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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機
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483 視野

※R18シーンに該当する表現を若干カットしております。

「ありがとう。みんなのおかげでとんでもない剣を完成させることが出来たよ」



 相談に乗ってくれたみんなにお礼を言って、完成した異界の剣をインベントリに収納する。



 転移ボーナスAで得られる異界の剣。


 付与したスキルも相まって、この世界では最強のひと振りになってしまったような気がする。



 そう考えると王家に献上するに相応しい逸品になったと思えるし、この剣が王家で未来永劫伝えられていくのかと思うと、なんだか少しワクワクしてしまうなっ。



 この剣はゴブトゴさんに確認してから、種族首脳会議の時に直接渡す事にして……。


 って、そうだ。種族会議と言えば……。



「ねぇねぇ。種族代表会議? のことさ、ルドルさんとカランさんにも伝えておかないとダメだよね? ライオネルさんにも俺から伝えておくべきかな?」


「あ、旦那様。一応師匠たちには私から軽く伝えてはありますけど?」


「え、マジで? 助かるよヴァルゴ」



 ヴァルゴが既に話を通してくれていたおかげで、確認したいことが判明したのはありがたいな。


 いえいえと謙遜しながらも、ヴァルゴがルドルさんたちの反応を報告してくれる。



「どの程度の人数が参加できるかでも話は変わってくると思うんですよ。族長ルドルも可能であれば、ガローブ、グローグの族長とも一緒に参加したいと言っておりましたから」


「なるほどね。参加人数かぁ」



 俺と初めて会ったのがディローム族のルドルさんってだけで、ルドルさん本人は守人全体の代表として扱われるのには抵抗があるようだ。


 謙遜や恐縮といった理由からではなく、対等な関係を大切にしていきたいという理由だと説明されたら反対も出来ないよ。



「兄上にはゴブトゴ殿より直接連絡が来ておるが、ライオネル殿にはダンから話した方が良いやもしれぬのぅ。尤もエルフェリア精霊国は元々スペルド王国と交流する窓口を持っているはずじゃから、既に連絡は入っているじゃろうが」


「むしろドワーフ族のほうが問題よね。実質的なトップだったカイメンたちを壊滅させちゃったわけだしさぁ」



 ティムルが少し呆れたような口調で、フラッタの会話を引き継いだ。


 ティムルってドワーフ族の話になると、あんまり乗り気じゃなくなるところがある気がするなぁ。



「能力的にはカラソルさんにお願いするのがいいと思うけど、クラメトーラの民に話を通さずカラソルさんをドワーフの代表扱いするのは、後々禍根を残しちゃいそうねぇ」


「かと言って、俺の奴隷扱いのカイメンを代表として扱うのもなぁ……。これはちょっと要相談って感じだね。俺達の独断で判断するのは難しそうだ」



 ドワーフ族の代表については、カラソルさんやカイメン、更にはゴブトゴさんにまで相談したほうがいい案件かもしれないな。


 少なくともこの場で俺達が勝手に判断していいことではなさそうだ。



「種族代表会議かぁ。それって私も参加できたりするのかな?」


「キュールさんが?」



 ドワーフ族の代表者の選定を棚上げしたタイミングで、自分も種族代表会議に参加したいと言い出すキュールさん。


 どうなんだろう? 王国側が帝国側の人間の参加を歓迎するのかしないのか分からない。



「個人的には別に構わないと思うけど……。スペルド王国の主催する首脳会議に、帝国所属のキュールさんが参加するなんて可能なのかな?」


「あー、そう言われると厳しいかもね……。いやぁ6種族が一堂に会する機会なんて失われて久しいだろうからね。歴史学者を名乗る私としては見逃せないなと思ったんだ」



 完全に好奇心だけの提案なのね。


 まぁ今回が初めての試みなわけだし、初回からいきなりぞんな重要なことを話すことはないと思うけど……。これもやっぱりゴブトゴさんに確認しなきゃなんとも言えないね。



 旧アルフェッカの事を知っているキュールさんなら、種族代表会議にアドバイザー的な役割で参加してもいいかもしれない気はする。


 いやむしろ、種族全体の事を話し合う会議なのだから、国と国の枠組みを超えて話し合われるべきなんじゃ?



