392 ※閑話 末路
※閑話です。
前半はスペルド王国第4王子バルバロイ・フォート・スペルディア視点。
後半は同じくスペルド王国第1王女にして、バルバロイの妹であるシャーロット・ララズ・スペルディア視点となります。
R18シーンに該当する表現をカットしております。が、カットした部分以上に本編が人を選ぶ内容になっております。閲覧される方はご留意ください。
「あぁん……。バルバロイ様ぁ、もっとぉ……」
「ごめん。今日のところはこれで終わりだよ。このあと予定があるんだ」
豪奢な天蓋付きベッドには4人の美女が裸で転がっていて、その誰もがもっともっとと俺を求めてくる。
何度も見ても飽きない、本当に素晴らしい眺めだねぇ。
ダンさんに好色家の存在を教えてもらった俺は、直ぐに恋人達を連れてフォアーク神殿に飛んだ。
俺を含めて14名ほど転職を試してみたけど、好色家を得られたのは俺とこの4人だけ。
不本意な結果と言えば不本意なんだけど、実際に肌を合わせたら不満なんて吹き飛んでしまった!
まだ転職したばかりだっていうのに、好色家は俺の性事情に劇的な変化を齎してくれたのだ。
くぅ~~っ! 今後の生活が楽しみすぎるなぁ!
「ははっ。我ながら笑っちゃうねぇ? まさかこの俺が、魔物狩りをしたくて仕方無いなんて思う日が来るなんてさぁっ」
自分自身でも信じられないほどに真面目に魔物を狩っている事実に、思わず笑いが零れてしまう。
どうせ自分で金も稼がなくちゃいけなくなったんだ。当分は始まりの黒に篭って、好色家の浸透を進めようじゃないか。
犯罪奴隷たちの転職も済ませたし、稼ぎによっては何名かを4人に割り振って、彼女たちの好色家の浸透も進めないとなぁっ。
「明日はもっと愛してあげるからね。だから明日に備えて今日はゆっくりお休み……」
「は、はぁい……。約束ですよぉ……?」
今後の性生活に大いなる期待を抱きながら4人にお休みのキスをして、1人ベッドから降りて身支度を整える。
寝室を出る俺を、今日は4人とも素直に見送ってくれる。
いつもならみんなもっと競い合っていがみ合って、仲良く同じベッドで寝るなんてあり得ないんだけどなぁ。
好色家に転職したおかげで、今日は全員が満足してくれたようだ。
平民の身で9人もの女性を娶っておきながら、妻同士の仲も非常に良好だなんてどうなっているんだと思っていたけれど……。
全員をしっかり満足させてあげれば、女性同士でいがみ合う理由も無くなるってわけだ。
……普通は、その複数の女性を満足させるのこそが難しいわけだけど。まったく、好色家様々だなっ。
残りの9人にも好色家を獲得してもらうために、好色家の転職魔法陣を城に設置してしまうのがいいかもしれない。
俺の女とラズ側の人数を合わせれば、転職魔法陣の維持、管理は容易いはずだ。
「くくく……。夢とか色々なものが膨らむなぁ……?」
ダンさんから、奴隷に働かせても構わないと言質は取った。
好色家さえ浸透が済めば、奴隷に稼いでもらいながらずっとみんなを愛することが出来るんだ。
……極力他人と関わるな、だったっけ?
上等だよ。好色家を浸透させた今、こっちだって他人に関わってる暇なんて無いっての。
あ~……。ずっとみんなを愛していられるなんて夢みたいだっ!
「あ、でも奴隷を使い潰したら怒られちゃいそうだな? 気をつけよう」
今後は犯罪奴隷も借金奴隷も確保が難しくなる可能性があるし、今いる奴隷を有効に使わないといけないね。
転職が可能になったことで奴隷たちの作業効率は格段にアップしたし、今までみたいに使い潰すよりは同じ奴隷を長く使う方が効率的で建設的だ。
奴隷を使い潰す理由こそ、もう無いのだから。
彼らの稼ぎをある程度は還元させて、定期的に休暇を与えたり装備を充実させたり、快適な住環境なんかも提供してやろうじゃないか。投資って奴だな。
ま、その金を稼ぐのは彼ら自身なんだけどね。
「っとと。通り過ぎるとこだった」
考え事をしながら歩いていたら、あっという間に目的地についてしまった。
ここは俺の遊びを誰にも邪魔されたくないからと、私室から少し離れた場所に用意した1室で、基本的に出入りは俺と世話係にしか許されていない。
妻たちの出入りすら禁止しているのだ。
彼女たちに俺の楽しみを邪魔されたくないってのもあるし、彼女達もまたあまり俺の遊びを良く思ってくれてないからな。
だから仕方なく距離を離しているわけだけど……。
好色家を得た今なら、妻たちの意見も変わってくるかもしれないなぁっ?
