394 社会復帰
※R18シーンに該当する表現を大幅に(3000字程度)カットしております。
いつも通りみんなを好き放題愛していたら夜が明けた。
夜が明けたら明けたで、おはようのお勤めタイムがスタートするんだけどね。
……もう朝も夜も関係ないな?
「それじゃ朝食を用意してくるよ。みんなは後からゆっくりおいで」
余韻に浸るみんなの頭を撫でてから寝室を出て、全員分の朝食を用意する。
家族全員の食事量って言うとまぁまぁの量になるんだけど、俺も随分料理に慣れたもんだよなぁ。
「あ、おはようダン」
「おはよーさんっ! ダンが1人でメシ作ってんの? みんなは?」
みんなが起きてくる前に、チャールとシーズが炊事場にやってきた。
食堂に誰も居なかったので、調理中の俺のとこに顔を出したみたいだ。
「おはよう2人とも。みんなが起きるのはもうちょっと後だろうから、2人の分は先に出すねー」
忙しい2人には先に朝食を出してやる事にする。
既に完成している料理を2人分だけちゃっちゃと配膳した。
いただきますっ! と勢いよく朝食を食べ始める2人。元気だなぁ。
「今日からスポットに中に入ってみるんだ! 他の子たちの引率付きだけどねっ」
「お、とうとう実戦なんだね。2人のことだから心配要らないと思うけど、充分に気をつけてねー」
「おうっ! 俺達は今のところ2人パーティだからさ、引率期間をちょっと長めに取ってもらおうと思ってんだっ。見とけよー? 直ぐに強くなってやっからなーっ!」
2人は忙しく料理を口に運びながらも、話したいことがあって仕方がないといった様子だ。
俺は朝食代わりにお茶を楽しみながら、楽しげな2人に相槌を返す。
「出来ればマグエルにいる間に仲間を増やしたいとも思うんだけどよぉ。書き物をするのがイヤだって奴ばっかでさぁ……」
乱暴に頭をかきながら、悔しそうに愚痴を零すシーズ。
相変わらずこの2人は慎重派のようだなぁ。他の子たちとの関係も良好で心配することが特にない。
けど、なかなか新しいパーティメンバーが見つからないのねぇ。
「トライラムフォロワーの殆どは、お金が稼ぎたいから魔物狩りをするんだろうからね。チャールやシーズみたいにお金以外の目的で魔物狩りを始める子は少ないかぁ」
調べ物や書き物をするよりも、魔物を狩った方が普通に稼げるもんなぁ。
お金にならなそうな2人の仕事に、孤児からの理解が得られないのは仕方ないか。
「あ、そうだ」
「ん? どうしたのダン?」
調べ物と言えば、教会に獣人族についての古い記録って残ってないのかな?
ちょうど俺の呟きにチャールが反応してくれたので、その流れで聞いてみる。
「なぁチャール。獣人族に関する最も古い記述って、いつ頃だか分かる?」
「獣人族に関する記述?」
「スペルド王国が建国された当時は、獣人族ってすっごい数が少なかったらしくてさー。ちょっと興味あるんだ」
もしもいきなり獣人族の記述が増え始める時期とかが分かっているなら、獣人族が異世界から来た種族だっていう傍証になり得るかもしれない。
俺の質問に、頬いっぱいに詰め込んだ朝食を咀嚼しながら思案するチャール。
「んー……。期待に応えられなくて申し訳ないけど、教会の資料にはあまり種族に関する記述は無いんだよねぇ」
「獣人族に限らず、種族の記述自体が少ないらしいんだよ。ま、俺は直接資料に目を通したわけじゃねぇけどな」
教会の資料を読み込んだわけじゃないと言いながら、チャールの言いたいことをサクッとまとめちゃったシーズ。
相変わらずいいコンビだ。
「トライラム教会って、種族に関係無く開かれてる宗教だしさ。あえて種族関係の記録を残さなかったのかもって思ってるんだー」
「う~ん……。なるほどねぇ」
高潔なトライラム教会のことだから、その可能性も充分ありえそうだ。
教会の記録に種族関係の情報を記すと、偏見とか選民思想を育んでしまう危険性を考慮して、あえて種族関係の記述を削ったと言われると納得してしまうよ。
「つうかよ。ダンってエルフとも知り合いなんだろ? だったらそっちに聞いたほうがいいんじゃねぇかな?」
「ん、なるほどね。エルフか……」
たった今思い付いたような軽い調子で、シーズが俺に提案してくれる。
確かに旧アルフェッカがあった当時から生きているエルフも多いし、旧アルフェッカ時代は獣人族はかなり少なかったらしいからな。何か知ってるかもしれない。
そもそも旧アルフェッカってどのくらいの歴史のある場所だったのか、改めて聞いておくべきかな?
