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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
5章 王国に潜む悪意4 戦いの後
373/637

373 プロデュース

 ゴルディアさんの葬儀とシルヴァの当主就任のお披露目が近付く中、改めてこの世界の貴族制度について触れたことで、保留してあった褒賞の使い道を思いつく。


 早速ゴブトゴさんにアポを取って、スペルディアのトライラム教会で待ち合わせた。



「おはようダン殿。なんでも話があるとか?」


「おはようゴブトゴさん。保留してあった褒賞を使って、ゴブトゴさんにお願いしたい事を3つ思いついたんだ。無理なら無理でもいいから、とりあえず話を聞いてくれる?」



 早朝の教会、来客用の応接室で俺と向かい合って座るゴブトゴさんが、どうぞという態度で頷いてくれる。


 礼拝堂の利用者はそれなりにいるから、毎回人払いをしたら迷惑がかかってしまうので、今回はテネシスさんのご厚意で教会の応接室をお借りしたのだ。



「1つはノーリッテという人間族の女性の調査。2つ目は魔法使いになるためのマジックアイテムの融通。そして3つ目はアルフェッカの領主の任命に、ある程度でいいから俺の意見も考慮して欲しいんだ」


「人物調査、マジックアイテムの融通、開拓村……アルフェッカの領主の任命権か」



 ひとまず腕を組んで、ふむぅと考え込むゴブトゴさん。



 1つ目はノーリッテの調査。今更ノーリッテのことを知っても仕方ないかもしれないけれど、これは俺の好奇心からのお願いだ。


 スペルド王国では毎年、全国民を対象に人頭税が徴収されている。その納税に関連して、ステータスプレートの記録があるんじゃないかって思ったのだ。



 2つ目はスペルド王国の貴族家に在るという、任意に魔力枯渇を引き起こすマインドディプリートと呼ばれるマジックアイテムが欲しいのだ。


 トライラムフォロワーとペネトレイターはみんな修道士になれるから問題はないけど、魔法が使えないと魔力枯渇を引き起こすのはかなり難しい。


 マジックアイテムで魔力枯渇をを起こせるのならば、希望者にはどんどん体験してもらうべきだと思う。



 3つ目は駄目元で、アルフェッカや現在建設中の輸送路の中継都市なんかの領主の任命に、俺の希望をある程度でも聞いてもらいたいと思って提案してみた。



 いや、王国貴族に知り合いなんていないんだけど、この国の貴族って無能なイメージが強すぎてね……。


 あまり変な人を領主にして、せっかく作ったアルフェッカを台無しにされても困るからさ。



「1つ目は、今回の襲撃の主犯であった者の調査か。情報提供感謝する。我々としても調査しないわけにはいかない相手だ。情報提供の対価として、調査結果を伝えることは約束しよう」



 ゴブトゴさんもノーリッテの調査には乗り気だった。


 俺にとってはただの好奇心だけど、ゴブトゴさんにとっては国家転覆を狙った組織の首謀者なんだもんな。渡りに船だったか。



「2つ目のマインドディプリートだが……、在庫が無い上に高価な代物でな。簡単に渡すわけにはいかないのだ。これからのスペルド王国に必要なのは分かっているが、直ぐに用意するのは難しいと思って欲しい」



 少数なら直ぐに用意可能ということだったので、可能な限り譲ってもらえるようにお願いした。


 冒険者ギルドとか魔法使いギルドに置いて、希望者にはどんどん魔力枯渇を起こしてもらいたいところだ。



「そして3つ目の領主に関してだが……。普通、開拓した村の領主には開拓した者が就くものなのだぞ? ダン殿が領主を引き受けてくれないから選出が難航しているというのに、まったく……」


「あ、そうなんだ……」



 面倒をおかけして済みませんね。都市の経営なんて出来る気もする気も無いので?



