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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
6章 広がる世界と新たな疑問1 蜜月の日々
389/637

389 抗争

 17年? いや18年ぶり? に再会を果たしたターニアとレオデックさん。


 いや、ニーナが幼い頃に1度会ってるなら12~13年ぶりか? その時は再会してなかったんだっけ?



 実際に会ってみると、ターニアたちを見捨てたとは思えないほど穏やかな人物だったレオデックさん。


 その穏やかな雰囲気を崩さないまま、彼は俺達の話が聞きたいと言ってくれている。



「……っ。…………」



 しかしターニアは何から話せばいいのか分からないようで、先ほどから何かを言いかけては言葉を詰まらせ、何も言えないまま口を噤んでいる。



「……話してくれ、と漠然に言っても話し辛いかな」



 そんなターニアを見かねたのか、レオデックさんのほうから再度話しかけてきた。



「ならまずは、皆さんについて私が知っている事をお伝えするとしようか」



 レオデックさんが、俺達について知っている事を羅列してくれる。



 ターニアがガレルさんと共にステイルークを旅立ち、その後呪いを受けてしまったこと。


 その娘であるニーナにも呪いが引き継がれてしまったこと。


 ステイルークに戻ってきた一家がステイルークに受け入れられず、開拓村周辺で隠れ住んでいたこと。



 更には、去年になってニーナが保護されたこと。今年になってターニアが保護されたこと。2人の呪いが既に解呪されている事……。


 そして、解呪された2人が俺と婚姻を結んだことも知っているそうだ。



「あれ? 以前ラスティさん、ニーナのことは伝えてないって言ってなかったっけ? いつ頃情報開示したの?」


「ああ、ターニア姉さんの解呪を知った後に報告したんです。ダンさん達の披露宴のことも報告してありますよっ」



 披露宴のことを口にしながらフロイさんに抱き付くラスティさん。


 抱きつかれたフロイさんのほうは真っ赤になって硬直してしまっている。



 嫁の父親の前で抱きしめ返すのは勇気が要るよね……。



「報告義務を怠るラスティには困ったものだけど、この子が私への報告を止めていた理由も理解できるからね。不問にしておいたよ。……報告はなるべくして欲しいけどね、ラスティ?」


「え? 何か言った父さん?」


「…………なんでもないよ」



 ちくりと釘を刺そうとするレオデックさんだったけど、フロイさんに抱き付いているラスティさんの耳には届かなかったようだ。ちょっと可哀想。



「そうそう。娘のターニアと孫であるニーナの解呪のお礼をまだ言っていなかったね」



 軽く咳払いをして、ラスティさんから俺に視線を移すレオデックさん。



「遅くなったけれど、本当にありがとうダンさん。貴方が2人と婚姻を結んだくれたことも嬉しく思うよ」


「あー……っと、直接報告に来れなくて申し訳なかったです。祝福してもらえて嬉しいです。必ず2人と幸せになってみせますね」



 ちょっと順番がおかしくなっちゃったけど、俺の方もレオデックさんに婚姻の報告を済ませる。


 反対されなくて良かった。反対されても、もう2人とも手放せないんだから。



「それでダンさんの事はいいんだけど、ニーナの父親であるガレルはどうなったのかな?」



 俺のことはすんなり受け入れてくれたレオデックさんだけど、やはりガレルさんのことは気になるらしい。



 ……当たり前か。娘を連れ去った張本人だし、ニーナの父親でもあるんだから。


 かつては呪われていた2人が解呪に成功して俺と婚姻を結んでいるのだから、じゃあ家族だったガレルさんはどうなったんだ、と疑問に思うのは当然の流れか。



「報告にはあがってこないし捜索しても見つからない。死んだという報告も無い。彼が今どうしているのか知っているかい?」


「んー……。ちょっと待ってくださいね……」



 しかし……どう伝えるべきかなぁ?


