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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
5章 王国に潜む悪意3 世界を呪う者
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343 招待状

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

 メナスを撃退し、各自がイントルーダーを滅ぼした日。


 リーチェの事情をみんなに共有した後は、ただひたすらにみんなと愛し合って過ごした。



 俺自身みんなのことが愛おしくて仕方なかったし、大きな戦いの後でみんなもいつも以上に昂ぶっていたのもある。


 でもそれ以上に家族みんながリーチェのことで憤り、だけどリーチェの事を今まで通り家族で受け入れるんだと、みんなが俺を通してリーチェに伝えているみたいに思えた。


 うちの家族はみんな仲が良くて、それが本当に幸せだと感じられた。



 たった1度だけ寝室を出たのは、リーチェの好色家を浸透させるために奈落に潜った為だ。


 他のみんなを失神させてリーチェと2人っきりで浸透を済ませるつもりだったけど、なんと超敏感フラッタだけが新スキルを試したい一心で俺の愛撫に耐え抜いた。


 ウェポンスキルを試したいから快楽に耐え抜くって、発想が完全に無双将軍過ぎるよフラッタぁ……。



 フラッタを伴って、リーチェとキスしたまま奈落に赴く。



「それじゃ好色家が浸透し終わるまではキス続行だからねーっ」



 ……なんて宣言したものの、上限レベル30の好色家は一瞬で浸透が終わってしまった。


 リーチェの好色家浸透は、リーチェとキスしながら同時詠唱スキルでクルセイドロアをぶっ放すだけの簡単なお仕事だったのだ。



 まさか職業浸透が進んで悔しいと思う日が来るなんて……!



 リーチェと唇を重ねたまま絶望に打ちひしがれていると、新たに迫った魔物に向けてフラッタが真っ赤なフレイムドラゴンブレードを掲げて叫んだ。



「燃え盛るのじゃあっ、竜火葬炎っ!!」



 フラッタの叫びに呼応して、フラッタを中心に数十メートルはありそうな巨大魔法陣が出現する。


 そしてその魔法陣が赤く発光したと思った次の瞬間、魔方陣に乗っていたアウターエフェクトモドキたちが一斉に燃え上がった。



「これは……。強化版フレイムフィールド、といったところかのう?」



 魔物が燃え尽きた周囲を見渡して、フラッタがひと言感想を漏らす。


 ……確かに効果は似ているかもしれないけど、初級魔法のフレイムフィールドと比べるのも馬鹿らしい威力と範囲だったんだよ?



 フレイムドラゴンブレードに付与された竜火葬炎は、フレイムフィールドの超強化版といった効果のウェポンスキルのようだ。


 ドラゴンイーターには単体用のウェポンスキル剛震撃が付与されているから、広範囲ウェポンスキルが使用可能になったのはバランスが良さそうだね。



「ともあれ、これで焦天劫火が使えるダンと一緒に敵を焼き払うことが出来るのじゃーっ! ダンとお揃いっ、お揃いなのじゃーっ!」



 ぴょんぴょん飛び跳ねて全身で喜びを爆発させるフラッタ。


 その姿は可愛いんだけど、言っている内容が無骨すぎるんだよ?



