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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
5章 王国に潜む悪意4 戦いの後
367/637

367 重機

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

「ごちそうさまでした。それじゃ今日から休暇ってことで」



 朝食を平らげて、出掛ける準備をする。


 休暇の別行動は今日から開始する事になったので、俺はまずリーチェとヴァルゴを伴って冒険者ギルドに向かう事にした。



「ははっ。ポータルで転移すれば一瞬なのに、態々歩いてギルドに行くんだねっ?」


「護衛の私が旦那様と手を繋いで歩くのは本末転倒かもしれませんけど……。今は休暇中ですから、護衛もお休みでいいですよ、ね……?」



 ご機嫌な2人と手を繋いで、気分は完全にデートだわ。これぞ休暇って感じだねっ。



 リーチェもヴァルゴも頬が緩みっぱなしで超可愛い。


 レガリアも片付いたしリーチェの誓約も失効したし、何の憂いも無く堂々とデートを楽しめるのって最高だなっ。



「あ、知ってる人がいるね。あの人に案内してもらおうよっ」



 冒険者ギルドに入ると、リーチェが声を弾ませながら俺の視線を誘導する。


 どうやら以前アウターの説明をしてくれた女性が受付に立っているようだ。せっかくなので彼女に対応してもらう事にしよう。



「すみませーん。ドワーフの里まで行きたいんだけど、ポータルお願いしていいかな?」


「……あ~。貴方、以前にも来たことあるよね? 本当に暴王のゆりかごに向かう事にしたんだ? 物好きだねぇ」



 一瞬だけ思案したギルド員の女性も、どうやら俺のことを覚えていてくれたようだ。


 前回暴王のゆりかごについて問い合わせたことも思い出してくれたらしく、なかなか記憶力のいい人みたいだ。



「ポータルは直ぐにでも利用できるけど……、エルフ族と魔人族なんてどんな対応されるか分からないよ? それでも平気?」


「心配してくれてありがとう。でも俺もポータルを使えるから、もし問題があったら直ぐに退散するよ」



 この受付嬢は以前もリーチェと会ってるからなぁ。


 リーチェを連れてドワーフの里に行くとは思ってなかったのかもしれない。だから印象に残ったのかな?



 ぞんざいな態度に見えて俺達の心配をしてくれるあたり、気の良い人なんだろうなと思う。



「今のところ暴王のゆりかごの情報が無くてね、結局1度現地に行ってみるしかなくってさぁ~」


「へぇ? 貴方ポータルが使えるんだ。なら冒険者ギルドに登録する気は無いかな? ここって最近人手不足で忙しくってぇ~……」



 少し疲れを見せながら俺を勧誘してくるお姉さん。


 人手不足かぁ。それだけマグエルに人が増えて、移動魔法の利用者が増えたってことなのかな?



「……って、こんな話はどうでもいいよね、ごめんごめん。貴方達の準備が良ければ直ぐにでもいけるよ」


「ははっ。冒険者ギルドにはいつもお世話になってるよ。お疲れ様です。じゃあ忙しいギルド員に迷惑をかけたくないし、早速お願いしようかな」



 インベントリから銀貨を10枚ほど取り出し、早速ポータルの利用をお願いする。



 ポータルを使用できる俺達は1度送ってもらえば自力で帰ってこられるため、特別な準備は特に必要無い。


 ギルド員のお姉さんにファミリアに一時加入してもらって、4人で王国の北にあるというドワーフの里へ転移した。



 そうしてポータルで転移した先に広がっていたのは、荒涼とした光景だった。



「うわ……。不毛の大地ってのは聞いてたけど、ここまでとは……」



 見渡す限りに広がる岩肌。遠くに見える山々にも緑色は一切混じっていない。


 吹き付ける風も乾燥していて、水気は感じられなかった。



「ぼくも初めて来たけど……。森と生きるエルフ族にとってはとても暮らせる環境じゃないかな……」


「ほんっと、相変わらず何にも無いところよねぇ~?」



 予想以上に殺風景な周囲を見渡して驚いていると、俺達に同意を示しながらギルドのお姉さんが会話に参加してきた。



「ここがグルトヴェーダを抜けた先、ドワーフの里である『クラメトーラ』の入り口よ。古い言葉でクラは職人、メトーラは集まりって意味らしいわ。ま、ドワーフ族らしいネーミングよね」