2人との会話は色々な発見に満ちているけれど、どうやら朝食を掻き込み終えてしまったみたいなのでタイムオーバーだ。
「これはお昼に食べてね。それじゃいってらっしゃいっ」
「「いってきまーす!」」
チャールとシーズにお弁当を持たせて送り出す。
送り出された2人は、教会に向かって元気いっぱいに駆けていった。
本当に元気がいいよなぁあの2人。
慎重派の癖に自分の衝動には真っ直ぐで、見ていて気持ちがいい。
「チャールたちはもう出たんですね~……。ちょっと寝坊しすぎちゃいました~……」
2人を見送った俺の背後から、バツが悪そうにムーリが抱き付いてくる。
ようやくみんなも起き出してきたようだ。
「寝坊させたのは俺だから気にしないで。これはそのお詫びね」
俺は背後に押し付けられるド迫力のマシュマロボディの感触に意識を集中させながら、首だけで振り返ってゆっくりとムーリとキスをする。
玄関先でのイチャイチャキスを楽しんでから手早く配膳を済ませ、今日はヴァルゴを膝の上に抱っこして朝食をいただく。
「それじゃ、今日は早速クリミナルワークスを転職させてくるよ。戦士、旅人、商人を3等分かなぁ」
「人数も多いですし、守人の集落のように危機に瀕しているわけでもないですからね。戦士に偏るよりは分けた方が良さそうです」
俺に頬ずりしたりほっぺにキスしたり、食事の隙を見て唇を重ねたりしているヴァルゴが同意してくれる。
彼らは今まで転職できなかった分、ペネトレイターによる戦闘指導を真面目に受けてきたからね。戦士を優先する必要性は無いだろう。ちゅっちゅっ。
「クリミナルワークスの職業浸透がある程度進んだら、いよいよクラメトーラへの輸送隊を組織しようと思うんだ。けど実際に浸透が終わる前に道が完成しそうだから、試験的に一般の魔物狩りにグルトヴェーダの踏破を試してみてもらえないかなぁ?」
「ああ、それなら私が手配しておくわ。シュパイン商会と契約している魔物狩りもいるから」
俺の提案に、軽く右手を上げながら応えてくれるティムルお姉さん。
一般の魔物狩りでも問題なく踏破可能かを知りたいのだから、俺達の知り合いよりもシュパイン商会と関係を持っている魔物狩りに依頼する方がいいかもね。
「既に平坦な道が出来ているのだから、報酬次第で問題なく引き受けてもらえると思うわ。依頼が信用されれば……だけどねーっ?」
「ははっ。そこは運頼みって感じだねぇ」
ティムルが冗談めかして、グルトヴェーダを貫く道の建設がどれほど非常識であるかを告げてくる。
信用してくれなければ仕方ない。他をあたるまでだ。
でも整備? された道を踏破するだけで高額な報酬を得ることが出来るなら、かなり割がいい仕事だと思う。魔物狩りのみんなには挙って参加してもらいたいところだ。
マウントサーペントはもう片付けたから、そこまで危険な依頼ではないと思うけど……。
不測の事態に備えて、最低1名は冒険者を参加させる事にしよう。冒険者がいれば補給も簡単だし。
さぁやることが決まったので出発だ。
みんなを1人ずつ送り出し、最後に残ったリーチェとヴァルゴと3人でアルフェッカに転移した。
「あちゃー。遅かったか~。仕方ない、ちょっと迎えに行ってくるよ」
しかし家を出るまで大分梃子摺ってしまったので、クリミナルワークスの面々はほとんど聖域の樹海に向けて出発したあとだった。自業自得である。
リーチェとヴァルゴにクリミナルワークスの家族を集めてもらって、俺はポータルを使ってクリミナルワークスを迎えに行く。
連れ戻されるみんなには申し訳ないけど、転職は早ければ早いほうがいいからな。今日中に済ませてあげないと。
ステータスプレートの繋がりを意識しながら小刻みにポータル転移を繰り返し、聖域の樹海に向かっている途中のクリミナルワークスのみんなを発見した。
「悪いみんな。一旦戻ってくれるかな。凄く大切な話があるんだよ」
基本的に素直に言う事を聞いてくれるクリミナルワークスの参加者たちは、無駄足を踏まされたことにも不満を漏らすことなく俺に同行してくれた。
いつもの広場に全員を集め終わって、クリミナルワークスの転職について説明していく。
「は、犯罪奴隷の私たちに、転職が許されるですかっ……!?」
「宰相様から正式に許可を貰ってるから安心してねー」
犯罪奴隷の転職。犯罪職からの解放。
広場に集まったみんなは、俺の言葉に息を飲みながらも静かに耳を傾けてくれている。
「ステータスプレートの宣誓内容は、生涯犯罪奴隷であることをステータスプレートに刻むこと、正当防衛以外では他人に危害を加えないこと、提示された条件を生涯遵守することだね」
「は、ははっ……! 嘘、でしょう!? それ、殆ど無条件の転職許可じゃないですかぁ……!」
家族や同じ境遇の仲間と抱き合いながら、喜びに咽び泣くクリミナルワークスの参加者たち。