 もし領主にしたい人がいるなら、俺達のほうからゴブトゴさんに推薦して欲しいくらいだそうだ。


 ゴブトゴさんも王国貴族には不信感を持ってるし、変な人物を寄越して俺と問題を起こすのは避けたいんだろうな。



「ただ領主が誰であっても、領主とは別に別に国から監査員は派遣させてもらう」


「監査員?」


「領主の資質を問うものでは無く、国と都市との連携を取りやすくするための折衝役の意味合いが強いのだがな。都市運営に関しての仕組みや法手続きを手引きする役目もあるので、よほど資質が無い者でない限り領主は自由に選出してもらって構わないだろう」


「……それって監査じゃなくて補佐じゃないの? いや助かるけども」



 そう言えばこの国の貴族って無能が多いんだった。


 無能なトップを支える為の色々な仕組みが、スペルド王国には充実しているのかもしれない。泣けるね。



「……無理を承知で聞くけどさ。アルフェッカには犯罪奴隷も多くいるのは知ってるよね? 犯罪奴隷が貴族になることは可能かな?」


「無論不可能だ。だが、犯罪に関わっていなかった家族や血縁者には何の関係も無い話でもある」



 なるほど。犯罪者本人は貴族になれないけど、犯罪者の家族には特に制限は無いと。



 アルフェッカに犯罪奴隷を大量に引き受けて痛感したのは、犯罪奴隷の扱いの難しさだ。



 社会的信用が無いのは勿論のこと、奴隷であっても犯罪者である限り転職が禁じられているので、職業補正の恩恵を得られない。


 勿論法王が浸透している俺はこのルールを無視できることは出来るけど、それをしてしまうとトラブルに巻き込まれるのはクリミナルワークスの参加者たちだからね。今は自重するしかない。



 まぁつまり、犯罪奴隷を所有しても使い勝手が悪いのだ。なのに税金は高い。


 そりゃ犯罪奴隷なんて誰も買わないよねぇ……。



「ゴブトゴさん。犯罪奴隷用の……目印みたいなマジックアイテムを開発してもらえないかな?」


「目印? どういうことだ?」


「今の制度だと犯罪奴隷を所有しても転職が禁じられてるから、物凄く使いにくすぎるんだよね。だら外見的にひと目で犯罪者だと分かるようなアイテムを装着してもらって、限定的にでも転職を認めてもらえないかな?」



 顔も名前も、共に暮らす家族のことも知っているクリミナルワークスの参加者をモノ扱いするのは流石に気が引ける。



 けれど犯罪行為に手を染めてしまった彼らを野放しにしては、犯罪に走らずに頑張っている人たちを侮辱するのと同義だ。


 俺が彼らの所有者として、責任を持って彼らの所有権を主張しなければならない。



「えっと、犯罪奴隷の多くは国が買い取って酷使してるって話だった気がするけど、スペルド王国では犯罪奴隷をどう扱っていたのかな?」


「今まではほとんど始まりの黒に潜らせて、素材の採集をさせていたな。しかしダン殿の言う通り、職業の加護を受けられない犯罪者たちの使い勝手は確かに良くなかった……。ダン殿の申し出、一考の余地はありそうだ」



 ちなみに一部の見目麗しい犯罪奴隷は、王族や貴族に連れて行かれることがあるらしい。


 安定のスペルド王国貴族ですね。反吐が出ますよまったく。



 クリミナルワークスの参加者は困窮の果てに仕方なく奪うことを選んだ連中なので、戦闘技術はおろか職業浸透もほとんど進んでいない。


 少なくとも旅人と戦士は浸透させないと、どんな仕事をさせるにしても不便なんだよねぇ……。



 異世界モノの定番である奴隷の首輪とか何らかの烙印とか、腕輪でもネックレスでも何でもいいから犯罪者の印を作ってもらって、転職についてはある程度解放してもらわないと所有者も奴隷も大変なだけで誰も得しない。


 スレイブシンボルみたいなマジックアイテムもあることだし、目的が明確なら開発も容易じゃないかなぁ?




 ゴブトゴさんは俺のお願いを、全て前向きに検討してくれると約束してくれた。


 よろしくお願いしますよー。お互いの利益にも繋がると思いますのでー。




 ゴブトゴさんは話の分かる人だと思うけれど、彼との話はどちらかと言えばビジネストークに近いと思う。


 せっかくの長期休暇中に仕事の話だけを進めるなんてありえないということで、勿論別のプロジェクトも並行して進めている。



 家族のみんなの為のことならまだしも、家族以外の人たちの為だけに動くなんてストレス溜まっちゃうからね。


 溜まりに溜まったストレスを発散する為に、俺の趣味方面にも全力で手を伸ばすんだぁいっ!



