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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
5章 王国に潜む悪意3 世界を呪う者
334/637

334 嵐の後

※R18シーンに該当する表現を若干カットしております。

 目の前に転がるメナスの右腕と始界の王笏、そして両断された仮面とローブをぼんやりと眺める。



 う~ん、まさか取り逃してしまうとは……。


 完っ全にやらかしてしまったよぉ。



「まぁ……ここで突っ立ってても仕方ないかぁ~……」



 他のみんなのことも心配だし、ワンダ達幸福の先端も無事にマグエルに帰還できているかを確認しないとな。



 パーティメンバー所在確認を行なって、全員の反応がある事を確認する。


 けれどマグエルには誰も戻ってきてないっぽいかな?



 始界の王笏をインベントリに収納し、両断された仮面とローブ、そしてメナスの右腕を回収する。


 ローブを着こんでいたから分からなかったけど、随分と華奢な腕だこと。



 まずはワンダ達を転移させた場所に行ってみるけれど、そこには誰もいない。


 無事にマグエルまで帰還してくれたかな?



 スポットを出て、改めてマグエルのトライラム教会に転移した。



「えっ、ダン!? ダンが帰ってきた!? 怪我は!? 怪我は無いの!?」



 そして姿が見つかった途端に子供達に囲まれてしまった。なんか磁石に集まる砂鉄みたい?


 メナスの右腕はローブの残骸でグルグル巻きにしたので、外からは見えてないよな?



 ていうか、なんでみんなこんなに慌ててるんだ? 



「怪我は無いよ。この通り無事だ。ワンダ達は戻ってきてる?」


「きてるよ! 幸福の先端はみんな戻ってきてる! って、誰か早くワンダ達にダンが戻ってきたって教えてきてーっ!」



 怪我の有無を確かめる為なのか、俺を囲んでビタンビタンと叩いてくる孤児たちの猛攻に耐えながら魔物察知を発動する。


 ……うん。流石にマグエル内全部は確認できないけど、周囲に魔物の反応は無いね。



 メナス本人すら囮にした襲撃の可能性も考えてたけど、アイツの狙いってマグエルじゃなくて俺達のほうだったもんなぁ。


 俺達への嫌がらせって意味ならやる可能性はあるけど、俺達に嫌がらせしたいって雰囲気でもなかったし。



 そして直ぐに教会の中から大慌てのワンダ達と、スペルディアに居るはずのムーリが姿を現した。



「……って、あれ? なんでムーリがマグエルにいるの?」


「ダン、怪我は!? あの化け物たちはっ!? どうなったのっ!?」



 イントルーダーとの遭遇のショックからはすっかり立ち直ったように見えるコテンに、物凄い勢いで詰め寄られる。


 俺の疑問は食って掛かってくるような勢いのコテンにかき消されてしまった。



 でも代表してコテンが問いかけてきただけで、他のメンバーやムーリからも不安と焦りが見て取れた。



「んー。敵の撃退には成功したんだけど……。あの仮面野郎には逃げられちゃったんだ。手傷は負わせたし今日のところはこれ以上の襲撃は無いと思うけど、解決したとは言い難いかなぁ……」


「イ、イントルーダーが3体同時に現れたって聞きましたけど、普通に撃退しちゃったんですか……!? あ、おっ、お怪我は!? お怪我は無いですか!?」



 慌てながら俺の体を満遍なく擦ってくるムーリ。


 子供達に叩かれたのと違って、ムーリの怪我の確認は気持ちいいなぁ。



 俺に抱きつくように腕を回して背中の確認をするムーリをそのまま捕獲して、俺もムーリの感触を確認する。



「マグエルに居たイントルーダーの撃退には成功したから、すぐに次の襲撃は無いと思う。だからムーリ、なんでお前がマグエルにいるのか教えてくれる?」



 ムーリを抱きしめながら彼女の耳元で質問をすると、ムーリも体を擦るのをやめて力いっぱい抱きついてきた。



「無事で、無事で良かった……。心配したんですよぉ……?」



 ああ、ムーリの感触は最高に気持ちいいんだけど、俺の胸に顔を埋める前に報告をして貰えないかなぁ?


