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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
1章 巡り会い1 スポットでの出会い
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038 陽炎

 朝日の眩しさに目を覚ます。


 結局あの後誰も言葉を発することはなく、最悪の気分でもいつの間にか眠ってしまったようだ。

 だけど物凄く悪意に溢れた話を聞かされたせいで、微妙に目覚めが良くない気がするよ。


 まったく、とんでもない話を聞かせてくれやがってぇ。


 フラッタ自身はなにも悪くないんだけどさぁ……。



 抱き合ったままで寝息を立てているニーナとフラッタを複雑な思いで眺めながら、昨日の話を振り払うかのように自分の頭を乱暴に掻き毟る。


 今は余計なことを考えても仕方ない。今の俺に出来ることは何も無いのだから。


 ……なにも出来ることは無いけど、せめて今だけはニーナの胸は貸してやるよ。だからぐっすり眠ってろ。



 抱きあう2人を起こさないように、静かに身支度を整え寝室を出た。



 炊事場で朝食の準備をしていると、俺とニーナってどっちが奴隷なんだっけ? という想いが過ぎった。


 ま、こういうのは惚れた方の負けだよなぁ。



 やがてニーナと手を繋いで食堂に現れたフラッタの顔に、昨夜の陰りはもう感じられなかったのだった。





「いってぇ!」


「隙だらけじゃぞ。痛みを感じるのは良いが、痛みに怯んではならぬ」



 朝食の前に、スポット内で指摘された事のおさらいも兼ねて、庭でフラッタに稽古をつけてもらう。


 木刀なんて用意してないので、お互い素手だけどね。



「ぐほっ、ぐぇっ、いだっ、ぎゃふんっ」



 って痛いよ! ちょっとは加減してよ! いや加減してるんだろうけどさぁっ!



 待ってくれフラッタ。これじゃ稽古っていうより、一方的にボコボコにされてるようにしか思えないんだが?


 フラッタに悪気が無いのは分かってるんだけど、実力差がありすぎてボッコボコだ。


 敏捷性とか関係ない。純粋な実力差。圧倒的な技量差。



 あんまり一方的にボコボコボコボコボコボコ殴られるので、流石にちょっと腹立ってきた。


 勝てないまでも、せめて一矢報いたい。



 そこで侠客先生、お願いしやすっ!



 職業設定で侠客をセットする俺に、怪訝な表情を見せて軽い身のこなしで距離を取るフラッタ。



「……なんじゃ? ダン、お主なにかしおったな?」



 直感だけで職業の変更に気付くお前が怖いわ。鑑定先生の立場がなくなっちゃうだろうがっ。



 実は以前、ニーナにも隠れてこっそり侠客を試したんだけど、職業スキルの陽炎はどうやら回避スキルのようなのだ。

 1人で使っても効果がいまいち実感できなかったので、復讐も兼ねてフラッタで実験してみようと思う。


 悪いなフラッタ。人類の発展には犠牲がつきものなんだ。



 陽炎と頭で念じると、体中が何かに包まれたような感覚を覚えた。


 んー、やっぱり自分では見た目の変化は見つけられないけど……、他人から見た場合はどうなのかな?



「ん? ダン、お主何をした? 本当によく分からぬやつじゃのう?」


「悪いねフラッタ。自分でも上手く説明できないんだよ」



 戸惑うフラッタの様子から察するに、陽炎を使用しても外見的な変化は無さそうだ。



「説明できないから、むしろフラッタに解説してもらいたいまである、ねっ!」



 言いながら地を蹴って、真っ直ぐフラッタに突っ込む。


 今回は陽炎の検証なので、小細工は無しだ。

 顔面……は流石に気が引けるので、折れそうなほど細くくびれたボディを狙って右ストレートを繰り出す。



「何をしたのか知らぬが、そんな攻撃が妾に……」



 余裕たっぷりのフラッタ。まぁ陽炎は回避スキルっぽいしな。攻撃に影響は……。



「……は?」


「はぁ!?」



 俺とフラッタはそれぞれ別の理由で、同じような驚きの声を洩らしてしまう。


 フラッタのボディを狙った右ストレート。

 真っ向からの単調な攻撃など当然防がれるだろうとは思っていたのに、なぜかフラッタは身を屈めてきた。



 これじゃ顔面を殴ってしまう!


