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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
1章 巡り会い1 スポットでの出会い
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036 同衾

 泣きそうな顔で詰め寄ってくる教会の子供達とフラッタ。そんな光景を目の当たりにした俺は素直に白旗をあげるしかなかった。


 こんなの邪険に扱えるわけないだろ、くっそぉ!



「……明日もまた夕食を一緒に食って、それから冒険者ギルドで解散っ。これでいいなっ!?」


「「「やったあああっ」」」



 全身で喜びを爆発させる子供達とフラッタ。俺の完全敗北です。


 本当は朝イチに冒険者ギルドで別れるつもりだったのに、もうちょっと一緒に居たいと、子供達とフラッタに泣き付かれてしまったのだ。


 っていうかおいフラッタ。子供の方に混じって喜んでるんじゃないよ、まったく。



 冒険者ギルドで解散する理由は勿論、移動魔法を利用するためだ。


 冒険者ギルドには常に複数名の冒険者が常駐していて、有料で移動魔法ポータルを利用することが出来る。利用料は銀貨10枚、つまり1000リーフと思ったよりも全然安い。


 究極的には誰でも習得可能な魔法だからなぁ。高くしたら個人取引を優先されちゃいそうだ。



 子供達とフラッタがまだ騒いでいるので、今のうちにムーリさんに留守番の話をしておくか。



「えと、留守を預かるということですか? ですが流石にそれは私たちを信用しすぎでは?」


「ま、この家には貴重品とか全然無いしね。盗難なんかの心配はしてないよ」



 さっき思いついた留守中の家の管理の話をムーリさんにしてみる……、けどちょっと反応が悪いな。


 貴重品はインベントリに収納されてるんだから防犯は完璧だ。完璧じゃないのは清掃方面なんですよねー。



「今日帰ってきたら家中の埃が気になっちゃってさ。朝晩窓の開閉をしてくれるだけでもありがたいんだけど、ムーリさんに頼めないかな? 正式な仕事として依頼してもいいよ」



 ムーリさんに頼めないかな、というかムーリさんしか頼める知り合いがいない。彼女に引き受けてもらえなければ諦めるしかない。


 念のため目利きを試してみたけど、ムーリさんに俺たちへの悪意は全くない。彼女のことは信用して大丈夫だろう。


 ……あれ? なんか数名の男の子が俺に微妙な悪意を持ってるっぽいけど、俺なんかしたっけ? 身に覚えがないんだけど?



「うん、私からもお願いしますムーリさん。仕事としてなら、留守の間の家の清掃を任せても構いません。」



 渋るムーリさんにニーナからの援護射撃。


 なるほど。窓の開閉だけだと、逆に仕事として依頼しにくいのかぁ。作業内容が少なすぎて受けれないって真面目すぎでは?



「私達の荷物は鍵つきの棚に全て仕舞っておくので、子供たちに魔が差してしまうような状況は作りません。ステータスプレートの登録もムーリさんだけにします」


「えとえと、ちょっと待ってくださいねっ……?」



 俺とニーナに畳み掛けられたムーリさんが、考える時間をくださいと1度会話を中断した。



 俺達の荷物なんてお互いの着替えくらいしかない。貴重品に分類される硬貨も装備品もインベントリに入るし、スポットに行ってるのに装備品を家に忘れていくわけもない。魔が差す状況は作らない。


 ……ああ、もしかしたらニーナの着替えは危なかったりするのか? いや、流石に考えすぎだよ、うん。



「えと、朝晩だけなら教会の運営にも支障ないか、な? 掃除をする場合は子供達にも手伝ってもらわなきゃだけど、貴重品の類は無いし、大丈夫……? 掃除なんて教会で散々やってるから、私が夕方鍵をかける時にチェックすれば……」



 ムーリさんが顎に拳を当ててぶつぶつ唱えている。


 聞いた感じ、仕事は受けたいけど問題は起こらないかと悩んでいるようだ。



「ムーリさん。即答しなくて良いよ。返事はいつでも大丈夫」


「え? あ、えと、ありがとうございます。多分お引き受けできると思います。問題が無いか今晩もう1度確認して、明日お返事しますね」



 笑顔を浮かべるムーリさん。この感じなら引き受けてもらえそうかな?


 俺達の収入も増えてきたし、人を使えるところは積極的に使っていこう。使われる側も意欲的みたいだしね。



 みんなで賑やかな夕食の時間を過ごす。

 フラッタと子供たちが思いのほか盛り上がったので、解散が少し遅い時間になってしまった。


 教会のメンバーを送り届けて、フラッタと一緒に帰宅する。


 本当はフラッタが1人で送っていくと言っていたんだけど、ごめんなフラッタ。お前を1人にするのは微妙に怖いんだ。



 さて夕食も終ったし、あとは寝るだけなんだけど……。


 案の定というか、ここでフラッタが駄々をこね始めた。



「なんで妾だけ1人で寝なければならんのじゃっ! みんな一緒に寝れば良かろうがっ」



 スポットで無双していた姿が嘘のように、小さな子供みたいにイヤイヤと首を振るフラッタ。


 1人にさせるのは怖いけど、寝る時まで一緒にいたいとは言ってないんですけどぉ?