 はしゃぐ無双将軍フラッタが可愛すぎたので、背後からキスをしてあげたけどっ。



「……待てよ? お揃い? 俺とフラッタのウェポンスキルがお揃い?」


「ダン? どうしたのじゃあ?」


「ごめん2人とも。ちょっと思いついた事があるんだ。帰る前に試してみていいかな?」




 思い付きのアイディアや、瞬く間に浸透を終えた好色家の影響をたっぷりと確かめてから、ぐったりしたリーチェとフラッタを抱っこして帰宅する。


 そしてそのまま寝室に直行して第2ラウンドを開始した。




 今回の戦いで強制的に発情させられたフラッタ、ラトリア、エマの3人は、俺に上書きして欲しいといつも以上に積極的に迫ってきてくれた。


 ガレルさんとの決別で強いストレスを感じたニーナとターニアも、露骨なくらいに俺に甘えてきてくれた。


 好色家を浸透させたリーチェは、まるでその効果を検証するかのように何度も俺に体を差し出してくる。


 比較的落ち着いているティムルとヴァルゴも、みんなに引っ張られていつも以上に積極的だった。


 元々エロシスターのムーリは、いつも通りエロかった。



 好色家先生のハイパー持久力補正にものを言わせて、寝室から全く出ずに寝食も惜しんで、ただひたすらに肌を合わせて、心を通わせ、愛し合った。


 そんな俺達の元にゴブトゴさんから緊急の呼び出し要請が届いたのは、みんなと肌を重ね続けて2度目の夜が明けたくらいのタイミングだった。






「宰相ゴブトゴより伝令! 仕合わせの暴君は可及的速やかに登城されたし! 事態は非常に切迫し予断を許さない、最優先で登城せよとのことですっ!」



 伝令に来た男が、我が家の玄関先で声を張り上げている。


 裸のみんなが転がっている家の中に野郎を入れる気は全く無かったので、家の前で用件を聞く事にしたのだ。



 さてどうしたものかなぁ。ゴブトゴさんの要請に素直に応じる必要は無いけど、必死さが窺える内容だ。


 それに予断を許さないと言いながら、救援要請じゃないことも引っかかる。



 ゴブトゴさんには『行けたら行きます』という返事をすることにして、納得のいかない様子の伝令役を締め出した。



「……とりあえず、ハラ、減ったなぁ」



 奈落から帰った後、食事も睡眠も取らずに丸1日以上みんなと愛し合ったせいで空腹感を覚える。


 空腹感は持久力補正では補えないからなぁ。



「起きたついでだ。なんか作るかー」



 俺が腹減ってるんだから、一緒に居たみんなだって空腹のはずだ。


 来客があった事で1度落ち着いたはずだし、間もなく身支度を整えて下りてくるんじゃないかな?



 みんなが寝室から出てくる前に、簡単な食事を用意しておく事にしよう。





 敏捷性補正と身体操作性を駆使して超高速で調理を済ませ、肉の焼ける良い匂いが食堂に漂ってきた頃、お腹を空かせたお姫様たちがヨダレを垂らしながらやってきた。



「ん~っ! とってもい良い匂いなのーっ!」


「ダン~っ! 今のぼくにこの匂いは反則だよぉ~っ! まだ食べちゃダメかなーっ!?」


「出来た料理から食べて良いよ。冷めないうちに召し上がれ」



 握った両手を胸の前で激しく上下に振っているリーチェにキスをして、食べていいよと許可を出す。


 俺はコックに専念して、みんなには俺を待たずに食事を始めてもらった。



 ……完成した端から平らげられちゃうから、作っても作っても追いつきませんねー?



 調理と配膳を続けながらみんなと会話できるように、リーチェにお願いして食堂と炊事場の音を繋いでもらい、ゴブトゴさんから呼び出しを受けた事実をみんなとも共有した。



「ふ~ん? ダンに追い出されて大人しく帰ったんだ? それなら襲撃を受けているとかいう話じゃないのかなぁ?」



 沢山食べて空腹が少し落ち着いたらしいニーナが、俺が受けた印象を代弁してくれる。


 そうなんだよ。切羽詰ってる感じだったのに割とあっさり締め出されたんだよなー、伝令の人。



「呼び出されたのは私達だけ、か。それじゃムーリやエマたちとは一旦解散ね」



 状況は不透明だけど、我が家の参謀ティムルが直ぐに行動の指針を打ち出してくれる。



「今回図らずも、寝室に篭ってひたすらダンと愛し合うことを試せたのは大きかったわ。食事や休憩の時間をどうするかは次回までに考えておきましょっ」


「そうじゃのう。まだまだ足りないのじゃが、外が騒がしいと落ち着いて愛してもらえないのじゃ。まずは雑事を片付けて、全てが終わったら心置きなく……、なのじゃっ!」



 ティムルとフラッタの言葉に、みんなうんうんと同意する。


 つまり次回からは食事の問題も解決して、数日間みんなと寝室に閉じこもれる夢の時間が過ごせるんですかね?