「『クラメトーラ』ね。でも他の街に転移した時と違って視線の先に集落は見当たらないんだけど……。どうなってるのかな?」


「ドワーフ族との決まりがあってね。許可無き者は直接集落に転移しちゃダメな事になってるのよ。だから誰もが利用できる冒険者ギルドのポータルでは、集落から距離を取ったこの場所に転移しなきゃいけないの」



 なんでもドワーフが里から流出するのを防ぐ為とかで、長く取引して信用のある相手以外は集落近くでポータルを使うことを禁じられているらしい。


 ……どれだけ苛酷な環境なんだよ?



 クラメトーラは細かい集落が点在しているそうで、中心である『クラクラット』という集落から離れるほどに貧しい暮らしを強いられている。


 だからたとえ奴隷となってでも、クラメトーラを離れようとする者が後を絶たないらしい。



 クラメトーラの基本情報を簡単に説明してくれたお姉さんは、何も無い方向に向かって指を指す。



「向こうが少し小高い丘みたいになっててね。あそこを超えると集落が見えるようになるの」


「集落が目視出来ない場所を選んで転移場所に指定されてるのか……。徹底してるなぁ」


「エルフ族だからって別に通行を拒否されたりはしないでしょうけど、彼らはかなり困窮した生活をしてるから……。現地では水や食料さえも分けてもらえないと思うべきよ」



 分けてもらえない、ね。つまり商店の類いなんて期待も出来ないってことか。


 これ、ポータルが使える俺達にはそこまでキツい条件じゃないけど、現地で寝泊りしながらアウターの攻略を目指すのは殆ど絶望的じゃないかぁ……?



「逆に水や食料を都合してあげれば、かなり友好的に接してくれると思うわ。荷物に余裕があるなら融通してあげるといいかもね?」


「……とんでもないね。天然の牢獄みたいじゃんか。そんな苛酷な生活を送ってるんじゃ逃げ出したくなるのも頷けるよ。クラメトーラから徒歩で逃亡するのは難しいわけ?」


「難しいと思うわよ? 見た通り周囲には水も食べ物も無いし、ポータルが使えないとグルトヴェーダ山岳地帯を徒歩で踏破しなきゃでしょ? スペルド王国最北端の街であるヴィアバタまで、徒歩だと数ヶ月はかかるって記録があるみたいだから」



 徒歩で数ヶ月か。今の俺達の足ならどれくらいだろう?



 しっかしヤバイなクラメトーラ。魔物が出ないから職業浸透も出来ず、ポータルを習得しようにも冒険者を目指すことも出来ないなんて……。



 外側の集落に行くほど環境が苛酷過ぎて、奴隷に落ちてでも外に出たがる者が後を絶たないのか。


 となると望まず奴隷になったティムルが居た場所は、中心であるクラクラットに近い場所だったのかもしれないね。



「さて。それじゃ貴方達はポータルが使えるみたいだし、帰りは心配要らないわよね? 私はもう帰ってもいいのかしら?」


「あ、ごめん。もし可能ならヴィアバタって街にも連れてってもらえないかな? 徒歩での移動の記録にちょっと興味があるから、現地に行って少し調べてみたいんだ」


「んー? 料金さえもらえれば別に構わないけど、相変わらず変わった事に興味を持つのねぇ」



 呆れ顔の女性冒険者に追加の1000リーフを払って、スペルド王国最北端の街への転移をお願いする。



 徒歩での踏破記録が残っているなら、クラメトーラから1番近い場所であるのは間違いないハズだ。


 超長距離工事になるのであれば、少しでも距離を稼いでおきたいしな。



 そうして連れてきてもらったヴィアバタという街だけれど……。



「なんだか随分と寂しげな場所のようですね……?」



 転移先の光景を目の当たりにしたヴァルゴが、精一杯言葉を選んだ感想を口にする。


 街っていうよりは、完全に村って言うべき規模の場所だな。村にしてもかなり寂れてるし……。



 お姉さんの説明によると、どうやらここは俺以外の誰かが以前クラメトーラへの道を建設しようとして作られた街のようなんだけれど、グルトヴェーダの険しさに阻まれてこれ以上北上することが出来ず、工事が止まってしまったらしい。


