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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
5章 王国に潜む悪意2 それぞれの戦い
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333 メナス④ 神を貶める者

※メナス視点です。

「あはっ……! まさか、まさか敗北するなんて……!」



 ミラージュローブに付与された空蝉のおかげで1度、始界の王笏を翳した右腕のおかげでもう1度致命傷を免れた。


 始界の王笏を囮にしたことで出来た、その斬撃1回分の猶予が生死を分けたようだ。



「さて……。急が、なければ……」



 アナザーポータルで逃走に成功したはいいけれど、満身創痍もいいところだ。


 無貌の仮面とミラージュローブは両断されて彼の元に落としてきてしまったし、その際に受けた斬撃は内蔵まで達しているようだ。



 囮にした右腕は肘から先が無くなっていて、さっきから出血が止まらない。


 あまりの重傷に痛みすら感じなくなりつつある。



 最早一刻の猶予も無い。急いで治療しなければ。



「不可視の箱。不可侵の、聖域。魔で繋がりて……、乖離せよ。イン、ベントリ……」



 く……。詠唱短縮スキルが失われたのは辛いな。口を少し動かすだけでも億劫だ。


 無事に発動したインベントリからエリクシールの小瓶を取り出し、上手く蓋を開けられない左手にイラつきながらもなんとか飲み干す。



 エリクシールを飲み干した途端に痛みは霧散し、失われた体温と魔力が戻ってくる。


 深く刻み込まれた切り傷は塞がり、失った右手が植物のように生えてきた。



「流石は伝説の霊薬……。数秒前まで死の淵に立たされていたのが嘘のようだよ……」



 初めて目の当たりにした霊薬の効果に驚嘆させられてしまう。


 最早自分の体には、怪我の痕跡も戦闘の跡も残ってはいなかった。



 ルーナ竜爵家から奪った、万能の霊薬エリクシール。その入手はレガリアでさえ容易ではない。


 だから崩界の副作用でボロボロになった体に使うのは勿体無いと、ここまで温存していたのは正解だった。



「このまま何も考えずにひと眠りしたいところだけど……。流石にそうもいかないね……」



 体力は万全のはずなのに、死の危険を脱したことで気が抜けたのか急激な眠気に襲われる。


 だがこんなところで眠るわけにはいかない。



 ダン君に殺されるのなら本望だけれど、それは勝負の結果であればの話だ。


 こんななんでもないところであっさり無意味に殺されるのはもったいなさ過ぎる。



 すぐにスポットから脱出し、間髪入れずにポータルで隠れ家に転移した。



「くく……! 最大限に警戒したつもりだったのに、それでも想定が甘すぎたなんてねぇ……!」



 自分とゼノンしか知らない隠れ家を目にした瞬間眠気は吹き飛び、先ほどの戦いの興奮が蘇ってくる。



 オリジナルのイントルーダー3体を同時に相手取りながら、正面から実力でねじ伏せてしまった神殺しの男。


 強大な力を求めてガルクーザを研究した自分ですら想像も及ばないほどの、まさに化け物と呼ぶに相応しい男だった……!



 ああっ……! 今すぐまた彼と対峙したい……!


 けれど彼を相手するには自分では実力が不足し過ぎているっ……!



 イントルーダーを撃破したらしきことから、仕合わせの暴君が規格外の存在であるとは思っていたのに、ダン君は自分の想像など遥かに飛び越えた存在だった!


 この世界の外側から現れる絶対の侵略者であるはずのイントルーダーですら、彼にぶつけるには役者が足りないなんてっ!