「おっじゃまするよーっ」
入り口の扉にステータスプレートを認証させて、ご機嫌で入室する。
さぁて、俺の愛しのペットちゃんは元気にしてるかなぁ?
「ひっ……!」
俺の姿を確認したペットちゃんは、部屋の隅で丸くなってしまった。
……う~ん。出来るだけ優先的に可愛がってあげているのに、なかなか懐いてくれないなぁ。
「そんなに怖がらなくってもいいじゃない。乱暴なことなんかしてないでしょ?」
「いやぁ……。もう嫌ぁ……。もう無理なのぉ……!」
涙を浮かべながらイヤイヤと首を振る俺のペットちゃん。
聞き分けのない子だから仕方ない。いつも通り1から説明してあげるかぁ。
「それじゃどうするの? 俺が飼ってやってるから君はまだ生きていられるんだよ?」
怯えるペットちゃんにゆっくりと近づき、目の前でしゃがみこんで目線を合わせて、幼子に言い聞かせるつもりの優しい口調で語りかける。
「俺を拒絶するのは君の勝手だけど、俺を受け入れないなら犯罪奴隷としてアウターに潜ってもらう事になるよ、ヴァニィちゃんっ?」
ペットちゃんの名前はヴァニィ。
元カリュモード商会の令嬢にして、国王シモンを唆して死に追いやった張本人だ。
実際は父が自らレガリアの手を取ったんだけど、世間的にはこのヴァニィちゃんこそが主犯扱いされている。
何度自分の置かれている立場ってモノを説明しても理解しようとしない、そんな頭の悪いところもお気に入りのペットちゃんなんだーっ。
「あ……あぁ……。そ、それは……うぅ……」
いつも通り、俺の言葉で絶望に染まった表情を浮かべるヴァニィちゃん。
ああっ……! なんって可愛いんだ君はっ!
そんなに素敵な表情を見せられたら、思いっきりめちゃくちゃにしてあげたくなっちゃうよっ!
「国家転覆を狙った今回の犯行、ヴァニィちゃん以外は軒並み死んじゃってるからねぇ。君に全ての責任が降りかかり、きっと楽には死なせてくれないだろうなぁ」
絶望するヴァニィちゃんを優しく抱きしめ、その耳元で呪いを囁いていく。
もっと絶望してヴァニィちゃん。もっと絶望した君が見たいんだよ。
「ねぇヴァニィちゃん。俺の元を離れたらいったいどんな目に遭うと思う? ステータスプレートで自殺を禁じられて、ありとあらゆる方法で取調べを受ける事になるだろうね。きっと女性として産まれたことを後悔するような目にだって遭わされるだろう」
「あっ……わっ……。もう、いやぁ……」
俺の言葉にガタガタと震えだすヴァニィちゃん。
ヴァニィちゃんは既に自傷と逃亡、そして他者へ危害を加えることをステータスプレートによって禁じられている。
ステータスプレートに行動を禁じられることの効力を、彼女は既に身をもって知っているのだ。
「嫌だよね? 分かるよ。安心してヴァニィちゃん。俺は大好きなヴァニィちゃんをそんな目に遭わせるつもりは無いよ。ここにいる限りは安全だからね。ここにいる限りは」
あえて強調した最後の言葉に、ビクリと肩を震わせるヴァニィちゃん。
ああ、もう何度も繰り返しているっていうのに、何度やっても興奮するよ、このやりとりっ!
ヴァニィちゃんもよくもまぁ飽きずに繰り返してくれるもんだ。最高の玩具だねっ。
「選ぶのは君だよ? 俺のことが嫌いなら今すぐ解放してあげる。……でも1度解放したら、俺は2度と君を助ける気は無いから。よ~く考えてね?」
ヴァニィちゃんの目を見て静かに最後通告をする。
既に号泣しているヴァニィちゃんは、俺の言葉により一層悲壮感を強くした。
頭の悪いヴァニィちゃんが、それでも生き残る為に絶望を受け入れるこの表情……!
あ~っ……! 何度繰り返してもこの瞬間は、最高に興奮するっ……!
