438 ひと桁
※R18シーンに該当する表現をカットしております。
「そんなわけでね、前人未到の場所に足を踏み入れる前には必ず俺達に報告して欲しいんだよ」
お風呂で家族のみんなと裸の付き合いをしながら、終焉の箱庭の先で見た世界の果てのことを共有する。
世界の果てを確認した俺達は、今この場で出来る事は無いと判断して帰宅した。
帰宅するとチャールとシーズは既に離れに戻っていたので、軽く夕食を取ってから昨日入らなかったお風呂にみんなで移動したのだった。
「熱視のあるティムルと精霊魔法使いのリーチェが居れば、何らかの異変があっても気付けると思うからさ。単独で未知の領域に足を踏み入れるのは遠慮して欲しいんだ」
「世界の果てですか。皆さんの目で見ても違和感があるくらいにしか分からないのは怖いですね……」
「そちらはともかく、終焉の箱庭の夕日は私も見てみたいです。私も連れてってくださいねー?」
エマとムーリが、俺達の報告にそれぞれの感想を洩らす。
使用人として、武人として長い時間を生きたエマは危機管理のほうが優先されて、わりと恋愛脳気味のムーリは美しい景色のほうが気になるようだ。
「魔力が存在していなかった俺の居た世界と違って、この世界では魔力が色々な現象を引き起こしていてちょっと予測がつかないね。スペルド王国の外側がどうなっているのか、今回の件で全く予想がつかなくなったよ」
「ほんとだよねぇ。まさか魔力が無いと生きていけないかもしれないなんて……って、あれ? それじゃ殆ど魔力が無いらしいグルトヴェーダ山岳地帯でドワーフたちが生きていけるのはなんでなのかな?」
俺に同意を示しかけたニーナが、そう言えばと首を稼げてティムルを見る。
そんなニーナに対して女教師の顔を覗かせたティムルが、それはねー? と優しく答えている。
「ニーナちゃん。グルトヴェーダは魔力が極端に薄いだけで、皆無ってわけじゃないのよ。だけど世界の果て、あの先は魔力もなにも存在しない、まさに虚無と呼ぶに相応しい空間だったと思う。少なくとも私には両者は別の物に思えたわね」
「限りなく少ないのと全く無いのとは違うということじゃな。世界の果てにいったいどのような意味があるのかは分からぬが、触れることすら出来ぬ様では調査も難しそうじゃのう」
「う~ん……。だけど何も無い空間に侵入したら生きていけないなんて良く分からないよね? 何も無い空間なら、侵入しても何も起こらないのが普通じゃないのかな?」
フラッタがまとめかけたところに、リーチェが新たな疑問を投げかける。
何も無いところに侵入したら何も起こらないのが普通か。確かにそう考えるのも無理は無いと思う。宇宙空間とか気圧の知識があればそこまで不思議にも感じないんだけど。
「侵入させたテラーデーモンが、召喚者である旦那様も気付かないくらいに自然に消滅してしまいましたからねぇ。勿論私達から見ても異変は感じませんでしたし。すり潰されたり爆散したのなら気付けたと思いますが」
「んー。ヴァルゴちゃんだけじゃなく、仕合わせの暴君全員が気付かなかったのなら攻撃されて消滅した感じじゃないよねぇ。足を踏み入れた瞬間にフッと消えてしまったと考えるなら……ちょっと怖すぎるの」
ヴァルゴの言葉を聞いたターニアが、自分の体を抱きしめながら震え上がっている。
足を踏み入れた瞬間に問答無用で発動するデストラップ。
アウターのトラップが原因で呪いを受けてしまったターニアは、俺達が感じている以上に恐怖を感じてしまっているのかもしれない。
「魔物は魔力で構成された擬似生命体だからね。だから魔力が無い場所で生きていけなくても納得は出来る。もしくは魔力の無い場所に送り込んだせいで造魔のリンクが途切れてしまったのかもしれない。なんにしても、今のところ情報が少なすぎて判断できないな」