 ガレルさんのことを話すということは、ニーナが彼をその手にかけてしまったことを説明することになるわけだし……。



「……父さんは死んだの。私が殺したんだ、母さんの目の前で」


「ニーナ……!?」



 俺の迷いを察してしまったのか、ニーナが自ら口を開く。


 その口調は淡々としていて、感情を感じさせないものだった。



「ニーナ……。そうじゃない、そうじゃないでしょ……!? ニーナは何も悪くないんだ……!」


「うん。心配してくれてありがとうダン。だけど私なら大丈夫なの」



 ニーナが俺に微笑みかけてくれる。


 その瞳はどこまでも澄んでいて、暗い感情など微塵も感じさせない、強さと美しさを宿した瞳だった。



「父さんのことちゃんと受け止めるし、ちゃんと向き合いたいんだ。だから私の口から告げるべきだって思うの」


「…………そ、っか」



 俺を見詰める優しげな眼差しに、父を殺した事実を受け入れて生きていこうとする彼女の強さが垣間見えた。


 そんなニーナがそう決めたのなら、俺から言える事は無い。彼女のすることをただ見守るだけだ。



「レオデックさん。まずは私からお話させてね? 私が生まれてから今日まで、私と母さんがどんな日々を過ごしてきたのかを」



 隣に座るターニアの手を握りながら、ニーナはしっかりとした口調で語り出す。



 呪われた身でステイルークまで旅をした幼児期。ターニアと2人でガレルさんの帰りを待つ10年間。


 ターニアとの別れと俺との出会い。俺と家族との出会いとターニアとの再会。幸せの中で発覚したガレルさんの生存。



 ……そして、ガレルさんとの決別。



「父さんは身も心も魔物に落ちてしまったの。だから娘である私が終わらせてあげたんだ。あの人が幸せになる道は、もう失われてしまっていたから」


「ニーナぁ……。馬鹿な父さんと母さんでごめんね……。娘の貴女を苦しめるばかりの両親で本当にごめんなさいっ……!」



 泣きながらニーナに謝り続けるターニアを、ニーナは微笑みながら静かに抱きしめている。



 泣きじゃくるターニアに、ニーナはもう謝らなくていいなんて言わなかった。


 ニーナはきっと、ターニアの謝罪の言葉を正面から受け止める強さを身につけたのだ。



「私は父さんと母さんの娘として生まれたから、今こんなに幸せになれたんだよ? ありがとう母さん。私、母さんの娘で居られて幸せなのっ」



 ごめんごめんと謝るターニアに、ニーナが返した言葉はありがとうだった。


 自分を責め続ける母親に、許すもなにも始めから感謝しかしてないんだよって伝えている。



 今更だけど改めてこの2人を幸せにすることが出来て本当に良かった。



「ガレル……! あの、男ぉ……!」



 そんな風に思っている俺とは対照的に、ニーナの話を聞いたレオデックさんは髪の毛が逆立つほど怒り狂っているようだ。


 それでも静かに座ったままなのは逆に凄いな。



「最後の最後までターニアを弄んだ挙句、娘のニーナさえ捨てて新しい家族と暮らしていたとはな……。そこまでして得た家族すら捨てて魔物に落ちたなど、獣人族の面汚しにも程がある……!」



 ガレルさんの行動はレオデックさんには理解できないものだったようだ。


 まぁ俺だってガレルさんの行動は意味不明だけどね。



 こんなに可愛い嫁と娘を捨てられるなんて信じられないよ。しかも捨てた理由は自分の勝手な思い込みだしなぁ。



「レオデックさん。今度は貴方の話を聞かせて欲しい。13年位前かな? ステイルークに戻ってきたターニアたちを拒絶したのはどうしてだったの?」



 レオデックさんが抱いているガレルさんへの怒りは、ターニアとニーナへの愛情の裏返しだと思う。



 こんなに家族の為に怒れる人が、どうしてステイルークに帰還したニーナやターニアを受け入れてくれなかったのか……。


 それは聞いておかなきゃいけないと思うんだ。



「ガレルさんだけを拒絶するならまだ分かるけど、今のレオデックさんを見てると、当時の判断の理由がよく分からないよ」



 ステイルークの防具屋の店長であるアミさんの話では、家族全員その場で切り捨てられてもおかしくなかったほどに領主は激怒していたと言っていた。



 ……でも目の前のレオデックさんがそんなことするかね?