「庶民向けの安価な服の種類を増やす、ですか?」


「うん。この国の普段着ってあまり代わり映えしないじゃない。だからバリエーションを増やしたいんだ」



 ということで、エマの衣装選びで仲良くなったマグエルの服屋さんに、衣装作りを持ち込んでみた。


 

 この世界の装備品ではない服装には、正直あまりバリエーションが無い。


 貴族であるフラッタやラトリアは流石に何点かドレスを所有していたけれど、ルーナ竜爵家には衣裳部屋すらないのだ。


 俺はルーナ家が脳筋だからだとばかり思っていたんだけどね、実際はそもそもの衣装の種類が少ないのだそうだ。



 考えてみれば謁見の時でさえ装備品着用で良かったわけだし、普段着にはあまり拘りが無い世界なのかもしれない。


 装備品でない限り防御補正も乗らないからねぇ。魔物の危険性を考えると、ファッション性はどうしてもおざなりになってしまうんだろうなぁ。



「装備品には色々なデザインの物があるでしょ? だから性能は度外視して、見た目だけでも装備品を参考にした衣装とかを作ったら需要があるんじゃないかなって思ってるんだ」


「なるほど。服の見た目に変化をつけたいというお話ですね」



 でも現代日本から転移してしまった俺としては、可愛い我が家の家族のみんなにはもっと色々飾って欲しいんだよっ!


 具体的にはヴァルゴの巫女装束とか、フラッタやラトリアの着るドレスのようなものとか、エマの着てるクラシックタイプの侍女服とか、色々着せて大いに楽しみたいんだよぉ!



 そのついでに、この世界の人にもお洒落の概念を伝えられたらいいなと思ってるんです。ええ、そっちがついでですよ?



 今のマグエルは好景気に沸いているので、お金の使い道を増やすのは大事だと思う。身体操作性補正があれば服飾職人を育てるのも難しくないはずだからね。


 まずは既にあるものを参考にして、服の種類自体を増やしたいんだよなぁ~。



「確かに、装備品でもない服装に拘りを持っている人は少なそうです。……そこに商機があるかもしれません」


「勿論依頼料は払うけど、確実に儲けが出るかは自信無いよ? それでもやってくれる?」


「任せてくださいっ。皆さんからの度重なる大量注文のおかげで、衣装作りの働き手は大分増えましたからね。ここいらで新しいことに挑戦してみるのも良いんじゃないでしょうかっ」



 とりあえず巫女装束と侍女服は実物があるので、我が家の家族全員分を発注しておく。


 値段には糸目を付けずに、着心地と耐久性を追及してもらうのだ。だって用途は寝室用だし?



 庶民向けの高級衣装の試作としても悪くないと、服屋の店長さんはお任せくださいっ! と快く引き受けてくれた。


 ああもう、完成が楽しみすぎるよぉっ!






 次はカラソルさんにお会いして、夢の宿グループの経営する宿に入浴施設を完備することを提案する。



 この世界では入浴は一般的じゃないからね。まずは夢の一夜亭に入浴施設を完備させたい。


 その上でプリティリキッドも常備すれば、本当に夢の一夜を過ごせると思うんだよーっ!



「当グループの宿に入浴施設を完備、ですか? しかしそれでは料金が……」



 しかし入浴設備の導入を提案する俺に対し、色々な要素から難色を示すカラソルさん。


 でもそんな反応を返されるのは織り込み済みなんだよーっ!



「我が家では毎日入浴しているんだけど、その為に必要な物が2つある。行商人と魔法使いだ。この2職を用意できれば、夢の宿グループの全室に入浴施設を設置するのも決して夢じゃないよ」



 水の運搬が格段に楽になる行商人と、魔力さえあれば燃料代がかからない魔法使いという湯沸かし器の存在をプッシュする。


 カラソルさんに行商人のなり方、職業浸透という概念と魔玉を用いた職業浸透の目安、今後魔法使いになる方法が一般に開示されること、そして我が家のお風呂の用意の仕方などを教えてあげた。



「職業浸透……。そして魔法使いの情報の公開ですか……。ダン様はこの世界の常識を塗り替えるおつもりで……?」


「大袈裟だねぇ。マグエルじゃ孤児たちみんな魔法使いになれるってのにさ。俺は単純に、夢の一夜亭を利用した時に入浴できたら嬉しいなって思ってるだけだよ。家じゃ毎日入浴してるからね」


「ふむ……。魔法使いの話はまだ少し信じがたいですが……」



 ぶっちゃけてしまえば、後片付けが少し面倒なので我が家ではあまり使えないプリティリキッドを、夢の一夜亭に宿泊した際に思いっきり使いたいだけなんだよねっ!