 なにか方法は無いかと思案するが妙案は浮かばず、ならばレガリアの知識と組織力を総動員して……。


 そう考えながら先代のことを考えた時に違和感に気付く。



「己が本質。魂の系譜。形を持って現世に示せ。ステータスプレート!」



 取り出したステータスプレートを確認すると、ゼノンとのパーティ登録が解消されている。


 やはりパーティメンバーの存在が感じられなかったのは気のせいではなかったらしい。



「……あ、あはは。あははははははっ! そんなっ、嘘だろう!? 死んだというのか、あのゼノンが……! 怨魂まで使ったはずなのに……!」



 ダン君も想像を絶する存在だったが、仕合わせの暴君のメンバーも全員が規格外のようだ。


 先代メナスであるゼノンが絶命している以上、仕合わせの暴君の他のパーティメンバーが無事な可能性も極めて高い。



「あっはっはっはっは! 個々に分断してすら倒せなかった相手と、パーティ単位で決闘しなければいけないのかぁ……!」



 そのあまりの馬鹿馬鹿しさに体が燃えるような興奮を覚えるけれど、彼らに対抗する手段はまるで思いつかない。



 イントルーダーの数を増やしても意味は無いだろう。パーティを分断しても敗北を喫してしまった。


 同じ手が通じる相手とも思えないし、同じ手など芸の無いことはしたくないな。



 完全な状態の仕合わせの暴君とは、いったいどれ程の存在なのだろう……!


 ああ、彼らと真正面から対峙するにはいったいどうすればいいんだ……!?



「考えろ……。考えろ……。彼らの全力を上回る方法を考えるんだ……!」



 隠れ家の中で独り落ち着き無く、無意味に歩き回ってしまう。


 頭の中は仕合わせの暴君一色。これではまるで恋する乙女のようじゃないか。



 ダン君も他のメンバーも、単独でイントルーダーを打倒する戦闘力を持ち合わせている。


 そんな彼らが徒党を組んでいる状態で戦わなければならないのなら、やはりイントルーダーの数を揃えても意味は無い。



 ダン君以外のメンバーなら複数のイントルーダーを相手に出来ないかもしれないが……。


 己の勝利は絶望的なのが分かっていても、万全な彼らと正面からぶつかり合いたい衝動に抗えそうもない……!



「……うん。問題は明確で解決策は単純なんだ。解決策が実行不可能な点を除けばねぇ? くくく……」



 彼らと正面から戦うにはイントルーダーですら役者不足なのは明確で、ならば解決策はイントルーダーを超える力を用意すればいいだけ。


 こうして文章にしてみれば非常に単純で、かつ解決方法が全然思い当たらない無理難題だよ、まったく。



「これじゃない……。これでもダメだ……」



 何かいいアイディアは無いだろうかと、長年ガルクーザを研究してきた資料を片っ端から読み返す。



 かつてこの地を蹂躙し、人類を滅亡寸前まで追い込んだ古の邪神ガルクーザ。


 現在確認されている数体のイントルーダーの中でも群を抜いた性能を持ち合わせ、正に神と呼ばれるに相応しい存在だと言える。


 かつての自分はこの邪神を追い求めて、世界中を駆けずり回ったものだけど……。



 なんせ相手は神殺し、邪神すら滅ぼしかねない存在だ。


 古の邪神の造魔に成功したとしても、正面からあっさりと滅ぼされる気がして仕方ない。



 ガルクーザを長年研究して得た知識と、造魔スキルを検証する過程で得られた、魂を操る数々のマジックアイテムの存在がこちらの武器だ。


 仕合わせの暴君には絶対に知られていないはずの、こちら側のアドバンテージ。



「勝負事に勝利するためには、相手の弱点を突くか自分の強みを活かすかしなければならない。しかし私は全力の彼らとぶつかりたいのだから前者を選ぶわけにはいかないな」



 尤も、彼らの弱点なんて見当もつかないが。


 益体もない自分の思考を振り払って、こちら側の強みであるマジックアイテムを1つ1つ検討する。



 『呼び声の命石』は使用者の強い想いに呼応して周囲の魔力を増幅しながらかき集め、使用者に莫大な魔力を提供するマジックアイテムだ。


 膨大な魔力をかき集めた結果、ほぼ全ての使用者が魔物化してしまうのだが。



 『サモニングパイル』は造魔スキルの再現を目指して作られた、魔物を無限に発生させるマジックアイテムだ。


 造魔のような召喚制限は無いが、その分使用には大地の魔力と発光魔玉の両方が必要で、呼び出される魔物の水準も低く、使いすぎると大地の魔力が枯渇し、生物が生きられない不毛の地を生み出してしまう。