 でも俺もムーリを離したくなくなってくるよぉ。



 くんくんと匂いを嗅いだりすりすりと頬をこすりつけてくるムーリが可愛いので邪魔したくないな。


 まずはこのまま幸福の先端と話をするとしよう。



「お前達はあの後大丈夫だった? 全員無事に戻ってきてるわけだし心配ないとは思うけど」


「あ、ああ。ダンに逃がしてもらってからも俺達は身動きが取れなくてさ。通りがかった他のパーティにここまで連れてきてもらったんだよ。怪我とかは誰もしてないぞ」



 ムーリと抱き合っている事を華麗にスルーしたワンダが答えてくれる。


 まぁ子供達の前でも気にせずイチャイチャしてきたもんな。今更か。



「マグエルにペネトレイターを名乗る魔人族たちって来てるかな?」


「あ、うん来てるよ。あの人たち、ダンの知り合いなんだって? あの人たちはスポットからの魔物の襲撃を警戒して、マグエルの周辺を警備してくれてるの」



 ワンダに続いて答えてくれたコテンは、心なしかいつもより少し元気が無い気がする。


 アウターエフェクトとも対峙したことがない状態で、いきなりイントルーダー3体と遭遇したんだもんな。元気がないくらいで済んでるのが凄いってもんか。



「そっか。じゃあ悪いけどみんなには連絡役を頼めるかな? 彼らにはこのまま今日1日は警備を続けてもらいたいんだよね」



 右手を切り飛ばしてやったんだし、生きてるにしたって治療の時間は必要だと思うけど……。


 アポリトボルボロスのキュアライトは、絶空でぶっ飛ばしたエンシェントヒュドラの首すら復元再生してたからな。メナス相手に常識的な考えに囚われるのは危険だろう。



「お前たちには彼らの食事の用意とか、交替の指示なんかをお願いしたい。恐らくはもう襲撃は無いと思うから、今日1日何も無かったら解散してって伝えてくれ」


「分かった! 今度こそ役に立ってみせるよっ!」



 ワンダ達が力強く頷いてくれたのを確認して、ムーリと抱き合ったまま自宅に転移する。


 家に入って、玄関で改めてムーリに事情を尋ねる。



「ムーリ。今すぐお前を可愛がってあげたいけど、まだみんなが戦ってる。だから状況を教えてくれるかな」


「あっ、済みません! えっとですね……!」



 俺に低反発おっぱいを執拗に擦りつけてきながら、ムーリが経緯を報告してくれる。



「……ていう状況なんですよっ」


「ありがとう。んー、結局全員がバラバラにされちゃったかぁ~……」



 でもニーナとティムルの2人がそうすべきだと判断したなら信用しよう。


 実際今のところ全員が無事なわけだしな。



「ヴァルハールはラトリアとエマがいるし、ステイルークにはターニアが同行したのね。じゃあまずは戦力的に1番厳しそうな開拓村に向かうべきか……」



 ティムルの実力を疑う気は無いけど、他の場所には誰かしら家族が同行してくれてるからな。


 スペルディアにはリーチェとヴァルゴが揃ってるから最も戦力が集中してると言っていいだろうし、救援に行くならお姉さんのところだろう。



「ムーリ。直ぐにみんな連れて帰ってくるから、夕食を用意して待っててくれる?」


「……夕食は用意しておきますけど、先にムーリを召し上がって欲しいですぅ」



 状況は分かっているはずだから、これは彼女なりのジョークかな?


 でも爆乳エロシスターのお前が言うとジョークで済まされないから気をつけるように。



 ムーリは2人きりになるとエロに積極的になるなぁ。


 俺もムーリをペロリといただきたいところだけど、まずはみんなの無事を確認してからだ。


 