 貴族の体面的な問題があったにしても、一切の交流を絶ってステイルークを追放したのはレオデックさんらしくなくない?



「あ、ああ……! そうだ。そうだった……。ガレルに怒りを覚えるよりも、2人に頭を下げるほうが先だったんだ……!」



 俺の問いかけにレオデックさんの怒りは急速に萎んでいき、代わりに隠しようもない後悔の念が現れる。


 1度気持ちを落ち着かせる様に大きく長い息を吐き、抱き合うニーナとターニアに頭を下げた。



「2人とも、あの時は本当に済まなかった……! ターニアにもニーナにも辛い日々を送らせてしまい、本当に……、本当に申し訳なかった……!」


「もう過ぎたことだし、私も母さんも幸せだから謝らなくて大丈夫なのっ。だけど貴方にどんな事情があったのかは興味があるの。だからレオデックさんの話、聞かせてくれる?」


「……ニーナ。ありがとう。少し長くなるけど聞いて欲しい」



 ニーナの言葉に頭を上げたレオデックさんは、2人に許しを乞うようにポツリポツリと語り出す。



 ガレルさんとターニアが駆け落ちした時は純粋に怒っていたらしいけど、ターニアが15歳になったタイミングで婚姻を結ぼうとしていたターニアの元婚約者がレオデックさん以上に激怒してしまった為、娘の家出どころではなくなってしまった。



 元婚約者は、グラフィム家に次いで大きい獣人族貴族のカルフィス家の長男。


 いくら獣爵のグラフィム家でもカルフィス家の不興を買うのは無視できる問題ではなく、後始末に奔走させられたそうだ。



「ありがたい事に我がグラフィム家は代々獣爵を任されているけどね。だからこそその座を奪おうと、多くの獣人族貴族家に狙われているんだよ」


「……ターニアとの婚姻を橋頭堡にして、ゆくゆくは獣爵の肩書きを奪おうってことか」



 そこまでターニアに拘っていたのなら、無理矢理にでも連れ帰るって道もあったんじゃないのかと思うんだけど、その選択は元婚約者が断固拒否したそうだ。


 既に他の男と肌を重ねた女に価値など無いって? 勿体無い価値観してんなぁ。



 カルフィス家の怒りは時が経っても治まりを見せず、事ある毎にグラフィム家に嫌がらせをし、獣爵家の地位を狙っていたそうだ。



「そんな状況の中だった。幼いニーナを連れたターニアとガレルが、ステイルークに現れたのは……」



 呪われた娘と孫娘がステイルークに姿を現してしまい、レオデックさんは究極の2択を迫られる事になってしまう。


 愛する娘と孫娘を受け入れてカルフィス家に付け入る隙を与えてしまうのか、他の全ての家族を守るためにターニアとニーナを切り捨てるのか。



 ……悩み抜いた末に出した答えが後者だったのは、既に知っての通りだけどね。



「ターニアも他の家族も私にとっては等しく大切な存在で、どっちかを選ぶなんてできなかったんだ。だから私は単純により多くの家族を守る選択をして、ターニアとニーナを切り捨てることを選んだんだよ。お前たちは私を恨んでくれてもいいんだ」



 ……どっちかを選べないなら両方守る、そんな選択肢は無かったのかな。


 部外者の俺だから簡単に言えちゃうだけで、レオデックさんにはどうにもできないことがあったんだろうか……?



「お父様のことを、恨んだりしてないの。でも、私もお父様の話が聞きたい……。私のせいでお父様にどれ程の迷惑をかけてしまったのか、私は聞かなきゃいけないのっ……!」


「ターニア、娘のお前が父に迷惑だなんて気にすることはないんだよ? でも、聞いてくれるなら嬉しい。私はいつだって、お前ともっと話がしたかったから……」



 かつては決別を選んだターニアとレオデックさんだけど、両者には既に確執を感じない。


 こんなに想い合っている家族が引き裂かれた背景には、いったいどんな事情があったんだろう?