 『貪汚の呪具』は登録者の寿命を代償に異界から魔力を受け取る、始界の王笏と呼び水の鏡を合わせたようなマジックアイテムだ。


 サモニングパイルのように大地を痩せ細らせることはなく、使用中は魔力枯渇とは無縁の無尽の魔力を好きに扱うことが出来る。


 その代償というわけではないが、マジックアイテムを破壊されると出口を失った魔力が登録者の肉体に流れ込み、そして魔物化してしまうのだがね。



「くく、改めて並べてみると本当に悍ましいマジックアイテムばかりだ」



 これら全ての行き着く先は自身の魔物化という結末なので、失敗しても2度目は無い。


 なんとかこれらを駆使して、この世界の常識も仕合わせの暴君の想像も飛び越えるような存在を生み出さなければいけない。



「……迷った時は1歩下がって、物事の全体像を捉えよ、だったか」



 もう誰に言われたかも覚えていない、幼い日に伝えられた教えに従い思考を初期化する。



 魔物化を促すマジックアイテム。魔物を生み出す造魔というスキル。


 魔力があるから魔物という脅威が生まれ、けれど魔物のおかげで成り立つ人類の生活。



 魔物とは人類にとって絶対の敵対者でありながら、無くてはならない貴重な資源でもある。



 異界と繋がり、この世界に魔力を供給する場所であるアウター。


 そのアウター内で魔物を殺しすぎると出現する、アウターエフェクトという名の防衛機能。



 そして、そのアウターエフェクトさえものともしない者に放たれる、イントルーダーという絶対的な敵性存在。



 ならばイントルーダーすら物ともしない彼らには、いったいなにをぶつけてやればいいというのだ?


 それだけを考えて、1つ1つの可能性に改めて思いを巡らせていく。



 造魔スキルの使える自分に、サモニングパイルを利用する意味はあるか……?



「……いや、意味はある」



 サモニングパイルは造魔スキルと違って、生み出す魔物は自身の討伐経験に左右されない。


 自身の想像を超える魔物を生み出そうと思ったら、サモニングパイルの魔物発生機能が必要になるはずだ。



 既知の魔物では彼らには対抗できない。


 であれば、全く未知の魔物を新たに創造する必要があるのだから。



 ではサモニングパイルで周囲の魔力を奪う場合、貪汚の呪具で異界の魔力まで引っ張ってくる必要はあるか?



「……うん、やはりこれも必要だな」



 強い魔物を生み出すには、それに見合った膨大な魔力が必要になる。



 なにせ3体のイントルーダーを正面から蹴散らした男が相手なのだ。


 いくら魔力があっても足りないくらいだと思わなければね。



 終焉の箱庭や始まりの黒から生まれたイントルーダーですらダン君には通用しなかったのだ。


 アウターから流れ込む魔力だけでも……、あるいは貪汚の呪具で開かれる扉だけでも足りないと思うべきだろう。



 アウターの最深部で更にもう1つ扉を開けて、魔力をこの世界に流入させる。


 同じ場所に2つも扉が開かれたら、今までの常識を覆すほどの魔力の流入が見込めるはずだ。



 2つの扉から膨大な魔力を供給される自分に、呼び声の命石の力は必要なのか?



「……必要、だな。むしろこのマジックアイテムこそが全ての鍵と言っても過言では無いだろう」



 流れ込む膨大な魔力を、仕合わせの暴君への想いを込めた呼び声の命石で更に増幅させるのだ。


 2つの異界の門から私に流れ込んだ魔力は、私の思いに呼応して、やがて世界を滅ぼす魔物に昇華していくのだ。



 今の私は恋する乙女だ。


 仕合わせの暴君への熱い想いは、世界中の誰よりも強い自信がある!