大分長湯してしまったので、ここで一旦話を中断してお風呂から上がる。
寝室に移動し、お風呂で相手していたみんなをベッドに寝かせ、ティムルとエマを抱きしめてベッドに押し倒す。
「今夜は2人をゆっくり愛してあげるからね。エマとティムルにはひと晩中付き合って貰うよー?」
「あはーっ。早速甘えさせてくれるのね。ありがとダン、大好きよーっ」
「今日はずっと気配遮断と察知スキルを使ってたんだけど、俺とティムルの自動回復スキルが重複してれば魔力枯渇を起こす心配は無さそうだった。明日は早速クラクラットに行って暴王のゆりかごを探すとしようか」
エマとティムルを抱きしめながら、明日以降の予定を確認する。
もう数日アウラからのコンタクトが無い以上、多少強引な手を使ってでも暴王のゆりかごに潜入してみるしかないだろう。
「気配遮断にリーチェの精霊魔法が加われば、まず見つかる事は無いっしょ。スキル発動中に音を立てない練習も充分に積んでるし」
「精霊魔法と気配遮断のコンボは強力すぎるわね……。ただ今後景気が良くなれば犯罪者が減って、犯罪職を得る人も少なくなりそうかしら」
気配遮断を得る為には犯罪職を浸透させなければいけないので、今後は気配遮断のスキル習得が難しくなるんじゃないかと懸念するティムル。
んー、ティムルの言い分には同意したいところだけれど、犯罪が減ることはあっても無くなる事はない気がするなぁ。
奪う事に快感を覚える人ってのは、どうしたって出てくるだろうから。
まぁ犯罪職の今後になんて興味は無い。今はアウラのことを話し合おう。
「あの日以来全然アウラとは会えてないからね。伝言も残されてないから、恐らく外出自体してないと思うんだ。そう考えるとアウラがちょっと心配かな」
「何も起こらなすぎて少し不気味ですよね。嵐の前の静けさと言いますか……」
アウラの身を案じるリーチェに、事態が動かない事に漠然とした不安を覚えるヴァルゴ。
ヴァルゴ。日本じゃそれをフラグって言うんだよ? 縁起でもないことは言わないで欲しいなぁ。
「無理矢理侵入するのはやむを得ぬとしても、そうするとアウラに関する情報がなにも得られない状態で突入することになるのじゃ。対応を誤ったらそれこそアウラが危険なのじゃ。ダンよ、努々気を抜くでないぞ」
「フラッタの言う通り、アウラを助けようとして逆に窮地に陥れるわけにはいかないの。絶対にアウラを危険に晒しちゃダメだからねっ! たとえアウラ自身と敵対しても、だよっ?」
気絶したラトリアを抱きしめたフラッタを抱きしめながら、自身もターニアに抱きしめられているニーナが釘を刺してくる。
自分でもなに言ってるのか良く分からない状況だな?
しかし、たとえアウラ本人と敵対してもアウラを危険には晒しちゃダメかぁ。なかなか難しい事を仰るなぁ、うちの司令官殿は。
「対応を誤らないように責任を持って引き受けるってことですねっ。暴王のゆりかごから戻ったらベッドがまた狭くなりそうですっ」
「いやいやムーリちゃん。アウラちゃんって見た目はムーリちゃんと変わらないけど、実年齢は10歳だからね? 婚姻契約はまだ結べないよ?」
エロシスタームーリも俺の嫁を増やすのに積極的なんだよなぁ。
しかしターニアの言う通り、アウラはまだ10歳。婚姻契約を結ぼうと思っても結べないのだ。だから今回嫁が増えることは無いだろう。
うん。自分で言っててフラグ感ハンパないけど?
それにこの世界って年齢が数え年表記なわけでしょ? それを考えたらアウラってまだ1桁年齢なんですよね。
1桁とか流石に無いでしょ。見た目だけなら全然アリだけど?