 リーチェとも何の気兼ねもなく肌を重ねられるようになった今こそ、プリティリキッドを使ってムーリとリーチェを一緒にとか……!



「インベントリを使える者が増えること、持久力補正とやらで働きやすくなること、重い物を持ち運ぶのが楽になるスキルなど有用な情報ばかりです……! まずは従業員全員に旅人の職業浸透を進めてもらうのが良さそうですね」



 魔法使いに関しては実際に情報が公開されるまでは保留するそうだけど、冒険者と行商人の浸透はなるべく進めてくれるみたいだ。


 持久力補正が付いた上に重量軽減スキルがあれば、水の持ち運びなんていくらでも出来るからね。



 ああ……! 本当の夢の一夜にもう少しで手が届きそうだ……!



「カラソルさんっ! 協力は惜しまないから、絶対にお風呂を完備して欲しいんだよっっっ!!」


「は、はぁ……。か、確約は出来ませんが前向きに検討します……???」



 俺のあまりの熱意にカラソルさんが若干引いてしまったのは気になるけれど、伝えたいことは伝え終えたので夢の一夜亭を後にする。


 そしてスペルディアに来たついでという事で、トライラム教会に顔を出す。



 神様のお導きなのか、運良くテネシスさんとイザベルさんの両者に会うことが出来た。



「ダンさんとお会いしたのが昨年の11月でしたっけ。半年も経っていないのに、あの頃とは随分状況が変わってくれました」


「我々に手を差し伸べてくれたことを後悔させるわけには参りませんからね。トライラム教会の経済的自立を目指してみな頑張ってくれておりますよ」



 ニコニコと明るく近況を報告してくれるテネシスさんとイザベルさん。



 職業浸透の具体的な仕組み、そして浸透の目安が分かったことで、真面目なトライラム教会では職業浸透が一気に進んでいるらしい。


 ほぼ全員が修道士になれるトライラム教会の人たちは、どんどん魔力枯渇を起こして魔法使いの職を得て、各地のアウターでガンガンお金を稼いでいるのだ。



 教会全体の羽振りが良くなったことでお腹を空かせた孤児も殆ど居なくなり、俺が貸し付けて未だに返済を受けていない5000万リーフを教会全体で負担しようと頑張っているそうだ。