 そう思って急ブレーキをかけたつもりだけど、拳は急に止まれない。



 俺の努力も空しく、俺の右拳はフラッタの体に到達してしまう。

 そして右拳の先から伝わってくる、ぽよんっという柔らかい感触。



 ……あっ、あれ?



 恐る恐る視線を下げて拳の触れた場所を確認すると、俺の拳がフラッタの左胸に深く突き刺さっていた。



 ……うん。柔らかいね。


 決して大きいとは言えないけど、身長を考えればバランスが良いだろう。どうやらこの身長で既にニーナよりも育っているようですね。


 というかニーナは栄養が足りてなかったのが悪いんであって、決して本人の資質のせいではないのではないかと。


 いやいや今はニーナは関係ない。



 それにしてもやっぱりフラッタは美少女だと思う。神の造形物としか思えないほどの美少女の胸に触れるは我が拳。その事実に頭が追いついてこない。


 というかなんでプレートメイル着てなかったんだよコイツ。素手の手合わせだからか。むしろ着てるわけがないよな。



 右手が動かない。


 俺の右手がフラッタのおっぱいから距離を取る事を本能で拒絶している。フラッタのおっぱいからは引力でも発生しているのではないだろうか?


 そう、これはフラッタのおっぱいから発生される引力のせいであって、決して俺がフラッタのおっぱいを触っていたいわけじゃあああありますっ! ごめんなさい嘘はつけませんっ!


 大きくても小さくてもおっぱいはおっぱい。そこに差なんてありゃしねぇだろうがっ!



 拳の先に全神経を集中する。右の拳に全てを乗せる。


 右の拳が触れているモノの感触に全身全霊を捧げ集中する。



 っていうかフラッタはフラッタで距離取ってくれよぉ。


 頼む。どうやら俺はここまでのようなんだ。俺の体はもう動かない。



 ……動かない? むしろ動かしたイダダダダ!



「ご~しゅ~じ~ん~さ~まぁ? いつまでフラッタの胸に手を置いてるんですかぁ?」



 突然頬に頬を走る激痛と、角の生えたニーナの顔。



「ニーナ待って! ほっぺ伸びちゃうから!」



 誤解だよニーナ! 俺が手を置いているんじゃなくて、フラッタのおっぱいが俺の右手を引き寄せるん痛い痛いっ!


 だめだ! ニーナが俺の話を聞いてくれない! 美味しいものなんて食べてないのに、このままじゃほっぺが落ちちゃうのぉぉっ!



「フラッタもフラッタです。いつまで……、ってフラッタ? どうしました?」


「ダン……。おぬし今、何をしおったのじゃ……?」



 おお? フラッタがなんか凄くびっくりしている。これはおっぱいを触ったのは不問に……。


 あ、ダメですかニーナさん。はい、済みません。



「故意にではないけどおっぱいを触ってごめんなさい。触らせてくれてありがとう」



 不問にならなかったので素直に謝る。そして素直に感謝する。


 謝った時点でほっぺを解放してくれたニーナが、感謝の言葉を伝えた瞬間再度ほっぺを抓ってくる。解せぬ。



「さっき言った通り、何をしたのかは俺にも説明できないんだ。だからフラッタに期待したんだけど、フラッタも分からないかな?」


「妾に分かったのは、おぬしがずっと妾のおっぱいに触れ続けていたことくらいじゃのう」



 あ、陽炎に驚いて事実を忘れてくれたりはしてなかったんですね。当たり前ですね、はい。



「手合わせの最中の事故のようなものじゃ。減るものでもないしいつか責任を取ってくれればそれで構わぬ」



 責任ってなんだよぉ。昨日の同衾よりも言葉の本気度高くない?


 お前、人間族嫌いだったんじゃなかったのぉ……?



「しかし妾の目から見ても何をされたか分からなかったのじゃ。ニーナ。外からはどう見えた?」


「ご主人様の責任についてはよく話し合わないといけませんが……」



 ようやく俺のほっぺから手を離してくれたニーナは、さっきの手合わせの様子を思い出しながらフラッタの問いかけに答えた。



「横から見ている分には、ご主人様に変なところはおっぱいを触る以前には見受けられませんでした。お腹を狙ったご主人様の右拳に対してなぜかフラッタが屈んで、自分からおっぱいを当てにいったようにしか見えませんでしたよ?」


「なるほどのぅ。対峙していた妾には、ダンは顔を狙って殴りかかってきたように見えたのじゃがのう」



 2人とも、真面目な話かおっぱいの話かどっちかにしてくれない?


