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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
7章 家族みんなで冒険譚1 いつもと違うメンバーで
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471 光の柱

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

「それじゃみんなよろしくね。俺だけじゃなく、みんなも魔力枯渇を起こさないように挑戦してみて欲しいよ」



 正直、ヴァンダライズの発動に失敗した方が幸せになれるんじゃないの……?


 そんな想いを必死で振り払い、双剣に魔力を込めていく。



 みんなと繋がっている感覚を意識し、俺に宿る決戦昂揚の効果が全員に波及するよう意識する。



「それじゃ私は獣化までにしておくの。深獣化しちゃうと魔力枯渇を防ぐ術はないからね」



 アサシンダガーと呪物の短剣を持った両手を自身の前にクロスさせながら、狐耳と尻尾を生やしたニーナが深獣化の温存を宣言する。


 チャージ系のウェポンスキルを持っていないニーナは、深獣化さえしなければ魔力枯渇を起こすことはないのだ。



「私は今回朧逆月で参加する予定だから、ちょっとだけ調整が必要かしらね。マグナトネリコを滅ぼした時よりも沢山の魔力を込められそうではあるけど」



 碧眼になったティムルが左手にオリハルコンダガーを握り、肩に担いだグランドドラゴンアクスを白く光らせながら前に出る。


 その姿はまるで満月を背負う夜の女神のようで、白く輝く戦斧にティムルの黒い肌が美しいコントラストを成立させている。



「オーラも大分使い慣れてきたのじゃ。妾もオーラをもっと気軽に扱えるよう魔力枯渇を回避してみせるのじゃっ!」



 赤い瞳を紫に変え、額から角、背中から翼を生やしたフラッタが、青い魔力に全身を包んでドラゴンイーターを構える。


 その姿は敵を前にして獰猛に笑う猛獣のようでもあり、新しいオモチャを前にワクワクしている子供のようにも見えた。



「正直ヴァンダライズを使うほどの相手じゃないけどねぇ。状態異常をばら撒くエンシェントヒュドラは、普通に戦えばかなり厄介な魔物のはずだけどさ」



 番えた矢の先端に翠色の魔力を込めながら、片膝をついて世界樹の星弓を引き絞るリーチェ。


 込めた魔力と同じ色をした翠の双眸で、矢よりも早くエンシェントヒュドラを射抜いている。



「切り札だから魔力枯渇を起こしても仕方無い。そんな風には絶対に妥協しないんですねぇ旦那様は。私ももう少し色々なものを追求していかなければと思いますよ」



 災厄のデーモンスピアを構えたヴァルゴが、高い位置で結んだポニーテールを揺らしながら黒い魔力に覆われていく。


 その深い集中力は見る者にも伝播し、息を飲むほどだ。



「ムーリ。ラトリア。エマ。ターニア。そしてアウラ。これから見せるのが俺達の全力だよ」



 エンシェントヒュドラを見据えたままで背後の5人に声をかける。


 家族であるみんなにも知っておいて欲しいんだ。俺達仕合わせの暴君の全力を。



「みんなにここまで求める気は無いけれど、腕を磨き続ければここまで到れるってことを知って欲しいんだ」



 語りかける俺の言葉に5人が反応を返してくれる前に、エンシェントヒュドラが鑑定対象に指定できるようになった。


 その瞬間、何の合図も無く同時に飛び出すティムル、フラッタ、ヴァルゴの3人。



「響け叫喚静刻! からのぉ……朧逆月ぃぃっ!!」



 ティムルの左手が掲げたオリハルコンダガーから発せられる慟哭は、出現したエンシェントヒュドラの動きを縫い止める。


 そしてそのまま自分の体よりも大きいような巨大なグランドドラゴンアクスを右手1本で振り回し、存分に遠心力が乗った戦斧をエンシェントヒュドラに叩きつける。



「見ておれ母上ぇっ! アズールブラスタァァァ!!」



 竜化で強化された身体能力で天高く飛び上がり、ティムルの戦斧に合わせてドラゴンイーターで斬りつけるフラッタ。


 巨大剣ドラゴンイーターを通して、フラッタの青い魔力が勢いよくエンシェントヒュドラに流れ込んでいく。



「貫け悪魔の槍よ! ウルス、ラグナァァァァ!!」



 ティムルとフラッタに前を譲ったヴァルゴが、2人を遥かに上回る速度の黒い流星となってエンシェントヒュドラを貫いていく。


 白く輝く斧の煌き、青く輝く剣の閃き、黒く輝く槍の瞬きがエンシェントヒュドラの中で交差する。



「切り刻め、絶影ーーっ!!」


「撃ち抜けっ、ジュエルバラージ!!」



 インパクトノヴァを打ち込みながら、その衝撃が魔物に伝わるタイミングで両手のダガーの斬撃を届かせるニーナと、美しい翠色の光から七色の流星群を放ち、エンシェントヒュドラを撃ち抜いていくリーチェ。