「ここまでしても足りるとは言い切れないが……。それでも間違いなく私の人生全てを注ぎ込んだ、私の集大成に相応しい存在が産み落とされてくれるだろう」



 方針は決まった。



 アウターの最深部で貪汚の呪具を用い、既に開かれている異界の扉に加えてもう1つ扉を開き、異界からの魔力流入を加速させる。


 次にその魔力を呼び声の命石の力で更に増幅し、2つの扉から流入してくる魔力を乗算で増幅していく。



 そして仕上げに、その膨大な魔力全てをサモニングパイルに注ぎこんで、誰も見たことがない、誰も想像すらしたこともないであろう強大な存在を1体創造するのだ。



 ダン君は……、いや仕合わせの暴君は自分の想像を遥かに超える存在だった。


 だから彼らを相手にするのは、誰の想像をも絶するような存在でなければいけない。



「くくく……。年甲斐もなくはしゃいでいる自分に笑ってしまうよ……。こんな、こんな気持ちになったのは、本当に初めてかもしれないなぁ……!」



 体の内側が焼ける様な興奮を覚える。



 これから私は、いったいどれ程の存在をこの世界に生み出してしまうのだろう。


 そんな存在と対峙した彼らは、いったいどれ程の輝きを見せてくれるというのだろう……!



 私の操る3体のイントルーダーを正面から滅ぼして見せたダン君。


 アポリトボルボロスを吹き飛ばしながら、まるで作業のように無感動に、それでいて無駄な動きが一切無い、私を殺すためだけに洗練され尽くした動きで剣を振るったあの姿……。



 今まで私が唯一美しいと思うものは、人の抱く悪意の輝きだった。


 あらゆる想いが混ざり合い、まるで命の輝きそのもののような濁った煌き。



 しかしあの時のダン君は正にその対極。


 ありとあらゆる不純物を排除して、ただ自分を殺すためだけに存在するひと振りの剣の閃き……。



 ……参ったな。本当に参ったよ。


 まるで、どころじゃない。これでは完全に恋する乙女そのものだ。



 自分を殺しに来る姿に美を感じ、その相手を壊したくて穢したくて汚したくて仕方ないっ……!



「ふふ、あははははっ! まったく罪な男だよ、ダン君はっ!」



 さぁ愛しの彼に想いを伝えよう。



 私達の決戦に相応しい舞台はもう考えてあるんだ。


 急いでパーティへの招待状を用意しなければ。



 ふふ。まさかこの年齢になって意中の相手に恋文を送る事になるなんて、人生とは驚きと意外性に満ちているね。



 人との会話が面倒で選んだ、手紙という手法。


 今までは義務感で事務的に淡々と書き上げることしか出来なかったのに、送り先が愛しの人物だというだけで、まるで筆が踊るように文字を綴ってしまうなぁ!



 これは果たし状? それとも招待状? まぁ呼び方なんてどうでもいいか。


 仕合わせの暴君に宛てたラブレターを書き終えて、さぁ出かけよう!



「あっ」



 しかし腰を上げた瞬間に、自分が殆ど全裸だった事実に今更気付く。



「あはっ! あはははっ! いい年をして舞いあがりすぎだろう!?」



 一世一代の晴れ舞台に、こんな格好で出向くわけにはいかないだろうに!


 愛しの君との最初で最後のデートなのだ。精一杯おめかしさせてもらおうじゃあないかっ!