 その後はわざわざ最北端の街に来る者も多くなく、この街は寂れていく一方であったのだそうだ。



「工事が止まってから、もう100年は経ってるみたいだけどね。正確な年月は調べないと分かんないかなー」


「ああ。流石にスペルド王国の建国の方が先だよね」



 ドワーフ族が北を目指したのはアルフェッカ崩壊後の話だもんな。


 ……いくらスペルディア家憎しだったとはいえ、よくもまぁあんな不毛な場所に移住する気になったもんだよ。



「今もここに住んでいるのは当時の工事関係者の子孫が多いみたい。グルトヴェーダを見に来る貴方みたいな物好きを相手に商売することで細々と成り立ってる場所なの」


「ふぅん、寂れた観光地ってわけね……」



 しかし冒険者ギルドの職員って凄いな。各地の概要がスラスラ出てくるよ。


 以前俺は情報料の金貨5枚は高いような気がしていたけれど、冒険者ギルド員の知識量を考慮すればむしろ安いくらいかもしれない。



 しかも今回は転移料金だけで色々教えてくれてるわけだし、基本的に親切だよね。


 情報のお礼に金貨1枚を支払うと、今後ともご贔屓に~とお姉さんは笑顔でマグエルに帰還していった。



「さて。ゴブトゴさんには工事の許可を貰っているけど、ここの人たちにも話は通して置くべきだよね? ってことでこの街の責任者を探すとしよっか」


「それは構わないですけど、本日はクラメトーラには赴かないのですか? 旦那様のことですから、困窮しているドワーフ族のところに直ぐ乗り込むと思っておりましたけど」



 ヴァルゴは俺を美化しすぎだよ? 俺は別に聖人君子じゃないってば。



 クラメトーラに足を踏み入れる前に食料の確保とか、レインメイカーを沢山用意したほうがいいと思うんだよね。


 それに伴って発光魔玉も大量に必要になってくると思うしさぁ。



 要は準備不足に感じるんだよね。このまま足を運んでも何も出来ずに帰ってくることしか出来ない気がするんだよ。


 だから今日のうちに色々手配してしまって、明日改めて足を運ぼうと思ってるんだ。



「ああ、そう言えばダンは行動力はあるけど、勇み足で行動することは少なかったっけ」


「基本的に臆病者なんでね。慎重には慎重を期したいんだよ」


「ふふ。クラメトーラの現実を目にしちゃうと、居ても立ってもいられなくなりそうだもんね? だから準備が整うまでは足を運びたくないって、すっごくダンらしいよ」



 ……物凄く美化されちゃった気がするけど、リーチェが嬉しそうで何よりです。



 でももしかしたら俺は、ティムルを追放したドワーフ族に対して少なからず怒りを覚えているのかもしれない。


 だからあまり踏み込みたくないと思っちゃってるのかもなぁ。



 まぁ俺の気持ちなんてどうでもいい。まずは責任者を探そう。



「おや、お客さんとは珍しいねぇ。領主様かい? あの人は優しい方だからね、きっと気軽に会ってくださると思うよぉ」



 ヴィアバタは寂れているとはいえ観光地として成り立っている場所だけあって、余所者の俺達に対しても親切に応対してくれる人が多かった。