「お客さんを床で寝させられないし、俺とお前が一緒のベッドに入るのも不味いだろ。お前嫁入り前だろうが」


「既に何度も夜を共にした仲ではないかっ! ずっと一緒に寝ていたのに、今さら妾を除け者にする気かっ!?」


「誤解を招く言い方をするんじゃねぇよっ! お前分かってて言ってんだろ!」



 スポットで一緒に夜営したことを卑猥な感じに言い換えるんじゃないっての。


 コイツ、何気に計算高いところがあるな?



「やだやだやだ! 今さら1人で寝るなんて絶対嫌なのじゃっ! お主達が何処で寝ようと、妾も絶対一緒に寝るからなぁっ」



 やめろっ。プレートメイル着込んだまま地団駄踏むなっ。せっかく補修した床が抜けちゃうぅぅ!


 子供かよお前はっ。いや子供かもしれないけど。




「あーもう。折衷案としてはニーナと一緒に寝るってのは「嫌じゃ! 絶対に3人で寝るのじゃ!」



 あーもう、なんなのよ……。

 この家に来る女は幼児化しなきゃいけない決まりでもあるの?



「あ~……ご主人様。これはもうこちらが折れるしか収拾がつかないのでは……」



 待ってニーナ。どうしてそこで諦めるんだよ。出来る出来るやれば出来るって。


 しかし俺の願い空しく、ニーナはフラッタの提案を既に受け入れてしまったようだ。



「フラッタ。貴女の要望を聞くのですから、もし何か問題が起きた場合は私たちに迷惑をかけずに、貴女が責任を持って釈明してくださいよ?」


「当然じゃ! 2人に迷惑はかけぬっ! ニーナ、感謝するのじゃっ!」



 ニーナの手を取って満面の笑みで感謝を告げるフラッタ。


 そんなお前には残念だけど、もう既に十分過ぎるほど迷惑かけてんだよなぁ。



 まぁお預けが1日延びるくらいは構わないんだけどさぁ。


 マジで自宅のベッドでフラッタと一緒に寝るの……? 夜営の延長線だと思うのは、流石に無理がありすぎるでしょぉ。



「そうと決まれば早速休むのじゃ2人ともっ。あ~、ようやく鎧が脱げるのじゃ~」



 おっさんみたいに気の抜けた声を出しながら、金属製のプレートメイルを脱ぎ始めるフラッタ。


 そういやコイツ、子供達と遊んでいる時も夕食の間も、頑なに鎧は脱がなかったな。気は許しても装備は外さないのは、対人戦を警戒した心構えなのか?


 そして俺たち相手にはそれすら脱ぐとか、マジでなんでだよ?



 プレートメイルの下からは、派手になり過ぎない程度に洗練された、赤っぽい色の薄手のドレスが出てきた。


 足首までありそうなロングスカートでどうやってプレートメイル着てたんだよ。装備品って凄いな。



 ……って、ドレスぅ?