 私がメナスであった証である無貌の仮面とミラージュローブは、彼に切り裂かれて失われてしまった。


 ついでに言うなら始界の王笏も彼の元に置いてきてしまった。



 もう私はメナスでは無い。


 ならばここからはただのノーリッテとして、彼らと向き合おうじゃないか。



 手紙を携え身支度を整え、目的の場所に転移する。


 転移先にはその場所の警備を担当する、複数のエルフ族の姿。



「な!? なぜここに人間族が!? おい貴様! どこから入ってきた!?」


「お前は長たちにこのことを知らせてきてくれ。俺達はコイツを拘束しておく」



 素顔の私に明確な殺意が向けられる。……が、温すぎるなぁ。



 君たちに関わっている暇なんてないんだよ。


 死にたくなければどいてくれたまえ。



 フレイムロードとアークデーモンを呼び出して、その場に留まった者を端から殺していく。



「な、なんでロード種とデーモン種がぁっ!? お、応援はまだなのかぁっ!?」


「嫌だ嫌だ嫌だ! 死にたくない、死にたくなぎゃああああ!!」



 逃げ惑い散っていくエルフの戦士達。



 ……無様だなぁ。


 アウターエフェクト如きに手も足も出ていないのに、どうして自分たちの事を最も優れた種族だなんて信じ込めるのだろう?



 種族の違いで最終的な到達点は変わらない。


 向き不向きはあろうとも、職業補正がその全てを覆すというのに。



 人を優秀たらしめてるのは種族なんかじゃない。個人の決意と覚悟と努力によるものだ。


 持って生まれた素質が無駄になる事はないけれど、それだけで優秀でいられるほどこの世界は温くないよ。



「これはスペルド王国の仕合わせの暴君に宛てた手紙なんだ。間違いなく彼らに届けて欲しい」



 警備の者を粗方殺し終わって、抵抗の意志を無くした者たちに声をかける。



「……そうだなぁ。今日より3日後に、アウターエフェクトの大群をエルフェリア全土に放つ。それを阻止したければ、なるべく早く彼らに来てもらうといいんじゃないかな」



 すっかり戦意を喪失した彼らの前に手紙を置いて、愛しの彼への配達をお願いする。



 うーん、この配達方法は少し確実性に欠けるかな?


 でも問題ないか。仮に配達が行われなければエルフェリアが滅ぶだけで、エルフェリアが滅べばその報は彼らの耳にも入るだろう。



 ははっ、せっかく書き上げた恋文が読まれなかったら残念だけどね。


 そんなことを考えながら軽い足取りで目の前のアウターに足を踏み入れる。



 エルフの里の中心、彼らが崇める世界樹と呼ばれる巨木の根元に存在する洞、ケイブ型アウター『宿り木の根』。


 私もここの最深部まで入ったことが無いからね。多少の時間は必要だ。



 いっそリーチェの件でエルフたちと揉めてくれれば時間的な猶予もできそうなんだが……。


 あのダン君が私の存在を認識して、そんな無駄な事をするとは期待しないほうがいいか。



 従属魔法と造魔をフルに活かして、未知のアウターを圧倒的な物量で制圧していく。


 ある程度奥に来て出現する魔物が強くなってきたらどんどん生贄に捧げ、その魔力でイントルーダーを召喚する。



「……この子たちが暴れるにはちょっと狭いかな?」



 窮屈そうにアウターを進むイントルーダーたちに、少しだけ同情してしまった。


 済まないが目的地に到着するまでは我慢して付き合ってくれ。



 うん。最深部の位置は不明だけれど、このペースなら手紙が届く頃には最深部に到達できるだろう。


 

 仕合わせの暴君の諸君、そして愛しのダン君。


 私はここの最深部で準備を整えながら、みんなが来るのを首を長くして待っていることにするよ。



 準備が整う前に来られるのも困るんだけれど……。


 それでもあまり待たせないでくれると嬉しいよ。



 くく……。我ながら我が侭で困るね、まったく。

※こっそり設定公開。

 以前の後書きでも書かせていただきましたが、メナスを取り逃したことは私にとっても完全に想定外でした。なのでメナスと一緒に、どうすれば仕合わせの暴君を打倒できるかを必死に考えた記憶があります。

 移魂の命石について言及されていないのは、仕合わせの暴君と対峙する際に役に立たないと私とノーリッテが判断したからです。


 ノーリッテの命名の由来は『Nolite judicare, et non judicabimini.』から拝借させていただいております。ただし一応舞台は異世界なので、ノーリッテの名前に込められた意味はこの言葉そのままの意味ではないと解釈していただけると助かります。

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