 個人的にはおっぱいの話をしたいところだけどぉ?



「ふむぅ、妾からおっぱいを当てにいってしまったのであるなら、ダンに責任を問うのは少々難しいかもしれぬな」



 うむ。いい流れだぞフラッタ。そのまま不問にする方向でお願いします。



 しっかし陽炎は回避スキルだとばかり思ってたんだけどな? 実はラッキースケベスキルだったの?


 再度陽炎を発動する。



「む、また何かしたようじゃな?」


「なぁフラッタ。今度は俺のほうに攻撃してみてくれないか?」



 おっぱいの件は不問にしてもらいたいけど、陽炎の件をうやむやにしておくわけにいかない。攻撃に使えそうなのは分かったから、今度は回避を試してみたい。


 そんな俺の考えを正確に読み取ったフラッタは、直ぐに表情を引き締め構えを取った。



「良かろう。行くぞダンっ」



 今度はフラッタが地を蹴る。


 ……早いっ!


 フラッタの攻撃速度に、今の俺では反応すら出来なかった。



 反応出来ない俺は、そのまま突っ込んできたフラッタに押し倒されて……、は?


 


「……ふぅむ。原理は分からんのじゃが、どうやら距離感をずらされている様に思えるのぅ。ぎゅ~」



 ブツブツと呟きながら、俺に力いっぱい抱きついてくるフラッタ。


 どうやら俺はフラッタに高速で体当たりされ、そのままフラッタを上にして地面に仰向けに倒されてしまったようだ。



「ぎゅ~、じゃねぇよ! なんで抱きついてくんの! 今回はお前が上にいるんだから離れられるだろ!」


「人のおっぱいに触れ続けた仕返しなのじゃ。甘んじて受け入れるが良い」



 フラッタのおっぱい触ったら、フラッタに抱きついてもらえるの!? それ仕返しじゃなくてご褒美だから! そんな特典付きならもう1回触らせてもらっていいっすかねぇ!?


 完全に錯乱する俺に対して、俺に抱きついたままで冷静に陽炎を分析するフラッタ。



「距離感の狂いは戦いに慣れた者ほど致命的なズレとなろう。なにをやっているのかさっぱりわからぬが、対人戦では特に有効な能力と言えよう。すりすり」


「すりすり、じゃないから! なんで俺の胸に頬ずりしてんの!? っていうかニーナも見てないで止めてよぉ!」


「う~ん、先ほどの仕返しと言われると動きづらいところです」



 さっき俺のほっぺは引っ張ったくせにぃ! フラッタに甘すぎでしょーーーっ!?



「しかし距離感を狂わせる能力ですか。ご主人様、あとで詳しく聞かせてくださいね?」


「むぅ~。妾には聞かせてくれるのか? 2人ともつれないのぅ。くんくん」


「匂い嗅がないで! 俺はお前みたいにいい匂いしないからっ! ていうかさっきからフラッタの良い匂いがぁぁぁ!」



 この世界、美容品とか無いんじゃないの!? なんでフラッタはこんなにいい匂いがするのさっ! くんくんはぁはぁ。



「ご主人様。テンパって思い切り篭絡されてますよ?」



 五感全てでフラッタから送られてくる情報を全力で受け取っている俺を、まるで獲物を見るような目で見てくるニーナ。



「まったく、私の前で他の女性のマーキングを受けるなんて困ったご主人様です。これは念入りに上書きする必要がありますねぇ……?」



 おいおいおい。俺死んだわ。ニーナの上書きで死ぬなら、我が人生に一片の悔い無し?



 俺の生死はともかくとして、陽炎は攻撃、回避のどちらにも使えそうなスキルだということが分かった。ああもういい匂いだなぁ。くんくん。


 ニーナに協力してもらって陽炎の使用に慣れておこう。こいつ凄い強いくせに、なんでこんな全身柔らかいの。気持ちよすぎる。

 

 対人戦で使えるスキルは重要だ。ワンポイントで使う切り札として期待したい。そして俺の一部が期待で膨らんでしまう。いつかと言わずに今すぐにでも責任を……。


 ……って、いい加減離れろやぁ!