「やっぱ完全に貴族令嬢でしょお前。嫁入り前の貴族令嬢と同衾するとか、普通に首が飛ぶわ」


「……いや、それは恐らく問題ないじゃろう」



 はしゃいでいたフラッタが突然翳る。


 貴族令嬢であることは否定しないか。だとしたら、貴族令嬢のフラッタは何故あんなところにいたんだろう。



「寝物語に聞かせてやるゆえ、今は体を拭かせてくれぬか。それとも一緒に……、いや互いの体を拭き合いたいのかのぅ?」


「はいはい。そういうのは女同士でやってくれ」



 流し目を送ってくるフラッタだけど、正直コイツの素性のほうが気になってエロい気分にはならないな。



 う~ん。結局話を聞く流れになってしまったかぁ。しかも思った以上に重そうな事情を抱えてそうな雰囲気だ。聞きたくないよぉ。



「俺は下にいるから終わったら呼んで。ニーナはフラッタを手伝ってやってくれる? 一応はお客様なわけだし」


「畏まりました。暗いので足元にお気をつけて」



 ニーナの声を背中に受けて寝室を後にする。


 手に持ったランタンの揺れる光を目にしたせいで、ランタンの灯りに照らされながら互いの体を拭きあう、裸のニーナとフラッタの姿を想像しかけてしまった。


 ……うん。中々に破壊力がありそう。録画必須ですね。



 ランタンの灯りを頼りに食堂まで移動。


 独り自分の体を拭いた後、暇なので自身を鑑定する。




 ダン

 男 25歳 人間族 商人LV6

 装備 鋼鉄のロングソード 魚鱗の盾 皮の帽子 皮の軽鎧 皮の靴





 村人LV10

 補正

 スキル 経験値自動取得-



 商人LV6 

 補正 幸運上昇-

 スキル 目利き



 戦士LV30

 補正 体力上昇-

 スキル 装備品強度上昇-



 旅人LV30

 補正 持久力上昇-

 スキル インベントリ



 盗賊LV1

 補正 敏捷性上昇

 スキル 小型武器使用時敏捷性上昇



 殺人者LV1

 補正 敏捷性上昇 敏捷性上昇-

 スキル 対人攻撃力上昇



 賞金稼ぎLV1

 補正 敏捷性上昇

 スキル 対人防御力上昇



 剣士LV1

 補正 武器強度上昇-

 スキル 斬撃時攻撃力上昇-



 短剣使いLV1

 補正 敏捷性上昇-

 スキル 斬撃時攻撃力上昇-



 武道家LV1

 補正 敏捷性上昇-

 スキル 物理攻撃力上昇



 侠客LV1

 補正 物理攻撃力上昇 物理防御力上昇 体力上昇- 魔力上昇- 幸運上昇

 スキル 陽炎



 兵士LV1

 補正 装備品強度上昇- 体力上昇- 敏捷性上昇-

 スキル 全体補正上昇-



 慈善家LV1

 補正 幸運上昇 魔力上昇-

 スキル 全体幸運上昇-



 冒険者LV1

 補正 体力上昇 持久力上昇 敏捷性上昇-

 スキル インベントリ ポータル



 

 設定出来る職業、増えたなぁ。


 鑑定と職業設定のおかげで無駄なく育成出来てはいるものの、この全てを育成するのはやはり現実的じゃないよねぇ。

 今後は何を優先するかを意識して職業を選ばなきゃいけない。



 因みに、商人の目利きスキルはレベル上昇による変化を感じられなかった。スキルによっては成長しないものもあるらしい。


 こういうケースがあるせいで、レベルの概念の理解が進まないのかもしれない。



 今後の職業選びとしては……。



 累積ボーナス狙いで、比較的レベルが上がりやすそうな職業を優先してあげるルート。


 強力な職業補正の恩恵を目当てに、累積ボーナスを捨てて特別職を育成してみるルート。 


 その両方の中間とも言える、兵士や冒険者などの上位職を育成していくルート。



 大きく分ければこの3つを考えている。


 戦闘能力を優先するか、サポートスキルを充実させていくかでも話は変わってくるけどさ。



 俺個人の好みで言えば、まずは攻撃力の上昇を期待して剣士と短剣使いを育成したいところかなぁ。どちらも俺の戦闘スタイルにとって効果が大きい職業だろう。


 しかし兵士も結構捨てがたい。インベントリが累積した今、兵士の育成に時間がかかってもさほど問題じゃないからな。俺の戦闘力を上げつつ、あわよくば全体補正上昇でニーナの能力の底上げも可能だ。


 補正の上昇ってことは、もしかしたら累積分全てに上昇効果が得られる可能性も無くはないだろう。



 ん~でも、兵士と同じく上級職である冒険者も捨てがたいんだよなぁ。


 冒険者の最大の恩恵だと思われる移動魔法ポータルは、俺達のパーティにはさほど効果が望めない。だけど単純に補正が強力なんだよね。


 HP上昇は魔物との戦闘での死のリスクを下げてくれるし、持久力と敏捷性は対人戦でも恩恵が得られる補正だ。更にはインベントリが累積した場合、今以上に大量のドロップアイテムの運搬が可能になる。

 1㎥のインベントリが6つある現状でもさほど問題はないんだけど、インベントリが増えるほどに遠出しやすくなるはず。


 ニーナの呪いを解く方法を探す旅が、今以上にしやすくなるということでもあるんだ。



「ご主人様? 何かお悩みですか?」


「うおっとぉ! びっくりしたー。気付かなくてごめんね」



 考え込んでいると、突然視界の端っこにニーナの顔が入ってきて驚いてしまった。



「ちょっと考え事してたんだ。悪い悩みじゃないから大丈夫。でも話すのはフラッタが居なくなってからね」


「……なるほど、大体分かりました」



 フラッタが帰ってから、このひと言で職業に関する話題だと察してくれたニーナは、追求せずに大人しく引き下がってくれた。



「ではご主人様。寝る準備は整いましたので、今日はもう休みましょう。お手を」



 差し出されたニーナの手を取り、手を繋いで寝室に戻る。


 真っ暗闇を2人で手を繋いで歩くなんて、俺達の異世界生活そのものだと思えた。



 どんな暗闇の中も、2人でなら歩いていける。ニーナと一緒なら何も怖くないさ。



 ニーナの手の感触を確かめながら寝室に入ると、中ではフラッタがベッドに腰掛けて待っていた。



「ふふ、ダンよ。光栄に思うが良いぞ。妾にとっても、今宵は初めて異性と過ごす夜なのじゃ」



 ドレス姿でベッドに腰掛けたフラッタは、ランタンの灯りに照らし出されて妖艶な雰囲気を醸し出している……、んだろうけどなぁ。


 夕食時のフラッタを見たせいで、今のフラッタには違和感しか覚えない。



「くくく、それでは互いに、思う存分に楽しもうではイタッ!?」



 真っ暗な部屋の中でもその存在を浮き上がらせるほどの、今まで見た中では間違いなく最高の美貌を持つ少女に、とりあえずチョップをお見舞いしておいた。

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