「それじゃ私達は襲撃のあった場所の様子を確認しながら、皆さんの帰りを待ちますね」


「ムーリちゃんの言う通り、各地の事後処理は私たちで担当するから安心してねー」



 今回の襲撃の事後処理を買って出てくれるムーリとターニア。


 もうイントルーダーが潜んでいる可能性はほぼ無いだろうし、2人が一緒なら危険も無いだろう。



「頑張った後はたっくさんご褒美をあげちゃいますよーっ。だから早く帰ってきてくださいねっ、ダンさんっ!」


「あ~……、でもステイルークではお父様に会わないとダメかもなぁ……。めんどくさいの~……」



 ご褒美を約束してくれるムーリに返事をする前に、うんざりしたようなターニアの声が風に乗って届けられた。



 勘当された身の上なのに、獣爵家当主に会う可能性を面倒臭いと切って捨てるターニア。


 この人、相変わらず豪快すぎるわぁ……。



「各地への説明と確認は4人で参りましょうか。これでも私は竜爵家の当主夫人で、現役の貴族ですから」



 ムーリとターニアが買って出てくれた事後処理に、ラトリアも同行を申し出てくれる。



「現獣爵家当主のレオデック様とも面識がありますからね。私が同行した方が話が早いでしょう」


「もう各地に危険は無いかとは思いますが、皆さんの不在中は固まって動きましょうか。ラトリア様とターニア様がいらっしゃれば、イントルーダーでも出てこない限りは撃退できるはずです」



 ラトリアとエマもムーリたちに同行してくれるなら、戦力面でも身分的な意味でも安心だ。


 いっそのこと4人でパーティを組めばいいんじゃないかなって思ったけど、なんとか口に出さずに堪えることが出来た。



 新しく魔物狩りとして足を踏み出したムーリとターニアの2人と、ゴルディアさんが残したパーティを守るラトリアとエマの状況は全く違う。


 軽はずみな事を言うわけにはいかないよね。



「みんなお腹いっぱい食べてくれた? あ、フラッタとリーチェには聞いてないからねー?」



 ぶーっ! っとほっぺを膨らませるフラッタとリーチェを抱きしめながら俺も食事を済ませる。


 自覚は無かったけどやはり相当のエネルギーを消費していたらしく、自分でも驚くほどの量を平らげてしまった。



「やっぱ職業補正だけで全てを補うのは無理があるか……」



 持久力補正で食事を取らなくても体力は持続するけど、それは魔力で無理矢理補ってるだけなのかもしれない。


 寝室に長期間篭る時には、無理せずちゃんと食事をすべきだね。



 食事を済ませ、片付けも終えて、みんなとの濃厚なおはようのキスを交わす。



「それじゃ4人には留守を任せるよ。もう危険は無いと思うけど、俺がメナスを取り逃しちゃってるから油断はしないでね」


「「「はぁい……」」」



 キスでトロトロに蕩けた表情になった4人が、瞳を潤ませながらも頷いてくれる。


 そんな4人に行ってきますと更に唇を合わせてから、ポータルを使って王城へと転移した。



「あらぁ? 何かしらあれ?」



 6人で王城の前に出ると、なにやら城門の前に人だかりが出来ている。



 近づくと面倒臭そうなので遠巻きに観察してみると、どうやら貴族連中が城に入れろとごねていて、それを兵士さんが必死に食い止めている状況のようだ。


 魔物が溢れ出したばかりの王城になんか、そんなに戻りたいものかぁ?



「あ、皆さん! お待ちしておりました! すぐにこちらへ!」



 人混みから距離を取っていたのが悪かったのか、兵士さんが俺達を見つけて駆け寄ってきた。


 城門前の状況を見ると城に向かう気が削がれる想いだけど、兵士さんに八つ当たりしても仕方ない。素直に従おう。



「あっ! リーチェ様! どうかお話をっ……!」


「ええいどけっ! 退かんかぁっ! 兵士如きが私の行く手を阻むとは何事だぁっ!」



 数人の兵士さんに先導されて城門に向かう俺達の中にリーチェの姿を見つけた貴族連中は、俺達に駆け寄ろうとしてまた兵士さんに阻まれている。


 流石は無能に定評のあるスペルド王国貴族たちだ。人の足を引っ張らせたら右に出る者はいないな?



 さて、ここで足止めを食らうのは面倒だ。なんならいっそ1度出直すかな?


 そう思い始めた俺の目の前で、俺達を先導している兵士さんが殺到している貴族達に向けて普通に抜剣したからびっくりしてしまう。



「ひっ!? き、貴様ぁっ! いち兵士の分際で、いったい誰に剣を向けぐへぁ!?」



 そして何の躊躇も無く、怒鳴り込んできた貴族の腹に剣の柄をめり込ませた。



 崩れ落ちる小太りの貴族。


 その貴族を思い切り蹴飛ばして道を開ける兵士さん。



 目の前の光景に唖然として動けない貴族を、邪魔だと言いながら躊躇なく殴り飛ばして道を開けてくれる兵士さんたち。


 心なしか、喜々として貴族を殴り飛ばしてるように見えますね?