 2人から放たれた魔力が重なり、膨れ上がるエンシェントヒュドラの巨体。



「これがみんなを守る力だ……! ヴァンダライィィズ!!」



 両手の魔力に全身全霊を込めて、だけどみんなを守るための最後の力を1粒だけ握り締めて手放さずに、双剣を交差させて渾身の力で断空と絶空を放つ。


 全ての攻撃がステータスプレートを通して重なり合い、エンシェントヒュドラの巨体に一瞬のズレも無く同時に到達する。



 マグナトネリコほどの強さを持たないエンシェントヒュドラは撃ち込まれた俺達の魔力に耐え切れず、出現したと同時にその巨体を爆散させて散っていった。


 しかし俺達から放たれた魔力はエンシェントヒュドラを爆散させたに留まらず、白い巨大な柱となって終焉の箱庭の最深部の上空を突き破って、すっかり日が落ちたあとの満天の星空を覗かせた。



「……く、ぁぁ!」



 その柱の姿を目にしたとき、俺の体から急速に熱が奪われていく。


 ステータスプレートの繋がりすら失われ、生命維持に必要な身体機能が次々と停止していく。



 だけどここで倒れるわけには、意識を失うわけにはいかないと、朦朧とする意識を無理矢理律してひと欠片の魔力を全身に巡らせる。


 筋肉を巡り、神経を巡り、細胞を巡って魂まで浸透した微量の魔力は、生命活動を停止させることなく俺の肉体を繋ぎとめてくれた。



「ぐぅぅあぁぁぁぁ……!!」



 しかし、意識を繋ぎ止めた代償は決して軽くはなかった。


 限界の限界、最後の最後の手前で無理矢理ブレーキを踏んだ事によって、常人よりも遥かに重いらしい俺の魔力枯渇の症状が一気に襲い掛かってくる。



 極限の苦しみに意識を失って逃げることもできず、だけど膝を折って無様な姿を晒すわけにはいかないと、歯を食い縛って必死に意識と肉体の制御を繋ぎとめる。



「ふふ。やっぱり成功させちゃったのっ。ちょっとだけ残念だったかな?」



 鈴を鳴らしたような笑い声と共に、温もりに包まれる俺の頭。


 その温もりに意識が向いたおかげで、全身を電流のように駆け巡っていた苦しみなんか一瞬で忘れ去ることが出来た。



「お疲れ様ダン。苦しかったら寝てもいいからね?」



 耳に届く優しげな声と静かな鼓動。


 ニーナから流れ込んでくる愛情のおかげで、魔力枯渇の苦しみなんて全然気にならなくなってくる。



「……眠るより、このままニーナを感じていたい。でもまだ力が入らないから、俺のことぎゅーっとしてくれる?」


「まっ平らなおっぱいで悪いけど、ダンがもういいって言っても絶対に離してあげないんだからっ」



 グイッと装備を捲り上げて、素肌を直接当ててくれるニーナ。


 服にも鎧にも隔てられずに俺に届けられるニーナの鼓動と体温に、なんだか泣きたくなるほど安心する。



「おっぱい大好きなダンのこと、みんなのおっぱいで包んであげたいんだけど……。ちょっとみんな、まだ動けそうもないかなぁ?」


「えっ……?」


「頑張ったみんなには悪いけど、今だけはダンを独り占めなのっ」



 ニーナのおかげで落ち着いた俺が瞳を開けると、意識は保っているものの魔力枯渇の症状で苦しむティムルたち4人の姿と、ヴァンダライズが齎した光の柱を見上げて微動だにしないムーリたち5人の姿が目に映った。


 みんな苦しそうではあるけれど、誰1人意識を失うことなくヴァンダライズを成立させてくれたようだ。



「さぁダン、このまま抱きしめてあげるから、落ち着くまで横になろうねー?」



 俺を抱きしめたまま、ゆっくり地面に横たわるニーナ。


 まっ平らなニーナのおっぱいに抱きしめられながら、押し倒すようにニーナに覆い被さって寝かされる俺。



「ふふ、そうそう。ダンはいい子だねー。どうせまだみんな動けないから、ダンはこのまま眠っていいからねー?」



 頭に感じるニーナの優しげな手のひらの感触。頭に触れるニーナの唇の感触。顔に当てられるおっぱいの感触。


 その全てが心地よくて、ニーナに誘われるままに俺の意識はゆっくりと落ちていくのだった。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「みんな大丈夫? 落ち着いたらこっちに来て、みんなも一緒にダンを抱きしめてくれる?」