 ヴィアバタの領主のところには直ぐに案内してもらえたし、腰が低く気弱な中年男性の領主も俺達の輸送路建設計画に賛成してくれて、とんとん拍子に話は進んでくれた。



「大変不躾では有るんだけど、1つお願いがある。出来ればその建設工事でヴィアバタの若者達にも仕事をもらえないだろうか?」



 終始にこやかに対応してくれていたヴィアバタの領主さんだったけど、工事に人手が必要だという話になると、ならばと少し申し訳無さそうに雇用の融通を提案してきた。


 だけどこっちにとっても渡りに船の提案だ。乗らない手はない。



「人手はいくらあっても足りないくらいなので、むしろありがたい申し出ですよ。ご協力いただけて助かります」


「そう言ってもらえるとこっちこそ助かるよ。若者の数はそこまで多くないのだけどね。そんな彼らにさえ満足な働き口を用意することが出来ていないんだ……」



 自分の不甲斐無さを恥じるように、悔しそうに呟く領主さん。


 ヴィアバタの付近にはアウターも無く、グルトヴェーダ山岳地帯に近いこの場所では魔物の発生も少ないため、魔物狩りをすることすら難しいのだそうだ。



 俺達の工事の人足を地元から融通することで、公共事業みたいに雇用を創出するのが狙いのようだ。


 俺と領主さんの利害は一致してるから、反対する理由は無いんだけど……。



「ですが、工事の従事者にはちゃんとこっちの要望を理解してもらってから働いてもらいたいので、希望者にはきちんと説明会みたいなものを開きたいと思うんです。その手配をお願いしてもいいですか?」


「お安い御用さ。働く者たちも仕事内容が分かっている方が安心だろう。間違いなく手配させて貰うよ」



 いくら不毛の大地での工事でも魔物が一切出ないとは言い切れないから、工事関係者には最低限の戦闘技術と、戦士、旅人、商人の3職の浸透は義務付けるとしようかな。


 その上で行商人になってもらえば工事もかなり楽になるはずだしね。


 それと、クラメトーラで発光魔玉を死ぬほど使うことになるかもしれないし、ファミリアやクリミナルワークスが発光させた魔玉はなるべく回収して確保しておいた方が良さそうかな?



 就職説明会は明日ヴィアバタの宿で行われることが決まり、工事に関しては俺達の自由にして良いと快く了承してもらえた。


 工事が始まればヴィアバタも自然と潤うようになるだろう。お互いに良い影響が出ればいいな。



 お互い笑顔でよろしくお願いしますと握手を交わして、顔合わせは終始にこやかに終了した。



「街の人の理解も得られたし、これで工事には何の憂いも無くなったね。この場所がこれから賑っていくのかと思うと、なんだかドキドキしてくるよっ」



 ほらっ、と俺の右手をおっぱいに誘導してくれるリーチェ。


 だけどドキドキじゃなくてムニュムニュしか伝わってこないですよ?



「それでこのあとはどうするの? マグエルの宿でコップのことを訊いてみる?」


「……いや、実はちょっと考えている事があってね。もう工事を始めちゃおうと思うんだ」


「考えている事、ですか? 旦那様のアイディアって、お伺いするのがちょっと怖いんですよねぇ……」



 コワクナイヨー。ワタシヲシンジテー?