「宰相ゴブトゴより、この方たちの登城は最優先との通達がありました! それを阻む者は実力を行使して排除する許可もいただいております! 今より私共の前に立ち進行を阻む者は、何者であろうとも警告無しに斬って捨てさせていただきますので、皆様もそのおつもりで!」



 何人もの貴族に殴る蹴るの暴行を加えた後に、改めて警告を発する兵士さん。


 いや、その警告を先にしておけば群がられなかったんじゃないの?



 もしかして兵士さんたちもコイツらのこと殴りたかったの? 俺も殴りたいくらいだし。



 既に暴力による排除を目の当たりにし、そして剣の切っ先を向けられた貴族たちは、まるで波が引くように道を開けてくれた。


 普段は強気なくせに、自分の安全が確保されていない状況だと物凄く従順になるのな。いるいるこういう奴ら。




「……もしかして、警告を遅らせたのはわざと? 皆さんもあいつらを殴ってみたかったの?」


「はっはっは! バレてしまいましたかーっ」



 貴族達を置き去りにして入城し、貴族たちと充分距離が離れた辺りで兵士さんに声をかける。


 兵士さんたちはみんな、俺の言葉に満面の笑顔を返してくれた。



「いやぁ常日頃からあの方々には辟易してまして。今回このような機会を与えてくださった皆さんには、どれだけ感謝しても足りませんよーっ!」


「勿論貴族があのような方々ばかりというわけでは無いんですけどね。そういった方は城に詰め掛けて迷惑をかけてきたりしませんから。今あそこにいる皆様には何の遠慮も要らないってやつですよっ」



 俺の質問を皮切りに、スカッとした! よくやった! 俺も殴りたかった! などと兵士さんが騒ぎ出した。


 逆にゴブトゴさんは兵士さんたちには慕われているようで、ありがとうとか流石はゴブトゴ様だっ! とか絶賛されている。



「本当は切って捨てたいところですが、王国騎士団員たる我等が、守るべき民を切るわけには参りませんからね」


「でしょうねー。殴る蹴るの時点でアウトの気はするけど?」


「……ですが、いくら我々でも腹に据えかねることはあるんです。だから今回の件は良いガス抜きになりましたよっ」



 あははと笑い合う兵士さんたちの姿を見て、貴族と接する機会の多かったであろう王国騎士団のみなさんの苦労が偲ばれる。



 でもレガリアの話を聞いた後だと、この国の貴族が無能なのってレガリアの画策のような気がしないでもないんだよなぁ。


 あいつらって国王と直接繋がってるような奴らだったし、貴族籍の登録、抹消なんてお茶の子さいさいって感じでしょ。



 国王を抱きこんでいるから城や国の人事なんて自由自在だし、国力を落として民を疲弊させるのが目的で、無能な働き者を選別して国民の上に立たせていたんじゃないか?



 そんな事を考えながら和気藹々とした雰囲気の兵士さんに案内された場所は、先日マーガレット殿下とも話した会議室だった。


 兵士さんが到着を告げ、部屋の中からはやはりマーガレット殿下の声で入室が許可される。



「失礼します。仕合わせの暴君の皆様、入室致します!」



 案内の兵士さんに続いて足を踏み入れた部屋には、マーガレット殿下とガルシアさんが座っていた。


 そしてその後ろには4人の男が立っていて、油断なくこちらの様子を窺っている。



 あの人たちも断魔の煌きのメンバーかな? 開拓村では殆ど姿を確認できなかったから分からないわ。



 室内には他にゴブトゴさんと、その補佐官っぽい人と護衛っぽい人。先日は居なかった偉そうな雰囲気を漂わせる年配の男性が何人か同席しているようだ。


 この人たちが、城を締め出されなかった仕事のできる貴族さんなのかな?



 俺達を案内してくれた兵士さんが部屋を出ていくと、それを見計らってマーガレット殿下が口を開いた。



「待っていたわ、仕合わせの暴君の皆さん。早速話をさせてもらいたいから、空いている席に座ってくれる?」



 挨拶も紹介もすっ飛ばしてすぐに話をしたいというマーガレット殿下の言葉に、周囲の人も異論は無いようだ。


 予断を許さない状況っていうのは本当なんだなぁ。



 素直に空いている席に腰を下ろし、マーガレット殿下の言葉を待つ。


 俺達が席に着くとマーガレット殿下はゴブトゴさんに目配せをして、それを受けたゴブトゴさんが立ち上がる。



「仕合わせの暴君の皆さん。王国の窮地を救ってくれた皆さんを失礼ながらもこうして呼び立ててしまった理由を、どうかこれから説明させてくれ。質問などは最後に受け付けるので、まずは最後まで聞いて欲しい」