 危険な方向に流れかけた思考を力ずくで立て直し、全力でフラッタの体を突き放す。



「なんじゃ、もう良いのか? 妾とこれだけ触れ合った男なぞ家族にもおらぬ。もっと堪能するが良いのじゃ」


「充分堪能したよっ! これ以上はマジで洒落じゃ済まないんだよっ! でも本当にありがとうございましたっ!」



 肉体は歓喜してたけど精神は磨耗したよくっそぉ!

 俺にはニーナがいるっていうのに、危うく篭絡されかけたわっ!


 フラッタを引き剥がし、更に3歩ほど後退して距離を取ってから、ふと思いついたことを聞いてみる。



「必死に別のこと考えようとして思い出したんだけどさ。魔法使いってどうやってなるのかフラッタは知らないかな?」



 ああ、微かに鼻に残る残り香すらいい匂い……。


 あ……、またしてもニーナが獲物を見る目で俺を見ているぅ……。上書きかぁ……。



「フラッタって貴族だし、知ってる事があったら教えてくれない?」


「魔法使いか。妾も幼少の頃に何かしたらしいが覚えてないのじゃ。魔法使いにもなれなかったしのぅ」



 フラッタは魔法使いになれなかったのか。転職条件を満たすためのチャレンジは、記憶に残らないほどの小さいときに済ませてしまったわけね。



「何をしたかは覚えてはおらぬが、魔力を極限まで搾り出すのが魔法使いになる為の試練であるとは聞いたことがあるのじゃ。その為のマジックアイテムはどこの貴族家にもあるという話じゃな」



 魔力を極限まで……? それってつまりMPを使い切れって事?



「魔力を極限まで搾り出すって……、そんなことして大丈夫なの? 死んじゃったりしない?」


「死にはせん。死ぬほど具合が悪くなるだけなのじゃ」



 死ぬほど気持ち悪いけど、死ぬわけではないのね。


 死なないのは間違いなく朗報だけど、死ぬほど具合悪くなると言われたら全く安心できる要素が無い件について。



「妾も魔法は使えぬが、竜化の際には大量の魔力を消費するからの。魔力枯渇も何度も経験しておるのじゃ。何度経験しても嫌なものじゃが……」



 ゲンナリしながら語るフラッタ。魔力枯渇は本当に辛いらしい。


 だけど魔法使いについて有力な情報は得られた。フラッタの話が間違っていなければ、何らかの形でMPを使い切れば俺も魔法使いになれる可能性が高い。


 魔法は使えないけど、スキルってMP減ってるのか? 陽炎はMP消費してるのかな?



