ふふっ、安心してくださいねっ? ダンさん専用の私の体には傷1つ付ける気はありませんからっ」



 ムーリが自身のおっぱいを持ち上げるように腕を組み、俺に見せつけるようにゆっさゆっさと揺らしてくる。


 そのあまりの揺れの大きさに思わず両手で鷲掴みしてしまったけれど、これは揺れを止めるために仕方なくやった事なのです。



「引率はヴァルゴに加えてフラッタもお願い。フラッタもアウラを可愛がってあげて良いからねー?」


「ふははっ! 承ったのじゃっ! アウラよ、愛娘とは言え容赦はせぬのじゃっ」


「よよよ容赦してーっ!? フラッタママの全力なんてついていける訳ないからーっ!?」



 張り切るフラッタの姿にマジビビリしているアウラだけど、何気にフラッタは指導も手加減も上手いからなんの心配も要らないよ。


 ……容赦しないって言葉も、決して嘘ではないと思うけど?



「ねぇフラッタ。直接アウラの相手をしてあげる他に、フラッタとヴァルゴの手合わせも見せてあげて欲しいんだ。お願いしていいかな?」


「むむー? ヴァルゴとの手合わせなど、今更お願いされるほどのことでも無いと思うがのう。何故改めてそんなことを言ってくるのじゃ?」


「ですよね? 普段からフラッタとの手合わせは、旦那様の次くらいには沢山しているつもりですけど?」



 我が家の武力担当の2人が、コテンと可愛く首を傾げて聞き返してくる。


 この2人にとってお互いとの手合わせは、最早日常の一部みたいになってんのな。



 ムーリのおっぱいから離した両手で2人の顎の下や喉元を撫でながら、自分の考えを説明する。



「フラッタは剣の達人だけど、身体能力はアウラに1番近いからね。アウラがフラッタから学べることも多いと思うんだ。巨大すぎるドラゴンイーターは鈍器みたいな取り回しも出来るしさ」


「ふぅむ。技術的な指導をするのは難しいが、アウラに近しい身体能力を持つ妾の手合わせを見れば、体の動かし方などは参考に出来るやもしれぬ、か」


「確かにフラッタとアウラの身体能力は驚異的ですからね。言われてみれば共通点も多いかもしれません。分かりました。フラッタとも何度か手合わせさせていただきますね」


「う、う~っ……! 身体能力だけしか褒められてないのは複雑だよぅ……」



 フラッタとヴァルゴの指導に慄きながらも、自分の実力不足に悔しげに頭を抱えるアウラ。



 身体能力しか褒めてないんじゃないってば。全能力が突出している中でも更に目立っているのが身体能力の高さって話だよー。


 だからアウラが落ち込む必要なんてどこにも無いんだよー? ぎゅー。よしよしなでなで。



 探索組とフラッタとヴァルゴはこれでいいとして……。



「ティムルとリーチェにはみんなと別行動してもらって、マジックアイテムの開発をお願いしたいんだ」


「「マジックアイテムの開発?」」



 ティムルとリーチェが声を揃えて聞き返してくる。


 そのまま首を傾げたままアウラごと俺を抱き締めてきた2人は、俺におっぱいを擦りつけながら話の続きを促してくる。



「そんな簡単にお願いしていい内容じゃないとは思うけどぉ。いったいダンは、私たちになにを作れって言うのかしらぁ?」


「ふ、2人にはぁ……! 魔力回復アイテムを作って欲しいんだよぉ……!」


「ま、魔力回復って……!」



 押し付けられるおっぱいの感触に耐えながら回答すると、ぎょっとしたように動きを止めてしまうティムルとリーチェ。


 ビックリしてもいいけど、体の動きは止めて欲しくないかなー?



 ちゅっちゅっとキスをした途端に動きを再開したリーチェが、それでも恐る恐るといった様子で問いかけてくる。



「あ、あっさり言うけどさ……。ダン、意味分かって言ってるの……?」


「今まで誰も開発に成功してないことなら分かってるよ。分かってるけど、この世界って魔力が1番大事なのに、そこをケアする方法が無い現状は前々から何とかしたいと思ってたんだ」



 確証は無いけど、多分発光魔玉と何かで完成できる気がするんだよなぁ。


 ただ、服用して使用する薬品ってアイテム作成じゃなくて、ポーション作成で作り出す可能性も低くなさそうだな。



「ポーション作成で魔力回復アイテムを作り出す……。確かに肉体に作用するアイテムの多くはポーション作成で生み出すものだし、そう考えるとなんか説得力を感じちゃうね……」


「例えばだけど、活力を生み出すバイタルポーションに発光魔玉を追加したりとかね。なんとなく出来そうな気はするんだよ」


「うわー、めっちゃくちゃありそうな組み合わせじゃないの……。でも魔力回復アイテムなんて生み出しちゃったら、今度こそ歴史に名を刻みそうねぇ……」


「いや、それもう手遅れだと思うよ? レインメイカーを生み出した女神ティムルの名は、既に微妙に知れ渡り始めてるっぽいし」


「それはダンが率先して言いふらしてるんじゃないのっ! まったくもうっ」



 呆れた表情を浮かべて肩を竦めてみせるティムル。美人がやると絵になる仕草だなぁ。



 だけど、俺が広めなくったって早いか遅いかの違いでしかないと思うんだよ?


 ティムルお姉さんが見た目も中身も女神なことは、この世界の誰の目にも明らかなんだからさーっ。



「ニーナは俺と一緒にクラクラットに行こうね。毎度仕事のついでで申し訳ないけど、2人っきりでデートしよう」


「ついででもなんでもいいのっ! ダンと2人っきりなのーっ!」



 ティムルたちを掻き分けて飛びついてきたニーナを咄嗟に受け止め、思い切りぎゅーっと抱き締める。


 ニーナもぎゅーっと抱き付いてきて、俺のほっぺにスリスリと頬ずりしてきてくれる。柔らかくて気持ち良いなぁ。



「クラメトーラの管理体制がどうなってるのか確認したいんだ。だからまずはアウター管理局に問い合わせてみよう」


「なんでもいいって言ってるでしょっ! ダンと一緒ならなんでもいいのーっ!」



 お、おおっ……? なんだかニーナが甘えん坊モードに突入していらっしゃるぞ?


 普段は俺を含めたみんなのまとめ役に徹してくれているし、最近は娘のアウラの存在もあって素直に甘えにくかったのかな?


 

 いやぁクラメトーラなんて何もないところに出かける話をしてるのに、ニーナが喜んでくれるってだけで滅茶苦茶楽しみになってきたよっ。


 楽しみすぎて待ちきれなくって、早速ニーナと手を繋いでクラメトーラに転移してしまったのだった。

※こっそり設定捕捉。


 キュールの名付けの由来となった花のエピソードは、092 ※閑話 花壇の会話にて少しだけ語られています。

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