どうやらゴブトゴさんから提示された条件を拒絶する者は、1人も居ないようだった。
犯罪奴隷である事実は変わらないわけだし、生産職や移動魔法には元々縁が無かったわけだからね。
転職させてもらえて、更には家族とも一緒に暮らせるのだから是非もないか。
「それと、家族については移動魔法の習得を禁止されていないわけだから、ファミリアの中で何人か、クリミナルワークス専属の冒険者になってもらえたらいいなと思ってるんだよ。移動魔法が全く使えないと、所有者としては不便すぎるしね」
結局野盗に荷運び人がいたのと一緒で、こうやって専用の移動魔法担当を別に用意したら変わらない気はするんだけどね。
それでも犯罪奴隷本人に移動魔法や生産スキルを習得させないのは、それも刑罰の1つみたいな感じなのかもしれない。
それにまぁいくら身内とは言え、第三者と交流しなければ移動魔法を利用することが出来ないわけだし……。
全く意味が無いというわけでもないか。
「みんなは装備も揃ってるし訓練もしてるから問題ないと思うけど、安全第一で職業浸透を進めて欲しい。戦士、旅人、商人の浸透が終わったら直ぐに行商人、荷運び人、飛脚へと繋げてもらって、王国の物流に革命を起こして欲しいんだ。頼むよ」
「「「おおーーーっ!」」」
俺の言葉に歓声で応えてくれる、クリミナルワークスとその家族。
やる気に満ちた彼らなら、近いうちにクラマイルへの輸送を担当できるようになってくれるに違いない。
飛脚だけなー。まだ転職魔法陣が無いんだよなー。
俺が転職させてやると問題しか起こらなそうだから、諦めてフォアーク神殿を利用させてもらうとしますかねぇ。高いけど仕方ない。
早速転職を済ませ、やる気の漲ったクリミナルワークスとその家族をポータルで聖域の樹海まで送ってやる。
そして俺はティムルに頼んだ魔物狩りへの依頼の件を確認しに、アルフェッカで教鞭を執っている女教師ティムルと合流する。
「主人が迎えに来たので今日はここまで。……またね?」
生徒たちに流し目を送りながら俺の腕の中に飛び込んできてくれるティムルお姉さんを全力で受け止める。
……マグエルの服屋さんに、スーツとタイトスカートみたいな衣装も発注しようかな?
更に眼鏡もあれば完璧なんだがっ……! この世界に眼鏡無いのかなっ……!?
「それじゃお互い報告会と行こう。無論、ベッドの上でねっ!」
くだらないことを考えつつティムルと合流した俺たちは、そのままマグエルに転移して夢の一夜亭に駆け込んだ。
我が家の家族の中では比較的肌の色が濃い3人を一緒に相手するのは、なんだか少し新鮮だなぁ。
「そうそう。ダンが言ってた一般の魔物狩りへの依頼、出しておいたからね~っ」
「流石はティムルお姉さん。仕事が早いね。ありがとっ」
「まだ道も完成していないから、一応依頼の開始日は1週間後にしておいたわよぉ。それまでに道作りは終わるわよね?」
「うん。問題なく終わると思うよ。まぁあとでちゃんと道として整備しなきゃいけないけどね」
竜王とドラゴンサーヴァントの拳で固められた輸送路は、しっかりと固められている代わりにデコボコしている場所も少なくない。
徒歩での移動なら問題ないけど、荷運び人や飛脚が荷車を引いて走るとなったら少々危険かもしれないからね。仕上げは必要だろう。
「道の整備にはブルーメタルを使う予定なのですね?」
「そうだよヴァルゴ。道なんて強度さえあれば充分だし、魔物が殆ど出ないグルトヴェーダ地方の道に対魔物効果のあるミスリルを使う意味は無さそうだからさ」
「確かにミスリルよりは安価で、強度だけを見るならミスリルにも引けをとらない素材ではありますけど……。随分と豪華な道になりそうですねぇ」
ターニアの使っている槍がブルーメタル製だということもあってか、ヴァルゴはブルーメタル製の輸送路に呆れ気味だ。
でもメンテナンスの手間とかを考えるなら、始めにしっかりとした道を通した方が結局は手間がかからないと思うんだよね。
「将来的には輸送路の中継地点に1つか2つ街を作って、そこで食料の生産が出来ればいいなと思ってるんだ」
クラメトーラまでの道のりは、元々人の住んでいない荒れた土地だからな。畑にしても文句は言われないでしょ。
農業を推進したいという俺の言葉に、ティムルとヴァルゴはうんうんと同意してくれた。
しかし真面目な話はここまでで、結局このあとも3人の連携は止まらずに、ずっと3人と肌を重ね続けてしまった。
さ、最高に気持ちよかったよぉ……! 久々に死を覚悟するくらいに?
※ちょっと言い訳
最後が少しぶつ切り感が出てしまったと思いますが、R18シーンが多すぎて大量カットした影響です。夢の一夜亭に場所を移してからの描写は殆どカットされてしまったと思ってください。