「もう1つ教えてほしい。装備品にスキルをつける方法が知りたいんだ」



 陽炎についてはフラッタが帰ってから試すとして、今は別のことも聞いてみよう。



「スキルは付与術士が付けるものだと聞いているけど、それ以上の情報が知りたい。何かないかな?」


「装備品にスキルをつけるのは、知っての通り付与術士しかできぬ。じゃが付与術士になる方法は妾も知らぬ。済まぬのじゃ」



 んー、専門職っぽいもんなぁ付与術士って。


 だけど貴族のフラッタでさえ転職条件を知らないのかぁ。転職するのはかなり難しそうだ。



「ただ、スキルを付与するにはスキルジュエルと呼ばれる宝石も必要なのじゃ。スキルジュエルの力を付与術士が装備品に移す、それがスキル付与のやり方なのじゃ」


「スキルジュエル?」



 聞き慣れない単語に、思わず馬鹿みたいに聞き返してしまった。


 今重要なのはスキルジュエルの詳細じゃない。入手方法だ。



「スキルジュエルの入手方法はわかる?」


「済まぬ分からぬ。スキル付与に関しては、妾も門外漢でしかないからのぅ」



 駄目かー。自前でスキル付与をする道は険しそうだ。



「ただ、入手する方法はあるはずじゃ。我が竜爵家の付与術士も、定期的にスキル付与を試しておったからな」


「定期的に試せるくらいには流通してるってことか」


「うむ。これは妾のような貴族家の人間より、むしろ商人の方が詳しいのではないかのぅ?」



 商人と言われてティムルの顔を思い出す。


 アイツ、今頃何やってんだろうなぁ。



 商隊壊滅の犯人がフラッタの兄ならティムルが狙われる心配は無いはずだけど、なんだか少し心配になってきた。



「2人とも。そろそろ子供たちが水汲みに来ますよ」



 フラッタとの会話が途切れたタイミングで、ニーナからタイムアップが告げられる。



「フラッタはその格好のままでいいのですか? 私は別に構わないと思いますけど」


「おっとそうじゃった。皆が来る前に鎧を着ねばならぬっ」



 フラッタが鎧を着ていれば、俺の拳がおっぱいに引き寄せられるような事件も起こらなかっただろうに……。


 そんなことを思いながら、思わず薄手のドレスの小さなふくらみを凝視してしまう俺。



「教会の皆に用心もなにもないが、このドレスを見せるのはほんに親しい者だけと決めておる。ダンとニーナ以外の者に今の姿を見せる気は無いのじゃっ」



 言うが早いか、ひらりと身を翻して家の中に走っていくフラッタ。


 その小さな背中を見送って、ニーナと一緒にため息をつく。



「フラッタは憎めないから扱いにくいです。ご主人様にくっついても、フラッタなら仕方ないなぁ~って思わされちゃうんです。ズルいですねぇ……」


「本当にねぇ。容姿以上に性格がなぁ……」



 外見も凄まじいほどの美形なのに、行動がいちいち可愛すぎるんだよなアイツ。あんなの篭絡されるに決まってるじゃん?



「フラッタを邪険に扱える奴って、居るのかな?」


「その点はご主人様が良い線いってたと思いますけど。あれは邪険というよりは、雑に扱うって感じですかねぇ」



 自分的にはかなり危うかったけどね。ニーナから見て雑な扱いに見えたのならセーフだろう。



 なんだか朝からどっと疲れたけれど、その分得る物も大きかった。


 勿論フラッタのおっぱいに触れたのも大きかった。大きいと言うほどのサイズでもなかったけど大きかった。



 教会の子供達が水汲みにやってくるまでの間、俺は今朝得られた情報とフラッタのおっぱいの感触に、今までにない充足感を感じたのだった。




 水汲みを済ませたら、訪れた子供達と一緒に朝食を取る。

 その後は1日中庭の草むしりをして、その合間に家庭菜園予定地の相談をして過ごした。


 日が暮れたら子供達を迎えに来たムーリさんも誘ってみんなで夕食を食べ、そしてとうとう冒険者ギルドでフラッタとお別れの時を迎えた。



「2人とも、本当に世話になった。改めて礼を言うのじゃ」



 俺とニーナに改めて感謝を述べたフラッタは、なんだか吹っ切れたような清々しい表情を見せてくれた。


 夕食後という事で、見送りは俺とニーナだけだ。

 いくら大人が引率するにしても、夜に子供を出歩かせるわけにはいかないからね。


 

「もう妾は自分を過信しないと誓おう。困ったことがあれば2人を頼ると約束するのじゃっ」


「……なんでそんなに俺らのことを評価してるのかはわからないけど、まぁいつでも会いに来て良いから。でもあんまひっつくのは無しで」


「私もなんだか妹が出来たみたいで楽しかったです。またいつでも遊びに来てください」



 なんでここまで懐かれたのかは今もって分かってないけど、ここまで懐かれてしまったフラッタと別れるのがちょっぴり残念だ。



「もし留守でも、教会に行けばムーリさんが鍵を開けられます。家の中で待っていてくれて構いませんからね」



 もしもスポットに遠征中にフラッタがうちを訪れてもいいように、ムーリさんなら我が家に入れると告げるニーナ。

 ニーナもフラッタのことが大好きになっちゃったみたいだなぁ。



 別れる前にフラッタと1人ずつ握手する。


 握手をした時に、フラッタがパーティから抜けた事が感覚で理解できた。抜ける場合はステータスプレートを取り出す必要は無いのかぁ。



 必ずまた来ると言いながら、フラッタはポータルで去っていった。


 因みに行き先は聞いてない。移動阻害の呪いがあるため、俺たちがそこに行くことは難しいだろうから。



 ポータルは初めて見たけど、使用した冒険者の目の前の空間が波打って、そこに入ると瞬間移動できるらしい。



 フラッタがポータルに入るまで、俺とニーナは黙ってフラッタを見送った。


 だって、フラッタがちゃんと帰れるか不安だったから。ポータルの向こう側でもちゃんと家に帰れただろうかと心配になってしまうくらいに不安だったから?



 ……はぁ、本当に嵐のような奴だったなぁ。


 っていうか、マジでアイツの人間族嫌いは何処いったんだよ? 初対面の時の反応はなんだったのさ?



 出会った時と別れる時で態度を180度変えやがってぇ。本当に扱いにくい奴だったよ、まったくもう。

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