 それにしても、どんどん参加者が膨れ上がって大規模なイベントになりそうなのが嫌だなぁ……。


 ぶっちゃけ参加自体したくないのにぃ……。



「カラソルさんやライオネルさんに話をするのは、今日の探索を終えてからにしよっか。今日はガローブ族とグローグ族の集落にも立ち寄らなきゃいけないから、そこでも話をしてみよう」


「あははっ。ダンってば大忙しなのっ。寝室にこもるだけの生活は遠そうだねー?」



 からかうような口調の割に、なんだかニーナは嬉しそうだ。



 俺が忙しく動き回ることをニーナが嬉しく感じてくれているのなら、寝室にこもる前に頑張って動き回らなきゃいけないよなぁ。


 そして全ての用件を終えた後に、最高の笑顔のニーナとひたすら肌を重ねて愛を確かめ合うんだぁいっ!



 笑顔のニーナを抱きしめて、そのまま移動魔法のコンボ使用でディロームの里に転移した。



「なるほど。種族会議についてはまだ分からない事の方が多いのですな」



 ディロームの里についた俺は、まずはヴァルゴと共にルドルさんとカランさんに話を通す事にした。


 今日も顔を出す事を告げてあったせいかカランさんも集落に残ってくれていたので、早速種族代表会議について2人に説明する。



 この間に他のメンバーには次の集落に徒歩で向かってもらい、話が終わり次第移動魔法で合流するのだ。



「先日ヴァルゴにも言いましたが、私はあくまでディロームの代表であって守人の代表ではないですからな。なるべく3部族の代表全員が出席できるように取り計らっていただきたいのです」


「王国民として税金を払うことには抵抗が無いぞ。しかし聖域を王国に所有されるのだけは我慢ならん。聖域の樹海は誰のものでもないことさえ認めてくれれば、我ら守人はなるべく王国に協力するつもりだ」



 ルドルさんとカランさんの主張はとても分かりやすいな。


 ルドルさんは魔人族の代表として扱われるのに自信が無いというわけではなく、守人3部族はあくまで対等な関係である事を示したいようだ。


 守人の代表なんて扱いで王国に出向いてしまうと、事実はどうあれ後々問題になるのは目に見えていると。



 一方のカランさんの主張も、以前ヴァルゴから聞いた守人の認識と一致する。



 王国民として税金を払うことも、何らかの要求があったとしても構わない。けれど聖域の樹海だけは守り通したい。


 本当にこれだけだ。



 王国も困窮しているわけじゃないし、聖域の樹海に潜らないと滅亡してしまうわけじゃない。


 守人の納める人頭税さえあれば文句は言ってこないと思うけど……。俺からはなんとも言えないなぁ。



「2人の要望は王家に伝えておくね。後は詳しい話が分かり次第連絡するから」


「それでは失礼しますね。師匠、張り切って魔物狩りをするのはいいですけど、他の者の指導もちゃんと行なってくださいよ?」


「がはははっ! 弟子に心配されるようでは俺もまだまだだなっ! だが心配せずとも里の皆は勤勉に槍を学んでいるよ、心配要らん!」



 どうやら好き勝手暴れているようにしか見えないカランさんは、勤勉な弟子たちに支えられているからこその行動だったらしい。



 以前ヴァルゴは、職業補正を得たことで槍の技術が失われるかもしれないと憂いていたことがあった。


 けれど実際に職業を得た守人たちは持久力補正を活用して訓練の時間を延ばし、五感補正と身体操作性補正を駆使して更なる技術の向上に努めているそうだ。



 心配しすぎでしたねと笑うヴァルゴだけど、きっと彼女が高みを目指し続けているから、その背中を見た多くの者たちがヴァルゴを追いかけているんじゃないかなぁ。



「それじゃみんなと合流しようか。でもせっかく2人きりなんだから、移動魔法を使わずに徒歩で追いかけよう」



 ディロームの里を出てから、当初の予定通りに移動魔法で即時合流するのが勿体無く感じ、ヴァルゴをお姫様抱っこして聖域の樹海を駆け抜ける事にした。



「種族代表会議。少し楽しみですね旦那様」


「え? ヴァルゴ……っていうか守人のみんなって、あんまり他の種族に興味無いのかと思ってたよ?」


「ふふ。その認識で間違っていません。ですが450年も前に別たれた6つの種族が旦那様のおかげでまた手を取り合うことになるなんて、妻としては誇らしい気分になってしまいますよっ」