 しかしみんなの救援に向かおうと、ムーリから体を離してようやく家の外に出た瞬間、俺の前にフラッタとラトリアとエマの3人が転移してきた。



「フラッタ! 3人とも無事で良かった! ……けどなんでマグエルに戻ってきたの?」


「ううう、ダン、ダン……! はや、く、早く妾たちに浄化魔法を……、はあああんっ」



 言い終わるなり限界とばかりに気をやってしまうフラッタ。


 そしてその後ろで一生懸命自身を慰めているラトリアとエマが倒れていた。



 ……エロい光景のはずなんだけど、何故か痛々しくて見ていられない。



「永久の鹽花。清浄なる薫香。聖なる水と浄き土。洗い清めて禊を済ませ、受けし穢れを雪いで流せ。波紋になりて濯ぎて落せ。ピュリフィケーションプラス」



 鑑定もせずにピュリフィケーションプラスを発動する。


 浄化魔法の効果もアライアンスに波及してくれたおかげで、ラトリアとエマにも無事に効果が及んでくれたようだ。



 恐らく何らかの状態異常に蝕まれていた3人は、浄化魔法を受けて落ち着きを取り戻し、そしてぐったりと地面に横たわった。



 さて、こんな3人の姿を俺以外に見せるわけにはいかない。


 大急ぎで3人を回収し、寝室に寝かせてあげる。



 ラトリアとエマは疲れきった様子で静かに寝息を立てている。起こすのは可哀想だな。


 ここは比較的消耗が少なそうなフラッタに事情を説明してもらうしかない。



「フラッタ。お前達が無事で良かったけど、お前達がここにいるってことはヴァルハールはどうなってるんだ?」


「安心せぃ。ヴァルハールのイントルーダーは滅ぼしておいたからの……」



 ムーリとフラッタを抱き寄せながら、ヴァルハールで起こった事を説明してもらう。


 フラッタに懸想する者たちが集まり、呼び声の命石という名のマジックアイテムを使用して、自身をイントルーダー化したぁ……?



「汚物を滅ぼしたまでは良かったのじゃが、妾達は見ての通りの状態で余裕が無かったからの……。他の場所の救援は難しいと判断して自宅に戻ってきたのじゃよ……」


「英断だフラッタ、よく引いてくれたね。おかげで3人とも無事に再会することが出来たよ」


「でも……、くぅぅっ……! イントルーダーを倒したは良いのじゃが、そのことを兄上にも報告できておらぬのじゃ……!」



 悔しそうに、自身が与えられた役割を完遂できなかったと憤るフラッタ


 ダーティクラスターの攻撃で発情と催淫という状態異常にかかってしまった3人は、自分の意思とは無関係に恐ろしいほどに高められてしまい、これ以上の活動は危険と判断したわけか。



「ごめんなさいなのじゃ……。たとえ攻撃であったとしても、ダン以外の者に快楽を与えられてしまったのじゃ……」



 俺の腕の中で、本当に申し訳なさそうにしょんぼりしながら謝るフラッタ。


 こらこらフラッタ。脳が破壊されそうなことを言うんじゃない。



「そんなことで謝らなくていいよ。3人が無事に戻ってきてくれたこと以上に大切なことなんてないんだからね」



 ……でも、自分でも意外なほどに平気だな?


 フラッタたちが強制発情させられたことよりも、無事に帰ってきてくれたことのほうが何倍も大切だからか。



 まだ発情の余韻が残るフラッタに刺激を与えないように気をつけながら、彼女の頭をよしよしなでなで。



「大体指1本すら触れられたわけでもないんだから、何にも気にしなくていいんだよフラッタ」


「うん……。でも妾の体、まだ気持ちいいままなのじゃぁ……。だからダンに鎮めて欲しいのじゃぁ……」



 涙目の上目遣いで俺に甘えるフラッタ。


 あー……。こりゃ夕食を用意しても食べる流れになるのは無理かなぁ……?



「うん。フラッタの体は俺が責任を持って鎮めてあげるけど、ちょっとだけ待っててね。フラッタも大好きなみんなと一緒のほうが嬉しいでしょ?」


「うんっ。大好きなみんなと一緒にいっぱい可愛がって欲しいのじゃっ」


「もう敵はいないんだから、俺のことだけ考えてもっともっと昂ぶって待っててね。直ぐにみんなと一緒に戻ってくるから。大好きだよフラッタ。行ってくるね」



 フラッタのおでこにそっとキスをして、フラッタを優しくベッドに寝かせる。


 家に帰ったら暫く身動きが取れなくなっちゃいそうだから、ヴァルハールへの報告も俺がしなくちゃいけないかなぁ。



 寝室を出て、みんなの無事を確認しようとパーティメンバーの所在確認をしたタイミングで、ちょうど家の外に反応が現れた。


 これ、ニーナの反応だ! 