「……て、ください」
「んー、なぁに? 聞こえないよ。もっとはっきり言って」
いつも通り消え入りそうな声で、いつも通りの言葉を口にするヴァニィちゃん。
いつもの言葉だから聞き返す必要なんて無いけど、俺が聞きたいから毎回はっきりと口にさせている。
「抱いて、ください……。ヴァニィは……バルバロイ様のお情けが、ほ、欲しい……です……」
絶望に染まった表情。大粒の涙を零す瞳で俺に懇願してくるヴァニィちゃん。
ああもうサイッコウだよヴァニィちゃん! 保身の為に好きでもない俺に体を許すその姿、毎日見てても一向に飽きないねっ!
あんまり可愛すぎて、ちょっとイジワルしてあげたくなっちゃうよっ!
「え~? それって助かりたいから言ってるだけでしょ? 俺のことを好きでもなんでもない君を抱く義理は無いなぁ? ちょうど今まで妻と愛し合ったばかりだしさぁ」
「お願いします! 私にバルバロイ様のお情けをくださいっ! ヴァニィはバルバロイ様の子供を産みたいんです! バルバロイ様のことをお慕いしております……!」
今にも死にそうな顔色をしながらも、必死に俺に縋りついてくるヴァニィちゃん。
悲壮感に歪む顔に必死に笑顔を作ろうとするヴァニィちゃんが、いじらしくて仕方ないなぁ。
ふう。こんな可愛いヴァニィちゃんを前に、もう我慢なんて出来そうにないねっ。
「本当かなぁ? 嫌そうにしてたらすぐ分かるからね?」
言葉の刃を首元に当てながら、歪な笑顔を浮かべるヴァニィちゃんの服を脱がせていく。
いやぁ~っ、本当に物分りの悪い娘でありがたい限りだよ。
普通ならとっくに自分の境遇を諦めてるだろうに、ひと晩寝たらまた同じ事の繰り返しだもんねぇ。
そんな最高の玩具であるヴァニィちゃんだけど、好色家の精力を全力でぶつけるのは危険なんだったか。
この調子じゃ彼女が好色家を得るのは難しいだろうし、毎回手加減しなきゃいけないなぁ。
ああもうっ! ヴァニィちゃんが愛しすぎて、壊さないように我慢する自信が無いよ。
やっぱり妻達と全力で愛し合ったあとのデザートとしていただくのが1番かな?
本当に良い玩具を手に入れることが出来て幸せだよ。
この最高の玩具を俺に届けてくれたって点でも、やっぱりダンさんには感謝しないとなぁ。
「バルバロイ様に愛してもらえて……、ヴァニィは幸せ、です……」
誰も映していない瞳を向けながら、必死に自分は幸せだと俺に伝えてくるヴァニィちゃん。
俺も君を玩具にできて最高に楽しいよ。これからもずぅっと可愛がってあげるからねっ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「良かったですよ……。頑張りましたね……」
「はぁ……はぁ……、あ、ありがとう、ございます……」
相手から伝わる温もりに身を震わせながら、私の胸に顔を埋めて肩で息をする男の頭を撫でる。
「偉いですよアンク。まだ好色家を得ていないのに良く頑張りました。とても良かったです」
「シャ、シャーロット様ぁ……。シャーロット様ぁ……」
うわ言のように私の名を呼ぶアンクが愛おしい。
新たに愛妾に加わったばかりのアンクが可愛くて仕方がない。
こんなに私を慕ってくる殿方の御子を、1度くらい孕んでみたくもありますが……。
それをしてしまうと、1年近い期間楽しめなくなってしまいますからね。仕方ありません。
「スラン。リムーバーをお願いします」
「畏まりました、シャーロット様」
……この瞬間は本当に嫌いです。
せっかく殿方と愛し合った時間まで取り除かれている気になってしまいますから。
しかし好色家とは素晴らしいものですね。まだ転職したばかりだというのに、伽による体の負担が嘘のように軽減されています。
ふふ。浸透が進めば、ひと晩で全員と肌を重ねることもできそうですね。今から楽しみです。
今日はとっても気分が良いので、頑張ってくれた彼に褒美でも取らせましょうか。
「アンク。気持ちよくしてくれたお礼にご褒美を差し上げましょう。何か欲しいものはありますか?」
「ごっ、ご褒美っ!? よ、宜しいのですかっ!?」
「残念ながら、私に叶えられる事に限りますけれど……。その様子だと、何か望みがあるのですね? 言ってみなさい」
「そっ、それでしたら是非とも父モルドラやソダムを……! 愚昧のせいで地獄に落とされた者達を、どうか助けてはいただけないでしょうかっ……!」
真剣な眼差しで私に懇願するアンク。
モルドラというのは……、確かカリュモード商会の元会長でしたか? ソダムの方は、確か護衛頭?