「……いやぁ、俺なんてヴァルゴを抱っこしていればそれだけで幸せになる男だからね。あんまり誇りに思われても恐縮なんだよ?」


「あはははっ。敬愛する旦那様を幸せに出来るなんて、それこそ妻として誇りに思いますよっ。さぁ好きなだけ私を抱きしめて、何処までも幸せになってくださいね?」



 あんまりにもヴァルゴの笑顔が可愛すぎて、思わず唇を重ねてしまったよ。


 こんなに可愛いヴァルゴが奥さんであることが誇らしいよ。俺は本当に幸せ者過ぎるね。



「ほーらダン。ヴァルゴとキスしたままでいいから、今日はお姉さんのほうにいらっしゃ~い」



 ヴァルゴとキスしたままで他のメンバーと合流した後は、ヴァルゴとティムルに挟まれた状態でマーダーグリズリーに騎乗した。



 今日はナイトウルフにはニーナが騎乗していて、マーダーグリズリーにはフラッタとリーチェが騎乗している。


 フラッタはリーチェのおっぱいを頭に乗せていて、なんだか首が疲れそうだ。



 魔物を殲滅しながらまずはガローブの集落に辿り着き、聖域の樹海に何か変わった事はないか確認する。


 まぁ期待はしていなかったけど、やっぱり特に何も発見出来ていないらしい。



 種族代表会議については、参加の許可さえもらえるのであれば出席するのは構わないとのお返事をいただけた。



 ガローブの集落を後にした俺達は、そのままグローグの集落へと向かった。



 3時間もしないうちに到達したグローグの集落でも同じ会話を繰り返したけど、結果も繰り返す事になった。


 聖域の樹海に関して新しい発見は無し。種族代表会議の参加はOKと。



 我が家の職業浸透のほうは、魔術師組はあまり進んでいないようだ。


 先に魔術師の浸透を始めているエマが、ギリギリドラゴンズネストを使用できるようになったくらいかな。



 残念ながらターニアの飛脚は浸透を終えられなかったけれど、アウラの行商人は問題なく浸透を終えていた。


 アウラの次の職業は当然荷運び人だ。




 荷運び人 LV1

 補正 持久力上昇+ 

 スキル インベントリ 所持アイテム重量軽減+




 出現する魔物も強くなりつつあるから、明日には荷運び人も浸透できるといいなぁ。


 飛脚まで浸透させて敏捷性補正を積んだら、今度こそ魔法士ルートを進めさせて魔力の底上げを目指すとしよう。


 