 大急ぎで入り口のドアを開けてニーナを出迎える。



「ニーナ、お帰りー! 救援にいけなくって……って!?」



 けれどドアを開けると、意識を失ったニーナを背負うターニアが立っていた。



「ニーナ!? え、ターニア、ニーナはどうしたの!? 無事なんだよね!?」


「安心してダンさん。ニーナも私も無事だし、ステイルークに出現したイントルーダーは滅ぼしてきたから。でもその戦いでニーナが思いの外消耗しちゃってね。休息が必要だと判断して戻ってきたの」


「そっか……。ともかく2人が無事で良かったよ。後のことは俺に任せていいからね」


「あーっと。ステイルークの人たちにイントルーダー討伐を報告できてないの。ごめんなさいっ」



 俺にニーナを引き渡しながら謝罪するターニアさん。



 イントルーダーを単独撃破したんだから消耗しても仕方ないよ。


 ステイルークへの報告も俺が引き受けるから、今はニーナと一緒にゆっくり休んでて。



 フラッタの隣りにニーナを寝かせ、ムーリとターニアにみんなのことをお願いする。



 続々とメンバーが帰還する中、単独で戦っているであろうティムルと、2人でいるはずなのに他の場所に救援に現れていないヴァルゴとリーチェが心配だ。


 メナスを超える戦力がいるとは思えないけど、一刻も早く合流しないとなっ……!



 まずは予定通り開拓村へ転移し、直ぐにメンバーの所在確認を行う。


 お、どうやらティムルは既に村の中に居るみたいだ。少なくとも戦闘しているわけじゃなさそうかな?



 ティムルの反応を追って、シュパイン商会が拠点にしている建物に足を運んだ。



「ダンっ!? 良かった、無事だったのねっ!」


「こっちのセリフだよ! ティムルも無事で本当に良かったぁ……!」



 オディさんたちと話をしていたティムルは、俺の姿を見つけるなり胸に飛び込んできてくれる。



 イントルーダーとの死闘を終えたばかりなせいか、みんながいつもより積極的で参っちゃうよ。


 こんな状況じゃなかったらすぐに相手してあげられるのにぃーっ!



「ヴァルハールとステイルーク、そしてマグエルはもう片付いたのね。ここも今討伐終了の報告を済ませたから、もう離れられるわ」



 ティムルと抱き合ったままでお互いの情報を交換する。


 状況を把握したティムルは、素早く思考を巡らせ最適な行動順を導き出す。



「それじゃ私がヴァルハールに、ダンはステイルークに行って最低限の報告を済ませてから、スペルディアで落ち合いましょう」


「へ? ヴァルハールとステイルークに報告するよりも、一刻も早くスペルディアに救援に向かうべきじゃないの?」



 こうしてティムルとも合流できた今、未だに合流出来ていないリーチェとヴァルゴはまだ戦闘中だと思ったほうがいい。


 もしもイントルーダーと交戦中であるなら、1秒でも早く救援に向かわないといけない状況じゃないのかな?



「私でも討伐出来た敵に、リーチェとヴァルゴが後れを取るとは思えないわ。それにスペルディアでは王城から魔物が湧いてきてるみたいだし、戦闘以外の要素で時間を取られる可能性もあるでしょ?」


「うわぁ~……。お姉さんには申し訳無いけど、出来ればその想定は外れて欲しいわ……」


「あはーっ。お姉さんも同感よ。報告は最低限の情報だけ伝えればいいんだからすぐに済む。雑事を済ませてからスペルディアに集中しましょっ」



 くぅ、直ぐにでも駆けつけたいけれど……。


 確かに数百年の戦闘経験があるリーチェと、戦闘技術が飛びぬけているヴァルゴが一緒にいるんだから心配は要らないか……?



 いやっ! ここでうだうだ悩むよりも、さっさと報告を済ませてスペルディアに向かうべきか!



「了解! じゃあスペルディア王城で合流しよう。詳しい報告会はその後でねっ」



 ティムルの指示を受け入れて、直ぐにステイルークに転移する。


 そのまま冒険者ギルドに飛び込んでラスティさんの姿を……、居たっ!



「ラスティさん! 大至急報告したいことがあるんだ! ちょっと来て!」


「あっ、ダンさん!? え、ニーナさんと姉さんはっ!?」



 俺の来訪にアタフタしながら、それでも直ぐに駆け寄ってきてくれるラスティさん。


 ステイルーク周辺に居た魔物を生み出していた元凶の排除に成功したこと、そしてニーナとターニアの2人とも無事に帰還している事を報告する。



「まだ事態は終わってないから詳しい報告は後日ね。ただ新しい魔物が現れることは恐らく無いから、もうひと踏ん張り頑張って!」


「はい、任せてくださいっ! 落ち着いたら姉さんとニーナさんも交えて食事でもしましょう!」


「祝勝会だね! 楽しみにしておくよっ」



 ははっ。フロイさんといいラスティさんといい、ステイルークの人とは食事の約束ばっかり交してるな。



 ラスティさんに見送られながら、直ぐにスペルディアの王城前に転移。


 そしてメンバーの反応を確認する。



 あれ? ヴァルゴとリーチェがかなり離れた場所に……。


 って、スペルディア内で更に分断されたのか!?