 ニーナたちがステイルークに姿を現したと聞いたカルフィス家の元婚約者殿は、直ぐにグラフィム家に乗り込んできて、こう要求したらしい。



『我が婚約者を奪った男に死を。我が婚約者でありながら別の男に抱かれた女に死を。両親の罪を贖う為に2人の娘を寄越せ』と。



「そんな……。私たちの代わりにニーナを……!?」


「そんな要求を呑めるわけが無い。ニーナに至っては無関係と言ってもいいんだからね。だがあの男はその回答こそを待っていたようでね……」



 当然そんな要求は呑めないとレオデックさんは突っぱねたそうだが、既にターニアの件でグラフィム家の悪評をばら撒いていたカルフィス家はこれ幸いにとグラフィム家の醜聞を流布したそうだ。


 現獣爵家はかつての婚約者に謝罪する気も無い、誠意の欠片も無い貴族家であると。



 そしてその一方ではニーナを狙って、ステイルーク周辺を独自に調査していたらしい。



「ええ……? 当時のニーナって確か4歳とかじゃなかったっけぇ……? その婚約者、やべー奴じゃん……」


「ああ……。相手がニーナやターニアでなくても怖気が走る話だよ……。あの男は幼子相手にいったい何をしようとしていたのやら……」



 レオデックさんはターニアとニーナを守るために、出戻って迷惑をかけ続けているターニアたちに対して激怒しているという噂を流して、カルフィス家には別人の遺体まで見せてニーナ一家を殺害したと偽装したそうだ。


 ただ防具屋の店主のアミさんの話を思い返すと、レオデックさんがターニアやニーナを殺したという話は、ステイルークの住民には浸透しなかったみたいだね。



 しかし外部の人間には効果覿面で、レオデックさん自ら実の娘と孫娘に対してここまでやったのだぞと言われれば、流石のカルフィス家も引き下がらざるを得なかったらしい。



「えっ、ていうか不味くない? ターニアとニーナの生存も、俺との婚姻も大々的に発表しちゃってるんだけど? もしカルフィス家とやらがちょっかいかけて来るなら、返り討ちで皆殺しにしちゃうと思うよ?」


「それは心配要らないんだ。こうして私が2人と顔を合わせているのも同じでね。実はカルフィス家、もう無いんだよ」


「へ?」



 娘の為に貴族家1つぶっ潰しちゃったの? やるじゃんレオデックさん!



 と思ったけど、実際は別の事情らしい。


 なんとカルフィス家、フレイムロードに滅ぼされた、あの開拓村の開発を主導していた家だったのだそうだ。



 ずっとグラフィム家を敵視していたカルフィス家は、どうにかして獣爵家の地位を奪い取ってやろうと思っていた。


 そこで目を付けたのが、獣爵家はスペルド王国の南の守護を担っている、という役割だった。



 ステイルークは侵食の森改め聖域の樹海から人々を守るための都市であり、獣爵家が辺境のステイルークで暮らしているのも、南側のアウターからやってくる魔物から王国を守る為なのだ。