見た目の話だけをするなら、最年長のエマやラトリアは20代でも全然通じるし、ティムルやターニアも全然若々しいんだよなぁ。
だけどニーナ、フラッタ、ムーリの未成年組は未成年組でちゃんと興奮するんだから困ったものだよっ。
「暴王のゆりかごの捜索は構いませんが、私達って暴王のゆりかごの正確な場所を知りませんよね? すぐに見つけられるでしょうか?」
「それは大丈夫だと思うよ。ぼくの精霊魔法でもある程度アウターの気配は感知できると思うし、なによりティムルの熱視で魔力の流れを追って行けば間違い無く到達できるはずさ」
「はぁ~……。皆さんって戦闘力以外の能力も飛びぬけてるから凄いですよねぇ」
中央のヴァルゴに抱きつきながら、リーチェとムーリが会話している。
……うん。素晴らしい光景だな。明日はリーチェとムーリを侍らせながら中央のヴァルゴを愛しまくろう。めちゃくちゃ興奮しそうだ。
明日以降のお楽しみも出来たことだし、今夜はティムルとエマををゆっくりじっくりたっぷり愛してあげないとなっ。
明日の予定も決まったところで、明日に備えてみんな1人ずつ眠りについていった。
周囲から穏やかな寝息が聞こえてくる中、ティムルとエマの声を零さないように己の口で蓋をしてやる。
ひと晩中ゆっくり愛してあげたおかげで2人の体は最高の状態を維持しており、気持ちよすぎていくらでも続けられそうだ。
ティムルもエマも愛し合っているときは自分から抱きついてきてくれるので、俺は2人の背中から腕を回して2人の頭をよしよしなでなでしながら2人を愛し続ける。
大好きだよティムル。愛してるよエマ。だからみんなが起きるまでずっとずっと付き合ってね?
……けどちょっと優しくしすぎてしまったようだ。
みんなが目を覚ましても、ティムルとエマが色んな意味で離してくれない。
こんなに求められるなんて嬉しさしかないけれど、今日は暴王のゆりかごに侵入する予定だからこのまま続けるわけには……。
「仕方ないの。朝食を持ってきてあげるから、ダンはそのまま2人の事をギリギリまで愛してあげて欲しいの」
「えっ! いいのっ!? さっすがニーナ!」
「ただしっ! 私達が朝食を食べ終わったらやめてもらうんだからねっ、2人ともっ!」
ニーナ司令官よりお許しとタイムリミットが言い渡されたので、1秒でも無駄にして堪るかラストスパートで2人を失神するまで貪った。
2人が失神している間に朝食を済ませていると、ティムルとエマがぽわぽわした雰囲気で身支度を整えている。
「優しくされるのって幸せだけど辛いわぁ……。もう私、ダンの子供が欲しくって仕方ないわよぉ……」
「分かりますよティムルさん……。子供が出来ないのは納得済みなんですけれど、女って駄目ですね。好きな人に愛されると、その人の子供が欲しくなっちゃうんですから……」
「ま、異種族間での子供の作り方に関してはレガリアも知らなかったっぽいからねぇ。今度会ったらキュールさんにも訊いてみようか。あまり期待は出来ないけど」
「ダンとの子供か……。勿論産んでやりたいとも思うのじゃが、妊娠したらその間はダンに愛してもらえないのじゃろう? ちょっと悩むのう」
「分かるっ! 分かるよフラッタ! ぼくもダンとの赤ちゃんは欲しいと思うんだけど、妊娠中は1年近く愛してもらえないことになっちゃうでしょ? そんなの耐えられる自信がないよぉ」
あ、ダメだこれ。一刻も早く出かけなければ俺の興奮が収まりそうもないわ。
今でさえみんなの事が好きすぎて寝室から中々出られないんだから、これ以上のお嫁さんなんて全く必要無いんだよ?
……嫁云々は別にしても、450年も眠り続けていたアウラの面倒を見るとなったら、俺達が引き取る以外に無いような気はしてるけどさぁ。