 あの2人が一緒なら万が一も無いだろうと思っていたけど、単独なら何が起こってもおかしくない。


 直ぐに合流しなきゃ……、比較的近いのはヴァルゴの方か!



 城の周囲に集まって騒いでいる奴等を気配遮断ですり抜けて王城に突入する。



 城の中に入ればほとんど無人状態で、進むのに苦労はしなかった。


 ヴァルゴの反応を追って、城の裏側に設置された広場に到着する。



 ヴァルゴはまるで座禅をしているかのように、瞼を閉じて地面に胡坐をかいて座り込んでいた。



「ヴァルゴ! なんでお前1人なんだ!? リーチェはいったいどうしたの!?」


「あっ、旦那様。来てくださったのですね。道理で魔力の回復が加速したと思いました」



 リーチェは座禅を止めて立ち上がり、そしてやっぱりみんなと同じように抱きついてくる。


 ああもう可愛いなぁよしよしなでなで。



 ……ってそうじゃないそうじゃない。リーチェのことを聞かないと。



 かくかくしかじかでと、ヴァルゴにスペルディアの状況を説明してもらう。



 ふむ。人と魔物の担当に別れて、ヴァルゴは人側の襲撃者を殺し尽くしたと。


 けれど最後の相手、先代のメナスがかなり手強く、魔力が枯渇してしまったので休んでいたわけね。



「あとはリーチェだけねっ! 急いで合流しましょう!」



 ヴァルゴに話を聞いているうちにティムルもやってきたので、3人でほぼ無人の城内を駆け抜ける。



 その途中で出会ったペネトレイターに速やかな撤収を指示する。


 スペルディア王城に貴族でも無い俺達やペネトレイターが留まるのは面倒事の種にしかならない。事態が落ち着く前に去るべきだろう。



 ペネトレイターが帰還し始めた事を確認して、改めてリーチェの反応を辿っていく。



 ……どんどん城の奥まで進んじゃってるけど、これって後から問題にならない?


 ま、後のことより今はリーチェの安全を考えるべきかな。



 迷路みたいな城内に迷いながらアホみたいに広い敷地を進み、城内に居たはずなのに巨大な門のある開けた場所に出る。


 そこにはリーチェと若い男女が1組、それとスペルディアの宿に押しかけてきた馬鹿女が拘束されて転がっていた。



「リー……」



 リーチェの姿を見た時、メナスに告げられたリーチェの真実が頭をよぎって、彼女の名前を口にすることを躊躇してしまう。


 けどそれを考えるのは後でいい。まずは目の前の愛する女性の無事を喜ぼう。



 魔物察知と生体察知を発動。


 周囲に魔物の気配も、不可視の人間も潜んでいない事を確認してから改めてリーチェに声をかける。



「リーチェおつかれー。迎えにきたよーっ」


「軽ぅっ!? ってダン!? 良かった、無事だったんだねーっ!」



 俺の登場についついツッコミを入れるリーチェ。


 けどリーチェもみんなと同様に、俺の胸の中に飛び込んできてくれた。



 もうみんなの無事を確認できたわけだし、抱き心地満点のエロボディの感触を堪能してもいいよね。ぎゅーっ。



「みんなも無事だから安心してね。本当にお疲れ様、リーチェ」


「ダンが1番心配だったんだよぉ? 無事で良かったぁ……!」



 イントルーダー3体に同時に襲われたり、結局1人1人に分断させられたりと予定通りにはいかなかったけれど、俺の家族がみんな無事だったならそれだけで充分だ。


 さぁみんな帰ろう。家に帰ってゆっくりねっとりじっくりたっぷり愛し合おうね。



「……って、なに帰ろうとしてるのよーーっ! 説明っ! 説明なさいよーーっ!!」



 しかし立ち去ろうとしていた俺達の背中に、女性の絶叫がぶつけられた。


 無視して帰ろうとする俺を、彼女はぼくの友人なんだと引き止めるリーチェ。



 はぁ……。リーチェの友人だって言うなら無視するわけにもいかないかぁ。


 王城で事情説明とか、厄介事に発展しなきゃ良いんだけどねぇ。

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