 ゴブトゴさん、説明を始める前にひと言添えてくれるあたりが憎いよね。


 部下にも慕われているみたいだし、仕事が出来る人には違いないんだろう。



 危機感が足りないように感じてしまうのは、もしかしたら城に潜り込んだレガリアの構成員に情報操作でもされてたんじゃないかなぁ。



「2日前にスペルド王国の各地で魔物の襲撃が起きたのは、当事者である諸君に説明する必要は無いだろう。これについては説明を省かせてもらうが構わんか?」


「大丈夫だよ。その件に関しては俺達のほうが詳しいくらいだろうしね」


「うむ。諸君が各地に現れた襲撃者と魔物を排除してくれたおかげで、王国が被った被害は信じられないほどに軽微だった。こと人的被害に至っては皆無に近かったと言っていい。この国の宰相として、諸君には改めて感謝申し上げる」



 ……皆無に近かった、かぁ。



 被害を抑えられた事を喜ぶべきだけど、それでも犠牲者が出てしまったので素直には喜べないな。


 俺達は俺達に出来る事を精一杯頑張ったけれど、それでも襲撃を未然に防ぐことは出来ず、被害をゼロにすることは出来なかったんだ。



 両隣のニーナとフラッタが俺の手をぎゅっと握ってくれる。


 ありがとう2人とも。俺は大丈夫だから心配しないで。



「しかし同日、エルフたちの生活圏であるエルフェリア精霊国が何者かに襲撃されてな。エルフェリアでは多くの犠牲者を出てしまっているらしいのだ」



 エルフの生存圏、エルフェリア精霊国。


 スペルド建国前はエルフ族もアルフェッカで共に暮らしていたはずだから、エルフェリア精霊国もスペルドと時を同じくして建国された場所なのかな?



「エルフェリア精霊国への襲撃のタイミングは、諸君が襲撃を撃退してから数時間後のことだったようだ」


「…………」



 エルフの里が襲撃を受けたと聞いても、リーチェには何の反応も現れなかった。


 ニーナのように見限っているという感じではなく、単純にピンと来ていない様だった。



 450年以上も関わりが無ければ、もう無関係みたいなものか?


 そもそもリーチェはエルフェリア精霊国に足を踏み入れたことが無いとか?



「襲撃者は人間族の女性。単独で現れて次々に魔物を生み出して虐殺を始めたらしい。魔物を生み出したこと、そしてタイミング的にもスペルド襲撃とは無関係だとはとても思えないな」


「人間族の、女ぁ……?」



 魔物を生み出せるのは造魔が使えるメナスだと思うけど、アイツって女だったのか?


 でも、貪汚の呪具やサモニングパイルが存在する以上、召喚士じゃない者にも魔物を生み出す術はある。まだ確定じゃないか。



「襲撃者の女は虐殺を繰り返した後、エルフェリア精霊国が管理しているケイブ型アウター『宿り木の根』の奥に消えていったそうだ。君たちに渡すようにとこれを残してな」



 ゴブトゴさんが取り出したのは1枚の封筒。手紙……か。



 やっぱりエルフェリアを襲ったのはメナスっぽいけど、アイツって女だったの?


 精神支配したラトリアに手を出さなかったあたり、女性っぽいと言えなくもないけど……。



「女は3日後にエルフェリア全土にアウターエフェクトを放つと宣言し、それを阻止したければこの手紙を君たちに届けろと言ってきたそうだ」


「……国を滅ぼすと脅迫しておいて、それの要求が手紙の配達かよ? 迷惑すぎぃ」


「私達のほうでも内容を検めさせてもらった結果、諸君に連絡するしかないという結論に到ったのだ」



 ゴブトゴさんから封筒を受け取る。


 既に確認済みということなら遠慮なく開封しても大丈夫だろう。



 封筒の中には1枚の便箋。



『この世界を滅ぼしたくなければ、なるべく早く私の元に辿り着いてくれたまえ。宿り木の根の底で君達を待っている』



 ……完全にメナスだこれー! アイツ女だったのかよっ!



 エルフェリアが滅んでくれればリーチェを解放する手間が省けるけど、流石にそういうわけにもいかないかぁ。


 仕方ない。メナスの招待状に乗っかるとしましょうかねぇ。



 ……逃がしてしまったメナスの件と、リーチェの誓約を同時に解決出来そうなことだけはありがたいかな?

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