 だからカルフィス家は、ステイルークよりも更に侵食の森に近い場所に自分達の領地を建設することで、南の守護を担う獣爵家の役割と地位を奪おうと画策したそうだ。



「ターニアとの婚姻、その血を引くニーナの捜索、そして南端の守護の役割を奪う、かぁ。正攻法も搦め手も使って、本気で獣爵家の地位を狙っていたんだねぇ……」



 ま、開拓村がどうなったのかは俺が1番知っているわけだけど。


 フレイムロードの襲撃の際にカルフィス家の家人の多くも命を落としており、その中にはターニアの元婚約者も含まれていたらしい。



 多くの家人を亡くし、私財を投入して建設された開拓村は壊滅。


 生き残ったカルフィス家の面々は去年の納税を行うことが出来ず、カルフィス家という貴族はスペルド王国から消滅してしまったのだそうだ。



 そう言えばフラッタとラトリア、そしてエマの税金も高かったもんね。エマもヴェルナ家の養子扱いだし。


 一般人が金貨8枚の負担なのに対し、貴族家は毎年金貨20枚の人頭税を負担しなきゃいけないんだっけ。



「王国貴族は納税が果たせないと貴族籍を抹消され、即時平民になるんだよ。1発で借金奴隷にされる平民よりは、これでもかなり優遇されているとは思うけどね」



 んー、そこはなんとも言えない部分ではあるかな。平民と比べて2.5倍の人頭税を納めなきゃいけないわけだし。



 あぁそっか。税金の話を考えても、獣爵家が家族全員に貴族教育を施さないのも分からなくも無いな。


 妻10人以上で、子供が50人以上いると言われるグラフィム家。その全員に貴族籍を用意したら、人頭税だけでも毎年1200万リーフが飛んでいくのだから。



 カルフィス家の顛末を語り終えたレオデックさんは、改めてニーナとターニアに頭を下げた。



「結局は、私の力不足でお前達を不幸にしてしまったことに変わりはないんだ。本当に申し訳……」


「ねぇレオデックさん。不幸になったって、いったい誰の話をしてるの? 私と母さんはこんなにも幸せなのにっ」



 レオデックさんの謝罪の言葉を遮って、ターニアを抱きしめたままのニーナが笑顔で話しかける。



「確かに辛い日々だったと思うけど、あの日々があったから今があるの。あの日々が無かったら、今の幸せも無かったと思うんだ」



 あ~もうニーナってばぁ。


 幸せって口にした時に一瞬こっちを見るの、破壊力ありすぎるよぉ……!



「だからねレオデックさん。もう変えられない過去のことを謝るんじゃなくて、これから仲良くしてくれたら嬉しいのっ」


「過去を悔いるのではなく、これから、か……」



 ニーナの言葉を聞いたレオデックさんは、目から鱗が落ちたような表情を浮かべている。



 ニーナは全ての話を聞いた上で、レオデックさんを受け入れる事にしたんだね。


 まぁ俺が聞いてても、レオデックさんに悪いところがあった様には感じなかったしなぁ。



 それにしても、開拓村の壊滅で解決するような問題もあったことに驚いた。


 どんな事象も見る方向を変えれば色々な影響があるんだなぁと、改めて思い知ったよ。



 まぁ過去がどうあれ、ニーナの言う通りこれからみんなで仲良くやっていけばいいんだ。


 今のみんなが笑顔なら、結局は大団円のハッピーエンドって奴でしょっ。

※こっそり設定公開

 ターニアの元婚約者が幼いニーナに何をしようとしていたのかはご想像にお任せします。が、貴族として強い野心を秘めていたように思える人物なので、政治的に利用しようとした可能性も否定は出来ません。


 ノーリッテのせいで壊滅した開拓村ですが、それが無くても実はかなり危険な場所だったりします。

 基本的にこの世界の魔物はアウターの外には出てこなくて、アウター外に居る魔物はアウター内に出現する魔物と比べてかなり弱いです。それはアウター内外を隔てる魔力壁に阻まれているからで、最深部の魔物が最深部の外に出ない理由も同じです。

 この魔力壁を越えられるほどに強力な魔物がアウターエフェクトということになります。


 しかしダンが初めて足を踏みいれた時(240 呼び水)に気付いた通り、聖域の樹海にはアウターの境界線である魔力壁が存在しません。故にアウターの奥地で発生した魔物がアウター外に出てくる危険性が常に存在しています。

 南端の防衛にあたっている獣爵家ですら、聖域の樹海との間に馬車で3日程度の距離を空けてステイルークを築いているのは、不測の事態が起きた時に対応する時間を確保する為です。移動魔法が存在するこの世界では、多少の時間があれば援軍を要請するのも容易です。


 結局はノーリッテが原因で滅亡したわけですが、元々カルフィス家はかなり危ない橋を渡って権力を求めていたという事になります。戦争が起きないこの世界で上の貴族を蹴落とそうとしたら、それなりのリスクを負わないといけないということなのでしょう。

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