 キュールさんの旅人も浸透を終えていたので、彼女は集落の転職魔法陣を利用して行商人に転職した。



「戦士にはならなくていいの? アウターでの安全性がかなり変わってくると思うけど」


「ははっ。知っての通り戦闘はからっきしでね。半端に戦闘補正を得ると火傷しかねない。ここは日常生活でも効果の大きい行商人を選択するのが最善だと思ってるよ」



 ふむ。キュールさんは全く戦闘をする気は無さそうだな。


 ここまで割り切られているといっそ清々しい。



 チャールとシーズの商人と戦士も無事に浸透を終えていたので、2人の職業を入れ替えるように転職してもらった。



「た、たった1日で職業の浸透が終わっちゃったよ……。実際に体験しても信じられないなぁ……」


「……なぁダン。俺達ってここに居る意味……本当にあるのか?」


「シーズ?」


「ただ魔物の背に乗って揺られているだけで、瞬く間に職業が浸透しちまう。俺はなにもしてないってのにだぜ……?」



 力なく項垂れたまま心境を吐露するシーズ。


 純粋に驚いているだけのチャールと違って、あまりにも早い職業に対して思うところがあるようだ。



「だから別のことで何か役に立とうって思ってるんだけど全然ダメでさ……。俺が役に立てることなんて無さそうだしよぉ……」


「んー……。始めに言った通りダメで元々で連れてきてるんだから、もう少し肩の力を抜いてもらいたいところなんだけどなぁ」


「……肩の力なんて抜けねぇよぉ。他のみんなは命懸けで戦って少しずつ浸透を進めてるってのに、座ってるだけの俺が一瞬で浸透を終えちまうなんてさぁ……」



 意外と気遣い屋のシーズは、今回のパワーレベリングを素直に受け入れられないんだろうな。


 普段はスポットの入り口付近で少しずつ職業浸透を進めていたのだからなおさらだろう。



 同行してくれるだけでいいんだよって言っても納得してくれなそうだ。


 なんて言えばシーズの悩みを払拭してやれるだろう。



「……今回チャールとシーズに同行してもらったのは、勿論2人の柔軟な発想に期待したところもあるんだけどさ。メインは2人の視野を広げたかったんだ」


「視野……って?」


「この世k……この国の人たちってさ、今まで凄まじく非効率な生活をしてたじゃない。チャールとシーズの2人ですら自力で達成できる職業浸透を、大人が失敗してみたりさぁ」


「うんうん。職業に関しては、ほんっ……とーに無知だったよねぇ私達って」



 黙って俺の話に耳を傾けているシーズに代わって、大袈裟なくらいに頷いてみせるチャール。


 落ち込んでいるシーズの気持ちを前向きにさせようと、わざと大袈裟な動きでリアクションしてくれているのかな?



「今までは魔玉による基準が無かったとは言えさ。インベントリを見れば、旅人の浸透具合って間違いようもないだろ? なのにティムルでさえも、1度旅人の浸透に失敗して転職したりしてるんだよな」


「ん……確かにインベントリがあれば浸透が分かりやすいよな。なのに今まではなぜかインベントリ持ちってそんなに居なかったはず……」


「浸透っていう発想が無かった一般の魔物狩りは、スキルの引継ぎは運の良し悪しで決まるって思ってたんだ。職業の成長に限界があるなんて知らなかったから長い間転職もできず、効率の悪いことがいくつも罷り通ってたんだ」



 職業の引継ぎが確実に行なえることが分かっていたなら、王国民はここまで困窮していなかったはずだ。



 恐らく旧アルフェッカ時代は職業浸透の知識は一般常識の範疇であって、誰もが知る知識であったに違いない。


 それをレガリアの馬鹿共が、長い年月をかけて根気良く失伝させてしまったんだろうな。



「この国の歴史の真実を追うチャールとシーズには、ありとあらゆる可能性が想定できるような柔軟な発想を持っていて欲しいんだ。だから今回は俺達に同行させて、凝り固まった2人の常識を揺さぶってるんだよ」


「う~ん……。つまり今の私たちはあんまり期待されてないのねー。仕方ないとは言え、流石にちょっと悔しいなぁ」


「2人の将来性は疑ってないけど、流石に経験が浅すぎるってば。だからその経験を積んでもらうために同行してもらってんのっ」



 まだ基本の3職さえ浸透していないのに、一丁前に悔しがられても困るってのっ。


 今のお前らは俺達から様々なものを学ぶ時期なんだから、その悔しさを忘れずに精進してくれれば文句ないってば。



「常識を揺さぶる……。思い込みを無くすってことか……」


「そうそう。固定観念って結構馬鹿に出来ないからさ。2人には広い視野を持ち続けて欲しいから、色んな世界を見て欲しいと思ってるんだよ」



 ぶっちゃけ、まだまだ子供の2人に即戦力なんて期待してないっての。



 今はまだ2人ともインプットする時期だと思うんだ。色んな事を経験して、それを己の血肉に変える時期のはずなんだよ。


 だから2人の成長を祈って、色んな場所に連れまわしてんのぅ。



「固定観念を排するか。なかなか考えさせられるねぇ。もしかしたら私も重要な事を見逃しているんじゃないか……。そんな風に不安になってしまうよ」



 キュールさんが両手を組んで、己を戒めるように呟く。


 そんなキュールさんの呟きを聞いて、シーズははっとした表情を浮かべた。



「……まさに今の俺って固定観念に囚われてしまってたのか! 職業浸透が進むのが早すぎて、なんだかズルしてるような感覚になっちまってたぜ……!」



 吹っ切れたように笑いながら、申し訳無さそうに頭を抱えるシーズ。



 お前くらい真面目な子がズルなんてしてるわけないだろ、まったく。


 お前がズルしてるって言うなら、世界中の半分くらいの人がズルしてる事になっちゃうっての。



 まぁ……、なんだか目から鱗が落ちたような顔をしてるから、シーズはきっともう大丈夫だろう。


 本当に子供って瞬く間に成長してしまうから、一瞬たりとも見逃せないんだよなぁ。

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