 まぁそんなに難しいことじゃないよヴァルゴ。


 ただ徒歩で数ヶ月の距離を人力だけで工事するのはちょっと厳しいから、全自動の工事機械を導入しようかと思ってるだけでさ。



「とりあえず、工事予定地を下見してみよっかー」



 ヴィアバタを出て、北に1キロメートルくらい離れた場所まで移動する。


 ここはまだ緑も多く、クラメトーラの荒れた大地と繋がっている場所とは想像できないな。



「ヴァルゴ。ポータルでクラメトーラに行って、5分くらい立っててもらえるかな?」


「構いませんけど、それに何の意味が?」


「ここからクラメトーラへの方向を確認したいんだ。だからパーティメンバーの所在確認を利用しようと思ってね」



 畏まりましたと転移していくヴァルゴ。


 そしてリーチェには動かないで居てもらって、リーチェとヴァルゴの反応の間の木々を適当に伐採して目印にしていく。



 ロングソードで何の苦もなく木を切れるようになってしまったよ。俺も強くなったもんだぁね。



「……よしっ、とりあえずこんなもんかな?」



 5分間で2、3キロメートルくらいの距離は伐採できただろうか? 目印としては充分だろう。


 基準となってくれたヴァルゴとリーチェにお礼のキスをしてあげる。



「2人ともありがとう。目印は定期的に更新して行く必要があると思うけど、今日の分はこれで充分だと思う」


「目印って?」


「今日の分とは、いったい何のことですか?」



 首を傾げるリーチェとヴァルゴ。


 でも口で説明するよりも見せた方が早いよね。



「百聞は一見にしかず、早速工事を始めよう。……ってことで、出てこーい竜王ー!」


「「えっ、ええ……!?」」



 造魔スキルで竜王を召喚する。


 魔力枯渇の症状もでないし、周囲に俺たち以外の生体反応もない。竜王の運用に何の問題もないはずだ。



 そう。俺の考えとは、竜王に大雑把な開拓を任せてしまうというものだった。



 召喚さえしてしまえば、魔物にスキルを使わせない限り魔力を消費しない造魔というスキル。


 呼び出した魔物はかなり細かい指示を与えることもできて、ヴィアバタとクラメトーラの間には人里も無い。


 巨大な竜王の体躯は開拓重機としてはうってつけだし、人手が必要になったら眷属を召喚することも可能。


 眷属召喚も1度呼び出してしまえば魔力の消費は起こらないし、造魔と違って召喚数の制限も無い。



 そしてなんと言っても全自動!


 工事を進めながら寝室でみんなと愛し合っても大丈夫なのさーっ!



 竜王様を工事に駆り立てる罪悪感にさえ目を瞑れば、これほど効率的な工法も無いと思うんだよ?



「大雑把な開拓を造魔で進めてしまって、そのあとに人の手で微調整をするわけだね……? なるほど、造魔にはこんな使い方もあるのかぁ。ノーリッテのせいで悪いイメージしかなかったけど、やっぱりなんでも使い方次第なんだなぁ」


「イントルーダーを工事に使うなんて大それたこと、よく思いつくものですよぉ……。実際の運用には色々な条件をパスしなくちゃいけませんけど、旦那様と今回の工事は全ての条件をクリアしてますからね。利用しない手はない、と」



 2人とも唖然とした様子で竜王を見上げている。



 そんな2人の見ている前で眷属召喚も試し、ドラゴンサーヴァントを呼び出してみる。


 けれど竜王を召喚した直後の眷属召喚は少々無謀だったようで、5体ほど呼び出したところで魔力枯渇の兆候が出始めた。



 これ以上は危険だな。魔力が回復する度に新たに呼ぶ事にしよう。



「それじゃ大型の馬車が余裕ですれ違えるくらい……、10メートルくらいの道幅を想定して工事して欲しい」



 呼び出した竜王に口頭で指示を出していく。


 造魔召喚した魔物に口頭で指示を出す必要は無いんだけど、リーチェとヴァルゴにも俺の指示内容を共有しておきたいからね。



「道中の木はなるべく根っこから引き抜いて脇に避けておいてね。建材に使えるかもしれないから。木を抜いたら道をなるべく平らに均して……、上から軽く殴りつければいいかな。そんな感じで目印に沿って進んでもらえる?」



 任せろとでも言いたげに軽く唸って、竜王は早速木を引っこ抜き始めた。


 20メートル近い巨躯を誇る竜王の工事スピードは尋常ではなく、帰る前にもう1度ヴァルゴに転移してもらって、更に数十キロに渡って目印を付ける事になった。



 今日の工事範囲では山岳地帯まで行けそうにないけど、山に入ったら出来ればトンネル工事をしたいんだよね。ブレスで?


 なので、鉄や岩なんかの魔物素材を使って補強したいんだよなぁ。



 可能であれば強度的に優れたミスリルを使いたいところだけど……。


 加工技術を教えてくれるかは微妙かぁ。



 ヴァルゴとリーチェのに沢山お礼のキスをお見舞いしたあと、リュートと一夜を共にしたばかりの高級宿に足を運ぶ。


 2人を相手するためではなく、ミスリルの加工技術を問い合わせる為だ。



「いらっしゃいませ。いつもご利用いただきありがとうございますっ」



 明るい時間に来たというのに、いつも通り丁寧に対応してくれる宿の従業員さん。



 あ、リーチェとヴァルゴを伴ってるけど、今日は宿泊に来たわけじゃないんですよ。


 だからそんなニコニコといつもの部屋に案内しようとしなくていいからねー?

※こっそり補足

 ヴィアバタに残されていた徒歩でのグルトヴェーダ越えの記録は、あまり工事の参考にはならなかったようでサラッと流されました。

 昔の魔物狩りのパーティが歩いて数ヶ月かかったよー、くらいのふわっとした情報だった模様。


 ちなみにヴィアバタの名前は某オンラインゲームのBGM『ヴィア・タバス』をもじもじ捩りました。

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