カリュモード商会の令嬢ヴァニィが引き起こしたとされる騒動のせいで、カリュモード商会の親族、縁者は軒並み犯罪奴隷に落とされ、そして現在は休まず始まりの黒に潜らされているのでしたか。
王家の所有する奴隷の扱いは王族に一任されていますし、この程度なら直ぐにでも叶えてあげられるでしょう。
「いいですよアンク。貴方の願い、聞き届けましょう。確かまだ奴隷には死者は出ていないはず。今なら全員を引き取ることが出来るでしょう」
「ほっ、本当でございますかっ!? あ、ありがとうございますっ……!」
感謝の気持ちなのか、私を思い切り抱きしめながら熱烈なキスをお見舞いしてくれるアンク。
ふふ、やはり若者は良いですね。好意が一直線で勢いがあって。
「ですが、如何に私とて犯罪奴隷に恩赦を出すことは出来ません。私に出来ることは私個人の奴隷として所有権を預かることくらいです。それでも宜しいのですか?」
「勿論です! シャーロット様に所有権を引き受けて貰えるならば、これ以上ありがたいことはございません! ありがとう、本当にありがとうございますシャーロット様ぁっ!」
アンクからまたも熱烈な抱擁と口づけを受けながらも、私は少しバツが悪い気持ちになってしまいます。
彼には悪いですけど、きっと私所有の奴隷になったとしても見目麗しい男性でも無ければ扱いは変わらず、これまで通り始まりの黒に潜る日々を送ってもらうことになると思いますが……。
ん? そういえば先ほどアンクが名前を挙げたソダムというのは、カリュモード商会の護衛頭を務めていた男でしたか。
そしてアンクの父であるモルドラという男は、カリュモード商会の元会長……。
いえ、きっとそれだけじゃない。
元カリュモード商会の関係者、アンクが助けたい奴隷達の中には数多くの有能な人材が眠っているのでは……?
「アンク。奴隷たちの置かれている環境は劣悪を極めます。貴方と過ごす時間は名残惜しいですが……。手遅れにならないうちに手を打たねばなりません。直ぐに助けたい人物のリストを作り提出なさい」
打算を一切顔に出さず、奴隷の扱いに心を痛める王女の表情でアンクを見詰める私。
「ああ……! シャーロット様ぁっ……! このアンク、此度のご恩は生涯をかけて必ずお返しいたします……!」
そんな私を一切疑う素振りも見せず、1度全力で私をハグしたあと、裸のままでスランに助けたい人物の名前を列挙していくアンク。
そんなアンクの背中を見詰めながら水を飲んで、アンクとのひと時で失った水分を補給する。
好色家を教えてもらうために、自分でお金を稼ぐとダンさんに宣言してしまいましたからね。稼ぐ為に、転職が解禁された犯罪奴隷達を始まりの黒に潜らせ続けるつもりではいましたけど……。
いっそこの機会に、私専用の奴隷部隊を組織するのも面白いかもしれません。
アンクには私の相手に集中してもらわないといけませんが、元商人である奴隷たちにお金を運用させて稼がせる……。そんな選択肢もあるかもしれません。
やがて完成したリストを元に、直ぐに奴隷達を私の物にするよう手配し、リストを作り終えたアンクとスランの2人を相手にします。
アンクにも好色家を獲得させてあげないといけませんからね。
「さぁアンク。お疲れかもしれませんが、もう1度相手してもらいますよ。スランもお待たせしましたね。好きに動きなさい」
「「はいっ!」」
家族や知人を救い出してもらってやる気に満ちたアンクと、今までアンクと私の情事を見せ付けられてお預けさせられていたスランが、まるで餌に喰らいつく猛獣の様に私の体を貪り始めます。
ふふ。複数の殿方を同時に相手取るのはなかなか辛いことも多かったのですが、好色家のおかげで負担を感じず快楽だけを享受できています。本当に素晴らしい……。
ああ、私に心酔しきった殿方達がみな好色家を得てしまったら、いったいどのような時間を過ごすことが出来るのでしょう……!
リムーバーの使用回数も跳ね上がってしまうでしょうから、そのためにも奴隷達には頑張っていただかないといけませんね。
出来れば神器に選ばれし男性の体というのも味わってみたくもありましたが……。
欲張ってはいけませんね。私には既に愛し合う殿方がいるのですから。
さぁ皆さん。私と一緒に愛に満ちた生活を楽しみましょうね?