 ダンが眠ったのを確認して、他のみんなに声を描ける。


 みんな私の声に反応は返してくれるけど、まだ動くのは辛そうかな。ムーリたちもまだ呆然としたままだし暫く動けそうにないの。



 なんて思っていたら、フラッタとリーチェが苦しそうに肩で息をしながらこっちに向かって歩いてきた。



「妾もダンを抱きしめたいのじゃ……。ニーナぁ、一緒に抱きしめていい……?」


「うつ伏せじゃなくてぇ……仰向けにさせてあげよっかぁ……。ぼくのおっぱいを枕にしてもらって、いいからさぁ……」



 シャツを捲り上げて背中越しにダンに抱きついたリーチェは、ダンの頭をおっぱいで固定しながらダンを仰向けに寝かせてあげた。


 だけどその間もダンは私を離してくれなかったから、私はダンの上に覆いかぶさるような形になってしまった。



 寝ながらも体力が回復してきたのか、ダンの両手が私の背中に回ってくる。


 なのでフラッタと一緒にダンの腕に収まって、ダンの顔に2人でおっぱいを当ててあげた。



「フラッタとリーチェはもう動いて平気なの? ティムルとヴァルゴはまだ動けそうに見えないのに」


「ティムルは今回朧逆月で初めてヴァンダライズに参加したわけだからね。ぼくたちよりも歯止めが利かなかったのかもしれない」


「ヴァルゴのほうは常にダンを超えようと意気込んでおるからの。本当にギリギリまで死力を尽くしたのやもしれぬのじゃ」



 ティムルは経験の差で、ヴァルゴは意欲の差で動けなくなっちゃってるんだ?


 でもフラッタだってダンを目指して頑張ってるんじゃ……って、追いつこうとすることと追い抜こうとすることは違うのかなぁ。



 意識が無いのに頭を弾ませて、リーチェのおっぱいを堪能するダン。


 寝ていても楽しむくらいにおっぱいが大好きなくせに、一体いつになったらダンは満足して寝室に篭ってくれるようになるんだろう。



「祝福の神トライラム様と同じことが出来て、アウターさえ貫く光の柱を生み出してしまえるなんて……。これで御使い様じゃないなんて言い張るほうがどうかしてますってばぁ……」



 呆然としていたムーリは突然地面に片膝をついて、ヴァンダライズが生み出した光の柱と夜空に向かって、泣きながら祈りを捧げ始めた。



 あはは。ダンが見たら嫌がりそうな光景なの。


 でもムーリの気持ちも分かるから、ダンには悪いけどムーリの好きにさせておくのっ。



「こっここここ、こんなのっ、こんなのが腕を磨いた先にある領域の訳っ、ないじゃないですかーーーっ!!」



 頭を抱えながら光の柱に向かって怒鳴りつけるラトリア。



 うんうん。それもすっごく分かるの。


 ダンってば、自分が出来る事は誰にでも出来ることだと信じて疑ってないからなぁ。



「イントルーダーを滅ぼし、終焉にすら風穴を開けてしまうこの力が私達を守ってくれているんですねぇ。なんだかこそばゆい様な気持ちになってしまいますよ」



 ラトリアとは対照的に、うっとりとした表情で光の柱を見詰めているエマ。



 ふふ。この光の柱がダンが抱いている私達への想いそのものだもんね。


 こんなに愛してるんだよってアウターまで突き破っちゃうような想いを見せられて、喜ばない女なんて居る訳ないのっ。



「あははー……。ダンさん……っていうか仕合わせの暴君が規格外なのは重々承知していたつもりなんだけどねぇ……。流石にこれは予想もつかなかった光景なの……」



 お手上げとでも言うかのように、渇いた笑い声を上げながら小さく首を振っている母さん。



 目の前の光景があまりにも非現実的すぎて頭が追いつかないんだよね。


 でもダンと一緒に居ると、なんだかそういう場面にばっかり遭遇するようになっちゃうの。



「アウターの床を掘り進んで私を助けに来てくれたって話、流石に嘘でしょって思ってたけど……。パパったら床どころか、アウターのお空まで突き破っちゃうんだなぁ……」



 額に右手を当てて光の柱を見上げながら、感心したように呟くアウラ。



 アウラはダンの規格外の部分ばっかり見せられてるからか、あんまり動揺してない感じなの。


 ヴァンダライズの生み出した光景に単純に驚いているだけかなぁ?



「あはーっ。相変わらず眠っているときは可愛い顔してるわねぇ」



 暫く休んで動けるようになったティムルとヴァルゴが、青い顔をしながら静かにダンの顔を覗き込む。


 ティムルの言う通り、眠っている時のダンは私たちに甘えきっているから可愛くて仕方ないの。



「ダンってリーチェとムーリの特大おっぱいが大好きなくせに、ニーナちゃんとフラッタちゃんのちっちゃくて可愛いおっぱいも大好きよねぇ」


「アウターさえも貫いてしまえる人が望むのは私達のおっぱいだけだなんて、なんとも不思議な話ですよ。旦那様が望みさえすれば、世界中の女のおっぱいだって手に入れられるでしょうにねぇ」



 ティムルとヴァルゴに撫でられたダンは、意識が無いはずなのに嬉しそうに笑顔を浮かべる。



 ……私達だってこの世界の誰よりもダンの事を愛しているつもりなのになぁ。


 それでもきっとダンのほうがずっとずっと私達の事を愛してくれているんだって、そんな気がして仕方ないの。



 ヴァンダライズによって生み出された終焉を貫く光の柱は暫くの間残っていて、白く温かみのある光が私達を優しく照らしている。



 この光は意識の無いダンに変わって私達を見守ってくれているんだ。


 夜空に届く光の柱を見上げながら、何故だか私にはそんな風に感じられた。



 ……そんな風に穏やかな時間を過ごしている私達の前に、遥か上空からひと振りの剣が降ってきて、地面に深く突き刺さったのだった。

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