 トライラム教会が上手く回り始めたことが確認できたので、今日足を運んだ本題に触れる事にした。



「教育施設……、ですか? それをトライラム教会が担うと?」


「うん。恐らくこれから人口は一気に伸びる反面、孤児の数は減っていくと思ってるんです」



 トライラム教会で、国民に読み書きを教える施設を任せられないだろうかと提案する。



 この世界の識字率は恐らく50%にも満たない。けれどトライラムフォロワーのみんなは全員が読み書きできるのだ。


 なので減っていく孤児の代わりに、読み書きが出来ない人向けの教育機関を設立したいんだよね。寺子屋的な。



「これからは、職業浸透が進んだ稼げる両親が沢山子供を作り育てる時代が来ると思います」


「己の子供を、自分の手で育てるのが当たり前の時代、ですか……」


「ええ。そこで孤児の世話から解放されたシスターたちの新たな役割として、人々に読み書きや職業の正しい知識を教える施設をご提案させていただいているんです」



 読み書きが出来ないとお互い不便だからな。出来れば解消していきたい課題だ。



 なぜか俺は普通にこの世界でも読み書きが出来るんだけど、この世界での識字率はまだまだ高くない。


 そんな中、我が家の家族はみんな読み書きが可能だし、トライラム教会で教育を受けている孤児たちみんなも読み書きが出来ている。



 うちの家族は基本的にみんな貴族出身で、ティムルはキャリアさんに商人としての教育を受けた際に読み書きを覚えたそうだ。


 隔離環境で暮らしていたはずのニーナが読み書きを出来るのは、元貴族であるターニアが教えてくれたから、らしい。



 孤児たちは斡旋所からの仕事を請けるために率先して読み書きを学ぶらしいんだけど、何で読み書きの出来る子供達が軽んじられていたのか理解に苦しむよ、ホント。


 知れば知るほど有能なんだよね、トライラム教会に保護された孤児たちって。



「職業とは、神に齎された祝福の力だと言いますよね? なのでその知識を伝えていくのは、トライラム教会が適任かなって思うんですよ」



 勿論、そんな役割を自分で担うのが面倒臭いというのが本音ではある。


 けれど知識を持って人々を導いていくなら、やはり教会が最も信頼できる相手に違いない。



「信仰とは常に与える側であるべき、というトライラム教会の教義を鑑みても、万人に等しく知識を齎す役は、トライラム教会が担うべきじゃないでしょうか」


「……その教義を広める当教会が、貴方にはいつも一方的に齎されている側なのが悔しいですねぇ。まさか孤児が減ったあとのトライラム教会の役割まで齎してくださるとは」



 笑顔で悔しがるイザベルさん。



 別に俺だけが一方的に利益を与えているとは思っていないけどね。


 ただトライラム教会を知れば知るほど、協力したいって思わされちゃうんだよなぁ。



「正しい知識を持って、人々に職業の加護を齎すという大役。そんな役にトライラム教会を選んでくださったこと、大変光栄に思います」



 俺を真っ直ぐに見詰めるイザベルさんの瞳には、強い意思と覚悟、そして挑戦者のような気概を感じられた。


 強引な勧誘活動を一切禁止しているトライラム教会的には、知識の伝道は布教活動に近いものがあるのかもしれないな。



「以前のように頭ごなしに転職を禁ずるのではなく、理解を持って諭すこと。守るのではなく育て、共に生きる事が大切なんだと学ばされました。心よりお礼申し上げますわ」


「あまりお礼を言われても困るよ? 俺がやった事は、結局俺自身の為でしかないんだからね」


「ふふ。相変わらずですね? 私ももっと早く頑張れば良かったです……。無知でいる事も無力でいる事も、なんと危険で愚かしいことだったのかと、今更ながら恐ろしくなりますよ……」



 職業に対して正しい知識を持っていれば、死に追いやってしまった沢山の子供達を救うことが出来たかもしれない。


 テネシスさんにはそういう後悔の念も少なからずあるのだろう。



 ……でも、そんな後悔を秘めたトライラム教会の人たちだからこそ、知識の伝道者として適任だと思うんだ。



「それと……。この情報をどう扱うかはお2人にお任せしますが、1つお知らせしておきますね」



 正しい知識を広めてもらう為に、まずは教会に正しい知識を伝えなければならない。


 だから伝える事にしたのだ。俺がこの世界に来る時にもらった、反則級の能力の事を。



「トライラム教会の関係者の殆どが、慈善家と篤志家という2つの職業の資格を得ていると思うんです。そして司祭と篤志家を浸透させた先に、法王という職業があるんです」


「ほ、法王……! 遥か昔に忘れられた伝説の職業……! 実在、するのですか……!」



 将来的に篤志家の条件を満たせる人は減るかもしれないけれど、現在教会に従事している人の多くは聖者ルートに入ることが可能なはずだ。


 恐らく法王になるには分析官の浸透も必要だとは思うけど、今法王になれる可能性が1番高いのは教会の人たちだろう。



「…………待ってください。法王の転職条件を知っているということは……、もしかしてダンさんはっ……!?」



 ハッとした様子でテネシスさんが顔を上げた。


 これは不味い流れだな。言いたいことも言ったし、さっさと退散してしまおう。



 ただでさえトライラム教会の人たちは、俺を祝福の神トライラム様の御使いだと思ってる人がいるらしいからな。


 そういうのは魔人族だけでお腹いっぱいなんですよーっと。



 別に御使いでもなんでも構わないんだけどさ。


 あまり仰々しい評価を受けてしまうと、なんかこう、憚られてしまう気がするのよね。みんなとイチャイチャすることが。



 俺がやっている全ては、みんなとイチャイチャラブラブエロエロする為だけにやってるんだ。


 信仰なんて重いもの、背負う気は無いんでーす!

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